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近大人

2021.07.22

近大生が始めたラーメン店「すするか、すすらんか。」は、若者の選択肢を増やすハブになる。

Kindai Picks編集部

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農学部
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「学生の選択肢は就職一本ではないんだ、って伝えたい」。農学部水産学科3年生の西 奈槻さんは、2020年10月に、同級生の奥野 亮太郎さんとともに麻婆豆腐ラーメン店「jinniyah/奈KAMA(ジンニイヤ/奈カマ)」をオープンしました。その後、リニューアルオープンした「すするか、すすらんか。」では、一日店長やレシピ投稿企画「レシピ送るか、送らんか。」といった企画を通して、若者の選択肢を増やす活動に取り組んでいます。

奈良市の旧市街地である「ならまち」に、大学生だけで経営する麻婆豆腐ラーメン店「すするか、すすらんか。」はあります。このお店は、中川政七商店の中川淳会長による公開コンサルティングを経て、「日本の若者に“選択肢”を」というミッションをもって経営されています。友人や大学の協力のもと、次々と新しい展開を続ける、代表である農学部 水産学科 3年生の西さんに話をうかがいました。

西 奈槻(にし なつき)
近畿大学 農学部 水産学科3年
すするか、すすらんか。 オーナー/代表
2000年生まれ。奈良県橿原市出身。コロナ禍をきっかけに大学への通学がなくなったことから、2020年にラーメン屋「jinniyah/奈KAMA」を開業。そして2021年6月6日に同店を「すするか、すすらんか。」としてリニューアルオープン。


プロドラマーの道に挫折、入学と同時にやってきたコロナ禍




ーー西さんは近大附属高校に通っていたんですね。

そうです。授業でiPadを使っている先進性が、中学生の僕にとって、「面白い学校だな」と。近畿大学の「固定概念を、ぶっ壊す」というプロモーションにも興味をそそられましたね。

ーーどんな高校時代を過ごしたんですか。

プロドラマーを目指していました。ドラムを始めたのは小学6年のときでした。本気でプロを目指して、日本各地で演奏もしていましたね。

ーードラム、好きだったんですね。

違います、違います。

自分を表現したかったんです。ドラムが好きというよりは、自分の経験が演奏に表れて、お客さんに届く。僕のパフォーマンスで明日も頑張ろうと思ってもらえる。そうして、人を動かすのが楽しくて。

でも、その夢が打ち砕かれたんですね。アメリカへ渡って受けたオーディションでのことでした。会場には、僕よりも豊かに、巧みに自分を表現している人がたくさんいて。「ドラムの表現じゃ一番なれへんな」と。プロドラマーという道をあきらめたまま、どこかくすぶった気持ちの中で、2020年4月に近大へ入学したんです。



ーーどうして農学部 水産学科を選んだのですか?

最初のうちは、国際学部を目指していました。ドラムをやっていたときは、「世界での活躍」を視野に入れていたこともあって。大学入学前に、語学を学ぶためフィリピンへ2週間留学してみたんですが、「なんかちゃうな」と。

それでちょっと違う道を考え始めたときに、水産学科が浮かんできました。もともと釣りをする程度には、魚が好きだったんです。それに「近大マグロ」は、近大の代名詞になっていましたし。水産学科に行ったらなにか面白いことに出会えるんじゃないか、というなんとなくの期待もありました。

ーーということは、水産に強い興味があったわけでは……?

まったく、ないです。大学3年生からは水産経済学の研究室に所属しているんですけど、この研究室を選んだのも、勉強だけではなく、学外の活動に時間を多く割けるからという理由でした。ちなみに研究室を担当する多田稔教授には、僕らの活動を応援していただいています。「すするか、すすらんか。」にも、よく来てくださるんですよ。

ーーなるほど。そんな西さんは、2020年のコロナ禍をどのように過ごしてきたのですか。

自宅待機が始まって、授業は全てオンラインになって。で、暇だけが残る。やりたいことがなにも見つからなくて、くすぶってましたね。そうなったときに、人生について考えたんですよ。「このまま大学出たらどうするんやろ?」と。

近大を卒業すると、多くの人が「就職」をするわけですけど、就職って「誰かが用意した枠に入るもの」というイメージが強くて。僕はそれをやりたいわけでも、それに向いているほうだとも思えなくて。自分の生き方や働き方の選択肢を広げたくて、地元である奈良県橿原市の飲食店オーナーなどを訪ねて、働き方や生き方について話を聞いたんです。そして3人目に訪ねたのが、奈良市にある、イスラム教徒の人が安心して食べられる食材を使った、ハラルラーメンの店「Naramachi Jinniyah」でした。


奈良市の旧市街地「ならまち」に店を構える「すするか、すすらんか。」

ーー「Naramachi jinniyah」のオーナーさんとは、どんな話をしたんですか?

「コロナ禍の今だからこそ、なにかしたいんです。僕はなにから始めたらいいですか?」と質問しました。すると、「ここ継いで店やりや」と。このお店は2年間ほど休業していたのですが、調理器具も一通り揃っている状態で、居抜きのままお借りできるという話でした。で、その場で答えたんです。

「やらせてください」。

ただ、僕は料理ができません。そこで、店を出た瞬間に電話をかけたんです。

相手は、近大で出会った友人の奥野 亮太郎でした。彼は同級生の中でも自炊をよくしていて、中でも麻婆豆腐にはこだわりを持っていたんです。

僕が「飲食店やらへん?」と誘うと、奥野は「よし、やるわ」と即答。西 奈槻の「奈」と奥野のニックネームである「カマキリ」からもじって、「jinniyah/奈KAMA」と店名を改めてオープンしました。


広報は西さん、奥野さん二人で担当。奥野さんの料理を撮影し、SNSに投稿する西さんの様子。

ーー西さんは、もともと飲食店に興味があった?

違います。ほんまにたまたまですね。僕にとっては、ドラムも飲食店も、自分を表現するための手段なんです。だから、もし「書店やらへん?」という誘いをいただいていたとしても、僕は「やらせてください」と、首を縦に振っていたと思います。

ーーどんな気持ちで、オープンを決めたんですか?

決意はありませんでした。とりあえずやってみよう、と。覚悟も思いもなくて、とりあえずやってみたかった。目の前にチャンスがあって、「やるか、やらんか?」。それだけだったんです。


やるか、やらんか、やるか! 店を引き継ぎオープン




ーー2020年10月の「jinniyah/奈KAMA」オープンから、どんなことを心がけてきましたか?

右も左もわからなくて毎日手探りだったんですけど、オープンにあわせて友達に「食べに来てくれへん?」と連絡をしまくって。最初の2日間で180人が来てくれたんです。友達がさらにその友達を呼んでくれて……と「奈KAMA」の輪が広がっていきました。

また、麻婆豆腐ラーメンという、それまで奈良県にはなかった新ジャンルの料理で勝負できたことも大きかったと思います。


豆板醤や豆豉(トウチ)などの複雑な辛味を鶏ガラスープのコクでまとめた麻婆豆腐ラーメン「革命物語」950円。

そうした話題性も手伝って、NHKの情報番組や『報道ステーション』を始め、さまざまなメディアに出演する機会を得ました。そのときどきでやるべきことを全力でやってきましたね。

そんな中、中川政七商店の中川淳会長による公開コンサルティングを受けることになりました。

とにかく色んな人に会うことを心がけていく中で、中川さんとも知り合えて。コンサルティングのご提案をいただいたんです。そこが、のちのリニューアルにつながる分岐点でした。

ーーコンサルティングの場では、どんな話をしたんですか。

どんなコンセプトのもとで、なにをしていくのかを改めて考え、言語化することになりました。

奥野とともに、思いをひたすら中川さんにぶつけ続けたんです。すると、中川さんから「色々なことに手を出しすぎている」と言われました。それまで、僕は自分のことをエンジンしかない人間だと思っていました。一直線に突っ走ってきたつもりだったんですが。

東京・代々木上原でフレンチレストラン「sio」を営む鳥羽周作さんからアドバイスをいただく

ーー一直線に走ってきたつもりで、どんな風に色んなことに手を出していたんでしょう?

公開コンサルティングをしていただく前からお店のコンセプトはあったけれど、芯がコロコロ変わっていたんです。「学生がお店をつくりたい」「奈良で一番有名になりたい」「学生がつくる日本で一番の店になりたい」…… 。つまり、結局なにになりたいのかが、言語化できていなかったんです。だから蛇行しまくりで、一直線に走りきることができていなかったんです。

コンサルティングの中で、僕は繰り返し「日本の若者がなんだか楽しくなさそうや」と話していました。その背景にあったのは、「卒業後は就職せなあかん」という空気感でした。もし第2、第3の選択肢が見えたら、人生の幅が広がって、日本がもっと楽しくなるんじゃないか。

そうやって「日本の若者に“選択肢”を」というビジョンが生まれました。


選択肢を増やす場をつくる。「すするか、すすらんか。」という挑戦




ーー2021年6月6日に、「すするか、すすらんか。」としてリニューアルを果たしますね。店名の由来を聞かせてください。

「jinniyah/奈KAMA」をオープンして以来、学生からの悩み相談を受けることが本当に多くて。中には、事業計画書を片手に相談にくる人もいました。けれど、どれだけ時間をかけて準備しても、結局のところはやってみないとわからないんですよね。それで、毎回口癖のように言うんです。「結局やるか、やらんかやで。」その言葉にちなんで、リニューアルのタイミングにあわせて店名を改めました。

ーー「すするか、すすらんか。」ではどんな活動をしていますか?

第一に、「日々おいしい麻婆ラーメンをつくり、繁盛店にしていく」ことです。そして、「日本の若者に“選択肢”を示す」ための企画も始めました。

ーーどんな企画ですか?

「レシピ送るか、送らんか。」といいます。若者にレシピを投稿してもらい、その中から優れたレシピをお店のメニューとしてお客さんに提供します。選ばれて次のステップへ進んだり、選ばれなくてもまた投稿する。そうやって気軽に挑戦できる場を目指しています。


「レシピ送るか、送らんか。」で誕生した7月の限定メニュー「冷製ゆず餃子」

ーー西さんは、以前に出演したTV番組で「料理はYouTubeで修行した」と話す姿が印象的でした。

隠しても意味ないですよね、それが自分だから。長年料理の道を極めてきた人には当然勝てません。そして僕らを否定したがる人もいっぱいいます。でも、そんなの関係ないと思ってて。そうやって可能性を潰してしまう社会だから挑戦しにくくなっているわけで。僕にとって料理は、人の心を動かすための手段です。だからこそ、新しい道を示したい。

ーーこれまでたくさんのチャレンジを続けてくる中で、苦労や失敗もしてきましたか?

ずっと失敗し続けています。きっとみなさんが思っているほどにはお客さんが来店していないし、コロナ禍には振り回されっぱなしです。失敗と言えば失敗なのかもしれません。でも、そんなんも、やってみてはじめてわかるっすね。



ーー今、力を入れているプロジェクトはありますか?

自分の道を見つけて進んでいく人をどんどん増やしていきたい。そのために取り組んでいるのが、「巻き込むプロジェクト」です。

ーー「巻き込むプロジェクト」?

学生を対象に一日店長を募集しています。一緒に店に入ってもらいながら、僕や奥野と話すことで、自分の選択肢を広げるきっかけをつくってもらいたくて。それから「選択肢広げるか、広げやんか。」というプロジェクトにも取り組んでいます。これは、学生と飲食店さんが協力して、11月に開催予定の食のイベントで、出店までをやりきるというものです。



ーー在学中の目標はありますか?

もっと多くの学生にとっての受け皿をつくりたい。そのために考えているのが、学生が主体で経営する店舗を出すことです。全国に「すするか、すすらんか。」のような形態の飲食店を出店したいですね。

ーーその背景にはどんな思いがあるのでしょうか。

「学校ぐらい出とかな」「行かなあかんから」。そうした後ろ向きな理由から大学や専門学校へ進む学生たちも少なくありません。若者が社会への手がかりをつかめる手段があちこちに転がり落ちているような、もっと色々なかたちでアウトプットできる場が求められていると思います。



ーー最後に大学生に向けて一言、お願いします。

これからの日本をつくっていくのは僕ら若者で。今は「しないといけない」という感情で就職を焦る人が多いかもしれませんが、本当はもっと世の中は自由で、若者自らがどんどん新しい道や価値観をつくっていけるんです。もっと自由に選択をして、もっと自由に生きようとする人が増えたら、もっと楽しい日本になるかなと思います。


7月25日のオープンキャンパスに「すするか、すすらんか。」が出店!

さて、西さんと奥野さんの話はいかがでしたか?二人の話を聞いていると、こちらも元気をもらい、自分でも何かをはじめたくなります。次々と新しい展開にも注目ですね。

そしてなんと!2021年7月25日のオープンキャンパスに出店が決まりました!

近畿大学オープンキャンパス2021「行けたら行くわキャンパス 〜やれるだけやります〜」

営業時間は10:00〜18:00(LO17:00)、場所はBLOSSOM CAFÉにて。

覚悟と行動力をもって進んでいく学生の情熱が、麻婆豆腐ラーメンをいっそうおいしいものに仕上げています。ぜひ食べ逃しなく!


取材・文・写真:大越はじめ
編集:人間編集部

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