2024.04.22
あのマンガの聖地も兵庫に!?「兵庫マンガ聖地マップ」&「兵庫マンガ棚」作りに挑戦してみた!
- Kindai Picks編集部
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人気マンガ『ハイキュー!!』の聖地が兵庫にあるって知っていましたか? 実は兵庫県には、さまざまなマンガの聖地が点在しているそうです。そこで、尼崎のマンホールから宝塚の手塚治虫記念館まで、兵庫のマンガ聖地を一望できる「兵庫マンガ聖地マップ」を作成! さらに、近大のマンガ図書館こと「ビブリオシアター」で兵庫のマンガを紹介する棚作りにも挑戦しました。
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意外に多い!? 聖地が兵庫県のマンガを集めてみよう
こんにちは! 近畿大学 総合社会学部 総合社会学科 社会・マスメディア系専攻4年生の浜田直幸です。私は「KINDAIマンガカフェ」というプロジェクトの活動メンバーで、マンガを通じた「対話」によるマンガ文化の活性化を目指して、いろんなマンガとのコラボイベントをおこなったり、マンガに関連したイベントや講演会を企画しています。
さて、突然ですが、これって何だと思いますか?
尼崎市のマンホール
ただのマンホールの写真だと思いますよね?
実はここ……大人気バレーボールマンガ『ハイキュー!!』の聖地なんです! というのも、作中に登場する強豪校「稲荷崎高校」のモデルとなった学校が兵庫県尼崎市にあるといわれていて、市内に設置されているこのトンボ柄のマンホールが描かれたコマがマンガの中にあるんです。
そんな『ハイキュー!!』ですが、今年の2月からは劇場版の上映も始まり、世はまさに“大ハイキュー!!時代”! 『ハイキュー!!』の聖地といえば、岩手県の軽米町が有名で、世界中から多くのファンが聖地巡礼に訪れていますが、大阪在住の私にとって、約1,000キロも離れている東北は簡単に行ける場所ではありません。
でも『ハイキュー!!』は私の大好きな作品。「いつか聖地に行きたい!」と思っていた矢先、この兵庫の聖地を見つけたのです!
尼崎市は大阪府に隣接する市で、大阪駅からの移動時間はなんと5〜7分。こんなに近くに聖地があったという発見を、誰かに伝えたくなった私は勢いのまま「KINDAIマンガカフェ」メンバーに連絡してみました。
というわけで、カフェメンバーと一緒に兵庫県にゆかりのある漫画を調べることにしました。
兵庫県の聖地巡礼に興味をもったメンバーとともに訪れたのが、近畿大学が誇る施設「ビブリオシアター」!
ビブリオシアターは以前からあった近畿大学中央図書館の隣に新設された図書館施設で、近大独自の図書分類「近大INDEX」に基づき、1階「NOAH33」に学術書・一般書が、2階「DONDEN」にはマンガを中心に新書・文庫が主に配架されています。
「DONDEN」は「マンガから文庫新書へと、どんどん手を伸ばしてほしい」という思いが込められた“DONDEN読み”という考え方がテーマになっていて、さまざまなマンガがラインナップされていることが大きな特徴。私たち「KINDAIマンガカフェ」は、ビブリオシアターの豊富なマンガ蔵書を利用して活動しているのです!
早速メンバーと手分けして、兵庫県に関連があるマンガを探していきます。
あれもこれも、実は兵庫県に関連が……!? 調べながら探していくと、どんどんマンガが集まってきました。
ビブリオシアター内だけでも、兵庫県に関連するマンガがこれだけ見つかりました!
浜田:めっちゃ集まったな~!
メンバー:こんなに関連するマンガがあったら、何かできそうですよね。
浜田:確かに! 実際に聖地に行ってみて、聖地マップを作ってみるのはどうだろう?
メンバー:いいですね! ビブリオシアターで棚展示もできたら面白いかも!
ということで、まずはメンバーの阪上(取材担当)、河本(撮影担当)と兵庫の聖地へ行ってみることにしました!
手塚治虫作品の聖地! 宝塚市「宝塚市立手塚治虫記念館」
まず訪れたのは宝塚市にある「宝塚市立手塚治虫記念館」。マンガの神様とも称される手塚治虫先生や、手塚作品にまつわる展示が多数あるこの施設は、マンガを語るなら絶対に外せない場所です!
作者:手塚治虫
聖地:宝塚市
手塚氏は大阪府豊能郡豊中町(現・豊中市)に生まれ、5歳から24歳までの約20年間を宝塚市で過ごしている。『宝塚市立手塚治虫記念館』は手塚氏の没後5年に設立された。
手塚マンガはリメイクやメディアミックス、そして親の影響で大学生の私たちにとっても非常に身近な存在です。
そんなあらゆる世代を引き寄せ続ける手塚マンガの魅力に迫ります!
写真左・文芸学部文化デザイン学科2年生の阪上真由
入り口では『火の鳥』が来場者をお出迎え! 早速入館してみましょう。
入館チケットには、『リボンの騎士』『三つ目がとおる』などの手塚マンガのキャラクターが!
館内に入ると、手塚治虫先生のすごさがわかる展示がずらりと並んでいます。
手塚先生が生涯で描いてきたマンガが年代順に記された「手塚治虫年表」。
浜田:すごい量! これ全部、手塚先生が自分で描いたってすごすぎひん!?
阪上:同時に何作も連載している時期もありますよね……。
浜田:『七色いんこ』って、ミュージカルで見たことある。これも手塚マンガやったんや!
さらに館内には手塚マンガの世界が再現された展示もあり、『火の鳥』未来編に登場する“生命維持装置”の中に、手塚治虫先生や作品にゆかりのあるアイテムが展示されているゾーンがありました。
阪上:私、『リボンの騎士』読んだことあります、小学生の時お母さんに勧められて! あ、『ジャングル大帝』のレオもいる。『ブラック・ジャック』も!
浜田:熱量がすごい(笑)
浜田:あ、『PLUTO』! これ最近読んだ!
阪上:どんなマンガですか?
浜田:『鉄腕アトム』の「地上最大のロボット」っていう話を浦沢直樹先生がリメイクしたマンガで、ロボット同士が殺し合う悲しいシーンが多いんやけど、今やからこそ考えさせられることもあって、めっちゃ良かった。Netflixでアニメ化もされてるで!
阪上:面白そう! 私も読んでみようかな。
また、記念館にはライブラリーもあり、手塚マンガを実際に読むこともできます。私は『鉄腕アトム』とリメイク作品の『PLUTO』を読み比べてみました! 阪上は、大好きな作品だという『ブラック・ジャック』のリメイク作品やフランス語版を読んでいました。
最後に楽しんだのは撮影スポット。聖地巡礼の醍醐味といえば、マンガの世界観を再現する記念撮影ですが、記念館には手塚マンガの世界に浸れる撮影スポットがたくさんあるんです!
アトムと10万馬力!!!
阪上の大好きなブラック・ジャックと!
『宝塚市立手塚治虫記念館』を実際に訪れて、何より私たちが驚いたのは、数えきれないほどの作品数と、あらゆるジャンルを網羅している作風の幅広さ! まさに“手塚ワールド”といった奥深さでした。展示を見れば見るほど、作品を読んでみたいと思えるような聖地でした。
最後は、『ジャングル大帝』のレオと一緒に。ちゃっかり二人ともグッズ買ってる!!!(笑)
『坂本ですが?』の聖地! 西宮市内各所
続いて訪れたのは、西宮市にある「鳴尾・武庫川女子大前駅」。駅を出て、閑静な住宅街の中を進んでいくと……。
こんな自動販売機が!
ここ西宮市鳴尾は、ギャグマンガ『坂本ですが?』の聖地なんです!
作者:佐野菜見
出版社:KADOKAWA
聖地:西宮市
坂本が通う「県立学文高校」は、県立鳴尾高校がモデル。スーパーやレンタルビデオ店、河川敷など、阪神沿線や鳴尾高周辺の風景が描かれている。
アニメ化の際は、市や阪神電鉄とのコラボ企画も実施された。
主人公の坂本たちが通う高校のモデルになった「鳴尾高校」の近くにも行ってみます。
阪上:あれって、1話の扉絵になってたとこじゃないですか?
浜田:あ! ほんまや!
第1話「1年2組坂本君」で、坂本が優雅に塀の上を歩いて登校していた道。
浜田:でもなんか、思ってたより低くない?
阪上:確かに……。
浜田:いや、ちょっと待って!
浜田:ほら! 下からのアングルで撮ったらそれっぽい!
阪上:おお! 本当だ! 意外と低いところを歩いてたんですね(笑)
他にも鳴尾周辺には『坂本ですが?』の聖地が点在しています。せっかくなので、原作のシーンをいくつか再現してみることに!
第3巻12話「下校のルール」の扉絵を再現。
12話後半で坂本がしていた、白線だけを渡るゲームに挑戦。
浜田:小学生の時ようやってたわ(笑)
阪上:これ、めっちゃ恥ずかしいです(笑)
歩いて、歩いて……。
浜田:(坂本風に)さぁ会場に着きまし……。え?
スーパーマーケットにたどり着くはずが……。
浜田:閉店してる……!
阪上:残念でしたね……。
浜田:そりゃ、街の風景が連載当時とずっと同じなわけないもんなぁ(泣)
気を取り直して、次のスポットへ!
武庫川を前に黄昏る二人。
阪上:どこですか、ここは……。
浜田:武庫川の河川敷です。
阪上:ここで何を再現するんですか?
浜田:手押し相撲に決まってるやろ!!!
そう! この河川敷は、坂本とカリスマヤンキー“8823(はやぶさ)先輩”がタイマンを繰り広げた聖地なんです!(第2巻第11話「カリスマヤンキー8823(はやぶさ)先輩(後編)」参照)
秘儀! 直立不動(スタンディングアテンション)!!
以上!『坂本ですが?』の聖地でした!(笑)
『神戸在住』の聖地! 神戸市内各所
最後に訪れたのは、神戸市の「元町駅」。
阪上::ここは何ていうマンガの聖地ですか?
浜田:『神戸在住』だよ!
作者:木村紺
出版社:講談社
聖地:神戸市
坂本が通う「県立学文高校」は、県立鳴尾高校がモデル。スーパーやレンタルビデオ店、河川敷など、阪神沿線や鳴尾高周辺の風景が描かれている。
アニメ化の際は、市や阪神電鉄とのコラボ企画も実施された。
浜田:『神戸在住』で得た知識で、僕がみんなにちょっとディープな神戸の魅力を紹介します!
第1巻4話「元町高架下。」に登場する「元町高架通商店街」。
浜田:まずは「モトコータウン」の愛称で知られる「元町高架通商店街」!
阪上:初めて聞きました!
浜田:俺も『神戸在住』で初めて知ったんだけど、一度来てみたかってん! とにかく入ってみよ!
阪上:もう夜なので、お店はほとんど閉まってますね……。
浜田:作中やとここに、イラストレーターの日向さんが車いすに乗りながらやってる「FREEDOM」っていうアトリエ兼ショップがあんねん。
浜田:……え、これ何?
阪上:栄養ドリンクの蓋が何個も並べられてる……。
浜田:なんかこれが一番ディープさ感じるな(笑)
モトコーの前で記念撮影。写真左から浜田・総合社会学部総合社会学科社会・マスメディア系専攻4年生の河本恵太・阪上。今度はお店が開いてる時に来ます!(笑)
「モトコータウン」だけでなく、『神戸在住』には、神戸市内に実際に存在するさまざまな場所が登場します。また、兵庫県に大きな傷跡を残した「阪神淡路大震災」にまつわる描写が多いことも特徴です。
今回は『神戸在住』に登場する、阪神淡路大震災からの復興を感じられるスポットも巡ってみます。
大丸神戸店(第3巻25話「震災から。」) 写真提供:神戸市
現在の大丸神戸店(復興工事は1997年に完了)。作中では、既に復興工事が終わり現在の姿になっている。
浜田:震災で損壊した大丸神戸店のグランドオープンは、被災地の方々にとって大きな希望になったらしい。
阪上:復興の象徴ですね。
そんな大丸神戸店は、現在も神戸旧居留地を代表する建物となっています。
下山手小学校。実際は震災前に廃校していたが、作中では震災直後、同校に主人公の友人の金城和歌子が避難し、和歌子の恋人である林浩(リンハオ)は震災ボランティアとして活動していた。
浜田:阪神淡路大震災が起きた1995年は「ボランティア元年」って呼ばれてて、多くの人が林みたいに災害ボランティアとして救援活動に尽力されたんやって。
阪上:誰も勝手がわからない中での活動は大変だったはずですよね。
浜田:作中でも、林たちはいろんな困難に直面しながら懸命に動いてたなぁ。
和歌子と林が住んでいた「ひよどり台仮設住宅」(第1巻2話「遊びとかわいいものと音楽のこと。」) 写真提供:神戸市)
「ひよどり台」の現在の様子。仮設住宅はなくなり、閑静な街並みとなっている。
浜田:震災の後、600ヶ所以上に避難所ができたんやけど、そのひとつがここ「ひよどり台」にもあったんやって。
阪上:今はもうなくなって想像しかできないけど、すごい数ですね。それだけたくさんの方が震災で家を失ったんだ……。
『神戸在住』は日常の一部としての阪神淡路大震災を映し出しています。今後の震災対応のために、記憶の継承が大きな課題として挙げられる中で、このような当時の日常を描いた作品が担う役割は大きいのではないでしょうか。
「兵庫マンガ聖地マップ」&「兵庫マンガ棚展示」作成!
今回私たちが実際に訪れた聖地と、兵庫県内にあるさまざまなマンガの聖地をまとめた「聖地マップ」が完成しました!
さまざまなマンガ作品が記載された盛りだくさんのマップです。今回、私たちが訪れたのは数ヵ所でしたが、兵庫にはまだまだ多くの聖地があるんです。
ビブリオシアター内アカデミックシアター2階B&Bスペース(キャリアセンター前)に設置された棚展示。
そしてビブリオシアター内の棚展示も完成しました!
それぞれのマンガに聖地の場所を記載したPOPを貼ることで、マンガ作品に興味をもつとともに、マップを見て聖地を訪れたいと思ってもらえるような展示にできるよう、心がけました。
こうして見るとビブリオシアター内にはさまざまなジャンルのマンガがあることがわかります。多様なマンガの中から、自分の心に刺さるものを探してみてください。
この棚展示を懸け橋に、兵庫県とビブリオシアターの双方が盛り上がってほしいと思います! なお、こちらは4月30日まで展示予定です。
まとめ
いかかでしたか? 私たちは訪れた3つの聖地を全て、異なる角度から楽しみ、聖地巡礼の奥深さ、そして兵庫の意外な魅力に気づくことができました!聖地巡礼の醍醐味は、マンガにまつわる聖地を実際に訪れることだけではありません。訪れた後にその作品をもう一度読めば、聖地で実際に見た景色や、ふと感じた地域の雰囲気が、作品に対する没入感をより深めてくれるでしょう。登場人物たちの何気ない行動や生活といった、訪れる前までは気に留めていなかったところにも目が行くはずです。
私は『神戸在住』を聖地巡礼後にもう一度読み、実際に訪れた場所が登場するたびに懐かしさを感じ、私自身も主人公たちのように神戸で生きてきたような感覚を味わうことができました。そして聖地を訪れたことで、作中から現在と変わらない神戸の魅力を再確認したり、当時からの変化も楽しむことができました。
さらに聖地巡礼は、聖地のあるその地域に対する興味も抱かせてくれます。私たちは『神戸在住』をきっかけに神戸の人々に愛されてきた「モトコータウン」を知り、『坂本ですが?』の聖地では鳴尾の観光地ではないリアルな兵庫の街並みと武庫川の自然を体感することができました。
私たちの知らなかった兵庫の新しい魅力を教えてくれたマンガは、謂わば兵庫のガイドブックなのです! これは作品の世界と現実の世界が重なり合う聖地巡礼ならではの魅力といえるのではないでしょうか。
皆さんも是非、「兵庫マンガ聖地マップ」を手に気軽に聖地を訪れてみてください!
この記事を書いた人
浜田 直幸(はまだ なおゆき)
近畿大学 総合社会学部 総合社会学科 社会・マスメディア系専攻 4年生
アカデミックシアタープロジェクト『KINDAIマンガカフェ』の学生キャプテンとして奮闘中!
サブカル好きで映画から邦ロック、お笑いまで何でも楽しむ。もちろんマンガへの興味は尽きず、最近は読切作品を読み漁るのがマイブーム。
編集:藤間紗花/人間編集部
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