2018.11.29
ゴキブリ炒飯に玉虫スイーツ!?美味しい昆虫料理で「食」の未来を考える
- Kindai Picks編集部
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未来の食糧難を解決してくれるといわれる「昆虫食」。その可能性とはウラハラに、なかなかに抵抗があるもの。でも、「虫っておいしいんだ!」と認識できたなら、見た目の抵抗感は薄らぐのでは!? 虫を愛するイケメン学生と近畿大学農学部の自然豊かなキャンパスを駆け回り、捕まえたさまざまな虫をエスニック風味でガチ調理。獲って・調理して・食べて……実体験を通じて、「昆虫食」のもつ可能性が見えてきた...?
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Kindai Picks をご覧の皆様、はじめまして。
いきなり、鬱蒼とした茂みの中からの登場ですいません。
ライター業のかたわら、料理人としていろんなイベントで出店なんぞをしております、おかんと申します。
早速ですが、みなさんは毎日のご飯、満足して食べていますか?
気候変動による穀物の不作、海水温上昇による漁獲物の不漁、食料確保のための森林伐採に乱獲、人口増による地球規模での食糧不足への懸念などなど……身近な「食」に関する問題はいま、さまざまな媒体で取りざたされています。
そんななか、みなさんは「昆虫食」という言葉を聞いたことがないでしょうか。
2013年の5月、国際連合食糧農業機関(FAO)が衝撃的な報告書を公表しました。それは食糧問題の解決策のひとつとして、昆虫を食用としたり、家畜の飼料にしたりすることを推奨すると書かれたもの。
国内外でも少しずつではありますが、昆虫が食べられるレストランが増えてきており「昆虫食」という文化がメジャーになるのもそう遠くない未来なのかもしれません。
でもな〜〜〜〜やっぱり見た目がなあ〜〜〜。
そう思う人も少なくないでしょう。
タッパーの中でうごめく、茶色きモノたち……
でもさ……見た目がアレでもさ……味が美味しければ問題ないのではない?
他の食べ物も、既に「美味しいもの」として認識しているからこそ違和感がないのであって、冷静に考えたらシャコとかナマコとか、かなりウッとなる見た目してません? あらゆる国でもてはやされるエビだって、四捨五入したら虫じゃない??
ということは、見た目を凌駕するほど美味しい虫料理をつくったら「全然、虫イケるわ!!」ってことになって、未来の食糧難も万事解決するのかもしれない!!
今回は、キャンパス内で捕まえた昆虫を美味しく調理して、昆虫食の可能性について考えていきたいと思います!
近大農学部のイケメン虫マニアと食べられる虫探し
めちゃくちゃ爽やかな虫取り青年が出てきた。
そんなわけでやってきたのは、農学部がある近畿大学の奈良キャンパス。虫好きボーイとして名を馳せる、農学部 環境管理学科の石原 竜くんに協力してもらいました。
石原くんは虫を愛するガチ勢として、過去のKindai Picksにも登場してもらっています。
▼【閲覧注意?】近大奈良キャンパスにいるイケメンの虫愛がハンパない!
今日はよろしくお願いします! 虫は家の中に出なければ割と平気な方です! あっ……でもデッカいムカデとか蛾とかは苦手かも……。
あらら〜、キャンパスの裏山にザクザク入って昆虫採集をしますけど、大丈夫ですか?
あっ、それは大丈夫です! 今回は助っ人に来てもらいましたので!
虫取り&試食要員として、ライター仲間であるニシキドアヤトくんを招聘しました。
急に奈良まで呼ばれていきなり虫捕りさせられるの……? しかもそのあと食べるの??僕、めちゃくちゃ偏食なんだけど……。
私さぁ、食べるの大好きだから、わりとなんでもおいしく食べられちゃうのよ。イナゴの佃煮もハチノコも。ベトナム行ったときなんか「ホビロン」にハマって毎日食べまくってたし。
ベトナムで「ホビロン」、フィリピンで「バロット」と呼ばれる孵化しかけのアヒルの卵。鶏のあらゆる旨味が凝縮された絶品だけど、ウルトラ見た目がヤバい。
いきなりのグロ画像やめてよぉ……。
でしょ? 好き嫌いはもちろん、食わず嫌いも多いニシキドくんが「美味しい」と思えなければ、昆虫食は日本の食卓でメジャーにならないと思うのよ。
僕の両肩に乗せていいレベルの問題じゃないけど、せめて頑張って美味しい料理にしてください!
大学の裏山で虫取り大会
石原くんの秘密兵器、7mの虫捕り網を駆使していざ、裏山へ!
キャンパス内でよく出くわす虫といえば、どんな虫?
暖かい時期アシナガバチがよく飛んでいますね! 夏の終わり〜秋にかけてはイナゴやバッタなどの直翅目(ちょくしもく)も数多く見られます。イナゴは大きくて食いでがあるのでぜひ捕まえたいですね〜。
って言ってるそばからアシナガバチゲットォオオオ〜〜〜〜!!!
網さばきやば。
あっ、ハチ! って言った瞬間にもう網に収まってた……。動体視力がすごい。
畑の畦の鬱蒼とした植え込みには巨大なバッタがうじゃうじゃ! 土や草の色と同化しているので、捕まえるのがめちゃくちゃ難しい。
ニシキドくんも苦労の末、大きなバッタをゲット!
虫取りって子どもの頃はめちゃくちゃしてたけど、歳を追うごとにしなくなったから懐かしいな〜。
この調子でどんどん捕まえていこう! 思ってたよりもずっと楽しいね〜!
思ってたよりもずっと……。
思ってたより……。
思って……(蜘蛛の巣を払ってる)。
しんどっ。
さすがは虫好きの学生さんです。傾斜のある坂道や藪の中も軽々と進んで行くので、いつしか運動不足のアラサー2人はついていくのに必死……。
しかもこの日は偶然、アテにしていたセミが全て木の高いところに登ってしまっていて、全然見つからないし捕まえられないというトラブルが……。夏の終わりの灼熱地獄のなか、猛烈な勢いで体力を奪われていく我々。
そんななかでも石原くんは確実に虫を捕まえていく。「セミがいないので倒木のなかにいる虫を探しましょう!」と、臨機応変な対応がクール!
こういう倒木にはオオゴキブリがいるんですよ。
あ〜、ほら、いましたよ! 見てください! コイツらウニウニしてて可愛いんですよねぇ〜。可愛さもさることながら、主食が木なので、味も美味しいんですよ!
森林のゴキブリはいろんなものを土に返す分解者……。害虫扱いされている街のゴキブリと違って、益虫、益虫だってわかるけど!!
……。せめておいしく調理してね、おかん。
2時間ほどキャンパス内を散策し、アシナガバチ、バッタ、タマムシを5〜6匹と、オオゴキブリ、セミを3匹ずつゲットしました。
一応、獲れなかったときのために自分で繁殖させているゴキブリ(デュビア)を持参してくれていた石原くん。せっかくなので、彼らも合わせて調理していきたいと思います。
ゴキブリが増えた時のニシキドくんの顔よ。
美味いのか!? 採れたて昆虫を料理しよう
さて、いよいよ調理の開始です! 持参した調味料やカセットコンロを、広場で広げて青空キッチンの開店じゃ〜〜〜!
※大学に特別に許可を得て調理しています。
とりあえず、寄生虫やら、菌類の心配があるので、本調理のまえに採った虫は手っ取り早く揚げちゃいますね。
水で洗って溺死させた虫たちを容赦無く揚げていく。虫たち、油を吸うとお腹がブワーッと膨らむんですよね。これには我々2人は阿鼻叫喚でした。
次々とお皿に並べられていく虫をみて何故か爆笑するニシキドくん。気持ちはわかる。
やっぱり、繊細な和食よりもガツンとスパイスやハーブを効かせてエスニック風にした方が万人受けすると思うんですよね。東南アジアには虫料理が多いし。なので今回はエスニックテイストで本調理していきますね〜。
たしかに、昆虫食自体は東南アジアでポピュラーな文化なんですよ。だからエスニック系の調味料とは相性がいいと思います!
1皿目:バッタのガーリッククミン炒め
みじん切りのにんにくとクミンシードを油で熱し、香りが出たところで揚げバッタを投入。細かく刻んだ玉ねぎをサッと加え、カレーパウダー、チリパウダー、塩で味を整えます。
玉ねぎがしんなりしてペースト状になったら、バッタに絡めるようにしてソテーして完成です!
みんな大好きカレー味を昆虫と掛け合わせてみました。昆虫は煮込んでしまうと殻の食感が悪くなってしまうので、全体は火を通しすぎないよう心がけております。
虫のサクッとした軽い食感とスパイスの風味がめちゃくちゃ合いますね!
食えないことは……ない……。
2皿目:イエロートマトとゴキブリのチリソース
では、2皿目。油を多めにひいたフライパンに、粗めに切ったイエロートマトを炒め、軽くトマトの水分が飛んだところで揚げゴキブリを投入。
スイートチリソースと塩で味付けします。鍋肌で焦げたソースの香りがいい感じ。
仕上げに砕いたミックスナッツを加えて完成です!
虫を忌避する原因って、殻の食感も大いにあると思いませんか。虫の殻ってキチン質っていう動物性食物繊維でできてるんですよね、確か。カルシウムなどの栄養素も含まれてるから、なるべく食べた方がいいのかなって。そこで殻の違和感を無くすために、歯ごたえの強いナッツを砕いて入れてみました。食べる際に嫌悪感を持たれにくいよう工夫しております。
あ、これはかなり美味しい!! チリソースの甘辛さとゴキブリのサクサクとした食感がマッチしてます。
あーッ!? これは偏食の僕でも美味しいと思える! あと、ナッツが入ってるのがすごくいい! 虫と一緒に食べると食感を誤魔化してくれる……。
近所の中華料理屋に「卵のチリソース炒め」があって、それを参考にしました。
チリソース炒めっていうチョイスがいいですよね。
虫以前にトマトが苦手なんだけど、これはイケる。あんまりジュクジュクしてないからかなあ。
確かに、虫の食感を損ねないためにトマトの水分を飛ばしたのがコツかも。あと、水分が多くなるとタレが虫に絡みにくくなるし。というかトマトも苦手なのかよ。
3皿目:セミと&ゴキブリの海老味噌山椒チャーハン
キャンパス内のコンビニで買ったチャーハンを虫料理にアレンジ。
炒めたキュウリと揚げたセミ&ゴキブリ、チャーハンをグワッと炒めました。海老の旨味と昆虫の旨味って似てるとこがあるんじゃないかなぁと思いまして、海老味噌が隠し味になってます。あと、虫に対する嫌悪感をかき消すために、粉山椒をぶっかけました。
確かに海老味噌の風味が虫の風味を底上げしてくれてる……! 虫のシャクっとした食感、火の通ったキュウリのホクッとした食感、いろんな歯ごたえが楽しめていいですね。ただ……。
ただ……?
山椒入れすぎじゃないですか?
そうなのです。調理中にうっかり手が滑って、山椒の小瓶1/4くらいの量をチャーハンにぶっこんでしまったのでした。こればっかりは明らかにやりすぎたと思ったけど、スパイスカレーをよく食べるカメラマンさんは平気そうに食べていたので、山椒の量は好みで増減するが吉。
4皿目:焼きバナナの玉虫トッピング
急遽追加で捕獲した玉虫を使って、即席のデザートも作ってみました。砂糖を振って表面に焦げ目がつくよう焼いたバナナに、湯通しした藤の花、玉虫をトッピング。
もともと玉虫の羽って綺麗で好きだったんですが、こればっかりは作りながら「インスタ映え〜!」って感情と「やっべえ色してやがるな!」って感情が同時に襲ってきて葛藤がすごかった。
キレイだけど食べ物っぽくないな……。
ニシキドくん、どうでしょう。
オフワアアアアアアアアア〜〜〜〜
僕そもそもバナナ苦手でした……。
なんで食べたの?
生のバナナよりも焼いてあることで虫との一体感が出ますね! 玉虫のサクサク食感が、あられのような役割を果たしてくれてネットリしたバナナのアクセントになってます。
虫料理のメリットとデメリット
揚げるだけ・塩するだけじゃなくて、ちゃんと料理らしい料理にしてみたわけですが、ふたりともどうでしたか〜?
普段はそれこそ揚げるだけ・塩するだけで食べてばっかりだったので「ちゃんと料理になるんだ!」っていう発見があって面白かったです。自分でもいろいろ作ってみたくなりました。
虫たちが見た目やイメージに反して、意外と「悪くないかも!」って味だったので、食材として十分使えるんじゃないかな。ただやっぱり、見た目のイメージがなあ……。
調理される虫を見つめるニシキドくんはずっとこんな顔だった。
確かに、虫好きは虫そのものの形を楽しみますけど、昆虫食が食糧問題の解決策、つまりタンパク質の摂取ということであれば、虫の形を取らなくてもいいですもんね。粉末とかの方が流通に乗せやすそうではある。
あと感じたのは、「見た目を凌駕するほどの旨味!」っていう体験が虫にはちょっと足りない気がしたな。もちろん美味しく食べられるんだけど、食材として海産物や肉類と肩を並べられるかっていうと……。噂によるとカミキリムシの幼虫はクリーミーで超ウマイらしいから、今回採った虫の種類がそうなのかもしれないんだけど。
揚げたアシナガバチはポップコーンみたいな風味がして美味しかったよ! ただ、虫1匹だと小さすぎて味がわかりにくいし、全然お腹いっぱいにならない……。
それはかなり思った! 一匹あたりが小さいから、「採った虫で空腹も味も満たそう!」と思うと結構大変だよね。でも、小さいからこそ調理はめちゃくちゃしやすい食材だったわ。養殖でおいしい虫を大量に育てないといけないのかも。
虫って世代交代も早いですし、繁殖も一度にするので、養殖ラインに乗せれば大量生産は容易にできるんじゃないでしょうか。繁殖に関わるコストも畜産物と比べて少ないと思います。
食用虫の養殖がメジャーになると、今度は天然の虫がまた高級食材として珍重されそう。ただ、繁殖コストも安いとはいえ、動物と比べて身体が小さいぶん、養殖場の管理はセンシティブかも。ひとたび養殖場から虫が逃げ出したとなると、生態系に大きな影響を与えそう……。昆虫食に期待が持たれるからこそ、いきなり大きく手を広げるんではなく、実験的に裾野を広げていくのがいいかもしれないね。
終わりに
いかがでしたか?
実際に虫を採って、調理をして、食べて、わかったのは以下の通り!
・見た目のイメージ以上に虫は美味しい
・アシナガバチはポップコーンみたいな風味
・エスニック系の料理にすると手っ取り早くおいしくできる
・栄養素は申し分なし!
・粉末状にして売れば見た目の問題も解決できそう
・単純な美味しさでは肉の方が上(食べた虫の種類によるかもしれません)
・調理のしやすさは肉よりも上
・採った虫でお腹を満たすには限界がある
かつて「カメムシ臭い」とキワモノ扱いだったパクチーもいつの間にか日本の食生活に定着したように、いつかは昆虫がいろんなお家の食卓に並ぶことがあるのかもしれません。
虫単体でお腹いっぱいに……はさすがに現状難しいですが、思った以上においしい食材として活躍しそうな虫たち。ぜひ一度、試してみてはどうですか?
(終わり)
ライタープロフィール
おかん
京都市在住の編集者・ライター。Webや雑誌を中心に、ローカルコンテンツと飲食をテーマにした記事をよくつくる。食いしん坊の性分を活かしてフードイベントも各地で開催中。
Twitter:@hirayama_okan
写真:山元裕人
企画・編集:人間編集部
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