2024.03.19
純利益800万円達成!大学内で学生が経営するラーメンベンチャー「近大をすすらんか。」二代目と三代目が目指す未来
- Kindai Picks編集部
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近畿大学東大阪キャンパスにあるラーメン屋「KINDAI Ramen Venture 近大をすすらんか。」をご存じですか? 実はこのお店、近大生が経営しているんです! 2021年10月にスタートした学生飲食店起業支援プロジェクトで、経営者は1年ごとに交代。予想を上回る黒字を達成した二代目経営者から、三代目へとバトンをつなぐ心境を伺いました。
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近大生がキャンパス内にラーメン屋を起業・経営することで実践的な飲食店経営を学び、卒業後の事業展開や新たな起業を目指すことを支援する、学生飲食店起業支援プロジェクト「KINDAI Ramen Venture 近大をすすらんか。」。フードコートやコンビニエンスストアを併設する多目的学生ホール「BLOSSOM CAFÉ(ブロッサム カフェ)」の1階に店舗を構えています。
経営者となる学生は、1年ごとに公募で選出。所属学部は関係なし。経営の知識がなくても、意欲のある学生ならば誰でも応募することができます。
事業計画のプレゼンテーションやラーメンの試食審査を通過して代表に選ばれた学生は、メニュー開発やアルバイトの募集、シフトや金銭の管理などの全ての業務に関わり、飲食店の経営者として必要なさまざまなことを学んでいきます。身につくスキルや経験は、卒業後すぐに自分のお店をオープンできるほど実践的で実用的なものばかりです。
この春に大学を卒業し、自身のラーメン屋を開業する二代目経営者の村上黎一郎さんと、新しく経営を引き継ぐ三代目経営者の前田凛多朗さんに、学生飲食店起業支援プロジェクト「KINDAI Ramen Venture 近大をすすらんか。」の魅力や将来の夢について語っていただきました。
学生の起業家精神を育む実践型プロジェクト、気になる活動内容とは
ーーまずは自己紹介をお願いします。
村上さん:総合社会学部総合社会学科社会・マスメディア系専攻4年の村上黎一郎です。2023年4月から1年間「近大をすすらんか。」の経営者を務めました。
前田さん:国際学部国際学科グローバル専攻3年の前田凛多朗です。僕は村上くんの下でアルバイトをしていて、そこで興味をもって三代目に応募しました。よろしくお願いします。
二代目代表の村上黎一郎さん
ーーお2人とも、経営や起業について学ぶ学部ではないのですね。「KINDAI Ramen Venture 近大をすすらんか。」には、どんなきっかけで興味を持ったのですか?
村上さん:初代経営者の西くん(大学院実学社会起業イノベーション学位プログラム1年の西奈槻さん)と1年の時にフットサルの団体で一緒になって、この活動を知りました。僕が入学した時はコロナ禍の真っ最中で、入学式もなく、授業はオンライン……。
思い描いていた学生生活が送れないまま3年になり、就職活動をはじめようと思った時に、面接で話せることが何もないことに焦りを感じて。西くんに相談したところ、「このプロジェクトを手伝ってみないか?」と誘ってくれたんです。そこから経営に興味を持ち、二代目に応募したという感じです。
前田さん:僕は外資系企業に就職するために国際学部に入学したのですが、いつか海外に自分のお店を出したいという夢もあって、その勉強のために応募しました。村上くんとは近畿大学附属高等学校のサッカー部で一緒だったこともあり、アルバイトとして声をかけてもらったのが最初のきっかけですね。
三代目代表の前田凛多朗さん
ーー村上さんは実際に1年間やってみてどうでしたか?
村上さん:想像以上に大変でした。特に最初のうちは、アクシデントも多く……厨房が水漏れしてしまったり、用意していた食材が足りなくなって急遽コンビニに買いに走ったり。そのときは焦りましたが、そのような経験を重ねて、余裕を持った営業ができるようになったと思います。いつの間にかしんどさよりも楽しさや充実感が上回っていましたね。
2023年4月5日放送、関西テレビ『newsランナー』の密着取材の様子
NEWRON株式会社と共同開発した期間限定メニューの「桑茶ジェノベーゼ風まぜそば」
ーー初代とはどのような違いを意識して活動されましたか?
村上さん:外回りの営業が得意だった初代と比べると、僕は店に立ってスタッフを指導したり売り上げの管理をしたりすることが多かったですね。毎日店に立っていたので、必要なスタッフの人数を把握したり、仕入れの調整がしっかりとできたことはよかったと思っています。
あとは、何度もお客さんに足を運んでもらうために、2週間に一度、期間限定メニューを考えて販売していました。一番人気だったのは、ガツンとパンチのきいたジャンキーさが売りの、ガリマヨまぜそばでしたね。他にはボロネーゼやジェノベーゼといったパスタのようなまぜそばを作ったり、ブラックペッパー風味も人気でした。
初代を超える営業実績を記録! 経営者になったからできた経験の数々
ーー売上も順調だったと伺っています。手ごたえは感じていましたか?
村上さん:おかげさまで、初代を超える売上と杯数を出すことができました。「赤字でもいいからできる限りのことをしよう!」と思ってやっていたので、黒字だったことにびっくりしましたね。「KINDAI Ramen Venture 近大をすすらんか。」プロジェクトは四半期ごとに決算報告をするんです。そこで2期連続で赤字経営になった場合は撤退しないといけないので、最後まで完走できて安心しています。
4月〜1月までの売上の比較
初代 2022年4月〜2023年1月 |
二代目 2023年4月〜2024年1月 |
|
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総売上 | ¥12,716,750 | ¥17,907,830 |
売上総利益 | ¥8,274,477 | ¥12,434,582 |
販売費および一般管理費 | ¥4,532,146 | ¥4,433,492 |
営業利益 経常利益 税引き前純利益 |
¥3,742,331 | ¥8,001,090 |
初代と二代目の同期間の売上比較(初代経営者は経営期間1年6カ月あったため、総売上合計は19,628,600円、純利益合計は6,306,414円)
学生経営のラーメン店「KINDAI Ramen Venture 近大をすすらんか。」 初代店舗の決算を発表
ーー日々経営と向き合って感じた、よろこびと苦労を教えてください。
村上さん:よろこびは、トライ&エラーを繰り返しながら経営者としてのマインドや能力を身につけられたことですね。特に経営者の方々と横のつながりができたことは、大きな財産です。飲み会でアドバイスをいただいたことも、一度や二度ではありません。
経営者の方と交流するために、ゴルフもはじめました。みなさん、初心者の僕に対して容赦がありません。僕のことを大学生として扱うのではなく、一人の経営者として接してくださったことがうれしかったですし、背筋が伸びる思いでした。
苦労したことは、遊びに行けなくなったことですね(笑)。どんなに二日酔いがつらくても、出勤しないといけない。でも、1年間一度も寝坊も遅刻もしなかったことは自信につながったと思います。
ーーこの話を聞いて、前田さん、どうですか?
前田さん:僕も積極的に近大を飛び出して活動したいなと思いました。僕はもともと寝坊も遅刻もしないタイプなので、大丈夫だと思います(笑)
売上の話を聞いた時は、ただただすごいなと感心してしまいました。プレッシャーも大きいですが、目標は高く、村上くんを超えていけるよう頑張ろうと気合が入りました!
次世代へ引き継がれる思い。三代目の描く新ビジョンで、近大から世界へ!
ーー前田さんは三代目代表選考会を勝ち抜いて三代目に就任されましたが、どのような点が評価されたと思いますか?
前田さん:ラーメンのクオリティはもちろん、制限時間内にきちんと調理を終わらせた部分が評価されたと思っています。アルバイトで1年間現場を見てきた経験を生かして、追い飯の無料提供など、食品ロスに関する提案ができたことも大きいと感じました。
ーーこれからどのようなお店にしていきたいか、ビジョンはありますか?
前田さん:利益追求を大切にしつつ、加えて「人を想う営業」を掲げてやっていきたいと思っています。そのために、自身の成長とともに人材育成にも力を入れていきたいです。
ーー2人は高校時代からの仲ですが、お互いにどのような印象を持っていますか?
村上さん:僕たちは結構違うタイプだと思いますね。前田くんは僕よりも初代の西くんに近いんじゃないかな? ずっと店に立つよりも、外回りをする方が向いている気がします。
前田さん:営業活動は積極的にしたいと思っています。店の基盤はこの1年で村上くんが作ってくれたので、僕はもっと世間に露出していく活動をしたいですね。イベントやメディアに、どんどん出たいです!
厨房で試作品を作る二代目料理長
前田さん:村上くんは、スタッフに対する接し方がうまくて、オンとオフの切り替えができてすごいなと思っていました。みんな年が近いこともあり、どうしても意見がぶつかったり気が緩んでしまったりするときがあるんです。そんなときでもきちんと言うべきことは伝えていて、さすがだなと。僕はうまく指導できるのか、まだ自信がないですね……。
村上さん:僕も注意するのはしんどかったですよ。でも、見て見ぬふりをするのが一番よくないので、そこは心を鬼にしていましたね。店では厳しいことを言っても、勤務が終わって店を一歩出たら、「ちょっと飲んで帰ろうや」と友達として接する。そこは意識して自分も気持ちを切り替えていました。
前田さん:参考になります! 僕もきちんと指導しつつ、スタッフのみんなにどんどん任せられるリーダーになりたいです。
卒業後は新店舗をオープン! 誰かの「夜明け」になるようなラーメン屋を目指して
ーー村上さんは卒業後、新たにラーメン屋を立ち上げるんですよね。新店舗について教えてください。
村上さん:2024年3月25日に寺田町にラーメン屋「麺や aube(オーブ)」を開業します。aubeはフランス語で「夜明け」を意味します。僕の名前でもあり、夜明けの意味のある「黎明(れいめい)」からとって、「暗闇を明るく照らしていく存在」になりたいなと思い名づけました。
20代前半の若さを生かして、お客さんに活力を与えられるお店にしたいなと思っています。僕自身が元気に幸せに過ごしていたら、他のスタッフやお客さんにも伝染すると信じているんです。だから、日々どんな出来事も楽しみながら営業していきます!
メニューもニンニクを使ったガツンと元気が出るものなので、ぜひ近大生のみなさんにも食べに来てほしいです。昼はラーメン、夜はサイドメニューを増やして居酒屋のような雰囲気のお店にしていきたいなと計画中です。
「麺や aube」の看板メニュー「スタミナホルモンラーメン 黒(醤油)/白(塩)/赤(辛)」(税込900円)。醤油、塩、辛スタミナの3種類から選べる。ニンニクのきいた野菜とホルモンのあんかけラーメン
寺田町はラーメン激戦区。簡単な道のりではありませんが、僕の挑戦する姿を見せることで、後輩たちに勇気を与えられたら。
たとえ失敗しても助けてくれる人がいることをこの1年で学んだので、怖くはありません。しっかりと義理を通していれば、見てくれている人は必ずいます。
希望を与える存在になれるよう頑張るので、ぜひ応援してください!
麺や aube公式Instagram
ーーこれから目指したいリーダー像があれば、教えてください。
前田さん:人がたくさんついてきてくれる経営者になりたいです。僕は「近大をすすらんか。」との出合いが、人生の分岐点になったと感じていて。だから僕と関わってくれる全ての人の人生をよい方向に変えていくような、そんな大きな存在になりたいです。もちろん、売り上げでも初代と二代目を超えられるように「うまい・やすい・はやい」を掲げて頑張ります!
村上さん:人との縁を大切に、好きな人たちとみんなで幸せになっていける人を目指しています。
実は、春に寺田町にラーメン屋をオープンするのも、人とのご縁で実現したんです。よい物件が見つからずに一度はラーメン屋を諦めて割烹料理屋で修行をしていたのですが、別の飲食店でアルバイトをしていた時のお客さんが「ラーメン屋をするのによい物件が空いた」と連絡をくれて。とてもうれしかったですし、ありがたかったです。
僕はいつかアットホームな居酒屋を作ることが夢なんです。そのためにラーメン屋をはじめいろんな事業に若いうちにチャレンジしたい。大好きな飲食業に関わるために、これから頑張っていきたいです。
ーー最後に、お互いにエールをお願いします。
村上さん:1年間僕の背中を見ているので、心配はしていません。自由に好きなように活動してください。
前田さん:村上くんを超えられるように頑張ります! 新しいお店にも食べに行きます! これからも応援しています。
ーー村上さん、前田さん、ありがとうございました。
お互いの健闘を祈って、握手!
知識を得るだけでなく人として成長できる場所、それが学生飲食店起業支援プロジェクト「KINDAI Ramen Venture 近大をすすらんか。」。興味のある人はぜひ、来年度の応募に向けて行動してみてくださいね。近大生の仲間とともに働くアルバイトも募集中です!
近大をすすらんか。公式Instagram
二代目の最終営業日は3月24日のオープンキャンパス!
3月24日(日)に開催されるオープンキャンパスが、二代目経営者・村上さんによる最後の営業日。村上さんと前田さんが揃って店に立つのはこの日が最後なので、ぜひ2人の勇姿を見に、みなさんオープンキャンパスに遊びにきてくださいね。おいしいラーメンを作って、お待ちしています。近畿大学オープンキャンパス2024
文:おにしみなこ
撮影:西島本元
編集:人間編集部
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