2019.08.27
海を守ろう!マイアミと須磨海岸の「海洋汚染」に対するボランティア体験で気づいたこと
- Kindai Picks編集部
2549 View
今年の夏も暑いですね!そんな日は海で泳ぎたい!と感じるのは島国に囲まれた私たちならではの感覚なのでしょうか。しかし、そんな身近なはずな海が海洋汚染により汚され続けています。綺麗な海を取り戻そうと、各国で活躍している市民ボランティアに注目しました。
※トップ画像:©ぱくたそ / photo by 宮崎大輔
この記事をシェア
こんにちは、国際学部3年の寺浦成美です!
現在夏休み真っ只中。夏といえば海。透き通るような綺麗な海で気持ちよく泳ぎたいですよね。すでに海に行った人も多いのではないでしょうか。
日本は海に囲まれた島国で、美味しい魚が食べられたり綺麗な海で海水浴を楽しめたりと、様々な恩恵を受けています。しかし、皆さんはどこまで海の現状について理解していますか?
私は、大学1年生の時にアメリカのフロリダ州マイアミに留学し、「Miami Waterkeeper(マイアミ・ウォーターキーパー)」というNPO法人との出会いをきっかけに、海洋汚染について深く考えることになりました。
海洋汚染の現状、8割は街から来ている
©ぱくたそ / photo by 宮崎大輔
世界では少なくとも毎年800万トンのプラスチックごみが海に流出し、2050年までにプラスチックごみの総重量が海に生息する魚を超えると予想されている※のをご存知でしょうか?
※出典:「海洋ごみとマイクロプラスチックに関する環境省の取組」(環境省)
現在、約1.8兆のプラスチックごみが海にあると推測され、またそのようなごみや破片を餌と間違えて生き物たちが口にしてしまい、たくさんの生き物が命を落としているという残酷な現状があります。
そのうち9割が「マイクロプラスチック」といわれるプラスチックごみの小さな破片で、海洋生物に限らず鳥などがエサと間違えて食べてしまっている状況が問題になっています。
これは、人間にも関連している問題なのです。なぜなら、このようなマイクロプラスチックなどのごみを食べてしまっている魚や貝などを、私たち人間が食べているからです。
実際に、2018年10月に開催された「欧州消化器病週間(UEG Week)」で、オーストラリアのウィーン医科大学の胃腸病学者であるフィリップ・シュワブル氏が「研究に協力した8人の糞便から、マイクロプラスチックが発見された」と発表しました。
更に日本では、2011年3月に東日本大震災にともなって発生した福島第一原発事故による海洋汚染も忘れてはいけません。福島第一原発事故による放射線物質は、8割が海に放出されたといわれています。さらに、増え続ける汚染水のため増設されてきたタンクが、2022年夏頃にはタンクが満タンになる見通しだと発表されました。
他にも、生活汚染水、工場や自動車のオイルなども川から海に流出しており、海洋汚染は約80%が陸からの汚染が原因だといわれています。
※出典:「持続可能な開発目標」(SDGs)について(外務省)
そこで、2015年9月に国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」※のNO.14「海の豊かを守ろう」というゴールのなかで『2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する』といった具体的な目標が掲げられ、世界がこの目標に向けて動いています。
※SDGs:2015年9月に国連サミットで採択された、「2030年までに達成するべき17のゴール」。2015年から2030年までの長期的な開発の指針として採択された国際社会共通の目標です。
「ウォーターキーパー」という市民の目
私の知るマイアミのビーチはとても綺麗な印象ですが、実は10年ほど前は水質汚染問題で、健康被害が出るなど、遊泳も困難な状態だったそうです。
マイアミ・ビーチの水質が改善された理由の一つに、冒頭で紹介した「Miami Waterkeeper(マイアミ・ウォーターキーパー)」の存在があります。「Waterkeeper Alliance(ウォーターキーパーアライアンス)」※と呼ばれる水質保護団体の中の一つで、マイアミだけでなく、世界中で様々なウォーターキーパーが活躍しています。
※Waterkeeper Alliance:1999年に設立された環境団体で、Riverkeeper、Baykeeper、Soundkeeper、およびその他の関連する「keeper」という名前の組織が増え続け、現在世界中で300以上の組織や関連会社があります。
ウォーターキーパー運動は、1966年にニューヨークのハドソン川で、川を破壊していた産業汚染者に対応するために立ち上がった団体「Riverkeeper(リバーキーパー)」が、水質汚染をパトロールし報告するというアイデアを市民のコミュニティーに協力を求めたのが始まりです。世界中のWaterkeeperグループを立ち上げるよう各国の人々に刺激を与えました。
そして、2010年に発足された「マイアミ・ウォーターキーパー」は、マイアミ・ビーチを人間にも海の生き物にもよい水質にすることを目指して、海洋生態系を保護することや海面上昇に備えることにも取り組んでいます。
2019年1月から、市民500人の目でビーチを監視・報告するプロジェクト「1000 eyes on the water」も本格始動しました。
1000個の目は、つまり500人の市民を意味します。市民がマイアミウォーターキーパーのメンバーとなり、普段から海や湾、川をモニタリングすることで、異変や気づきをレポートにし、ウォーターキーパーに報告することで、問題を解決し、市民みんなで綺麗な海を保とうというボランティア型のウォーターパトロール市民プロジェクトです。
以前は、何か普段と違うなと気づいても「それが本当に問題なのかわからない」「誰に伝えればいいのかがわからない」という状況にありました。
説明会の参加者の一人が、「あるレストランの裏から汚水が川に流出しているのが見えて、レストランに電話したけど、わかったと言われただけでなにも動いてくれなかった。」と言っていました。
説明会の最後に渡されたワッペン。マイアミをウォーターキーパーの一員になった証です。
現在(2019年7月)では、10歳から80歳の192人がメンバーになっています。
パトロールの仕方はもちろん自由。散歩がてらのウォーキング、ボート、カヤック、サイクリング、各々が自分の好きなスタイルでパトロールしています。
日本も負けていない!市民の手で「須磨海岸」が国際環境認証を取得
「日本はボランティア意識が低い」と言われていますが、日本も負けていません。
かつて「汚い」といわれ続けていた兵庫県神戸市須磨区の「須磨海水浴場」が、市民の努力によって今年2019年4月に、環境への対応に優れた海水浴場の国際環境認証「ブルーフラッグ」※を取得したのをご存知でしょうか?
※ブルーフラッグ:デンマークに本部を置く国際環境教育基金(FEE)が実施する国際環境認証プログラム。世界45カ国4,559のビーチ・マリーナ等で取得されており、 水質、環境マネジメント、環境教育、安全とサービスについての基準を達成することによって与えられます。
国内でブルーフラッグを取得しているのは、須磨の他に由比ヶ浜海水浴場(神奈川県)、若狭和田海水浴場(福井県)、本須賀海水浴場(千葉県)のみ。関西では初です。
NPO法人「神戸海さくら」※が中心となり、市民ボランティアが月に1度須磨海水浴場でごみ拾いをしているのです。さらに、イベントが行われる際もごみステーションを設置したり、イベント後にごみ拾い活動をしています。
※「神戸海さくら」は日本各地で活動しているNPO法人「海さくら」の一つ。
そこで、神戸海さくらによる「須磨ビーチフェスタ2019」イベント後のビーチクリーンに参加してきました。
私も須磨の海水浴場は汚いというイメージがあり……今まで行ったことがなかったのですが。到着してビーチを見た時はとても綺麗で驚きました。
しかし、イベント終了後にいざごみ拾いを始めると、ほんの20分ほどでこれだけの量のごみを拾いました。波際やビーチには、お菓子のごみやプラスチックの破片、タバコの吸い殻がたくさん捨てられていました。
神戸海さくらの代表の森口さんにお話を伺うと「須磨海岸は昔から汚いといわれ続けていたけど、誰も行動する人はいなかった。2014年にfacebookで仲間を集めて活動をはじめた」とおっしゃっていました。
私たちができることとは?
ブルーフラッグは毎年審査が行われるので水質の維持には多くのボランティアの力が必要です。そのため、ビーチを綺麗に保とうという行動と意識の継続が大切になります。
私たち学生ができることは、限られているかもしれません。ですが、海水汚染の現状を知り、意識を変え、行動に移すことは誰にでもできます。
現在、神戸海さくらのビーチクリーンに参加する方は「シルバーボランティア」といわれる定年退職した方たちが多いそうです。しかし、学生だからこそ、色々なボランティアに参加して実際に経験してみることが大事だと思います。「ソーシャルメディアでの発信ができる若い世代だからこそできることがある」と森口さんもおっしゃっていました。
何より、汚い海よりも、透き通るような綺麗な海で気持ちよく泳ぎたいですよね!
ボランティア団体に所属したりビーチクリーンに参加するだけでなく、街中にごみを捨てない、友だちがごみを捨てていたら注意する、水質に影響を与えにくい日焼け止めを使う……など、一人ひとりの小さな行動も大切です。
環境に対する意識を習慣的に持つのは難しいと思いますが、誰かが捨てた街中の小さなごみが海に流れ、自分たちの身体に影響を与えているということを忘れずに生活したいですね。
(終わり)
ライタープロフィール
寺浦 成美(てらうら なるみ)
近畿大学 国際学部 国際学科 グローバル専攻 3年
1月11日生まれ。高校1年時にニュージーランドへ1カ月、大学1年時にアメリカのフロリダ州マイアミへ8カ月ほど留学していました。趣味は旅行、カフェ巡り、ショッピング、音楽です。
▼寺浦さんの記事
・服を修理しよう!パタゴニア×近大「Worn Wear College Tour」で責任のある消費を考える
・過激な不倫報道はなぜ多いのか? 社会心理学の先生に聞く日本の報道のあり方
・25歳・日本人クリエイターの挑戦!NY発のフェアトレードブランドで「ファストファッション」の問題を解決する
・旅で人生が変わる!?就職内定を蹴ってまでバックパッカーになった理由
・出発前にチェックしておくべき留学成功の秘訣 先輩の経験に学ぶ。出発前にチェックしておくべき留学成功の秘訣
編集:人間編集部
この記事をシェア