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産学連携

2019.12.10

SDGs×福島復興支援!古着原料の「ポリエステル媒地」で栽培したアンスリウムが象徴する未来の農業

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
学生ライター
環境保護
社会貢献

ハート形の観葉植物「アンスリウム」。現在、福島県川俣町の復興シンボルとして、古着を植物栽培用の培地として再利用する「ポリエステル媒地」を利用して栽培されているのをご存知ですか?そして、このポリエステル媒地は、新時代のSDGs農業としてCO2排出の削減にもつながっているのです。近畿大学の学生が、古着をリサイクルし、川俣町でアンスリウム植え付けを体験してきました!

みなさん、こんにちは。
近畿大学国際学部3年の寺浦成美です。

私は、「服と共に生きる」をスローガンに、衣服や繊維に特化したSDGs推進活動をする学生団体「L.W.W(Live With Wear)」に所属しています。

6月にはパタゴニアとコラボレーションしたイベントを開催しました!

服を修理しよう!パタゴニア×近大「Worn Wear College Tour」で責任のある消費を考える

今回私たちは、古着のポリエステル繊維をリサイクルして土壌の代わりにする「ポリエステル媒地」を使用した植物栽培プロジェクトに挑戦しました。


土のかわりに服をリサイクルして植物を育てる!?




ポリエステル媒地(別称:ポリエステル繊維媒地/超軽量リサイクル繊維培地)は、アースコンシャス株式会社と近畿大学社会連携推進センターの田中尚道教授が共同開発した、植物栽培用の人工培地です。

古着をリサイクルしたポリエステル繊維を主体に、用途に応じて保肥性を高める人工ゼオライト等を特殊配合した人工培地で、土壌に比べて軽量で、排水性、保水性、通気性、肥料の保持力などに優れ、土壌害虫の発生を抑えることもできます。

土壌では、同じ場所で栽培し続けると連作障害が起こりますが、ポリエステル媒地は、水で洗い流せば連続して10年使用することが可能。エコで持続可能な栽培方法として、日本で広まりつつあります。

※一般的に使用される従来の土は「培地」と呼ばれていますが、ポリエステルでは、「媒地」という言葉が使われいます。どのような違いがあるのかというと、ポリエステル媒地は衣類リサイクルによってできているので、本来土が持っている栄養素が全くありません。そのため、ポリエステルに肥料を加えることで「触媒」となり、農作物の影響に影響を与える仕組みとなっています。

一般的な土とポリエステル媒地の比較
一般的な土ポリエステル媒地
耐久性有機質土壌の場合、経年変化に伴い、土がやせてしまう。また、目減りによる追土が必要。無機質であるため分解されず、永続的に使用できる。
水管理容易にできるが、長期間使用することで排水機能が低下し、浸透性が悪くなる。
また、土が硬度化することで水の通り道ができ全体に水を吸収できなくなる。
1.乾燥状態から瞬時に全体に水を吸収できる。
2.通気性、排水性が良く必要な水分以外は排水するので根腐れが起きない。
pHと病害虫一般土壌にはたくさんの種類がある。
育苗初期の段階では、どれも安定したpH(中性の7.0前後)を保っているが、経年変化に伴い酸性化土壌になることが多く、病害虫の発生の原因となる。
1.pH5.5~6.5の弱酸性から微酸性で、長期使用しても安定している。
2.弱酸性から微酸性のため、病害虫の発生が抑制される。
植え替え最低3年に一度は入れ替えをお勧め。
交換しない場合は、追土・追肥をし、均一に混ぜ合わせて植え戻す。
植え替え時も、培地を取り除く必要がなく手間がかからない。切り花等の長期間同じ培地で栽培するものにも適している
温室での使用特に鉢内の温度に細心の注意が必要である。
室内温度を上げても表面温度は上がるが、鉢内(土壌内)の温度がなかなか上がらない。
温度や湿度に影響されずに、安定した品質を保ち、根腐れ、病害虫等の発生被害を抑制する。
重量40L 約48㎏40L 約5㎏
流出プランターに入れて水やりをするとプランターから流れ出る。プランターに入れて水やりしても流れ出ない。
汚れ手で触れば汚れる。手が汚れない。

※ポリエステル媒地は、特許第3679069号(植物栽培用の植え込み材とその製造方法)、特許第3837147号(洋ラン用の植え込み材)、さらにマットやシートのリサイクル繊維など16件の特許を取得しています。



近畿大学は、総合大学としての研究力を生かし、2012年に「”オール近大”川俣町復興支援プロジェクト」を立ち上げ、原発事故の影響を受けた福島県川俣町の復興支援を行っています。その一環として、2013年から川俣町にビニールハウスを設置し、このポリエステル媒地を利用したアンスリウム栽培支援と研究を行っています。



アンスリウムはハートのような形をした観葉植物で、ハワイでは「Heart of Hawaii」といわれ、バレンタインデーに贈られる花として親しまれています。日本国内産の流通が少なく、年間を通して出荷できることから、ポリエステル媒地を使ってアンスリウムを栽培することが川俣町の農業振興や風評被害の払拭につながると考えました。最近では、川俣町で育てられたアンスリウムが「ミス・グランド・ジャパン」の公式フラワーにも採用されています(2017年)。

※ミス・グランド・ジャパン:世界四大ミスコンテストの一つ「ミス・グランド・インターナショナル」の日本大会の名称

そして、今年10月、川俣町でのアンスリウム栽培において「二酸化炭素(CO2)施肥制御技術」を近畿大学と共同開発した新日本空調株式会社が、創立50周年の節目に作業服をリニューアル。破棄されるはずであった旧作業服をポリエステル媒地にリサイクルすることになりました。私たちL.W.Wが挑戦したのは、その旧作業服上下合わせて1200着をポリエステル媒地にリサイクルする作業のお手伝い。実際に川俣町に行きアンスリウムの植え付けも体験してきました!


古着がポリエステル媒地になるまで




L.W.Wのメンバーが集まり、授業の合間や休み時間を利用して約3ヶ月がかりで新日本空調株式会社の旧作業服1,200着の解体作業。全てのボタンやファスナーを外し、原料となる古着の不純物を除去し、ポリエステル資源にリサイクルできる状態にしました。



その後、ポリエステル媒地の製造をするアースコンシャス株式会社のフェルト工場に引き取ってもらいました。



今回は同じ素材の作業服でしたが、様々な素材の古着からポリエステル素材を選別・分別した後、素材を細かく破砕。粉砕した繊維を開繊し、綿の状態(反毛繊維)にします。



その後、反毛繊維をまずはフェルトとしてシート状に加工します。



実は、通常の制作工程では、全てのリサイクル衣服がポリエステル媒地になるのではなく、一旦様々な製品に使われるフェルトの素材として加工され、そのフェルトを製品としてカットした際に出る、端切れを粉砕しポリエステル媒地にするのです。
今回は全てがポリエステル媒地になりました。



廃棄されてしまうはずだったフェルトの端切れ部分を利用した、本当に無駄のないエコシステムなんです。



シートの端切れを細かくチップ状に粉砕カットし、ブレンド副資材として、木炭、Fe型 人工ゼオライト、真珠岩パーライト、黒曜石パーライトを加えてブレンド加工して、ようやくポリエステル媒地になります。



こちらが完成したポリエステル媒地。これを、福島県川俣町のアンスリウム栽培ハウスに持っていきます。


超現代的!スマホで操作できるアンスリウム栽培ハウス




11月、私たちが解体した作業服からできたポリエステル媒地を、川俣町山木屋地区の農家谷口豪樹さんのアンスリウム栽培ハウスで地詰め作業をしました。



ポリエステル媒地は従来の土と比べ約1/10の重さなので、軽くて、持ち運びにも地詰め作業も負担が大幅に軽減します。



そしてアンスリウムの苗植え作業もしました。苗になるまではポリエステル媒地を入れた鉢の中で育て、植え替えをします。



この品種はオランダの苗だそうで、私たちが植えたものは黒色のアンスリウムになるそうです!色が豊富なのもアンスリウムの特徴です。



まずは、苗についているポリエステル媒地の部分をある程度取り、谷口さんに植える向きや1区間あたりの間隔などを教わりながらアンスリウムの植え付けをしました。



驚いたのは水やりの方法!なんとスマホから操作することができるのです。



時間帯や水の量なども設定が可能で、徹底した管理ができます。



黒色のパイプから水が出ているのが見えますか?
スマホで操作してこのように水やりをすることができるのです。



また、アンスリウム栽培にとって大切なのが温度管理。ハウス内が30℃を越えると天井からミストが出るようになっていたり、温度によって天井が自動的に開閉したり、超現代的にハウス内を管理することが可能なのです!

また、光合成のためにハウス内に二酸化炭素を取り入れることも大切なので、栽培者の谷口さんはどんなに寒くても毎朝6時にハウスを開けに行くそうです。冬にはマイナス15℃にもなるそうですが、「朝の空気を感じるのもとてもいいですよ」とおっしゃっていました。


谷口さんハウス前の景色

今回が私にとって初めての福島訪問でしたが、本当に自然が多く綺麗な場所だなと感じました。谷口さんがおっしゃっていたように、毎日この澄んだ朝の空気を感じられるのはとても気持ちいいだろうなと思いました。


脱サラして福島でアンスリウム栽培!栽培者の谷口さん




ーーなぜアンスリウム栽培を始めたのですか?

奥さんの家族が福島で菊農家をやっていたのが農家になるきっかけでした。もともとは埼玉に住んでいましたが、東日本大震災から2年後に脱サラして福島に移住したんです。そこで、"オール近大"川俣町復興支援プロジェクトと出合い、ポリエステル媒地でのアンスリウム栽培を昨年10月より始めました。



ーーポリエステル媒地の魅力は?

土壌汚染の被害を受けないというところが魅力的でした。震災で土壌汚染が問題となり、農業が厳しい状況にありましたが、ポリエステル媒地を利用することで改善されました。
また、虫が湧きにくいことで安定した収穫量が確保できるということです。

さらに、ポリエステル媒地は永続的に使えるともいわれており、10年連続使用が可能なところです。また、一度使った後そのまま使えるというところも大きな魅力です。土壌だと使った後、次に使うために手間が必要ですが、ポリエステル媒地だとその必要がありません。



ーーアンスリウム栽培で苦労するところは?

アンスリウムは繊細で、傷がつきやすいため、収穫の際には注意しています。
ポリエステル媒地に関しては、乾いている状態であるため、水やりの際にそのまま水やりをしてしまうと、水がそのまますり抜けてしまいます。なので、その前にポリエステル媒地をぎゅっとして少し固める必要があります。そうすることで、水が浸透してくれます。

ーー風評被害の影響はありますか?

アンスリウムも1年前までは、全然知られておらず、ソーシャルメディアを利用して色々なことを発信するようにして頑張ってきました。

でも、福島で生産しているというだけで危険と思う人も中にはいて。実際に、小さなお子さんがいる家庭は特に、福島産のものと違う産地のものが横に並んでいたら違う方を選ぶと思うんです。
でも、実際は福島のものって県をあげて厳密に検査されているので、実際は他の検査されていない産地のものよりも安全と言う事実もあるんですよね。
本当に少しずつですけど、福島も大丈夫だと元気にやっているのだと、たくさんの方々の支援で農業ができているので、伝えていけたらと思っています。


新時代SDGs農業!リサイクル、そしてCO2削減




今回は、廃棄されるはずだった作業服をリサイクルすることで、ポリエステル媒地として利用しましたが、もし作業服1200着を焼却した場合、1kgあたり3.14kgの地球温暖化の一因とされる炭酸ガス(CO2)が発生します。

古着の作業服1200着が約1200kgの繊維素材となり、約1200kgのポリエステル媒地になりました。

今回、谷口さんハウスに持っていったのはこのうち50kgになります。
ポリエステル媒地50kg×3.14kg=157kgの炭酸ガスの排出が削減されました。

服を焼却するとたくさんの炭酸ガスが出てしまいますが、ポリエステル媒地で利用できるようにリサイクルすることで炭酸ガスの排出を減らせるのです!

また、それを液化天然ガスに換算すると、液化天然ガス(LNG)55000kgを燃やした時に排出される二酸化炭素の発生量を削減できたことになります。

今回の作業服でできた残りのポリエステル媒地は、近畿大学東大阪キャンパス内で使用する企画を立てているところです。



破棄されるはずであった作業服がポリエステル媒地として利用され、アンスリウムを育て復興のシンボルとなるだけでなく、CO2削減など、人にも地球にも優しく、地球温暖ガス削減にも貢献しているということになります。

そしてこの今回のプロジェクトはSDGsのゴール、
No.7 エネルギーをみんなにそしてグリーンに
No.9 産業と技術革新の基盤をつくろう
No.12 つかう責任つくる責任
No.13 気候変動に具体的な対策を
No.17 パートナーシップで目標を達成しよう
にそっています。

利益のことだけを考えるのではなく、SDGs農業という新しい時代になっているのだということがわかります。

※SDGs:「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。2015年9月に国連で開かれたサミットにて定められた、現代社会における様々な社会問題を解決するための国際社会共通の目標のこと。


まとめ




ポリエステル媒地は日本で広まりつつあります。アンスリウムだけではなく、イチゴやトマトなどの食料も栽培されています。この新しいリサイクルシステムで、衣類リサイクル、CO2削減、植物栽培などが可能なことがわかりました。さらに、ファストファッション時代と呼ばれる現代に発生している衣服の大量消費や、地球温暖化、土壌汚染、水質汚染など様々な問題に貢献でき、SDGsにも当てはまる、人にも地球にも優しいリサイクルシステムなのです。

利益を求める時代ではなく、これからの未来を考えた責任のある行動をする時代。これからの未来を担うのは私たちです。たとえ小さなことでも地球に優しい行動をすることで私たちの未来は少しずつよくなっていくと信じています。


(おわり)


この記事を書いた人



寺浦成美

近畿大学 国際学部 国際学科 グローバル専攻 3年
1月11日生まれ。高校1年時にニュージーランドへ1カ月、大学1年時にアメリカのフロリダ州マイアミへ8カ月ほど留学していました。趣味は旅行、カフェ巡り、ショッピング、音楽です。


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    編集:人間編集部

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