2019.07.30
服を修理しよう!パタゴニア×近大「Worn Wear College Tour」で責任のある消費を考える
- Kindai Picks編集部
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「壊れたら、修理しよう!」を合言葉に、5月末〜7月中旬にかけてパタゴニアが全国各地の11大学を訪問した「Worn Wear College Tour」。ツアー先のひとつとして、6月17日・18日に近畿大学東大阪キャンパスにパタゴニアのリペアトラックが到着し、多くの学生の注目を集めました。更に、連動企画として「責任のある消費」を考える様々な展示やスピーカーイベントを実施。運営に携わった学生団体L.W.Wのスタッフがその様子をお伝えします。
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私は、現在「L.W.W(Live With Wear)」という、2019年1月に設立された近畿大学社会推進センターの学生団体の一員として活動しています。
きっかけは、2018年に書いた、NYへ行ってフェアトレードブランドを立ち上げた日本人クリエイターを取材した記事。
▶︎25歳・日本人クリエイターの挑戦!NY発のフェアトレードブランドで「ファストファッション」の問題を解決する
この記事を読んだ団体の先輩が声をかけてくださったのです。
私たちL.W.Wは、「服と共に生きる」をスローガンに掲げ、みんなに服をもっと大切にしてもらうための活動を行っています。
そして今回、アウトドアブランドのパタゴニア(patagonia)が、服を修理するリペアトラックで日本全国11大学を回る「Worn Wear College Tour」プロジェクトで近畿大学に来ることになり、L.W.Wがそのサポートをさせてもらうことに!このプロジェクトに連動したイベントの企画を実施しました。
Worn Wearプロジェクトとは?
パタゴニアが服の修理を行うプロジェクト「Worn Wear」は、2013年にアメリカでスタートし、2015年にはアメリカツアーが行われました。このプロジェクトは、パタゴニアのサーフ・アンバサダーのキースさんと妻のローレンさんによって始まり、穴が空いてしまったり破れてしまった服を修理して、少しでも長く着ることの大切さを知ってもらおうというものです。
2015年のツアーで使用されたアメリカのリペアカー
「新品よりもずっといい」をキャッチフレーズに、新品のウェアに買い替えるのではなく、衣服の寿命を延ばすことで消費を抑えることにも繋がり、地球へのインパクトを小さくすることができるということを伝えています。
日本には2019年1月に上陸し、日本の7ヶ所のスキー場を回るツアー「Worn Wear Snow Tour」が行われました。
そして、5月から「Worn Wear College Tour」と題し、南から北へ日本全国11大学を旅しながら服をリペアするツアーが始まったのです。
聖心女子大学から始まり、長崎大学、広島修道大学、徳島大学、京都大学、近畿大学、名城大学、慶應義塾大学(湘南藤沢キャンパス)、千葉商科大学、尚絅学院大学、北海道大学まで回ります
服を修理し、一着を長く着ることが、消費を抑え、地球に与える影響を削減できる重要な行動であるということ。また、これからの未来を担う私たち大学生と「責任ある消費」について考えるということもこのツアーの目的です。
パタゴニアのリペアトラックが近大に!
アカデミックシアターの前にきたリペアカーに服を預けようと並ぶ学生たち
そしてついに、6月17日・18日に近畿大学東大阪キャンパスへパタゴニアのリペアカーが到着!
このリペアカーにはミシンや糸、ステッカーや布など、破れた服やジーンズをリペアするための道具が全て積まれています。
「Worn Wear College Tour」では、ウェアのブランドを問わずに、破れた服や穴が空いてしまったジーンズなどを一人1着まで無料で修理してくれます。
修理はパタゴニアクルーがミシンでしてくれる場合と、セルフリペアテーブルでパタゴニアスタッフと一緒に、ステッカーなどで修理する場合があります。どちらにするかは始めに服の状態を見ながら、スタッフと相談して決めることができます。
私は、父が10年ほど愛用しているスキーウェアをリペアしてもらいました!
父が「ところどころ穴が空いて水が入ってくる」と言っていたので、この可愛いステッカーを傷に貼り、穴を防ぐことにしました。
可愛いステッカーを選ぶのが楽しい!
これでもう水が入ることなく、スキーを存分に楽しんでもらえると思います!
近畿大学でのツアーでは、2日間で1053名(ステッカー配布数)の学生が参加し、86着の服をリペアしたそうです。
責任のある消費とは?Worn Wearスタッフにインタビュー
「Worn Wear College Tour」のリーダーである、パタゴニア日本支社のロジャースさんにお話を伺いました。
なんと、ロジャースさんが着ていらっしゃるこのアロハシャツ、入社した19年前に購入したものだそうです。長く着る、愛着のある、まさにこのツアーにぴったりの服です。
ーー今回、どうして日本の大学を回ろうということになったのですか?
これからの未来を担う大学生と直接関わることで、アイデアや生きる力、地球環境など、様々なことについて共有し、わかち合えると思ったからです。これからの未来を生きていく、作り上げていくのは今の若い人たちであると思っているのです。
ーーWorn Wearのメンバーはどのように集まっているのですか?
今回は、Worn Wearのスタッフに加え、南船場と中之島にあるパタゴニア店舗のスタッフが参加しています。このツアーでのメンバーは毎回異なります。その地域でのコミュニティーを大事にしたいので、各大学に近い店舗のスタッフが参加しています。
ーー私たち大学生にメッセージお願いします。
「責任のある消費」について考えてもらいたいと思います。
ものを買うとき、どこで、どのように、どんな人が作ったものなのか?そのものの背景を知ること。また、本当に必要なものかどうかを買う前に自分自身に問いかけて欲しいですね。
「自分には何が必要か」という目利きができたら、環境エネルギーやお金の使い方も変わってくると思っています。
現在、学生に限らず多くの人が、企業が売りたいものをそのまま疑問を持つことなく買っている傾向にあると思います。そのような中で、こういった目利き、見極めができるようになれば、消費を抑えること、すなわち「責任のある消費」に繋がると思います。
「学生が企業を育てていく」という考えも出てくるのではと思っています。学生の持つ影響力を生かして欲しいです。
今回のツアーを引っ張るパタゴニア日本支社の環境・社会部門シニアディレクターの佐藤さん、Worn Wear College Tour担当のロジャースさんと近畿大学の学生団体L.W.Wの代表3人
ファッション業界の現状・真実とは?
私たちL.W.Wの活動テーマである「ファストファッション時代といわれる現在を生きる私たちに、ファッションの真実を知ってもらい、もっと服を大切にしてもらう」という思いを伝えるため、L.W.Wとパタゴニアの共同企画で「Worn Wear 」と連動した様々なイベントを開催しました。
経年変化を通して、ファッションを楽しもう
1日目は、セレクトショップ経営者兼ファッション系YouTuberのハズムさんによるトークショー「経年変化を通して、ファッションを楽しもう」。
ハズムさんは、経年変化※を楽しむということを大事にしています。
※経年変化:年月が経つうちに製品の品質・性能が変化すること。 特に、摩耗・腐食などで性能が劣化すること。 また、時間の経過とともに住居が損耗すること。
レザーやジーンズなど、長く愛用することで経年変化をファッションとして楽しむことができるのです。衣服を単なる消費物として捉えるのではなく、私たちとともに変化し共に生きるパートナーとして考えることが大切です。
気候危機への取り組み〜パタゴニアが考える企業の責任〜
2日目の1部では、パタゴニア日本支社の環境・社会部門シニアディレクターの佐藤さんと近畿大学の社会連携推進センター安田教授によるスピーカーイベント「気候危機への取り組み〜パタゴニアが考える企業の責任〜」。スピーカーイベントの後には、「責任ある消費」についてみんなでディスカッションを行いました。
私が参加したグループディスカッションの中で、「欲しい服がファストファッションであったり、アンフェアトレードが行われているブランドだった場合どうする?」という質問に対して、1人は「買う」と即答しましたが、他のメンバーは悩んでいました。
それに対して、佐藤さんは「買いたい服を買うことに何も問題はない、ファッションは楽しむものであって、環境がどうとかばかり意識しているとファッションを楽しめなくなる。環境にも配慮することとファッションを楽しむことのバランスがとても大切だ。」とおしゃっていました。
そのためにどうすればいいのか。「お客様センターってありますよね、会社ってそれを結構大切にしているのです。お客様のご意見によって新たな取り組みや改善策が生まれます。」このブランドが好きで、服も買いたいから、もっとこうして欲しいなど直接ブランドに伝えるというのも一つの解決策であるとうことを佐藤さんはおっしゃっていました。実際に、パタゴニアもお客様の声を一つひとつ集めて、社員と共有しているそうです。
最後に自分がこれからできる「責任ある消費」を書き全員で共有し、宣言しました。
買う前に本当に必要か考える、一着の服と思いっきり遊んで愛着を持って着る、流行に惑わされないなど、誰でも今日から簡単に実践できることがたくさんあるのだと、文字にすることで気付きました。
どのくらいの服を持っていますか?と聞かれて、正確に答えられる人は少ないと思います。クローゼットに入ったままの着られていない服もきっとあるでしょう。
一度クローゼットの中を見返して所持している衣服を把握することで、自分が本当に必要なものが見えてくると思います。
そして、今後服を買うときは、みんなで宣言したことを忘れずに行動することで、「責任ある消費」ができるのではと思いました。
ビジネスと社会貢献の両立〜繊維業界の未来〜
2部では株式会社ヤギの金井さん、神戸さんによるトークショー「ビジネスと社会貢献の両立〜繊維業界の未来〜」が行われました。
環境への取り組みはもちろんですが、企業としてビジネスの目線は必要不可欠です。そこで今回は、どのようにビジネスとエシカル(地球やヒトに優しい環境保全のこと)を両立しているのかということをテーマとしたトークショーでした。
株式会社ヤギでは、オーガニックコットン、フォレシカ、リサイカラー、リサイクルダウン、リプロパークなどといった取り組みが行われているようです。
企業はそれぞれのステップで、持続可能な社会の実現に向かって進んでいることがわかりました。私たちが今後就職活動する際にはこのような企業の取り組み方にも注目したいですね。
ファッション業界の現状とは?
他にもFashion Truthをテーマに様々な展示やショップが実学ホール内で行われていました。
実学ホールの入り口には山積みにした服を展示しました。これらは近大生を中心として、いらなくなった服を集めた結果です。3ヶ月ほどで約400着ほど集まりました。
これをどうするか?
私たちの目標は、毎年このようなイベントをしていく中で、いつかこの山がなくなるように、廃棄される服がゼロになるようにすることです。
今回、ここに集められた古着は、リサイクルに出すことで、ポリエステル培地となります。
そしてファッション業界の真実を知ってもらおうと、『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』というドキュメンタリー映画の内容をパネル化し、展示しました。
服は、私たち人間が毎日身につけるもの。このドキュメンタリー映画は大学生などに関わらず、世界の人々に見てもらいたい映画です。
さらに、実際に経年変化を楽しんでもらおうと、レザークラフトワークショップを開催し、キーホルダーを作成しました。
このワークショップで使われたレザーは、普段捨てられてしまうはずの切れ端たちです。
今回ワークショップで作ったキーホルダーで、経年変化を楽しんで、長く愛着を持って使用していただきたいです。
実学ホール前では、「patagonia food tasting」が行われていました。パタゴニアでは、ウェアの販売だけでなく、パタゴニアプロビジョンズと呼ばれる、食物連鎖を修復するための解決策を探る試みを行っています。
今回は、約890名の学生が試食し、パタゴニアの食品についても知ることができるいい機会になりました。
イベントを終えて
今回のイベントを終えて一番思ったことは、ファッションや環境、フェアトレードなどのトピックで学生同士だけでなく、大人の方とも話し合える環境がすごく大切だということでした。
今回参加した学生は、ただ服を修理に出すだけではなく、パタゴニアスタッフの方とその服やパタゴニアの取り組みのこと、環境のことについて会話をしてたり、、スピーカーイベントやディスカッションで意見を交わしたり……予想以上に多くの学生がファッションと環境の問題に関心を持っていることがわかりました。
自分の中に情熱や考えがあっても、それをなかなか声にする機会がないと思うので、これからもっと学生たちで行動を起こしていきたいです。
ヨーロッパなどでは、グレタ・トゥーンベリさんという学生が15歳の時から、気候変動の問題に声をあげていることで世界に影響を与えています。このような事実は、日本ではあまり知られていないと思います。
だからこそ、このようなイベントやコミュニティーでリアルなことを知って共有することにとても価値があると感じました。
L.W.Wは、現在、ポリエステル素材を中心とした衣類の回収サービスやポリエステル培地などでのリサイクル、コットンの栽培など、企業との連携を通して活動に取り組んでいる真っ只中です。
「服と共に生きる」を通して、資源には限りがあるということを伝えていく活動が増えたらと思っています。
今後の活動にも注目していただけると嬉しいです。
▶︎パタゴニア:WORN WEAR®: 新品よりもずっといい
▶︎近畿大学社会連携推進センターL.W.W Instagram公式アカウント
(終わり)
ライタープロフィール
寺浦 成美(てらうら なるみ)
近畿大学 国際学部 国際学科 グローバル専攻 3年
1月11日生まれ。高校1年時にニュージーランドへ1カ月、大学1年時にアメリカのフロリダ州マイアミへ8カ月ほど留学していました。趣味は旅行、カフェ巡り、ショッピング、音楽です。
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編集:人間編集部
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