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2020.12.22

どうして「過呼吸(過換気症候群)」になるの?対処法とパニック発作やストレスとの関係

Kindai Picks編集部

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医療
過呼吸
過換気症候群
ストレス

不安や緊張を感じたときに、突然息が吸いにくくなったり、呼吸が早くなったりしたことはありませんか? それは、過換気症候群による症状かもしれません。息苦しさが続いて不安が増すと、さらに呼吸が早くなってさまざまな症状を引き起こすため、適切に対処することが大切です。そこで今回は、 近畿大学メディカルサポートセンター准教授の藤本美香先生のお話をもとに、過換気症候群の原因や対処法、予防法など、不安を和らげるために知っておきたいことをまとめました。

▼関連リンク 近畿大学メディカルサポートセンター|過換気(過呼吸)症候群について

藤本 美香(ふじもと みか)

医師/博士(医学)/近畿大学 メディカルサポートセンター 准教授(センター長代理)

健康教育、食育、内分泌・代謝疾患、糖尿病、病態栄養学、老年医学が専門。大学生からの健康教育、食育、栄養教育に努めている。

近畿大学メディカルサポートセンター
近畿大学病院



息苦しさだけじゃない。過換気症候群で見られるさまざまな症状



私たちは通常、1分間につき12~20回程度の規則正しいリズムで呼吸をしています。寝ているあいだの無意識な状態でもきちんと呼吸が行われるのは、脳の最下部に位置する延髄(えんずい)にある呼吸中枢が呼吸をコントロールしているため。この呼吸中枢の働きによって、通常は意識することなく自然な呼吸が繰り返される一方で、自分の意志で息を吸ったり吐いたりすることもできます。

そして、過換気(過呼吸)とは、その呼吸のリズムが速く・短くなって強い息苦しさを感じ、焦って激しく息を吸ったり吐いたりする状態のこと。過換気によって引き起こされる一連の症状を過換気症候群(過呼吸症候群)といいます。特に10~20代の若い女性に多く見られますが、男性や高齢の方にも起こります。

過換気症候群の症状はさまざまですが、主に次のようなものがあげられます。

器官主な症状
呼吸器・窒息しそうな息苦しさ(呼吸困難)
・呼吸が速くなったり荒くなったりする  など
神経・手足の先、口まわりのしびれ感
・めまい
・吐き気  など
循環器・動悸
・胸の痛み
・頻脈  など

ひどくなるとけいれん意識の消失を招くこともありますが、基本的には時間の経過とともにおさまり、命に関わることはありません


几帳面な人や心配性な人、緊張しやすい人は特になりやすい




こうした過換気症候群の症状は、どのようなときに出やすいのでしょうか。多いのは、不安や恐怖、緊張などの精神的なストレスを感じたとき。そのため、几帳面な人や心配性な人、緊張しやすい人に起こりやすいといわれています。

また、激しい運動をした後や、睡眠不足が続いて疲れがたまっているとき、熱が出たときなど、肉体的ストレスが引き金となることもあります。

過換気症候群の主な原因
・精神的ストレス……不安、恐怖、緊張 など
・肉体的ストレス……激しい運動、疲労、発熱 など

そもそも、なぜ激しく息を吸ったり吐いたりを繰り返すと、さまざまな症状が現れるのでしょうか。それには、二酸化炭素が過剰に排出されることが関係しています。



私たちは、呼吸によって酸素を体内に取り込み、二酸化炭素を排出しています。その2つの気体の交換は肺にある「肺胞」で行われていますが、過換気になると二酸化炭素が呼気中に多く出され、血液中の二酸化炭素が減って血液がアルカリ性に傾いてしまいます。この状態を呼吸性アルカローシスといい、これによりさまざまな症状が引き起こされます。

例えばけいれんや手足のしびれは、呼吸性アルカローシスによって、筋肉の収縮や神経伝達などに関わるカルシウムイオンが減ることで起こります。また、脳血管の収縮を招いて脳の血流量が減り、意識障害や失神などが起こることもあります。


紙袋を使った対処法で、酸素不足を引き起こすことも



では、もし突然発作が起きたら、どう対処すればいいのでしょうか。

以前よく用いられていたのは、ペーパーバッグ法という紙袋を使った方法です。血液内の二酸化炭素の濃度を上げるために、紙袋を口と鼻に当て、自分が吐いた息をそのまま吸い込みます。ただし、この方法では酸素濃度が低下し、二酸化炭素濃度が過度に上昇する可能性もあるため、現在は推奨されていません。



対処法としては、まずはラクな姿勢をとり、呼吸を正常なリズムに戻すことが重要です。ポイントは、「息を吸う:息を吐く」という動作を「1:2」の割合で行うこと。息を吸うときより息を吐くときに時間をかけます。口をすぼめて小さく長い呼吸をするようにして、腹式呼吸を意識するとよいでしょう。

そして、不安な気持ちは症状をさらに悪化させるため、心を落ち着かせることも大切です。「このまま死んでしまうのではないだろうか」と思うほど苦しい状態が続くと、とてもつらいものですし、慌てたり焦ったりするかもしれません。けれど、過換気症候群の症状だけで命を失うことはありませんし、重い後遺症が残ることもありません。ある程度の時間が経てば必ずおさまることを忘れないでおきましょう。

近くにいる方が発作を起こした場合も、冷静な対処が求められます。過剰に心配したり、大げさに反応したりすると、本人はますます不安になって症状が悪化する可能性があります。ゆっくり静かな声で話しかけながら、背中をさすったり、トントンとやさしくたたいたりするとよいでしょう。本人と向かい合い、お手本代わりにゆっくり呼吸しながら一緒にリズムを整えていくのもよい方法です。


パニック障害などほかの病気との関連は?


過換気症候群は、非発作時には検査で特に異常がなく、発作時に動脈血の酸素と二酸化炭素濃度を調べることで診断されます。過換気は、ほかの病気が原因で起こることもあり、その場合は原因となる病気を治療することで症状が改善されます。

過換気症候群と見分ける必要のある病気は以下の通りです。

①肺疾患
肺炎、肺水腫、急性呼吸窮迫症候群、肺塞栓症、気管支喘息、気胸

②心血管障害
心不全、ショック

③代謝性疾患
代謝性アシドーシス(腎性、乳酸性、糖尿病性)、肝不全、甲状腺機能亢進症

④脳神経疾患
脳腫瘍、髄膜炎、脳炎

⑤薬物

⑥その他
発熱、敗血症、強い疼痛、パニック発作、高地(標高の高い土地)  など
※ 吉澤篤人、杉山温人編『レジデントのための呼吸器内科ポケットブック』中山書店、2012より引用

このように、過換気を伴う病気はさまざまです。もし気になることがあれば、医療機関を受診して医師に相談しましょう。

過換気症候群と同じく検査で異常が発見されない病気として、パニック発作を伴う「パニック障害」があげられます。こちらも突然起こり、動悸やめまい、窒息感、吐き気などの症状が現れます。死を意識するほどの強い発作が起こり、自分ではコントロールできません

また発作が起きるのではないかと怖くなり(予期不安)、発作を招きやすい場所や状況を避けるようになって(広場恐怖)、日常生活に支障を来します。うつ症状を伴うこともあります。なお、パニック発作は、閉所恐怖症の方が狭い空間から出られないときなど、パニック障害でない方にも見られます。

パニック障害では、薬物治療と認知行動療法などの精神療法を併用し、発作を抑えるアプローチを行っていきます。専門の医師による治療が必要となるため、予期不安や広場恐怖に心当たりがあり、不安感が非常に強く発作を繰り返しているなどの場合は、心療内科や精神科、神経科で相談してみましょう。


ストレスをできるだけ避けて、発作を予防する




過換気症候群を防ぐうえでは、原因となる精神的・肉体的ストレスをなるべく避けることが重要です。ストレスを完全に排除することは難しいかもしれませんが、無理のない生活を送り、おいしいものを食べたり好きな音楽を聞いたりして、リラックスできる時間を意識して持ちましょう

また、普段から、発作が起きたときに備えて呼吸を整える練習をしておくのもよい方法です。呼吸が落ち着けば、つらい症状は必ずおさまります。自分自身が過換気の発作を起こしたときも、周囲の人に起こったときも、まずは気持ちを落ち着かせて適切に対処することがとても大切です。


文:藤田 幸恵
イラスト:にしむらみう
企画・編集:人間編集部

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