2023.11.20
国民的応援歌『愛は勝つ』 KANさんが公表していた『メッケル憩室がん』とは?近畿大学医学部講師がわかりやすく解説
- Kindai Picks編集部
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メッケル憩室がんで闘病生活を送られていたシンガーソングライターのKAN(本名:木村和)さんが、2023年11月12日、61歳で亡くなられました。今年の2月にメッケル憩室がんと診断され、3月以降は演奏活動を休止し、療養生活を送っていたと発表されています。日本国内でも非常に症例が少なく、発見も難しいメッケル憩室がんについて、どのような病気なのか、近畿大学医学部医学科の河野匡志先生に詳しく聞きました。
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――Q、メッケル憩室がんとはどのような病気なのでしょうか?
河野:メッケル憩室とは、内臓の外側に飛び出た袋状の突起物が小腸の壁の一部にできたもので、大腸と小腸のつなぎめのようなところが少し窪んでおり、出産の際に胎児と母体を結んでいる卵黄管が、出産後に残ってできる場所のことをさします。先天的にある方が多く、割合としては1〜2%の方にあると言われています。メッケル憩室がんとは、そこにできる悪性腫瘍のことを指し、メッケル憩室を持っている方の中でも、約3%にしか腫瘍ができない非常に稀な事例です。
――Q、初期症状ではどのような症状が出てくるのでしょうか?
河野:病変が小さければ自覚症状がない可能性が高いです。ただ大きくなると腸が塞がる腸閉塞(へいそく)を来たすことがあり、強い痛みとともに腹痛や嘔吐、下血を認めることもあります。
KANさんが3月に病気を公表した際「昨年(2022年)秋に発症した腹痛が数週間継続したので病院に行き、検査を繰り返すうちにだんだん深刻な雰囲気になり、大きな病院に移って、更に多様な検査の後、組織摘出手術を行い、病理検査の結果、2023年2月、『メッケル憩室癌』と診断されました」と説明されており、診断するのに非常に苦慮したと考えられます。
――Q、日本国内での発症件数と海外での事例について教えてください
河野:手術して初めてわかることが多く、国内では過去に30件前後、海外では40件前後の事例が報告されています。
――Q、発症リスクに、男女差はありますか?
河野:メッケル憩室がんは非常にまれながんであり、発生頻度が低いため、統計的な傾向が明確に把握されていません。そのため男女差についても解明されていません。
――Q、メッケル憩室がんは、どのような検査で発見されるのでしょうか?
河野:メッケル憩室がんの診断は、CTやMRIなどの画像検査、アイソトープ検査、腸管動脈造影検査、小腸内視鏡検査、試験的開腹術などを組み合わせて行います。解剖学的な位置関係から、メッケル憩室がんの早期診断は非常に困難です。カプセル内視鏡やダブルバルーン小腸内視鏡などの小腸の検査方法も徐々に進歩はしていますが、大学病院のような大きな病院でしかできないことも多く、一般化しているとはいい難いです。そのため、一般的な検診で見つけることはまず不可能に近いと考えられます。
――Q、メッケル憩室がんを発症した場合、一般的にどのような治療が行われるのでしょうか?
河野:見つかった時には既に進行していることも多いため、治療の原則は外科手術と考えられています。しかし、根治術が困難な症例も多く、化学療法の選択肢もありますが、確立されたものはないため、今後の症例の蓄積が待たれます。
――Q、メッケル憩室がんは、基礎疾患の有無や、生活環境によりリスクが高まるがんなのでしょうか?
河野:メッケル憩室がんは非常にまれながんのため、基礎疾患の有無や生活環境によるリスクについては解明されていません。
――Q、メッケル憩室がんにならないために、日常生活の中で気をつけるべき点を教えてください。
河野:メッケル憩室がんは非常にまれながんのため、日常生活におけるリスクについては解明されていません。しかし、メッケル憩室がんに限らず、どのような悪性疾患でも、早期診断早期治療が有効ですので、腹痛や下血など気になる症状があれば、すぐに病院で精査することをお勧めします。
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