2023.10.31
外食ができない!人前での食事に不安やストレスを抱く「会食恐怖症」って?臨床心理学の専門家が解説
- Kindai Picks編集部
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ある日突然、外食ができなくなったら……。人前での食事に強い緊張感や不安感を抱く「会食恐怖症」。その症状の原因と治療法について、臨床心理学の専門家にお話を伺いました。きっかけ一つで誰しもがなりうる恐怖症の背景は、当事者もそうでない人も必見です。
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会食恐怖症とは(心理系専攻・本岡先生による解説)
本岡 寛子(もとおか ひろこ)先生
近畿大学 総合社会学部 総合社会学科 心理系専攻 総合文化研究科 博士(心理学)
専門:臨床心理学
不安や気持ちの落ち込みが強い状態から克服していく問題解決プロセスを研究しています。
教員情報詳細
原因と特徴
会食恐怖症とは社交不安症の一つで、外食や人前での食事において、強い不安感・緊張感を抱く症状です。
3つの要因があり、1つ目が生物的な要因(胃弱や気象病など)。2つ目が心理的な要因(繊細な性格など)。3つ目が社会的な要因(給食の完食指導など)。
その背景に味覚嫌悪学習というものがあります。他の学習は何度か繰り返さないと不安感は形成されないのですが、食事はたった一回で形成されるとされています。私たち人間は動物であるため、食べて危険を感じたり、不快になったりするものは本能的に避けたい。人間は知能が発達しているため、一度食べて腹痛が起きたぐらいで死ぬとは思わないですが、食べるという行為は特に不安が形成されやすいものなのです。
効果的な治療法
治療法はさまざまですが、心理療法の中でも認知行動療法が効果的といえます。不安や恐怖はなにかしらの経験によって学習されたもの。会食恐怖症の克服には、トラウマになっている食事の経験(誤学習)を上書き、つまり再学習する必要があるということです。
不安階層表とは?
食事において不安に感じる状況に点数をつけ階層表にし、対処法を持ちながら、不安の低い状況からチャレンジしていく方法。併せて、チャレンジする前にどんなことが起こりそうかという予期不安を書き出し、実際にやってみた結果と照らし合わせて検討します。すると予期不安は起こらないことがほとんどなんです。
トレーニングを行う上で対処法、つまり自分を落ち着かせる安心材料が大切です。ペットボトルの水・ハンカチ・ティッシュを携帯する、予めトイレの場所を確認するなど、安心材料は人によってさまざま。「自分が残しても大丈夫」という安心感から、たくさん食べる人と一緒に行う人も多いです。
自分のことを理解しており、不安に感じることをカバーしてくれる人と一緒に行ったり、会食恐怖症と言いづらかったら、小食だと言っておくのも一つの手です。
自分のペースで、身近な人のサポートを受けながら
本岡先生より最後に
会食恐怖症の治療は自分のペースで、徐々にで大丈夫なんです。特に生物的な面で、体調は毎日変化するものです。「今日は胃の調子が悪いな」とか「低気圧で頭が痛いな」という日は無理をしないこと。疲れが溜まっているときも同じ。そんな日はゆっくりしましょう。
また、治療は自分一人でがんばらないといけないものではありません。この記事の読者の中には、家族や友人が会食恐怖症で苦しんでいる人もいるはずです。彼らが困っていたら「なに」が不安なのか具体的に聞いてあげてください。食べ物を残すことなのか、気分が悪くなって雰囲気を壊すことなのか。それが明確になれば周りも対処できますし、誰かが自分のことをわかってくれている状況は安心感に繋がると思います。
もし今悩んでいる人がいれば一人で悩み続けずに、自分が手を伸ばせるところに頼ってみてください。家族や友人だけでなく、近畿大学の場合、メディカルサポートセンター(心療内科の先生が来る日もあります)、学生相談室もあります。
完食を目指すのではなく、食事の楽しさを思い出したり、新たに見つけたりすることを目標に向き合っていくのがいいですね。
近畿大学 メディカルサポートセンター
近畿大学 学生相談室(東大阪キャンパス)
この記事を書いた人
にしむらみう
フリーの漫画家・イラストレーター。漫画とゲームで酸素を補給をして生きている。
究極の引きこもりでめったに外に出ないが、妄想で色んな所に行っているので意外と充実した日々を送っている。
文:オカジマアヤノ
編集:人間編集部
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