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雑学・コラム

2020.10.30

肉食やめました!ヴィーガンアスリート・一ノ瀬メイが実戦する「地球と自分を健康にする」食生活

Kindai Picks編集部

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OB・OG
スポーツ
一ノ瀬メイ
ヴィーガン
環境保護
オリジナル記事

今やよく耳にするようになった「ヴィーガン」という言葉。肉・魚・卵・乳製品など、動物性の食品を一切摂らない主義のことを指します。実は、近大卒業生でパラ水泳選手・一ノ瀬メイさんもヴィーガニズムに沿った食生活に切り替えたひとり。なぜ、今ヴィーガンになる人が増えているのでしょうか? 肉を食べるのはよくないことなのでしょうか? 子どもの頃から肉を食べていないという近大生と、体育会ラグビー部の肉食男子を交えて「食」に関する徹底討論を実施しました。

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一ノ瀬 メイ(いちのせ めい)
2019年3月近畿大学卒。現在は職員として近畿大学に所属。パラ水泳日本代表選手として、2016年にリオパラリンピックに出場。2020年、コロナ禍による自粛期間中にドキュメンタリー映画を鑑賞したことをきっかけに、ヴィーガン生活をスタート。

上野 美桜(うえの みお)
国際学部グローバル専攻 3年生
5歳の頃から肉を食べられなくなり、以来ほとんど肉を口にしていない。魚もあまり好きではなかったという。現在はヴィーガンを意識して、和食中心に無添加も意識した食生活。


金子 隼(かねこじゅん)
経営学部経営学科 3年生
体育会ラグビー部所属。体作りのため、肉・魚を中心に、食事は毎日バランスよく食べている。お米は1日に2000g〜2300g摂取。好きな食べ物はステーキ、餃子、ナシゴレン。

ヴィーガンとは
1944年にヴィーガン協会の共同設立者であるドナルド・ワトソンによって造語されたイギリス発祥の思想で、ヴィーガニズムとは「可能な限り、食べ物・衣服・その他の目的のために、あらゆる形態の動物への残虐行為、動物の搾取を取り入れないようにする生き方」と定義されている。ベジタリアンよりも制限が多く、肉や魚を食べないのはもちろん、卵や乳製品、蜂蜜(蜂のために作られたものを搾取しないため)、白砂糖(牛骨炭や骨炭を使って濾過しているため)など、動物性の食品を一切摂らない。また、革や毛皮、動物実験が行われている製品の使用を避ける。ベジタリアンには、乳製品は食べる「ラクト・ベジタリアン」や、乳製品と卵は食べる「ラクト・オボ・ベジタリアン」、乳製品と卵と魚は食べる「ペスコ・ベジタリアン」などが含まれる。ヴィーガニズムの中にも様々な主義があり、現在「ヴィーガン」いう言葉で普及しているのは、主に食事から動物性食品を避ける「ダイエタリー・ヴィーガニズム」と呼ばれるものである。



それぞれ異なる食生活。毎日何を食べてる?


ーーまずは皆さんの毎日の食生活について伺いたいのですが、金子くんは毎日お肉をたくさん食べているんですよね?

金子隼:肉は毎日がっつり食べますね! 僕の場合、定期的に管理栄養士の方が栄養指導に来てくださっていて、その際にある程度の基準を設けてくださるんです。なので、それに沿った食事を摂っています。たとえば、体重を維持するためにもお米は1日に2000g〜2300g摂るように言われているので、毎食2〜3合食べてます!


ある日の金子くんのお昼ご飯。この日のメニューは、麻婆豆腐、馬刺し、馬カツ、サラダ、白米(2〜3合)。

一ノ瀬メイ:私も近大生だったときは寮に住んでいたので、管理栄養士さんの指導の下、ごはんを食べていました。水泳の場合はある程度脂肪がないと浮かなくなってしまうので、そこまで厳しく糖質や脂質が制限されていたわけではなくて……甘いものもけっこう食べてました。今もその栄養バランスの基準は変わらないですが、たんぱく質を野菜に置き換えている感じです。

上野美桜:私は5歳までは肉も食べていたんですが、あるときステーキを食べたら吐いてしまって。それから怖くなって食べられなくなってしまったんです。

一ノ瀬メイ:えっ、子どもの頃からなんだ! 給食はどうしてたんですか? 残したら怒られたりしなかった?

上野美桜:そういう先生もいましたね。だから給食の時間が本当に憂鬱で。今考えると申し訳ないんですが、食べられるものだけを食べて、肉は残していました……。献立に絶対食べられないものがある日は、午前中で帰ってしまったこともあるくらい(笑)。中学からはお弁当だったんで良かったんですが。


ある日の上野さんの夕食。この日のメニューは、カボチャの煮付け、野菜の春巻き、オクラの和え物、豆腐の味噌汁、お米。

ーー魚は食べていたんでしょうか?

上野美桜:魚ももともとあまり好きじゃなくて。最近は全然食べていません。お米や納豆が好きなので、毎日和食を食べています。野菜の煮物とか、和食ってヴィーガン食に取り入れやすいんですよ。ただ、和食にとって出汁は重要なので、お味噌汁にカツオ出汁は使っていてますね。

一ノ瀬メイ:私は基本、昆布出汁を使っていますよ。ただ、前にカツオ出汁をもらったのがまだ残っていて、それはちゃんと使い切ろうと思ってます! ヴィーガンの中でもこれとこれは食べるって人もいますが、私は白砂糖(牛骨炭や骨炭を使って濾過しているため)も蜂蜜(蜂のために作られたものを搾取しないため)も使わないようにしています。

金子隼:全然話に入っていけないんですが、僕には理解できない世界ですね……。


肉食文化が環境破壊を引き起こす?



2年前から練習拠点をオーストラリアに移した一ノ瀬さん。毎日屋外プールで練習しているため真っ黒に日焼けしている。

ーー一ノ瀬さんがヴィーガンになったのは、畜産業の環境破壊に対する意識が一番大きいそうですね。

一ノ瀬メイ:そうですね。コロナで大会がなくなったり延期になった時期に、せっかく時間があるなら「環境問題について勉強しよう」と思って『Cowspiracy: サステイナビリティ(持続可能性)の秘密』という映画を観たんです。その映画を通して、気候変動の原因は排気ガスだけでなく、畜産業が大きく関係していることを知って。その中でも、利益効率化のために家畜動物を過密飼いしている「工業型畜産(集約畜産)」の問題について考えさせられました。

※工業型畜産(集約畜産):効率性を重視し、家畜を高密度かつ大規模に飼育する畜産の取り組み。

上野美桜:私も、今年3月に『Dominion』という畜産についてのドキュメンタリー映画を観たのをきっかけに、本格的にヴィーガンを意識するようになりました。

『Cowspiracy: サステイナビリティ(持続可能性)の秘密』

家畜がもたらす環境破壊の脅威を伝えるアメリカのドキュメンタリー映画。地球の資源を破壊する工業型農業や環境問題のタブーに鋭く切り込む。2014年公開。


『Dominion(ドミニオン)』

オーストラリアの畜産業の裏側に迫った2018年公開のドキュメンタリー映画。食べ物として屠殺される動物に焦点を当てながら、衣服や娯楽、動物実験など残酷な動物搾取の真実を映す。


金子隼:僕、恥ずかしながら畜産業と環境破壊の結びつきについて全然知らなかったです……。

一ノ瀬メイ:私も半年前まで知らなかったんです。なんとなく、気候変動とか環境破壊の原因って工場から出る煙とか自動車の排気ガスというイメージが強くて、自分たちが食べているお肉がそこまで大きく関係しているとは思っていませんでした。

世界全体の温室効果ガス排出量の割合


土壌、家畜の消化管、家畜排せつ物中に棲息する微生物の反応によって、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)を排出している。
出典:IPCC第5次評価報告書 第3作業部会報告書(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構「農業由来温室効果ガス排出削減技術の開発」参照)


金子隼:牛のげっぷやおならがメタンガスを発生させているという話はなんとなく知っていましたが、そこまで大きく影響してるとは……。

一ノ瀬メイ:それだけじゃなくて、牛を育てるためには莫大な土地が必要で。実は、地球の陸地の26%が家畜の放牧地になっていると言われていて、肉食文化が進むにつれ、どんどん土地が足りなくなっていってるんです。そのために、人工的に森林が燃やされてる。森林が減っていけば、二酸化炭素を吸収してくれる植物も減っていってしまうんですよね。

金子隼:そうだったんだ……。全く知りませんでした。


一ノ瀬さんがオーストラリアのリゾート地モントビルのカフェで食べたヴィーガンモーニング。

ーー世界でヴィーガンの考え方が広まる中、日本は遅れがちな印象がありますが、実際どう感じていますか?

上野美桜:アメリカのカリフォルニアに留学していた時は、周りにヴィーガンとかベジタリアンの人も多くて、街中にもヴィーガン対応カフェやレストランがたくさんありましたが、日本は少ないですよね。大学にもヴィーガンの友達はいないし、こういう話をできる人もあまりいないです。

一ノ瀬メイ:環境破壊と肉食の関係についても知らない人が多いですよね。イギリスの友達がここ数年でみんなヴィーガンになっていて、私もはじめは「どういうこと?」と思っていましたし……。ヨーロッパでは毎日のように気候変動に関するニュースが取り上げられていたり、お肉と気候変動の関係性も一般常識として知られているみたいです。

上野美桜:家畜の餌になっている穀物を直接人間が食べればいいって話もありますよね。

一ノ瀬メイ:そうなんです。世界の農地の75〜80%は、飼料を作るために使われているとも言われているんですよ。それを知って、私も自分の生活を変えたいと思いました。車を電気自動車に買い替えたり、飛行機に乗らないようにするよりも、自分にとってはお肉を食べない生活なら簡単に取り入れられると思ったので、映画を観たその日からお肉をきっぱりやめたんです。

金子隼:僕はお肉を食べるのがめちゃめちゃ好きなんで、今「食べるのやめろ」って言われるときついですけど、まずは環境問題について考えはじめるいい機会をもらえたと思います。


ヴィーガンでもアスリートにはなれる?野菜からたんぱく質を取る方法



ラガーマンにとって食事は、身体を大きくするためだけでなく、ハードな練習の疲労回復としての意味もある。金子くんの一ヶ月の食費は6〜8万円。

ーーラグビー部の中にお肉を食べない人っていますか?

金子隼:いないですね(笑)

一ノ瀬メイ:体育会系の学生の中にひとりもいなさそう……(笑)

金子隼:肉を食べないってちょっと想像がつかないというか、それで身体作れるのかなって思いますね。どうやって筋肉つけてるんやろうって……。

一ノ瀬メイ:でも、ウェイトリフティングのアメリカ最高記録保持者のケンドリック・ファリス選手もヴィーガンですし、筋肉ムキムキのヴィーガンアスリートってけっこういるんですよ! 私も、ヴィーガンになるまでは「お肉食べないでアスリート続けるなんて無理でしょ!」と思ってましたけど、ヴィーガンになってから脂肪が落ちて筋肉量が上がったんです。あと、疲労も回復しやすくなりました。

金子隼:信じられないです……。

一ノ瀬メイ:『ゲームチェンジャー: スポーツ栄養学の真実』というドキュメンタリー映画もおすすめです!陸上のカール・ルイス選手やテニスのノバク・ジョコビッチ選手など、ヴィーガンで世界記録を出しているトップアスリートがたくさん紹介されています。

『ゲームチェンジャー: スポーツ栄養学の真実』

植物中心の食事がアスリートの運動能力や健康に及ぼす影響を探求した、2018年公開のアメリカのドキュメンタリー映画。UFCで戦った総合格闘家が時代の最先端を走る科学者やトップアスリートに話を聞き、肉食、タンパク質、菜食が筋力に与える影響を比較。


ーーヴィーガンアスリートは、主にどんな野菜からたんぱく質を摂取しているのでしょうか?

一ノ瀬メイ:豆腐とか豆類がメインですが、ブロッコリーや芽キャベツなどたんぱく質が豊富な野菜は他にもあります。主食のパンやお米にもでもたんぱく質は摂れますからね。後はヴィーガン用のプロテインシェイクを摂ったりして。案外楽に必要なたんぱく質量を達成できますよ。

金子隼:え〜! ヴィーガン用のプロテインなんてあるんですか! でも、考えられないです。僕、肉や魚がめちゃくちゃ好きなんで、それを野菜に替えたら満足できないと思います……。


ある日の一ノ瀬さんの食事。左は野菜をのせた生姜ドレッシングの蕎麦、右は豆腐のスクランブルエッグ風。

一ノ瀬メイ:私も半年前まで普通にお肉を食べていたし、部活のみんなと焼肉や牛丼を食べに行ったりしていましたよ。でも実際にはお肉が好きというよりは、焼肉のタレだとか唐揚げの衣だとか、味付けが好きっていう部分が大きかったんですよね。

金子隼:なるほど……。


一ノ瀬さんが作った野菜のハンバーグパティ。オーストラリアではスーパーで市販の植物性代替肉も多く売られている。

一ノ瀬メイ「お肉を食べなくなる=味気ない」っていうイメージがあるかもしれませんが、お肉と食感が変わらないバーガーや唐揚げもたくさんありますよ。別にお肉を食べないからといって食事が質素になるわけではないんです! それは私もヴィーガンになってからびっくりした点でした。

上野美桜:私は質素な食事でもいいですけどね(笑)。健康状態も今まで悪くなったことはとくにないです。

一ノ瀬メイ:最新の栄養学では動物性たんぱく質を摂らなくても筋肉は作れると証明されていますし、私もヴィーガンになる前と後では、摂取するたんぱく質の量は変わってないんです。食事の基準はお肉を食べなくても達成できますよ。ただ、人によりますが、菜食に移行するとビタミンB12が不足すると言われています。サプリで補う人もいますが、私はドーピングの問題があるので、ニュートリショナルイースト(栄養酵母)を摂るようにしています。

※ニュートリショナルイースト(栄養酵母):糖蜜で発酵させた酵母。ビタミンB群が豊富で、チーズのような風味があるためチーズの代用食材として使われる。

金子隼:そう言われても信じられないというか……信じたくないというのが正直な感想ですね(笑)


ヴィーガンとそうでない人。共存していくためには?



実家に住んでいる上野さんは、家族が魚や肉を食べることに対して文句を言ったり自分の価値観を押し付けないように気をつけているという。

ーーSNSなどで、ヴィーガンの人がそうでない人から非難されているような構図を見かけることがよくあります。それってなぜだと思いますか?

上野美桜:私もSNSでヴィーガンやサステナビリティについて発信しているんですが、クソリプってやっぱりくるんですよね……。別に、お肉を食べる人を批判したり価値観を押しつけるような発信はしていないんですが、わざわざ捨てアカ(素性を明かさない匿名アカウント)を作って「偽善者乙」みたいなリプを送ってきたりして。

一ノ瀬メイ:私はまだクソリプ送られてきたことないですね……。もしかしたら、私が障害を持っていることや、海外にいることも関係しているのかもしれないですが(笑)

上野美桜:日本人は、自分と違う考え方を受け入れられない人が多いのかなって思います。「みんな同じがいい」という人が多いというか。

ーー動物愛護の視点や「かわいそう」という気持ちもありますか?

一ノ瀬メイ:「かわいそう」というより「差別しない」という視点で考えています。自分がもともと障害を持って生まれて、それで差別されるのが嫌だったから、自分は絶対に差別をしない人間だと思ってたんです。でも、「種差別」という言葉を知ったときに衝撃を受けて。「私、動物のことは差別してるやん」って。犬や猫は可愛がってるのに、劣悪な環境で育てられている家畜動物のことは気にせず食べていて。

※種差別:人間以外の生物を差別してないがしろにすること。



金子隼:その視点はなかったです。さすがに僕も、牛や豚も生きている姿を見れば可愛いと思うので、「食べたい!」とは思いません。でも、ステーキは大好きだし、スーパーで売られている肉を見たら「美味しそう!」って思ってしまいますね……。

上野美桜:私はスーパーの食肉売り場が苦手なんです。殺されてバラバラにされた肉が容器に入れられて売られている様子を見ると、人間のエゴだなと感じてしまいます。

一ノ瀬メイ:種差別とは少し違うけど、愛護する動物と愛護しない動物を線引きすることも人間のエゴだと思います。牛や豚は食べていい、鯨やイルカは食べてはいけない、絶滅危惧種を保護する、害鳥を駆除する……全部人間中心の考え方ですよね。

ーー畜産農家の方や料理人など、肉を食べることで発展した文化を職業にしている人がいます。それについてはどう思いますか?


脱プラスチックも意識するようになった一ノ瀬さん。プラスチック製品でも長く使えるものはそのまま使い、買い替えのタイミングで少しずつシフトしているという。

一ノ瀬メイ:文化とか職業とか、地球に住めなくなったら意味なくない!?って感じです。私は水泳を頑張っていますが、スポーツのために環境が破壊されているのも事実です。娯楽がなくなって欲しくないならば尚更、自分にできることをするのが大事だと思います。

上野美桜:カナダではヴィーガン向けの食料品開発が進んでいて、その中で「畜産業に携わっている人の雇用を生み出そう」という風潮が広まっているそうです。日本でもそれが広まれば、いろんな働き方が見出せると思います。

一ノ瀬メイ:そもそも「みんながお肉を食べ過ぎていること」が問題だと思ってます。「地球上に住める環境がなくなるかもしれないのに、お肉を食べ続けることを正当化できる理由はある?」って思ってしまうんです。でも何もみんなが完璧にヴィーガンにならなくても、世界中の人たちが食事を70%菜食に切り替えれば、環境破壊の原因となる温室効果ガスが削減できるとも言われているんですよ。

金子隼:えっ!じゃあ全体の食事のうち、30%しかお肉が食べられないってことですか!?

一ノ瀬メイ:全員を平均したら、ってことですけどね。私は100%ヴィーガンなので、その分金子くんがちょっと多く食べても大丈夫(笑)

牛・豚・鶏の1人1年当たりの国内供給量


日本人の畜産物需要の推移を見ると、1960年には1人1年当たりわずか3.5kgだった食肉(牛肉・豚肉・鶏肉)供給量は、1995年には27.9kg、2019年は33.5kgにまで増加。一方、日本人の主食である米は大幅に減少している。
出典:独立行政法人農畜産業振興機構 食肉消費の構成割合(1985〜2019年)/食肉の消費動向について(1960〜2013年)


ーーたしかに現代では、肉を食べることが当たり前になり過ぎていますよね。コンビニやスーパーでも肉を使ったジャンクフードが安く売られていますし、動物性のものだと意識することもなく、手軽だという理由から選んでいることも多いかもしれません。

金子隼:たしかに……。僕も豆腐とか大豆食品は大好きなので、間食でチキンや肉まんなどを食べないとか、プロテインをヴィーガン用に変えるとか、そういうところからならはじめられる気がします。


食も多様性の時代! 知ることで意識が変わっていく




ーーヴィーガンではない友達や家族と、一緒に外食に行けなくて困ることはないですか?

上野美桜:それはありますね。私は家族もヴィーガンではないですし……。友達から焼肉に誘われることもあるんですが、私だけ参加できないのは悲しいです。

一ノ瀬メイ:焼肉屋だと肉を食べる以外の選択肢がないから困りますね。

上野美桜:焼肉屋は、肉を焼く匂いだけで無理なんです……。

一ノ瀬メイ:わかる。私もヴィーガンになってから肉を焼く匂いがダメになりました。牛の死骸を焼いてるっていう感覚も芽生えちゃって。

金子隼:その意識の変化ってすごいですね。今の僕にはちょっと理解できないです……。実は今日もこの後、後輩と「焼肉行こうか!」って約束してたんですけど、罪悪感がすごい。

一ノ瀬メイ:世の中には植物性の肉(ベジミート)もあるので、焼肉屋でもそういう商品を販売してくれたらなと思います。

ーー植物性の食べ物も美味しいということがわかれば、普段から食べたいと思う人が増えるかもしれませんよね。金子くんは、今日話してみてどう思いましたか?

金子隼:友達にも話してみようってめっちゃ思いましたね! 今までこういうことを意識して生活していなくて、自分の中では肉を食べることが当たり前だったので。自分の食事も環境に関わっているということを知れて、いい影響を受けました。政府が……とまではいかなくても、さまざまな地域などでもっとヴィーガンについて取り上げられれば、人々の知る機会が増えるんじゃないかな、とも思いました。

一ノ瀬メイ:すごい! 希望が見えてきます!


栄養学の視点からみたヴィーガン食


近畿大学農学部 食品栄養学科の米谷 俊(こめたに たかし) 教授に、栄養学の視点からコメントをいただきました。

ヴィーガン食であろうと、ローカーボ食であろうと、肉食であろうと、昆虫食であろうと、食事は個人の選択によるものですので、 全体のバランスが取れておれば問題はないと思います。植物性食品だけで作った食事でも、工夫すれば栄養は充足できると思います。
むしろ、栄養に無関心である人(あるいは、ダイエットを優先しすぎる人など)の方が、栄養の偏りが心配です。栄養に関心のない人は、どんな食事でも栄養が偏る危険性はありますし(低栄養も過栄養も)、植物性食品だけの食事でも、きちんと考えて食べている人は、その危険性は少ないと思います。


最後に



「私たちは気候変動を止めることができる最後の世代」というメッセージを添えて一ノ瀬さんがSNSに投稿した写真。

普段何気なく口にしている食材が私たちのもとへたどり着くまでには、生産や流通などさまざまな背景があります。もちろん体質やライフスタイルの違いにより、ひとりひとりの食生活は大きく異なりますが、「自分がこれを食べることによって、環境にどのような影響を与えるのだろう?」と意識してみることが、サステナブルな食生活の第一歩に繋がるのではないでしょうか。

たとえば、11月1日は「世界ヴィーガンデー」に制定されており、11月は「世界ヴィーガン月間」とされています。ヴィーガン食にチャレンジしてみたいという人は、まずはこの1ヶ月間の食事を切り替えてみてはいかでしょう? いきなり肉を断ち切るのに抵抗があるのなら、毎週月曜日だけは意識して肉を食べないようにするという、「ミートフリーマンデー」に挑戦してみるのもおすすめ。週に一度の食事を変えるだけでも、食生活を意識するきっかけになるはずですよ。


取材・構成:トミモトリエ
文:藤間紗花
企画・編集:人間編集部

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