2021.11.25
今年は大流行する?ワクチンは受けたほうがいい?インフルエンザ最前線2021
- Kindai Picks編集部
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2020年はあまり耳にしなかったインフルエンザの流行ですが、日本感染症学会からは「2021-2022年シーズンもインフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨する」という発表がありました。今シーズン、インフルエンザは流行する?新型コロナウイルス感染症とのかかわりは?などの疑問点を、近畿大学医学部教授であり感染対策室室長の吉田耕一郎先生に聞きました。
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吉田耕一郎(よしだ こういちろう)
医師/博士(医学)/近畿大学医学部教授/感染対策室室長
専門:感染症、深在性真菌症、院内感染対策
感染症の診断と治療、特に真菌による感染症を研究。抗菌薬耐性菌対策など、院内感染対策についても実践。
近畿大学医学部内科学教室 呼吸器・アレルギー内科部門
近畿大学病院
2021年度、インフルエンザの流行はある?
Q. 昨年(2020年)は「インフルエンザ」にかかったという声をあまり聞かなかったのですが実際の状況はいかがでしたか?。
2020/2021のシーズンは国内のインフルエンザ患者さんの発生報告はほとんどなく、インフルエンザの流行はみられませんでした。
Q. インフルエンザが流行しなかった理由として考えられることはありますか?
新型コロナウイルス感染症の予防策として、国内、および外国との人の交流が抑制されていたこと、冬季に例年行われてきた忘年会や新年会が行われなかったこと、年末・年始の帰省が行われなかったこと、マスク装着、手指消毒、いわゆる3密の回避などが実践されたことが大きな要因であったと思われます。
また、インフルエンザウイルスとSARS-Cov-2(新型コロナウイルス感染症のウイルス)との間に、1つのウイルスに感染していると別のウイルスに感染しにくくなる【ウイルス干渉】がおこった可能性もあるといわれています。
Q. 昨年(2020年)に流行しなかった分、今年(2021年)は大流行するという噂を聞きました。本当でしょうか?
今季、国内でインフルエンザが流行するかどうかを考える際、南半球のインフルエンザ流行状況が参考になります。
2021年のオーストラリアの冬季にはインフルエンザの流行はみられませんでした。私がWEBで調べた南半球の他のいくつか国でもインフルエンザの流行はみられなかったとされています。
このことから今季の国内のインフルエンザも昨年と同様に流行しないのではないかという考え方もあります。しかし、亜熱帯地域の一部の国ではインフルエンザの小流行がみられたとの報告があります。
昨シーズンは国内でインフルエンザが流行しなかったことから、多くの市民のインフルエンザウイルスに対する抵抗力が弱くなっている可能性もあると思われます。
現在は海外との人の交流が制限されていますが、この後ヒトの動きが活発になりインフルエンザウイルスが国内に持ち込まれれば、国内でも流行する可能性は否定できません。
新型コロナウイルスとのかかわり
Q. 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、外出時には人混みを避けてマスクをつけ、手洗いやうがい、手指消毒もしていますが、インフルエンザの予防接種は受けたほうがよいでしょうか?
インフルエンザ予防の基本はワクチン接種です。新型コロナウイルス感染症予防のために、この2年近く私たちが励行してきたマスク装着、いわゆる3つの密を避ける、手指消毒などはインフルエンザの予防にも有効なので継続しなければなりません。これらの励行に加え、適切な時期にインフルエンザワクチンを接種することが新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行を避ける手立てだと思います。
Q. 新型コロナウイルスのワクチン接種をしたのですが、インフルエンザの予防接種も受けてもいいのでしょうか?
新型コロナウイルス感染症のワクチンを接種した人も、特にアレルギーなどがないかぎり、インフルエンザワクチンを接種するべきだと思います。
現時点ではわが国では、インフルエンザワクチンと新型コロナウイルス感染症のワクチンは2週間以上の間隔をあけて接種することになっています。
疑われる症状がでたら・・・?
Q. 高熱が出て、新型コロナなのかインフルエンザなのか判断できないときには、どのように病院にかかればよいでしょうか?
かかりつけのクリニックや病院があれば、まず電話をかけて症状を告げ、指示を仰ぐのがよいと思います。かかりつけ医でなくとも相談にのってくれるところもあると思いますが、かかりつけ医がなければ保健所に相談して指示をうけるのも良いと思います。
新型コロナウイルス感染症が疑われる症状の場合は直接受診せずに、まず電話などで問い合わせることが感染拡大を防ぐうえで重要だと考えます。
Q. 高熱がでた場合、新型コロナかインフルエンザの見分け方はありますか?
新型コロナウイルス感染症患者との濃厚接触歴や、急な味覚・嗅覚障害の出現など新型コロナウイルス感染症に特有の症状があれば、新型コロナウイルス感染症を強く疑うべきと考えます。しかし、両者を明確に区別することは極めて難しいと考えます。厚生労働省がホームページで示している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・5.3版(https://www.mhlw.go.jp/content/000829136.pdf)に示された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザの相違の表を添付します。
Q. 新型コロナとインフルエンザ同時にかかることはありますか?
ウイルス干渉の観点からは同時感染は起こりにくいと考えられますが、日常診療における新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時感染の報告はあるようです。長崎大学から動物実験での検討で、両ウイルスの重複感染がおこり得ることを示唆する結果が報告されています。
インフルエンザにかからないために
Q. インフルエンザにかからないために有効な予防手段はありますか?
人ごみに出ず、人との接触を避ければインフルエンザにかかることはないと思われます。しかし社会生活を営む上で完全に人との接触をなくすことはできません。
ワクチンをきちんと接種すること、マスク装着、手指消毒、いわゆる3密の回避をしっかりと実践することがインフルエンザ、および新型コロナウイルス感染症の予防手段だと思います。
Q. インフルエンザの予防接種を受けるタイミングはいつごろまで有効ですか?
インフルエンザは通常、12月から翌年の3月くらいまでに流行します。1月から2月にピークを迎えることが多いと考えられます。
インフルエンザワクチンは接種後2週間程度で抗体が産生されますので、遅くとも12月中旬くらいまでにインフルエンザワクチンの接種を済ませておくのが望ましいと考えられます。また、効果は3カ月程度持続するとされています。
Q. 最新の治療薬など治療方法があれば教えてください。
インフルエンザの治療薬は現在、国内に5種類あります。
ノイラミニダーゼ阻害を作用機序とする、吸入薬のザナミビル(リレンザR)、ラニナミビル(イナビルR)、内服薬のオセルタミビル(タミフルR、オセルタミビルR)、注射薬のペラミビル(ラピアクタR)があります。
一方、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害を作用機序とする内服薬、バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザR)もあります。
投与方法や治療期間が各々に違いますので、患者さんの状態にあわせて使い分けることが求められます。
治療だけでなく、肺や心臓に基礎疾患を持っている方には予防にも使える場合がありますので、主治医に相談することが大切です。
吉田先生ありがとうございました。昨シーズンは流行しなかったからと言って油断は禁物ですね。なるべく早く予防接種を受け、正しい知識を身につけて適切な予防や対処ができるようにしておくことが大事だとよくわかりました。
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