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2023.10.06

【近大一筋・中口 讓教授】友人は一生の財産。人とのつながりが自分を導いてくれた

Kindai Picks編集部

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OB・OG
研究
理工学部

2023年4月「微量必須元素に関する生物地球化学的研究」という題目で海洋化学学術賞を受賞した中口 讓教授。中口先生は学生時代から今に至るまで近畿大学一筋という経歴をお持ちです。そこにはどんな出会いがあり、何をきっかけとして研究者への道を歩まれたのか。今回は中口先生に当時を振り返りっていただくとともに、近畿大学の魅力についてお話いただきます。

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中口 讓(なかぐち ゆずる)教授
近畿大学理工学部教授。1982年(昭和57年)に近畿大学理工学部化学科を卒業後、同大学院へ進学、1984年(昭和59年)大学院修了後に近畿大学助手、近畿大学講師、近畿大学助教授、近畿大学准教授を経て現在に至る。2023年「微量必須元素に関する生物地球化学的研究」にて海洋化学学術賞を受賞。主な研究テーマは「生体活性微量金属の生物地球化学的研究」「洋上大気エアロゾル中の生体活性微量金属に関する研究」「東大阪市飛来する黄砂の環境化学的研究」「都市河川の塩基性化に関する研究」。現在教授職とともに兵庫県立尼崎小田高等学校スーパーサイエンスハイスクール探求アドバイザー、近畿大学校友会副会長、近畿大学生活協同組合理事長を務める。



環境に関わる二つの研究




――本日はよろしくお願いいたします。まずは、簡単に先生のご経歴をお伺いできますでしょうか。

中口:昭和57年に近畿大学の理工学部を卒業し、その2年後の59年に大学院の化学研究科を修了しました。その後、大学院の博士課程に進学をしましたが、2年で中退し、その後ずっと近畿大学の教員を続けています。

――今はどんな研究をされているのでしょうか。

中口:最近では主に二つの研究を行っています。一つは微量必須元素についてです。実は微量元素はまだあまり調べられていない分野でして、今は日本海やオホーツク海、東シナ海などでの分布状態や、これら微量元素の起源を探っています。

そもそも元素というのは全ての生物に必要なものである反面、多く摂りすぎてしまうと毒になってしまうという性格も持っています。ですので自然環境の中で、どこにどのくらいの元素が存在しているのかを把握することが必要だと思います。


中口教授の研究論文より、日本海における、各元素の分布表.jpg。様々な海における海水サンプルを収集し、その海における各元素ごとの分布を調査されています。
<引用論文>
Nakaguchi, Y., Sakamoto, A., Asatani T., Minami, T., Shitashima, K., Zheng, L., Sohrin, Y. (2022). Distribution and stoichiometry of Al, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Cd, and Pb in the Seas of Japan and Okhotsk. Marine Chemistry 241, 104108, doi.org/10.1016/j.marchem.2022.104108


――もう一つの研究についてもお伺いできますでしょうか。

中口:もう一つは、最近問題になっている大阪湾のマイクロプラスチックについてです。今は様々な分析法を用いてデータを集めています。

たくさんのマイクロプラスチックが海洋に流れていると言われているのですが、これらがどこに消えているのかということは実は解ってない部分もあります。今後海洋に流れるマイクロプラスチックを減らすためにも、それ以前としてそもそも社会的にプラスチックの問題を語るためにも、まずは正確なデータが必要だと考えています。


近畿大学での学生時代を振り返って



公害化学研究会(現・化学研究サークル)メンバーとのお写真(昭和54年頃)
後列左から4番目が中口教授。


――ご経歴を伺うと、大学時代からずっと近畿大学一筋で来られています。まず近畿大学を志望された理由はどこにありましたか。

中口:私は富山県の出身でして。私が幼少期の頃、富山では四大公害とも言われるイタイイタイ病が流行っていた時期でした。そういった公害問題の現実を見ていたこともあり、環境問題には昔から関心がありました。また、勉強でも化学が得意だったこともあり、さらにこの領域を勉強したい、と思うようになりました。

そして、地元から外に出たいという気持ちから東京や大阪の大学を受験したのですが、「富山から出るなら東京よりも大阪だ」と思ったことが近畿大学に進学する決め手でした。

――当時はどんな学生だったのですか。

中口:実は勉強があまり好きではなく、それこそテストの度には友達のところで一生懸命勉強して乗り切っていたような学生で……それよりもサークル活動にいそしんでいました。
環境問題について考える「公害化学研究会(現・化学研究サークル)」というサークルがあり、一年生の時からそのサークルで活動していました。

近畿大学のそばに長瀬川という川が流れているのですが、その川の汚染を調べることがそのサークルの目的で、勉強よりもそういった環境分析に親しんでいた記憶があります。

ですので、大学時代の友達には、私が大学の教員をやっていると話すとびっくりされます。そのくらい勉強が好きでなかったという印象が残っているようでして……(笑)


大学で得た一生ものの財産、そして研究者の道へ



1984年ごろ、研究航海に一緒にでた北海道大学の学生さんとの記念写真。
右から3番目が中口教授。


――学生時代の一番の思い出や印象に残っていることを教えてください。

中口:友人ですね。学生時代を振り返ると、その時期に一生ものの友達を作れたなと思います。それはもちろん近畿大学で一緒に過ごした友達もそうですし、その後の研究で知り合った友人もそうです。彼らとのつながりは今でもあります。


東京大学所属の研究船白鳳丸。この船で学術研究航海に出られていた。

――研究で知り合った友人というのはどういうつながりの方なのでしょうか。

中口:博士課程の時に、自分が作った分析法を実際の海に適用するという目的で学術研究船に乗る機会がありました。その船は、東京大学所属の白鳳丸という船だったのですが、乗船中に同じような境遇の大学院生と多く知り合うことができました。まさに、「同じ釜の飯を食った」ということになるのですが、その友人たちと大変充実した研究航海ができたことが今でも思い出されます。その後、近大の教員(当時は助手)になるのを決めたのもこの研究船の経験からでした。


大阪湾で恩師平木敬三先生と一緒に研究を行う様子。

――人に恵まれた学生生活だったのですね。

中口:そうですね、もう一つ、研究者の道を志した理由としては、恩師や父親の存在があります。父は私が大学四年の時に亡くなったのですが、その父に「大学院を受験しようと思っている」という話をしたら、「大学院の修士課程に行くなら、博士課程まで進んで博士号を取りなさい」と、遺言ともなる言葉をもらいました。自分自身、まだまだ勉強不足だったという思いがあったので、もうちょっと勉強してみようと修士に進学しました。また、平木敬三先生という素晴らしい恩師に出会うこともでき、父の言葉もあったのでそのまま博士課程まで進みました。平木先生とは未だに年に数回お会いしていろいろな話をしています。今私がこの立場で近大にいるのも、当時の周りの人に恵まれてこそだったな、と思います。


海洋化学学術賞の賞状と一緒に、研究室には卒業生からの寄せ書きが多く飾られている。

――そうして教授となり、賞を取ったり後任の指導に当たられておられたりするのですね。

中口:実は今回の「海洋化学学術賞」という賞をいただけたのは、先ほどの平木先生にご助言いただけたことが大きいです。今では私が教える立場で学生を指導しているのですが、卒業生も本当にいろんなところで活躍してくれています。

例えば、福島の原発関係。具体的には放射能の分析や放置された放射能の状態を調査している卒業生もいますし、私と同じように学術研究船に乗る学生もいます。つい最近までうちの大学院生がその研究船に乗っていました。これらの卒業生が海洋や関連する分野で活躍していることを見ると、大変嬉しく思います。


手厚く学生のサポートをしてくれる近畿大学




――最後に、この記事を見てくださる皆さんへメッセージをいただければと思います。

中口:近畿大学は昔から学生へのサポートが手厚い大学でした。私たちの学生時代は特に生活へのサポートがすごく手厚かったです。寮を斡旋してくれ、食堂もリーズナブルな価格でした。本当に大学に助けられたと感じます。

その反面、設備はあまり良くなかった印象がありましたが、今では格段に設備が良くなっていて、学生はそれらを存分に利用できるようになりました。例えば文献調査も以前より遥かに簡単に行えます。今の近大は他の大学にも負けないぐらいの設備を持っていますし、ぜひ学生にはそれらを最大限活用してほしいと思っています。

また、近畿大学校友会には若い人にどんどん入ってもらいたいです。私は縁があって校友会の副会長を務めさせていただいていますが、若い世代の考えを取り入れ、校友会の在り方を時代に合わせたものにアレンジしていけるといいと思っています。また、私自身いろいろな校友会の総会に参加しており、年齢層がバラエティに富んでいるところはすごく活気があります。ですので、ぜひ若い人にこそ校友会に入ってもらいたいなと思います。校友会で得られる友人はきっと一生の財産になることでしょう。

取材・文:笑屋株式会社
写真:井原完祐
企画・編集:近畿大学校友会

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