2021.11.18
近大から起業家を増やすために。ベンチャー起業家×学生起業家対談
- Kindai Picks編集部
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近畿大学は学生起業家の育成に力を入れており、2025年までに100社の立ち上げを目指しています。今回は「近畿大学から起業家を増やすためにはどうすればよいか」をテーマに対談していただきました。
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湊 隆太朗(みなと りゅうたろう) 平成13年 理工学部建築学科(当時)卒業
すするか、すすらんか。 店長
西 奈槻(にし なつき) 農学部水産学科3年生
道端でばったり今の代表に会ったのが起業のきっかけ
写真左:湊さん 写真右:西さん
――まずはお二人の現在活動されていることについてお伺いさせてください。
湊さん
SaaS(※)モデルでiPadなどを使ったPOSレジシステムを提供している会社を運営しています。最初に作ったのが10年前、当時はiPadのレジはほとんどありませんでした。そこでプログラマの駆け出しの時にPOSレジを作った経験があったので、その経験をもとに手軽に使えるレジがあると便利だなと思い、「スマレジ」を開発しました。最近では様々な場面でiPadを使ったレジが普及しているのでイメージが湧くかと思いますが、レジのシステム以外にも飲食店であればオーダー管理だったり、勤怠管理だったりとかの事業サー ビスも展開しております。
(※)「Software as a Service」の略で、必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェアもしくはその提供形態のこと。
西さん
「すするか、すすらんか。」は学生が営むラーメン店で、店の看板メニューは「麻婆豆腐ラーメン」です。最初は友達の中でしか発信できなくて、どうやっていったらいいか何もわかりませんでした。そんな中、若者が結構来てくれて、若者が集まる場になっていったんですけど、大学生が店をやっているっていうのを皆さんに知ってもらって、そういうのに興味を持った大学生がたくさん来るようになり、交流会をしたりとか、普通のラーメン屋ではないような空間を作っています。今はそこに価値を見出してやっています。
近大生が始めたラーメン店「すするか、すすらんか。」は、若者の選択肢を増やすハブになる。
――お二人が起業されたきっかけを教えてください。
湊さん
スマレジは自分が起業した会社ではなく、今の代表に誘ってもらったことがきっかけで入社しました。先ほどPOSレジを作ったことがあったという話をしましたが、その時一緒に作ったのが今の代表でして。レジを開発した後、私は個人事業主としてシステム開発などを請け負う仕事をしていたのですが、たまたま歩いていると道端でばったり再会したことをきっかけに声をかけてもらい、一緒に働くことになりました。
西さん
2020年10月に僕ともう一人の近大生の2人で「jinniyah」という名前でオープンしました。コロナ禍ですごく暇だったからということで動き出して、たまたま店になったという流れです。麻婆豆腐が得意な友達がいて、その人に料理長になってもらい「麻婆豆腐と他何や?」ってなって、ラーメンでいいやん!っていう感じで麻婆豆腐ラーメンがほんとノリでできた店というのが最初です。右も左もわからないまま、このままでいいのかな? と思っていた中で、2021年6月、ビジョンを決めてちゃんと経営しようということでリニューアルして「すするか、すすらんか。」へ名前も新たにスタートしました。
起業という選択肢を脱マイノリティ化させていく
――現在、近畿大学は起業家を増やすチャレンジをしていますが、起業やサービスをはじめる上で近大生、近大卒業生であることをプラスに感じることはありますか。
西さん
自分がやっていることに対して共感してくれるし、「やわらかい」ですね。ストレートに応援してくれるのはうれしいですね。
湊さん
「起業して失敗したら」とリスクを感じる方も多いと思うので、私たち企業側としては不安を抱えている方たちに向けて、まずは短期間でもチャレンジできる機会を提供するなどバックアップできる環境があればと思います。大学側はそれに参画したいという企業とタイアップし、起業のリスクを減らす取り組みを行えば、自ずと起業を志す学生が増えるんじゃないかと。自分自身、学生時代に起業を考えたことはほとんどなかった様に思いますが、今は大学自体が起業に対して前向きに一緒に考えてくれているのがわかりますし、とてもプラスになると思います。
――そもそも起業の障害になっている原因は何だとお考えですか。
湊さん
大学に入って企業に就職できるチャンスもある中、自分で起業してうまくやっていけるかわからない。起業することで大手に入社できなくなる不安もあるだろうし、そもそも起業している人が割合でいうと少ない。起業している人が周りにいっぱいいれば全然ハードルは高くないだろうし、困ったら相談できるので、「起業してみよう! 」となると思う。でも周りがみんな就職するとなると、やっぱり引きずられるでしょうね。マイノリティ(少数派)になった後にリカバリーできるかなんてわからないし、今まで勉強してきたことが無駄になってしまうんじゃないかっていう不安もあるだろうし。社会人になって30代半ばで独立するような人と同じだと思うんですよね。
西さん
まさにその通りです。日本人はマジョリティ(多数派)が正しいと思うし、就職する人が多いとその選択肢しか僕ら大学生には見えていないと思います。就職しないっていう道を選ぶと、上の世代のほとんどの方は「危ないよ、安定する道に行け」と言われるので、自分たち世代は挑戦しにくくなっていますね。今の世の中と昔とで状況は変わっているのでもう少し社会を見て子供世代に言ってほしいなと思います。自分の目標は「日本の若者に選択肢を示す」というビジョンでやっているので、若者だけを変えても、親世代がそうだと状況は変わりづらいので、難しいですね。
――近大生、近大卒業生の起業家を増やすためにはどうすれば良いと思いますか。
湊さん
例えば就活や卒業のタイミングで起業となればリスクは高いと思うのですが、1・2年の時にトライしてみて自分が向いている、向いていない、うまくやっていけるかどうかを探りながら、就職の道も残しつつというのもありなんじゃないかと思いますので、そういう機会があれば良いのかなと。
西さん
普通は就職するために大学に入る人が多いと思うのですが、自分はあんまり就職する気がない中で大学に入ったという人間なので、非常にレアな存在なんですね。それでも自分がいざ起業したいと思った時、大学がすごくバックアップしてくれるっていうのをチャレンジしないと知れなかった。だから高校生ぐらいから知っておく必要があるかなって思います。
湊さん
実は先ほど代表とも話をしたのですが、起業へのリスクを感じるのがネックであれば、スマレジとして、何かあった時に近大生をバックアップすることも考えています。企業として近大とタイアップして取り組んでいきたいですね。
――最後に、お二人の今後の目標について教えてください。
湊さん
当社はSaaSモデルでサービスを提供している会社ですので、ユーザー様に長く使っていただけるよう開発・改善を行っています。そうすることでサブスクリプション収益を上げていき、月額利用料の年間計上収益50億円を目指しています。その後の目標は…、そうですね、なんば辺りで気軽に飲める様な立ち飲み屋をやりたいな、とか考えています。
西さん
「若者に選択肢を示す」ための手段として、「すするか、すすらんか。」をしているので、まずは自分が道を示すべきかなって思っています。若者にそういう道もあるんだと示す上で、自分が突き抜ける。これがステップ1で、ステップ2で巻き込む、自分がやってきた道に巻き込んでいく。そしてステップ3が拡大で、日本全国に拡大していく。日本の若者に影響力を持てるようになるっていうのが事業計画というか目標ですね。
取材・文:笑屋株式会社
企画・編集:近畿大学校友会
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