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2024.04.30

もはやオタクだけじゃない! 新しい観光スタイル「アニメ聖地巡礼」の楽しみ方とは?

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
岡本健
聖地巡礼
コンテンツツーリズム
アニメ
漫画

2016年に放映された映画『君の名は。』(監督:新海誠)をきっかけに、認知度が上がったアニメ聖地巡礼。聖地巡礼とは、作品の舞台として登場した地域を実際に訪れ、写真を撮ったり、キャラクターと同じ行動をとったりする観光スタイルのことです。そんな聖地巡礼の研究を行う近畿大学の学生が、兵庫県 西宮市・神戸市を中心に調査を行い、聖地巡礼の醍醐味をご紹介します。

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こんにちは! 近畿大学 総合社会学部 総合社会学科(社会・マスメディア系専攻)3年生の竹川和真です。岡本健先生のゼミで、アニメ聖地巡礼による地域や旅行者への影響について研究しています。

私は旅行とアニメが好きで、アニメ『氷菓』の聖地・岐阜県飛騨高山を訪れたことがきっかけで、アニメ聖地巡礼について大学で研究しようと決めました。
この記事では、実際に私がアニメ聖地巡礼を行っている様子を紹介し、アニメ聖地巡礼の魅力をお伝えします!

実際に巡礼を行う前に、専門家である岡本先生に「アニメ聖地巡礼の醍醐味」についてインタビューをしてみようと思います!

岡本 健(おかもと・たけし)

近畿大学 総合社会学部 総合社会学科 社会・マスメディア系専攻 教授
専門:観光社会学、メディア・コンテンツ研究

授業担当は「メディア文化論」「メディア社会論」など。博士(観光学)。アニメ聖地巡礼、ゾンビ、VTuber、ゲーム文化などを研究中。「ゾンビ先生」として、VTuber実践も行っている。『巡礼ビジネス』(KADOKAWA)、『ゾンビ学』(人文書院)など、著書多数
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岡本先生に聞く! アニメ聖地巡礼の醍醐味って?



竹川和真
本日はよろしくお願いします! 今回アニメ聖地巡礼を行おうと思うのですが、岡本先生が考える「聖地巡礼の醍醐味」を教えてください。

岡本先生
そうですね。人によって楽しみ方はそれぞれですが、まず、いくつかの水準があると言えるでしょう。たとえば、作品世界に入り込んだように思えることも魅力の一つでしょうし、アニメ制作会社のスタッフの視点に立つことができるのも面白さの一つです。

竹川和真
その発想はなかったです。

岡本先生
聖地巡礼に訪れた人はアニメの背景と同じ角度で写真などを撮影するわけですが、「スタッフはあのシーンの背景にこういう風景を選んだのか」と作り手側の視点に立てます。作品世界を楽しむということはもちろん、スタッフの視点に立ってアニメを楽しめるのもアニメ聖地巡礼の醍醐味だと思います。

竹川和真
確かにアニメを制作するにあたって、スタッフも実際にそこに行ってるわけですもんね。

岡本先生
あとは、その場所そのものについて知れることも、楽しいですよ。アニメには登場しないけど、聖地の近くの飲食店のマスターが話の面白い人だったとか、郷土料理が美味しかったとか。アニメがなかったら出合っていなかった地域の魅力に出合えるということも醍醐味ですよね。



竹川和真
アニメの聖地というと、駅や商店街、神社といった日常的な風景が多いイメージですが、理由はあるのでしょうか?

岡本先生
日常的な風景が背景に選ばれやすい理由の一つは、アニメの題材の変化です。1970年代から1980年代はSFが流行っていましたが、90年代を経て2000年代に入ると、徐々に何気ない日常を描く作品が増えていきます。これらは「日常系アニメ」とか「空気系アニメ」と呼ばれました。

竹川和真
日常的な話だから、リアルな生活を感じられる風景が必要になったということですね。聖地巡礼の研究をしてきた岡本先生ならではの視点でめちゃくちゃ面白いです!

岡本先生
他には制作体制の変化もあると思います。アニメの制作本数が増えてくると、「あるもの」がたくさん必要になります。

竹川和真
あるもの……?

岡本先生
答えは「背景」です。SFなどでは宇宙のように、同じ背景のシーンも多いかもしれませんが、高校生活などを描くとなると、大量の背景が必要になります。また、2000年代には制作プロセスのデジタル化も進んでいきます。デジカメの性能も上がり、撮影したデジタル画像をコンピュータに取り込んで処理して背景を作る手法も出てきました。

竹川和真
つまり、日常的な場所が描かれやすい理由は、「作風の変化」と「制作体制の変化」にあるということですね。



竹川和真
以前、アニメ『氷菓』の聖地である日枝神社にお邪魔した時に、偶然居合わせた地元の方とお話しできて楽しかった思い出があります。岡本先生もアニメ聖地巡礼を通して、何かと偶然の出合いを経験されたことはありますか?

岡本先生
毎回ありますね! 私がアニメ聖地巡礼の研究を博士課程で行ったのは、実はこの点が面白かったからなんです。聖地巡礼が色々なもの同士を偶然結び付けていく、それが社会学的にも面白いので、博士論文が書けました。

竹川和真
なるほど。アニメの聖地に行って、そこで深い学びを得られるのは貴重な体験ですよね。

岡本先生
ただ、これってアニメだけに限った話ではなくて、大河ドラマをきっかけにした観光でも、カニを食べに行く観光でも、旅行者側の行動や認識によって、深い観光になり得ます。ある意味「観光」の持つ力なんですよね。
「アニメ聖地巡礼はこうでなくてはいけない」という決まりはありません。地域によって、作品によって、時代によって、違ってくるものです。私が重点的に調査をしていたころのアニメ聖地巡礼と今の聖地巡礼では、同じ部分もあると思いますし、異なる部分もあると思います。

是非、現地に行って、竹川さんの視点で、色々見てきてください。楽しみにしています!

竹川和真
頭を柔らかくして聖地巡礼を楽しみたいと思います! ありがとうございました!!




一時代を築いたアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の聖地西宮市を散策!

岡本先生へのインタビューを参考にしながら、実際に2日かけてアニメ聖地巡礼にて行ってきました! 今回は、岡本先生とも関わりのある兵庫県にフォーカスして、私なりのアニメ聖地巡礼の醍醐味を探っていきたいと思います。

兵庫県のアニメ聖地をまわるために選んだ場所は、2023年で原作20周年を迎えた作品『涼宮ハルヒの憂鬱』の舞台である兵庫県西宮市です。



最初に訪れたのは西宮北口駅周辺にある「にしきた公園」。ここはキャラクターたちが集合場所としていつも指定する「駅前公園」のモデルになった場所です。時計台はアニメで見たものとまったく同じで「これがあの有名な時計台か……。」と感動しました! 撮影してくれる友人とここで待ち合わせをしてから聖地巡礼を始めました!

にしきた公園から5分ほど歩くと見えてくるのが「珈琲屋ドリーム」。
作中に登場するメンバーが喫茶店に集まって打ち合わせをしていましたが、その場所の舞台となっているのがこの喫茶店なんです。美味しいと有名なワッフルと、作中のキャラクター「長門有希」が飲んでいたメロンクリームソーダをいただきました! ワッフルの外の生地はサクサクしているのですが、中はふわふわで甘すぎず、クリームソーダとの相性も抜群でした!



私はこうした純喫茶に来るのは初めてで、お店ではレトロな雰囲気を味わうことができました。「アニメの聖地だから」という理由で、普段あまり行かないところに行くことができるのは聖地巡礼の醍醐味だと思います。

また、珈琲屋ドリームは今年で40周年で、『涼宮ハルヒの憂鬱』とコラボした取り組みを行っています。 一般のお客さんのみならずアニメファンにも長年愛されているのは、ファンが喜ぶ取り組みがなされているからこそだと感じました。


アニメツーリズム協会公式の御朱印やイベント告知の様子

次に向かったのは、夙川沿いにある聖地。
作中ではキャラクターがこの公園でベンチに腰掛けていたシーンがあるので、そのシーンの舞台となったベンチを探します。



腰掛けていたベンチを探すこと早10分……全然見つかりません。



夙川公園で合ってるはずなんだけどな……。



川の下の方におりてみたけど、アニメで登場するのはこの画角じゃない……。

実は見つからないのも当然で、なんと私は聖地と反対側の方へ歩いていたのです。ただ、実はこの間違いにも聖地巡礼を楽しむポイントがあります。それは「アニメの聖地全てがGoogleマップなどの地図アプリに載っているわけではない」ということです。
通学路やベンチのように何気ない風景がアニメの聖地になることもあるため、探すことが難しい場所もあります。難しいからこそ、見つけた時は達成感があり、私は方角を間違えた結果、西宮の特徴である自然の豊かさを知ることができました!



次に訪れたのは「新池」、またの名を「みくる池」にやってきました!
新池は周囲約600mある大きな池で、地元の方にとっては散歩コースとしても親しまれている場所です。なぜ「みくる池」という呼ばれ方をしているのかというと、作中のキャラクター「朝比奈みくる」がこの池に落ちてしまったからなんです。


なかなか可哀想ですが、実はここにも聖地巡礼の醍醐味があります。それは「聖地を訪れることによってキャラクターの行動・心情を体感することができる」という点です。池の水は濁っていて落ち葉が浮いてたりもしたので「ここにみくるちゃんは落ちたのか……私だったら嫌だな」と少し考えさせられました(笑)。実際に聖地に訪れたことで見えてくるものもあるので、みなさんもキャラクターの追体験をしてみてください!



『涼宮ハルヒの憂鬱』の聖地巡礼で最後に訪れたのが「ハルヒ坂」です。

ハルヒ坂の真横にあるのは作中のモデルとなった学校で、『涼宮ハルヒの憂鬱』の作者・谷川流先生の母校でもあります。かなり険しい道のりでしたが、坂から見下ろす景色は素晴らしかったです。

西宮の聖地巡礼をして気づいたのは「坂道がかなり多い」ということです。これは西宮市の北側が六甲山で、南側には大阪湾が広がっているから段丘の土地が多いという特徴を持っているからなんです! 聖地巡礼を通して、その地域の地理についても把握できることも、ちょっとした醍醐味かもしれません。


神戸市でしか体験できないアニメのような世界とは?

聖地巡礼2日目は神戸市にやってきました! 神戸市が舞台になっているアニメ『Fate/stay night』とアニメ映画『すずめの戸締まり』の聖地をまわります。



スタート地点は新神戸駅で、こちらは『すずめの戸締まり』の聖地になっています。今日はこの場所から聖地巡礼を始めたいと思います。



ここは『Fate/stay night』の舞台となった風見鶏の館とうろこの家。神戸北野異人館街にある建物なので屋敷付近も異人館が並んでいて、まるで異国に来たような雰囲気を味わえました。

※風見鶏の館は2025/3まで工事で休館予定です。



次は『すずめの戸締まり』の聖地になっている「東山商店街」です。入り口の鯛焼き屋さんには『すずめの戸締まり』のポスターが飾られていました。
お店の方に「『すずめの戸締り』を知ってる方も訪れるんですか?」と質問すると、「映画がやってた頃はポスターの所まで来て映画の話をしてたお客さんが来たね」というお話を聞くことができました! 聖地を通して地元の方と作品関連のお話ができるのも、醍醐味の一つです。とてもにぎわっていて、アニメで見るような商店街の雰囲気を味わえました!


それぞれの醍醐味を見つけて欲しいという想い

2日に渡って兵庫県 西宮市・神戸市のアニメ聖地をまわりましたが、その中で感じたことは「やっぱりアニメ聖地巡礼っていいな……!!」ということです。聖地をまわればアニメの世界に入り込んだような新しい体験ができます。
そして「思い通りの聖地巡礼」じゃなくてもいいというのも、この2日間で学べたことです。今回の聖地巡礼で、私は聖地と反対方向に向かってしまったり、思うようにいかなかったことも多々ありました。でも、そのおかげで新しい発見もできたのです。

それぞれの観光があって、アニメ聖地巡礼がある。
私には私の醍醐味と体験がありましたが、今度はみなさんの番です! 実際にアニメの聖地を訪れて、みなさんにとっての「聖地巡礼の醍醐味」を見つけてください。


この記事を書いた人

竹川 和真(たけがわ かずま)

近畿大学 総合社会学部 総合社会学科 社会・マスメディア系専攻3年生。アニメ聖地巡礼の研究を行っており、来年度アカデミックシアタープロジェクトの学生代表も務める。趣味はアニメ鑑賞にランニング、VTuberの配信視聴に雑貨巡りや音楽鑑賞と幅広い。座右の銘は「いつも難しい方へ」。


編集:人間編集部

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