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2024.02.21

タミフルの副作用は?発症から48時間過ぎると効果なし?インフルエンザ治療薬の基礎知識

Kindai Picks編集部

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インフルエンザ

依然としてインフルエンザの流行が続いています。すでにかかった方でも別の型に感染する可能性があり、油断はできません。インフルエンザは病院に行かなくても治る? 薬は48時間以内に飲まなければ効果がない? 近畿大学病院教授であり感染対策部部長の吉田耕一郎先生にくわしくお答えいただきました。

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吉田耕一郎(よしだ こういちろう)

医師/博士(医学)/近畿大学病院教授/感染対策部部長

専門:感染症、深在性真菌症、院内感染対策
感染症の診断と治療、特に真菌による感染症を研究してきました。抗菌薬耐性菌対策など、院内感染対策についても実践しています。
教員情報詳細



インフルエンザと風邪の違いは?

――インフルエンザと風邪はどう違うのですか?

インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染することで発症しますが、風邪はライノウイルスなどさまざまなウイルスへの感染が原因で起こります。

風邪をひくと、のどの痛みや鼻水、くしゃみ、咳などの局所的な症状があらわれ、ゆるやかに進行します。発熱した場合も37~38度程度で、重症化することはあまりありません。一方、インフルエンザの場合は、風邪と同じような症状に加えて関節痛や筋肉痛、全身倦怠感などの全身症状が突然強くあらわれ、急速に進行します。ときには重症化や合併症を起こすこともあるため、注意が必要です。

風邪 インフルエンザ
原因 ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなど インフルエンザウイルス
症状があらわれる部位 鼻やのど 全身
症状の進み方 ゆるやか 急激
おもな症状 発熱(37~38度)、くしゃみ、鼻水、のどの痛み、咳など 発熱(38度以上)、鼻水、のどの痛み、咳、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感など

<インフルエンザの重症化リスクが高い方>

・妊娠中の女性
・幼児
・高齢者
・持病のある方(慢性肺疾患、慢性心疾患、代謝性疾患、免疫不全状態など)


インフルエンザにかかっても多くの方は1週間ほどで回復しますが、重症化すると肺炎や脳症などの合併症を引き起こすケースも見られます。症状が重い場合は入院治療が必要となりますし、体力や抵抗力が下がっている方ではときに命にかかわることもあります。

――近年、流行しているインフルエンザウイルスについて教えてください。

人類に感染するインフルエンザウイルスにはA型、B型、C型の3種類があり、このうちA型とB型が流行を起こします。近年の日本で流行する季節性のインフルエンザウイルスは、A(H1N1)亜型、A(H3N2)亜型(香港型)とB型(山形系統とビクトリア系統)です。

ときには、季節性インフルエンザと抗原性が大きく異なる、新型インフルエンザが世界的にまん延することもあります。急速に感染が広がりますが、多くの方が新型インフルエンザの免疫を獲得することで流行が落ち着き、季節性のインフルエンザへと移行します。実際に、2009年に発生して世界的大流行を起こした新型インフルエンザA(H1N1)pdm09も、2011年4月から季節性インフルエンザとして扱われています。

日本では11月下旬~12月上旬にかけて流行が始まり、年が明けた1月~3月に患者数が増えるのが基本的なパターンですが、流行状況は年ごとに異なります。

インフルエンザ 過去10年との比較


出典:国立感染症研究所「インフルエンザ過去10年間との比較グラフ(第52週 1/15更新)」
2023/24シーズンは異例の早さでインフルエンザの流行が始まり、9月の時点ですでに注意報レベルに達した地域が見られ、年が明ける前に警報レベルに到達する地域も続出した。



もしかしたらインフルエンザかも……病院に行ったほうがいい?

――インフルエンザと思われる症状が出た場合、どうすればいいですか?

安静にして水分や栄養を十分に補給し、部屋を保温・保湿して、しっかりと休養してください。同時に、周囲にうつさないようにすることも大切です。外出を控え、同居する家族がいる場合はなるべく個室で休養して接触を避け、不織布マスクをするなどの感染対策を行いましょう。

呼吸困難や息切れ、胸の痛み、嘔吐や下痢などの症状が続く場合は、重症化するおそれがあります。気になる症状があれば、すぐに病院を受診してください。


参考:首相官邸「インフルエンザ(季節性)対策」

――症状がそれほど重くない場合でも、病院を受診したほうがよいのでしょうか?

重症化しなければ、通常は1週間ほどで症状はおさまります。しかし、あまりしんどくないからと出歩いたり無理をして職場や学校に行ったりすると、周囲に感染を広げかねません。薬を飲むことで重症化や合併症のリスクは下がりますし、症状が続く期間やウイルスを排出する期間を多少なりとも短縮できますので、できれば早めに病院で診断を受けて安静を保つほうがよいかと思います。

――病院では、どのように診断をするのですか?

症状から判断をすることもありますが、通常は長い綿棒のようなもので鼻の奥の粘液を採取して、インフルエンザの抗原(身体の免疫が反応する物質)の有無を調べます。これは迅速診断法と呼ばれる方法で、すぐに結果がわかるのがメリットです。ただし、発症して12時間以内は検査結果が偽陰性になる(感染しているのに陰性になる)こともあり、その場合は再び検査を行うこともあります。


インフルエンザの治療薬は必要? 飲まなくても治る?

――インフルエンザの治療方法について、教えてください。

インフルエンザの診断が出た場合は、抗インフルエンザウイルス薬で治療を行います。熱が高いときは、解熱剤を処方することもあります。なお、大量の発汗によって脱水状態を起こすおそれもあるため、水分をしっかりとることが重要です。先ほどもお伝えしましたが、水分とあわせて栄養を補給し、室内の保温・保湿を心がけて十分に休養しましょう。

――インフルエンザの治療薬にはどのようなものがありますか?

日本国内で使用されている治療薬には、タミフル、リレンザ、ラピアクタ、イナビル、ゾフルーザなどがあります(すべて商品名)。それぞれの特徴は以下の通りです。

おもなインフルエンザ治療薬
商品名 投与経路 投与回数 おもな特徴
タミフル
オセルタミビル
経口 1日2回、5日間 全世界で使用されており、最もエビデンスのある薬剤。下痢が減少する一方で、吐き気や嘔吐が増加することも。
リレンザ
吸入 1日2回、5日間 B型インフルエンザで効果が高いとする報告あり。重症例や肺炎、気管支喘息の合併例では効果が限定され、気管支が狭くなるおそれも。
ラピアクタ
点滴静注 単回投与
(症状に応じて連日反復投与)
点滴による投与のため、経口摂取が難しい場合や入院している場合に有用と考えられている。
イナビル
吸入 吸入粉末剤:単回吸入投与
もしくは2日間吸入投与
吸入懸濁用:単回吸入
吸入薬であり、重症例や肺炎、気管支喘息合併例での使用は推奨されない。
ゾフルーザ
経口 単回投与 12歳未満の小児では、低感受性株に注意が必要。慎重な判断が求められる。

参考:日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」/日本感染症学会「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬 バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザⓇ)の使用についての新たな提言」


――インフルエンザは、薬を飲まなくても自然に治りますか?

基礎疾患のない健康な方であれば自然治癒が期待できますし、治療薬を使用しなくても通常は1週間ほどで軽快するでしょう。とはいえ、インフルエンザは風邪とは違って重症化しやすい疾患です。気になる症状があれば、無理をせずに病院を受診することをおすすめします。


タミフルで異常行動が起こる? 発症して48時間過ぎると効果はない? 薬の副作用について

――インフルエンザの治療薬は、発症から48時間以内に使用しなければ効果がないというのは本当でしょうか?

早期にインフルエンザの治療を開始することで、症状の出る期間が短縮されます。発症から48時間以内に治療薬を服用すると、通常は発熱する期間が1~2日間ほど短くなり、体内から排出されるウイルスの量も減少するといわれています。一方で、発症後48時間が過ぎてから使用した場合、十分な効果は期待できません。

――発症前に予防的に治療薬を使用することもあるのでしょうか?

高齢者のほか、慢性の呼吸器疾患や心疾患、糖尿病などの代謝性疾患、腎機能障害がある方で、同居している方がインフルエンザを発症した場合、48時間以内(理想は36時間以内)にタミフルやリレンザ、イナビル、ゾフルーザを使用することで予防効果が期待できます。予防を目的とするため、公的医療保険の適用外で自費診療となります。

インフルエンザ治療薬の予防投与ができる方は限られており、医師の判断も必要です。希望する場合は、まずはかかりつけの病院で相談してみましょう。

――治療薬の副作用についてはいかがですか? タミフル服用後に異常行動が見られたとの話も耳にします。

吐き気や口内炎、下痢、頭痛など、さまざまな副作用が報告されています。気になることがあれば、医師や薬剤師に相談してみてください。

インフルエンザ治療薬と異常行動との因果関係は明らかになっていません。インフルエンザにかかった場合、治療薬を使用していなくても異常行動があらわれることが報告されています。また、薬の種類に関係なく、異常行動の出現が確認されています。薬の種類や使用の有無にかかわらず、注意する必要があるでしょう。


出典:厚生労働省「異常行動による転落等の事故を防ぐためのお願い(患者さん・ご家族・周囲の方々へ」


インフルエンザを予防するポイントは?



――インフルエンザはどのようにしてうつるのでしょうか?

インフルエンザの感染経路は、飛沫感染と接触感染です。飛沫感染では、感染者の咳やくしゃみが飛散し、その飛沫に含まれるウイルスを吸い込むことでうつります。接触感染では、感染者がつばや鼻水がついた手で触れたドアノブなどを介して、健康な方の手にウイルスが付着し、その手で口や鼻、目などの粘膜に接触することで感染します。

――インフルエンザの予防法について教えてください。

インフルエンザが流行する前に予防接種を受け、流行期には人混みを避けることが大切です。インフルエンザワクチンを接種すれば必ず発症を防げるわけではありませんが、接種しなかったグループよりも発症の確率が抑えられることが明らかになっていますし、ワクチンには重症化を防ぐ効果があります。また、不織布マスクを着用して、外から帰ったら手洗いやうがいをすることにも、一定の効果を期待できるでしょう。

インフルエンザウイルスは気温や湿度が低い場所を好みますので、暖房器具や加湿器を上手に利用して室内の温度や湿度を管理することも、感染予防につながります。治療薬の予防的な使用も、必要に合わせて検討するとよいでしょう。

――自分自身の感染を防ぐと同時に、周囲への感染を防ぐことも大切ですね。

そうですね。たとえ自分に重症化のリスクがなかったとしても、自らが感染源となって、リスクの高い方にうつす可能性も考えられます。お伝えした予防策で、なるべく感染しないように気を付けつつ、感染してしまったら周囲にうつさないようにする。そうやって、社会全体でインフルエンザウイルスの感染拡大を防ぐことがとても重要だと思います。


取材・文:藤田 幸恵
企画・編集:人間編集部

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