2018.01.26
25歳・日本人クリエイターの挑戦!NY発のフェアトレードブランドで「ファストファッション」の問題を解決する
- Kindai Picks編集部
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今あなたが着ている服は、どこで、誰によって、どのように作られたのか。そんなことを考えたことはありますか? 「ファストファッション時代」とも言われる今、みなさんに知ってほしいことがあります。現在、アメリカのフロリダ州に留学中の学生ライター寺浦が、「アンフェアトレード」を解決するために立ち上がった日本人クリエイターにお会いするために、ニューヨークに行って来ました!
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洋服を買う時、何を考えていますか?
こんにちは、現在アメリカ合衆国フロリダ州に留学中の近畿大学国際学部1年の寺浦成美です。
いきなりですが、みなさんは服を買う時何を重視して選んでいますか?価格、品質、デザイン、ブランド……それぞれ違った基準があると思います。
私は、第一に「本当に気に入っているか?」、第二に「実用性があるか?」、第三に「値段」を重視するようにしていました。
とはいえ、実際お店に行って「安くてかわいい服」を見つけると、勢いで買ってしまうこともしばしば。よく考えると「他の服と合わせにくくてあまり着る機会がない」など、後悔することが多々ありました。
しかし、「ある人」をきっかけとして、私のショッピングへの考えは大きく変わりました。
©webandi
服を買う時、「この洋服はどうしてこんなに安いのか?」と感じたことはありませんか?大量生産された、同じようなデザインの格安の洋服を買う前に、少し考えてみて欲しいことがあります。
私たちが今着ている服は、誰がどのように作ったのか。現在は、ファストファッション時代と言われていて、「安価でそこそこデザインのいい洋服」が多く求められています。
しかし、値段の安さの裏には、重労働・低賃金の問題や児童労働が隠されていることを、どのくらいの人が知っているでしょうか。ファッション業界が生み出しているこの「アンフェアトレード」は、安い原価で洋服を製造するために、想像を絶するほどたくさんの人から労働力を搾取しており、世界的に深刻な社会問題となっています。
あなたは、この事実を知っていましたか?
ちなみに、「フェアトレード」とは、「作物や製品を公正な価格で取り引きし,不当な搾取を受けている生産者の経済的・社会的な生活向上を支援する仕組み」です。
低賃金で苦しむ人を救うために立ち上がった日本人
そんな中、この「アンフェアトレード」を解決するために立ち上がった日本人がいます。
ニューヨーク在住の日本人クリエイター、Ulalaさんです。
▽OfficialSite:Ulala Shirahama
Ulalaさんはクリエイター、デザイナー、Roxyガールと様々な肩書きを持って活躍しているインフルエンサーで、ご存知の方もいるかもしれません。私も、いつも彼女の発信をチェックしているファンの1人です。
去年、ファッションマーチャンダイズを専攻していたロサンゼルスの大学を卒業したUlalaさんは、「ブランドを立ち上げる」という形で、フェアトレードの大切さを世間にもシェアしようと決めたのです。彼女には元々「意味のあるものを作りたい」という強いパッションがありました。
小学生の頃、ストリートチルドレンの特集をテレビで見た彼女は、「恵まれている環境を当然のように思っていた自分」に嫌悪感を抱いたといいます。それがきっかけとなり、子供ながらに「将来は、彼らのような人たちを助ける仕事に就きたい」と思ったそうです。その思いは中学生や高校生になってからも残り、ストリートチルドレンなどの問題について、独学で調べたり、勉強を続けてきたのです。
そんな彼女が、昨年末に「フェアトレード」をコンセプトとした新しいファッションブランド「SEE YOU YESTERDAY」を立ち上げました。
▽OfficialWebSite:SEE YOU YESTERDAY
彼女の発信を通して「アンフェアトレード」の現実に興味を持った私は、「アメリカに留学している今がチャンス!」と思い、「SEE YOU YESTERDAY」のポップアップイベントに参加するためにニューヨークへ。
そして、思い切ってインタビューの交渉をしたところ「OK」をいただき、憧れのUlalaさんに直截お話を伺えることに!
挑戦してみてわかったフェアトレードの難しさ
――ブランドを立ち上げたきっかけは?
©Ulala style
金銭的な援助をすることで人々を助けられる。私が小さい頃はそう思っていた。でも、大人になって、世の中の仕組みを理解していく中で、自分にできること・できないことがわかってきたんですよね。
金銭的な援助をすることで、その人の今日は助けられたとしても、明日や明後日のためになるかどうかはわからない。それでは未来に続かないんじゃないか、って。
必要なのは、手に職を付けてもらったり、教育環境を整えてあげることで、そうすれば、その人が自分でお金を稼ぐことができたり、継続的な仕事に就くことができる。だから、ブランドを立ち上げて、「次に繋がるサイクル」を私たち自身が作り、苦しんでいる人々を助けたいと思ったんです。
――ブランドを立ち上げるにあたっての問題点や悩み、葛藤はありましたか?
©SEE YOU YESTERDAY
ありました。低賃金の労働で困っている人に仕事を与え、正当なお金を払って、生活を裕福にする手助けがしたい。その思いがあるからこそ、本当は発展途上国の工場を使って、洋服を作りたかったんです。
バングラデシュを皮切りに、アフリカ、フィリピン、インドなど、様々な国で工場を作ることに挑戦しました。
でも、今回はそれぞれ15〜30着ずつの製造だったので、この取引単位だと逆に働いている人の負担になってしまうことがわかって…。
彼らの仕事は現在、大量生産が前提で成り立っている部分もある。その他にも、ポケットはつけられるけど、デニムは縫えない、これができてもあれができない、などの技術的な問題もあって。挑戦してみてもらうことはできるけれど、上手くいくかはわからない。高いお金を払って生産をしたのに、ボロボロの服ができたとしても、これは買い手にとってフェアな取引ではない。そこで、今回はより確実に品質を保全するために、日本の工場で作ることになったんです。
これから、発展途上国の工場に生産場所を移すことができればいいんだけど……。
――なぜニューヨークを拠点に?
私、ロサンゼルスに3年住んでたんですけど、ロサンゼルスは遊ぶ場所で、働く場所ではないな、と思って。それで、拠点を他に移そうと思って見つけたのがニューヨークでした。
ニューヨークは天気も悪いし、家賃も高くて、いいことはあまりないんだけど、それでもニューヨークに住んでいる人が多いということは、「ニューヨークにいたい理由」がちゃんとあるから。家賃が高いから、より高い収入を得る必要もあるけれど、それでもニューヨークで働いているということは、それなりに成功している人が多いということなんですよね。自分の夢を持っていて、さらに成功者が多い。そんな世界で、私も挑戦してみたいと思ったんです。
また、ニューヨークにいる人たちは、アートやアーティストに興味がある人も多くて、日本ではあまりできないような会話もできるし、仕事をする上で話が進めやすいと感じたのも一つの理由です。
――日本とNYのファッション文化の違いはどう感じていますか?
©Ulala style
日本では流行に敏感な人が多いと思うんだけど、ニューヨークは、あまり流行を追わないイメージがあるかなぁ。それぞれのファッションにオリジナリティーがある気がする。
でも、近年は日本の独特のファッションにインスパイアーされているアメリカ人も多いし、日本人もアメリカ人のファッションにインスパイアーされていて、そこが面白いですよね!
変化し始めたファッション業界
彼女が工場を作る最初の地としてバングラデシュを選んだ理由は、「フェアトレード」や「エシカル」という言葉が注目され始めるきっかけとなったのが、バングラデシュの工場で起こった「ある事件」だったと言います。
2013年、あるファストファッションブランドが、原価を抑えるために、生産工場にかかる設備などの費用を大幅に削減し、工場の5階から8階までを違法建設したのです。その結果、工場は崩壊し、建物内に詰め込まれていた労働者3000人以上のうち、1138人が犠牲となりました。彼らの時給は、わずか14セント(約15円)だったと言います。
このように痛ましく残酷な問題を知らないまま、私たちは安い服を着ているのです。
ビジネスをするには、利益を追求しなければいけません。しかし、誰かが苦しんでいる事実から目をそらして、利益を追い続けるわけにはいかないと思うのです。
©Ulala style
エシカルとは、本来「倫理的」「道徳上」という意味で、現代では特に「環境保全や社会貢献」という意味合いで使われることが多くなっています。
発展途上国の商品を適正な価格で取引する「フェアトレード」や、商品の産地や製造過程を公開すること、天然素材やオーガニックコットンを使用した製品作り、リアルファーを使用しない動物愛護、などこれらもエシカルを意識した活動と言えます。
実際、コットンの栽培時に使用される除草剤に枯葉剤が含まれていることから、障害のある子が生まれてくる原因となったり、先天性異常や運動機能障害などの健康被害が多発するなどして、今もたくさんの綿花製造者が苦しんでいます。
そこで、大手衣料品メーカーのpatagoniaは、製品に化学薬品の使用を控えたオーガニックコットンのみを使用することにしました。これも、エシカルな活動の一つです。
現在はまだ、一般的にファストファッションが支持されている傾向にありますが、エシカルの意識が高まってきており、ファション業界の未来は確実に変わりつつあります。
世界的ブランドであるイタリアのアルマーニは、2016年から「NO ファー宣言」をしており、動物の毛を使った本物のファーを廃止しました。また、GUCCIも「ファーフリー・ポリッシー」を宣言し、2018年春夏コレクションから、同じく本物のファーを廃止しています。
これは、近年フェイクファーのクオリティーが上がり、「わざわざ動物のファーを使う必要がない」ということに、世界的な有名ブランドが気が付き始めたためだと言えるでしょう。こうして、ファッション業界が徐々に変化し始めているのです。
私たちにできることって、一体何?
©SEE YOU YESTERDAY
今回の取材を通して、格安の洋服の裏には過酷な労働環境があることを知り、今まで「安く手に入ってラッキー」くらいに服を購入していた私も、過去の自分を省みると同時に、「安易に安い服を買うのはやめよう」と思いました。
安く売られた服の背景に、多くの労働者が悲しんでいるということを知らないままファッションを楽しむ人たちの姿は、とても残酷なものにも思えます。
ただ、それを分かっていても、彼らの労働問題を継続的に救おうと行動することはとても難しいし、できる人はなかなかいない。困っている人を助けるために、お金を寄付するだけでは本当の意味で彼らを救えていないんです。
それであれば、Ulalaさんのように問題の根本から改善しようと活動をしている人の力になることが、彼らを救うために私たちができる「第一歩」になるのではないかと思います。
そしてこれは、発展途上国だけに起きている問題ではなく、日本国内でも社会問題となっている、いわゆる「ブラック企業」の低賃金・重労働の搾取も立派なアンフェアトレードなのだと気付きました。
Ulalaさんが立ち上げた「SEE YOU YESTERDAY」を通して、フェアトレードの意味や大切さを少しでも多くの人にシェアし、一人でも多くの人に「服の売買に対する意識」を見直してほしい。そして、できる限り早くこの大きな社会問題が解決に向かうようにと願っています。
私たち大学生へ、Ulalaさんからメッセージ
毎日、ただ何となく服を着るのではなく、その洋服の背景を知ることを意識してほしいです。誰が、どのように、どのような環境で作っているのか。それは調べないとわからないことだし、はじめは意識することが難しいと思う。でも、ファッションが好きな人には特に知っておいて欲しいことなんです。洋服を1シーズンだけ着て捨てるんじゃなくて、5年後、10年後も使えるような、価値のあるものにお金を払って欲しいなと思います。
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ライタープロフィール
寺浦 成美(てらうら なるみ)
近畿大学 国際学部 国際学科 グローバル専攻 1年
海と音楽とカフェが好き。
現在フロリダに留学中。
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