PROFILE
吉田耕一郎(医学部医学科)
専門:感染症、深在性真菌症、院内感染対策
感染症の診断と治療、特に真菌による感染症を研究。抗菌薬耐性菌対策など、院内感染対策についても実践。
今年のインフルエンザの特徴と流行時期は?
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この週末から、急にものすごく寒くなると聞きました。
寒くなると気になるのがインフルエンザ。今年の特徴を教えてください。
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今シーズンもインフルエンザは流行すると思われますが、まだ、患者さんの数は限られており、現時点で今年の流行の特徴を予測することは難しいです。
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インフルエンザは、だいたいいつ頃から流行り始めますか?
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インフルエンザの流行時期を正確に予測することは大変難しいのですが、例年、12月末から流行が始まり、翌年1月にピークを迎えて3月ごろに収束します。
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それはなぜですか?
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12月になってだんだん寒くなってきて、インフルエンザの患者さんがポツポツ出始めて。そういった時に忘年会やお正月の帰省、新年会などいろんな人と触れ合う機会が多くなってきます。そこでの感染が散発的に様々な所で起こり流行につながっていきます。
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感染するとどのくらいで発症しますか?
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インフルエンザに感染すると、潜伏期間は1日から2日と短く、すぐに症状が出てくることが多いのです。しかし必ずしもその症状が前面に出ている人だけではなくて、
まだ発熱をする前、自分がインフルエンザだと認識できるような明らかな症状が出る前から、インフルエンザウィルスをばらまいてしまっているということは、実際にあることだと思います。
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えーー!!
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だからこそインフルエンザは流行が起こりやすいんですね。
流行期の人混みにはウィルスがいるものと心得ましょう。
「ただの風邪」と「インフルエンザ」の見極め方は?
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インフルエンザの1番大きな特徴は、高熱が急に出てくるということです。
それと同時に、
非常に強い全身の倦怠感や筋肉痛、関節の痛みだとか。そういったものが、急に出てくるところがインフルエンザの大きな特徴です。
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でも基本的にインフルエンザって自然治癒していくものですよね?
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そうですね。元々、健康な方がインフルエンザにかかっても、多くの場合は3日から5日くらい、長くても1週間で自然に治ります。ただ注意しないといけないのがやはり高齢の方や小さなお子さん、あるいは基礎疾患を持っているような方です。
高齢者の場合、多いのは二次感染による肺炎の発症です。インフルエンザで抵抗力が低下して、肺炎球菌に感染しやすくなります。
そして小さい子供の場合、
インフルエンザ脳症に発展することもあり、そうなると死亡する率は5%から30%と言われています。
さらに基礎疾患というのは、もともと心臓病や喘息、腎臓病あるいは糖尿病などのことで、それを持っている人は感染すると重症化しやすいとされています。
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ほかに気をつけた方がよい人はいますか?
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そうですね、気をつけていただきたいのは妊娠初期の方です。赤ちゃんに影響が出ることは多くはないにしろ、可能性はあるので注意をしていただければと思います。
インフルエンザの予防とワクチン
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インフルエンザにはA型・B型・C型の3つのタイプがあって、流行を起こすのは主にA型とB型だと聞きました。A型とB型で流行りやすいのはどちらですか?
A型の方が感染力が強いと言われていますので、一般的にはA型の方が流行りやすいと思います。しかし、年によってはB型の流行が多くみられる場合もあります。
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予防方法はありますか?
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インフルエンザの予防にはまずはしっかりとワクチンを打つことです。ワクチンはA型とB型の両方に効くように作られています。現在は、大人は原則1回で効くようにできていますが、だいたい13歳までは2回打つことになっています。
そして日常生活での予防法は、できるだけ人混みを避ける事です。
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予防接種は有効なんですね。いつ頃接種を行うのが効果的ですか?
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ワクチンを接種してから抗体ができるまで、約2週間かかります。流行の開始時期を考えると、
11月中旬から12月中旬までにワクチン接種を済ませておくのがよいと思われます。
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マスクは予防に効果的なのでしょうか?
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インフルエンザは、普通は飛沫感染します。咳やくしゃみ、あるいは会話をするときに飛沫が飛んで、それを吸い込んだ人がうつってしまうと言うことになります。なので、1mないし2m位の間があれば、感染しにくいと言うことにはなると思います。しかし混雑した電車の中などでは、それだけの間隔を取るというのは難しいと思います。
そこでマスク、と言うことになりますがそのマスクも予防と言う点では限定的です。ウィルスはある程度の時間空中を浮遊しますので、隙間があればそこから入ってきます。
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他に感染経路ってあるんですか?
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やはり手とか、そういったものを介して感染します。
例えば、インフルエンザの感染者がくしゃみを手で覆い、その手でつり革を持つ。次の人がそのつり革を触った手で鼻をこすって感染と言うこともあります。基本中の基本ですが、やはり
外出から帰ったらすぐにうがい、手洗いをすることが重要です。
他にも
インフルエンザウィルスは湿気を嫌うので、加湿器をうまく利用するのも良いでしょう。それでもインフルエンザになってしまったら、薬で治療と言うことになります。
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日々インフルエンザにかかっている患者さんと接している吉田先生。何か予防で心がけていることはありますか?
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そうですね、
ワクチンを毎年接種することと、インフルエンザ流行期には必要なければ、人混みには出かけないこと。
また、効果は限定的ですが、マスクの着用や手洗いですね。
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インフルエンザの新薬が登場
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インフルエンザの治療薬、タミフルなどはよく聞きますよね。
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タミフルは長く使われてきた薬で、皆さんよくご存知だと思いますが、他にも吸入の薬や、注射で使うような薬があります。
最も新しいのは、「ゾフルーザ」という錠剤で今年でてきた薬です。
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「ゾフルーザ」ですか、初めて聞きました。
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はい。これは今までの薬とは、作用機序といって、効き方が少し違うんです。
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どう違うのでしょうか?
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インフルエンザは人の細胞内で増殖して飛び出し、次々と細胞を感染させていきます。簡単に言えばタミフルは細胞内で増殖したウィルスが細胞の外に出ていくのを防ぐのに対し、
新しいゾフルーザは細胞の中でウィルスが増殖しないようにする薬です。
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ゾフルーザはどんな患者さんにおすすめですか?
吸入することがうまくできない子供さんや高齢者、呼吸器の病気を持っている方には、1回の内服で済みますので、確実に薬が入ります。
逆に嘔吐するような場合は、吸収される前に吐いてしまうと効果が得られないので、注意が必要です。
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なるほどー!1回の内服で済むのですね。スゴイ!
ほかにも新薬が出ると、どんなメリットがありますか?
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患者さんにとっても選択肢が増えますし、我々医療者側にとっても、この患者さんにはこの薬のほうがより適しているんじゃないか、こちらには別の薬の方が適しているんじゃないか、ということを考えながら使い分けができますね。ですから大変良いことだと思っています。
![思案](/uploads/201611/9c3f8d6d045fd2e83238e3e8b5f9df53c68edb29.jpg)
それは大変うれしいことです。インフルエンザはかかると健康を損なうだけでなく、他の人への感染を防ぐため約1週間ほど外出禁止になるのも厳しいですね。今からの季節、充分注意します!
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