2022.02.01
「学び」で世界をアップデートし続ける!Schoo森健志郎社長が考える学習の原理【突撃!近大人社長】
- Kindai Picks編集部
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登録会員数は約69万人にのぼり、導入企業実績は2,400社を突破するなど、急成長している社会人向けオンライン生放送学習サービス「Schoo(スクー)」。前職では思い立った次の日に退職願を出し、若干24才の若さでSchooを立ち上げた代表取締役の森 健志郎氏は、近畿大学経営学部のOB。およそ10年でここまで事業を拡大させた森さんは、一体どんな人物なのでしょうか? 「突撃!近大人社長」第8回目は、理工学部情報学科 3年生の清水大良さんが森社長にインタビュー。コロナ禍でさらに成長する「オンライン学習」事業の裏側に迫ります。
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渋谷にある株式会社Schooのオフィスにやってきました。
2012年よりサービスを開始した「Schoo(スクー)」は、「世の中から卒業をなくす」をミッションに掲げ、大人のための学びの場を提供する生放送のオンライン学習サービスです。
ビジネススキルやITスキルなど、ビジネスの場で役に立つものから、思考法、文章術、お金、健康など、プライベートでも活用できる事柄まで、365日無料のオンライン生放送授業を配信。リアルタイムで講師に質問したり、他のユーザーとチャットで対話しながらみんなで授業を受けることができるのが特徴です。
個人と法人合わせての登録会員数は約69万人にのぼり、導入企業実績は2,400社を突破しています(2021年11月末時点)。
2014年から約20の大学・教育機関のDX※化を支援していたことに加え、2021年9月には高等教育機関DXプラットフォーム「Schoo Swing(スクースウィング)」の提供を開始。授業前から授業後まで、オンラインの教育フローを一元化する試みは、コロナ禍でオンライン対応を余儀なくされた高等教育機関から、さらなる支持を集めています。
※DX:「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略。2004年にスウェーデンで提唱され始めた、「進化を続けるテクノロジーによって、人々の生活が豊かになる」ことを示す概念。
そんな株式会社Schooの代表取締役である森さんは、2009年に経営学部を卒業した近畿大学のOBです。大学卒業後は「住宅領域の広告営業・企画制作」という、他業種に身をおいていた森さんが、社会人向けのオンライン学習サービスを立ち上げるまでに、どんな経緯があったのでしょうか?
「世の中を変えたい」と思い続けた学生時代
1986年大阪生まれ。2009年近畿大学経営学部卒業。2009年4月、株式会社リクルート(旧:株式会社リクルートメディアコミュニケーションズ)で、SUUMOを中心とした住宅領域の広告営業・企画制作に従事。2011年10月、24歳の時に株式会社Schoo(スクー)を設立し代表取締役に就任。情報経営イノベーション専門職大学 客員教授。
本日はよろしくお願いします。森社長は24歳の時に起業していますが、元々社長になりたいという願望があったんでしょうか?
いや、そういうわけではないんです。経営学部に入ったのも経営者を目指していたわけではなく……。でも、漠然と「大きなことをしたい」って思っていましたね。小学生の時の卒業アルバムには「将来は総理大臣になりたい」って書いてありました(笑)
総理大臣ですか!?
世の中を一番大きく変えられる人になりたかったんです。当時は、総理大臣が一番世の中を変えることができる職業だと思っていたので。
勉強は好きだったんでしょうか?
どちらかというと、野球が好きなスポーツ少年でした。剣道もやっていましたし、高校時代は硬式野球部に所属していて。勉強はそんなに好きじゃなかったですね。
近大マスクをつけてインタビューさせていただきました。
大学時代はかなり「尖っていた」とお聞きしました。なんでも、金髪だったとか……。
そんなに長い間、金髪だったわけじゃないですよ。野球部の時はずっと坊主だったので、大学に入って「ようやく自由な髪型にできる」って、浮かれてしまって(笑)。でも、ゼミの先生がきっかけでやめました。
金髪を注意されたんですか?
大窪久代教授のゼミで人や組織について学んでいたんですが、2年の終わりごろに大窪先生から「あなたには人をまとめる才能があるのに、外見で偏見を持たれるのはかわいそうだ」と言っていただいて。金髪がダメというより、ちゃんと将来のことを考えて行動するよう叱っていただいた感じですね。すごく真摯に向き合ってくれる先生だったんです。
卒業アルバムから、経営スタッフ論のゼミのメンバーと。
大学卒業後は、リクルートに就職されたんですよね。
第一希望は総合商社だったんですが、7大商社すべて英語の筆記試験で落ちてしまって。商社に行きたかった理由は、大きなお金が動き世の中への影響力が大きい仕事だから。総理大臣ではなくても、とにかく「大きなことをしたい」という思いがあったので。
リクルートではどんなお仕事をされていたんですか?
リクルートでは、住宅領域の広告などにまつわる仕事をしていました。コピーライティングをしたり、さまざまな業務に関わらせていただきました。でも、僕が就職して数年経った時に、東日本大震災が起こりました。液状化現象によって、僕の担当していたエリアのマンション建設が困難になり、計画していたプロモーションもすべて中止になってしまったんです。
いきなりすべて中止……それは相当つらかったですよね。
そうですね。「なんらかの不測の事態が起こってしまうと、会社の中のことは僕にはどうしようもできない」という無力感を覚えました。そんな時に、会社でeラーニングのプログラムを受けたんです。それが、もう、全然面白くなくて。一方的に聞くだけで、質問したくてもできない。「自分だったらもっと面白くできるんじゃないか?」と思って、思い立った次の日に退職願を出しました。
すごいスピード感ですね。
震災で「会社員としての自分の限界」を感じていたので、全責任を担って、自分のアクションで世の中に大きく結果が出る仕事をしたいと思ったんです。でも、勢いで始めたので……最初は大変でした。銀行口座の残高が数円になってしまったことや、3日間アメ玉だけで過ごしたこともありました。
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それはかなりしんどそうです……。
ちなみに、アメはりんご味がおすすめです。他の味ではダメなのに、なぜかりんご味のアメだと空腹が満たされるんです(笑)
もしものときのために覚えておきます(笑)。先ほどから何度か「世界を変えたい」というお話がありましたが、世の中に対して、どういう影響を与えたかったんでしょうか?
実は、僕が子どものころ、家庭に関することで周りの大人たちに助けを求めたりもしたんですけど、誰も助けてくれなかったんです。当時は「家庭の問題は家庭で解決するのが当たり前」という感じで、軽くあしらわれました。だから、社会の仕組みだったり、助けてくれない周りの大人たちに絶望感を持っていたんです。同時に、そんな世の中を仕組みから変えなければいけないとも思いました。
そんなご経験があったんですね……。
今だと、家庭の問題に行政が踏み込んでくれることもあるし、例えば周りで困っている子供がいたら、進んで助けるじゃないですか。それは、インターネットが発達して、社会にさまざまな家庭内の事情があるということが認知されて、必要な人に手を差し伸べる仕組みができたからですよね。
たしかに、誰でも声を上げられる世の中になって、社会的弱者とかマイノリティと言われている人たちのリアルな声も聞くことができます。
つまり、僕がやりたいのはそういうことなんです。正しい知識によって世界がアップデートし続ける仕組みを作って、世の中の困っている人や、無力感を抱いている人たちをゼロにしたいんです。eラーニング事業も、単なる学習ツールで終わらせるのではなく、そういった取り組みの一環として行っています。
次世代eラーニングとは? 進化し続ける「学習」の形
Schooと既存のeラーニング教材は、どういったところが違うのでしょうか?
Schooでは、コミュニケーションやコミュニティを軸とした学習を大切にしています。教材となる動画を一人で見て終わりではなく、一定の時間にセットされた生放送を、ユーザーさんが同じ時間に集まって、チャットをしたり、先生に質問したりし合いながら、同じことを学びたい人たち同士で学習を継続し合う、支援し合うコミュニティになっているんです。
誰かと一緒だと、一人で見ているより積極的に授業に参加できそうです。
よく、Schooは「ニコニコ動画」型だとご説明していますね。ただの「コンテンツ」ではなく、その周りにいる人たちで「コミュニティ」を作っていけるのが最大の特徴です。
開発時に、ニコニコ動画を参考にされたんですか?
僕自身がニコニコ動画を好きで。一人でeラーニングの教材動画を見ているときに「つまんないから、ニコニコの動画みたいに、同じ授業を受けてるユーザーたちとチャットで話しながら動画を見たいなあ」と思ったのが、今のサービスの原型になっています。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、2020年ごろから感染対策で学生の登校自粛などが行われてきましたが「今こそ僕らの出番だ」といった使命感はありましたか?
大学の授業オンライン化の支援は、コロナが流行する前の2014年から行っていました。そのころから、「大学は、もっとオンラインを有効活用しなければいけない時がくる」とは思っていました。そのチャンスはずっと窺っていましたが、その上で思ってもみなかった環境変化が起こり、一気に状況が変わった感じですね。
近畿大学の授業でも、Schooさんがリリースしている「Schoo Swing」を利用していますが、めちゃくちゃ使いやすいです!
ありがとうございます。「Schoo Swing」は、ハイブリッド教育をオールインワンなプラットフォームで実現できるってサービスですね。コロナが流行り出した後に、一気に開発を進めました。
2021年6月より近畿大学理工学部にて「Schoo Swing(β版)」のテスト導入を開始した。
今まで大学の授業って、まずオフラインの授業があって、追加のオンライン授業はZoomでやってください、レポートを提出するときはGoogleのフォームを使って出してください、さらにレポートの提出状況や出席状況などは、先生たちが各々違うツールを使って手入力……みたいに、バラけた色んなツールを組み合わせて管理していたんですよね。
「Schoo Swing」はすべての動作を一つのサービスに集約して、これ一つですベて対応できるようにしたツールです。一番最初に近畿大学理工学部でテスト導入させてもらったんです。
Schooとして、もしくは社長ご自身が達成したい今後の目標はありますか?
そうですね。会社をどういう風にすれば正解なのかって、今このスナップショット※では語れるんです。でも、世の中には色んな変数がひそんでいますよね。明日には、いや、もしかしたら1分後には変わってるかもしれない。要するに、この世のすべての変数を読み切ろうとして、「これができたら正解」という風に示すのって、かなり難しいんですよね。
※スナップショット:ソースコードや、ファイル、ディレクトリ、データベースファイルなどの状態を、ある時点だけ抜き出したもののこと。「この時点で」といった意味で使われる。
たしかに、そうかもしれません……。
経営学の世界で「シナリオプランニング」といわれたりするんですけど、起こり得る未来のシナリオを複数予想しておくんです。大筋さえ間違っていなければ、最終的にどこにたどり着くかは決まっているので、重力に逆らわないように、正しい世の中にしていくっていうのが大事かなと思います。そして、その挑戦と変化の総量を最大化できる世の中にしていくことが重要だと思っています。
どういう意味ですか……?
例えばなにかに問題意識を持っていて、「こう変えた方がいい」と思っている人がいたとします。でも、なにをどうしたら変化を起こせるのか、その人に知識がないと変革を諦めちゃいますよね。そういう風に、知識がないから挫折しちゃう人ってたくさんいると思うんです。僕らが目指してるのは、そういった変化の後ろ盾です。学生だから学ぶのではなく、社会人になっても必要な知識を学べる場が必要なんです。
たしかに、知ることや学ぶことで、自分のやりたいことに挑戦できますもんね。Schooで授業を受け、知識を得て変化に飛び込んでいく、みたいな。
連鎖的に色んな変化を起こして、僕らの想定外のことを世の中にまき起こす。かつ、それがスナップショットじゃなくて、継続的に変化が起こり続けている状態を作れば、もっと理想の世の中になり続けられるんじゃないかなと考えていますね。「変化の総量」が少ない状態っていうのは、自分の知識や学びの総量が少ないことと、周りのリテラシーが低いところ、二つの要因があるんです。誰もが学ぶことから卒業してしまったら、変化は起こらなくなりますから。
それがSchooのミッション「世の中から卒業をなくす」なんですね。
僕は、世の中から卒業をなくしていくことで、みんなが知識を受け取り続ける世の中にしたいんです。今後起こり得る、僕が想定してない社会の変化も、みんなで連鎖的に解決できるような世界が理想的ですよね。そういった世界の形成を、支えられる会社になりたいです。
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「デジタルスキル」と「人間力」、正反対の学びが人気の理由
今、Schooではどんな授業が人気なんですか?
やっぱり、デジタルスキル分野は人気がありますね。プログラミングとデザイン、DXとかデータ分析などです。どんどん時代がデジタル化していく中で、自分の仕事の中にスキルを生かしたい、なにか学ばないと不安というユーザーさんも多いようです。
僕が今大学で勉強している分野ですが、就職してから必要になってくるパターンもありますもんね。
もう一つ人気なのはデジタルスキルとは真逆の、「人間力」を伸ばす授業ですね。AIやテクノロジーに代替されない、コミュニケーション力を伸ばす授業だったり、クリエイティブなアイデアを創造するための授業だとか。「人間だからこそできる」ことを磨きたいという傾向もみられます。二つのまったく真逆な分野が、需要として高まっている印象ですね。
どちらも今の世の中を表している感じがしますね。その中でも、とくにおすすめの授業ってありますか?
そうですね……。YouTubeのチャンネル登録者が25※万人もいる、ハック大学ぺそさんの『20代のための同期に負けないキャリアアップ戦略』や、「#世界最速で日経新聞を解説する男」としてSNSで大人気の南祐貴さんが経済にまつわる知識をわかりやすく教えてくれる『30歳までに知っておきたい経済の知識』は人気の授業です。
※2021年11月29日現在
自分の望んだキャリアアップを実現していくためには、具体的にどのような戦略が必要なのか考える授業。
やはり、ビジネスに直結する授業が人気なんでしょうか。
ビジネスに限らず、コミュニケーションに関する授業も人気です。例えば、語彙力不足や表現力不足で悩んでいる方に、博報堂スピーチライターで著書も多数出版されている、ひきたよしあきさんが教鞭をとる、言葉にまつわる授業も好評ですよ。
言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる授業。
本当に多彩なジャンルの授業があるんですね。講師の先生はどんな基準で選んでいるんですか?
TV局とか出版社と同じ感じですよ。編成の部署と企画の部署があるので、編成が過去のデータやマーケットのトレンドなどを予測した上で、番組のもととなるものを作ります。その上で、企画のディレクターやプロデューサーが適任の先生を探してきます。Schooは双方向でのやりとりを重要視しているので、プレゼンテーションが上手い方というより、フラットなやりとりが上手な方を選ぶようにしています。
知識があれば、やりたいことに挑戦できない理由はなくなる
僕は今就職活動中なんですが、森社長から見てどんな人材に魅力を感じますか?
まずコミュニケーションが取れるかどうかですかね。この「コミュニケーション」というのは、プライベートでの会話術という意味ではありません。ビジネスの世界で、必要な要件をみたしているかどうかの話です。敬語ができるかとか、ビジネス用語を使えるかとか、そういった話でもありません。
どういうことでしょう?
例えば「その髪型いいですね」って、僕が聞いたとするじゃないですか。そうすると、多くの人は反射的に「そうですか、ありがとうございます」って答えると思います。でも、それはビジネスのコミュニケーションじゃない。ビジネスのコミュニケーションというのは「今、なんでこの人は、自分の髪型を褒めたんだろう?」と想像することなんです。そこから、肯定するか否定するか、それとも違う話題に切り替えるか、すべて考えながら話すことが重要です。
なるほど……。発言の意図を自分で考えることが重要なんですね。
はい。ちゃんと発言の意図を考えてから発言しているかどうかは、優秀な社会人の条件だと思います。言葉を反射的に返してくれる人は、プライベートでは話していて楽しいのかもしれないけど、仕事のパフォーマンスとしてはまた別の話になりますね。
今って、僕を含め、たくさんの学生がコロナ禍での就活や将来に悩んでいると思うんですが、そんな学生たちになにかメッセージをいただけますか?
そうですね……。若いときって、よく周囲に「挑戦しろ」と言われたりするじゃないですか。
はい。
「自分のやりたいことに挑戦できない理由」って、僕は二つあると思ってるんです。まず、やりたいと思ったことをちゃんと自分で調べて、自分で学んでないから、行動までいけないパターンですね。ワクワク感もないし、どうやったら上手くいくかがわからないから、結局行動できない。あとは、周りの人たちに理解してもらえないから応援してもらえない、もしくは止められるってパターン。
知識がないと、挑戦する前から諦めてしまうのかもしれません。
現状なにもできていないというのであれば、まず自分の学びが足りていないとか、周りの人に自分の夢を理解してもらう努力が足りてない証拠なんだと思います。なんでも、まず知識をつけることが重要です。自分のやりたいことについて、自分でちゃんと調べてるか、立ち止まって自問してもらいたいですね。
「学ぶこと」を大切にされている森社長ならではのお言葉ですね。本日はありがとうございました!
対談を終えた清水さんの感想は?
森社長から「既存のeラーニングプログラムに疑問を抱いた次の日には退職願を出して、オンライン学習サービスの立ち上げに取り組み始めた」と伺い、自身が思ったことをすぐ行動に移し、世の中の課題を解決しようとする行動力に驚かされました。僕も卒業後、森社長のように社会で活躍するため、Schooの学習サービスも活用しながら考えや知識をアップデートし続けたいと感じました。あと、僕は情報学を専攻しているので、自分でもサービスを構築・提供して、世の中の課題を解決していけるよう、頑張りたいです!
取材・文:トミモトリエ/渡辺あや
写真:中山文子
企画・編集:人間編集部
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