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研究・教育

2024.05.10

日本の明日を作る「アツい経営者」に会える!先端ビジネスの現場で起業家精神を学ぶ、近大の新たな大学院とは?

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
学生ライター
起業

2023年、近畿大学に新しく誕生した「実学社会起業イノベーション学位プログラム」。アントレプレナーシップ、つまりは起業家精神を学ぶ大学院ですが、実際にはどのような学びが展開されているのでしょうか? ビジネスの第一線で活躍する経営者のもとでインターンシップを重ねる「実学」の中身を、プログラム1期生が当事者視点でご紹介します。

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みなさま、こんにちは。大学院 実学社会起業イノベーション学位プログラム、修士課程1年生の山内勇大と申します。おそらく近大生でもほとんどの人が知らないプログラムだと思います。そもそも大学院って何をするところかも分かりにくいし、名前も長いし。なんせ僕も1期生だし。

未だに他人に説明するときに困っているのですが、簡単にいえばインターンシップや座学を通して「起業家精神」を学ぶ大学院です!

実学社会起業イノベーション学位プログラム(修士課程) | 研究科 | 近畿大学大学院


スタートアップ、イントレプレナーなど、学びの多くは横文字で表現される

起業やビジネスって聞くと、イケてるおじさんがパリッとしたスーツでキメているイメージがありませんか? 僕自身もそうでした。さらに横文字が多すぎる……。

しかし、この大学院ではそんな先入観や疑問を払拭しつつ、起業に関するリアルを学べます。「なんやそれ、胡散臭っ!」と思う方もいるかも知れませんが、1期生として1年を終えた僕はマインドが大きく変化しました。

あとで詳しく触れますが、この大学院は普通の大学院ではありません! まず何より、ビジネスの最前線で活躍し、日本の将来を担う方々と日々お会いでき、刺激がありすぎる環境です。普通に講演会を頼むと1回いくら必要なんだろうと思えるヤバイ人たちばかり。普段聞けない起業までの苦労や、成功していく過程やその秘訣などを聞くことができて「授業料、この額で本当にいいの?」って感じです。1回の講義でとてつもない知識、アイデア、ストーリーを吸収でき、映画を一本見終わったような感覚にさせられます。


「なんとなく進学」からアントレプレナーシップを学ぶまで

就職しようかどうしようか考えていた2022年、文芸学部 文化デザイン学科 4年生の春。「実学社会起業イノベーション学位プログラム」という、新設予定の名前の長い大学院のポスターを見かけました。なんとなく興味が湧き、とりあえず説明を聞いてみると「アントレプレナーシップ」なるものを養成するとのことで、ますます訳が分からなくなりました。

ちなみにアントレプレナーシップとは、社会課題に対して新しい解決策を提示する、いわば起業家精神に通ずる考え方。

少しゆっくり考えてみると、学部では空間デザインを勉強していたものの、デザインをする上でなんとなく合理性が足りない変な感覚がありました。頑張って考えたインテリアや空間でも「なんでこのデザインじゃないといけないのか」「もっと他の案もあったのになんでこれを選んだのか」そんな疑問をずっと持っていました。

そんなとき、インスタグラム上でとあるバチイケのスタートアップの企業を見つけました(名前は伏せておきます)。建築・空間デザインとNFTをはじめとするデジタル技術を掛け合わせた、これまでにまったくない圧倒的にかっこいいビジネスモデルに衝撃を受けました。

※NFT:非代替性トークン(Non-Fungible Token)の略。多様なデジタルコンテンツに代替の利かない価値を証明する仕組み

「せっかく働くなら今までと違う角度で物事を見て学び、社会に大きなインパクトを与えるデザイナーになりたい」

一見して難しそうな大学院への進学を決めたのはそんな理由からでした。ビジネスや学びといった場面で「領域横断」という言葉を聞くことも多いと思いますが、進学後はまさしくそれを実践している状況です。


修士課程1年の前期は座学を中心に

修士課程1年の前期では、アントレプレナーシップやDXについて、講演を中心に様々な座学を受け、それまで触れたことがなかった新しい知識や視点をたくさん吸収しました。そもそも、所属する学生の半分が自分の会社を持っている環境で学びを得ることができるんです。同級生となった1期生の仲間も個性的でクレイジーな経営者ばかりで、たくさんの刺激をもらっています。現役大学生がラーメン店を運営することで話題になった、株式会社やるかやらんかの西くんも同級生です。

近大生が始めたラーメン店「すするか、すすらんか。」は、若者の選択肢を増やすハブになる。 | Kindai Picks

社会って、ビジネスってこうなっているんだという驚きと発見に満ちた毎日を通し、今まで受け身で生きてきたことを実感しました。


後期からインターンシップを開始!





後期は講義はなく、与えられた時間の全てを使って東京へインターンシップに行ってきました。1年の半分、大学院生活の4分の1という大きなウエイトを占めます。インターンシップは必須単位、すなわち卒業要件。僕は自分のデザイン力が活かせると感じて、ホテル業界のスタートアップ企業・株式会社SQUEEZEに受け入れていただきました。

実学社会起業イノベーション学位プログラムに入学する学生にとって、インターンシップは非常に重要な学びの場。なかなか外に出てこないインターンの内容について伝えるべく、今回は3人を対象にインタビューを実施しました。お話を伺ったのはインターン先の舘林真一CEO、インターンシップのマッチングを手がけるインキュベイトファンド株式会社・本間真彦代表パートナー、さらにプログラム長である近畿大学 経営学部の浦上拓也教授。

少し耳にしただけでは想像しづらい学びの中身や学生への思いについて、僕のケースを引き合いに掘り下げていきたいと思います。

ちなみにインタビューの舞台は、エスコンフィールドHOKKAIDOに併設のtower eleven hotelです。SQUEEZEが運営するピカピカのホテルは、大人気で予約困難。そんな場所で日本や世界を飛び回っている3人に話を聞く……正直、手汗がヤバかったですが、その模様をお伝えしていきます。

この記事を通して、刺激的な経験ができる実学社会起業イノベーション学位プログラムの魅力を知ってください!



舘林 真一(たてばやし・しんいち/写真左)
株式会社SQUEEZE 代表取締役CEO。2011年に東海大学 政治経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券シンガポール支社に勤務。その後、トリップアドバイザー株式会社シンガポール支社にてディスプレイ広告の運用を担当。2014年9月、ホテル経営のデジタル化を進める株式会社SQUEEZEを創業し代表取締役CEOに就任。

浦上 拓也(うらかみ・たくや/写真左から3人目)
近畿大学 経営学部 経営学科 商学研究科 教授
専門:公益事業論(特に水道のマネジメント)
大阪府立産業開発研究所 嘱託研究員、神戸大学 大学院 経営学研究科 大学等非常勤研究員 (中核的研究機関研究員)を経て、近畿大学に着任。英国アストン大学 ビジネススクール 客員講師や英国ラフバラー大学 経営経済学部 客員研究員などを歴任。2023年4月に大学院 実学社会起業イノベーション学位プログラム長に就任。上下水道のスペシャリスト。
教員情報詳細

本間 真彦(ほんま・まさひこ/写真左から4人目)
インキュベイトファンド株式会社 代表パートナー。慶應義塾大学卒業後、株式会社ジャフコの海外投資部門にて、シリコンバレーやイスラエルのIT企業への投資業務を担う。その後、アクセンチュア株式会社や三菱商事傘下の企業に勤務し、MonotaRO社などの創業投資やIPOを経験。2007年にベンチャーキャピタリストとして、ネット事業の創出に特化したファンド、コアピープルパートナーズを設立。10倍のファンドリターンを出す。2010年に設立したインキュベイトファンドでは、国内投資に加えてシリコンバレー、東南アジアなど海外ファンドの統括も行う。

山内 勇大(やまうち・ゆうだい/写真左から2人目/筆者)


若くして起業した舘林CEOのアントレプレナーシップとは


左から本間真彦代表パートナー、浦上拓也教授、舘林真一CEO

山内:今日はお集まりいただき、本当にありがとうございます。まず率直な疑問なのですが、舘林CEOはなぜ起業したのでしょうか?

舘林CEO:今まさに目の前にいる本間さんの存在が理由です(笑)。2011年に大学を卒業してすぐにシンガポールで働いていて、飲み会でたまたま本間さんにお会いしたことが契機でした。「いつかは会社をやってみたいな」と思っていたんですけど、年齢を重ねてからというイメージで。しかし、こちらのビジョンをぶつけると本間さんは「今からやればいいじゃん」と背中を押してくれたんです。そこからすぐに帰国し、完全に見切り発車で創業しました。それが25歳のときです。

山内:行動が早いですね……!

浦上先生:プログラムの学生には、そういう前のめりな姿勢に期待したいです。やりたいことにはどんどん手を出し、声を上げるような。

舘林CEO:今は選択肢が多い状況だから、何をするにしても視野を広く持つことが重要ですね。私の場合は、北海道にいる両親が所有するアパートの1室を遠隔で民泊として運営した体験をもとに起業し、現在は宿泊事業のDXを手がけています。

本間代表パートナー:若いときの「何かやってみたい」という欲求は自然なことだと思います。大学で4年間学んですぐに「就職するの?」「進学するの?」「起業するの?」って迫られるのは、実は意外と無理がある話で。2年間、大学院というプラットフォームで柔軟に選択肢を増やせるのは時代にかなっているし、すごく意味がありますね。

浦上先生:私たちの時代にはそんなに選択肢がなかったですね。もし今、学生だったら絶対起業に興味を持っていたと思います!

山内:舘林CEOは若い経営者として苦労も多かったと思いますが、そのときのエピソードを教えていただけますか?

本間代表パートナー:宿泊事業のDXという新規事業への投資を募るのが大変だったよね。若手起業家というのもあって、難航した面はあると思う。

舘林CEO:そうですね。そのときはもう帰国していたので、絶対にあとには引けない状況でした。当時は民泊があまり認知されていない時代だったので……。最終的には1億円出資してもらい、なんとか10年近く続けてこられました。

山内:お金の問題は当然ついて回りますよね。業種からして新型コロナウイルスの影響も受けたと思うのですが、そこにも苦労があったのでは?

舘林CEO:やはり非常に苦労しましたね。我々はホテル運営をしているんですけど、観光業界が大打撃を受けて一時期は本当に事業クローズも覚悟しました。資金繰りが大変で、どうやったら乗り越えられるか考えて眠れない日が続いたこともあります。でも、そのときに頼もしい仲間に支えられ、どうにか乗り越えて。

山内:仲間の存在があって今のSQUEEZEがあるという話は、インターンシップ中にもうかがいました。みんな一丸となって乗り越えていかれたということですね!


慣れない土地でのインターンシップが自らの糧に


舘林CEOによる現場視察の模様

山内:そうしたエピソード自体が、僕自身が起業を目指す上での刺激になっているんですが、改めて浦上先生からインターンシップの趣旨をご説明いただけますでしょうか。

浦上先生そもそも起業家育成を目的とした大学院は、国内の総合大学でも稀有な取り組みです。なかでもインターンシップを重視するのは、学生それぞれのアイデアをブラッシュアップするためには経験が必要だから。そこで、東京のスタートアップ企業で2ヶ月以上実際に働いてもらい、学びを得てもらおうと考えました。不確定で不安定な将来に向かって、停滞する日本をどうやって元気づけていくか。そこを打破するイノベーションに期待したいです。

舘林CEO:我々としても意識の高い学生さんは本当にありがたい存在ですね。いい風を吹かせてくれるので。

山内:学生としてもうれしいです! ところでプログラムでは、学生は原則として東京でインターンシップを行うことになっていますが、これにはどのような狙いがあるのでしょうか? 大阪にもスタートアップはたくさんありますが……。

浦上先生:家探しからはじめるのは大変だったはずだけど、そんな苦労も全て学びにつながる。やり遂げる気持ちを持ち続ける意味でも、大切なフェーズだと思います。

本間代表パートナー:いい意味で隔離されるんですよね。慣れ親しんだ土地だと、インターン後に友達と飲みに行くこともあるだろうし、どうしてもビジネスに没頭できないと思うんです。慣れ親しんだ環境から物理的に距離を置いて「集中的に取り組む期間だ」とマインドセットをするのは非常に効果的です。

山内:確かに東京ではインターンシップに集中できて、自分自身のパフォーマンスを最大限に発揮できている感覚があります! インターンシップを通して、自らの考えを言語化する能力と情報の整理力、そしてそれらを活かした提案力がついたと心から感じました。

本間代表パートナー:SQUEEZEみたいなスタートアップって、大企業より新しい経営スタイルやコミュニケーションツールを実践しているところが多いんです。レガシーな慣習が少ないぶん、いいと思うことをすぐに実践に移せる身軽さがある。海外企業のビジネスモデルのアップデートは日本をしのぎますが、それらも組み込みやすい。スタートアップでのインターンシップの大きな意義は、そのスピード感にあるんじゃないかな。

舘林CEO:うちはインターン生にも情報をどんどん共有しますし、吸収も早い環境だと思います。そのなかで、勇大くんは従業員とは違う視点を持ち込んでくれました。これまで培ってきたデザインスキルやセンスを活かして、運営ホテルのゲスト向け掲示物を一新してくれたり、オフィス移転にあたってはより社員が働きやすい、SQUEEZEらしい空間作りにも貢献してくれました。社員に見習ってほしいくらい積極的に提案をしてくれてありがたかったです。そういった働きが社内でも評価されて実は今、新規開業ホテルの企画プロジェクトにも参加してもらっているんですよ。

山内:お褒めいただき光栄です。では最後に、今回の対談の舞台にエスコンフィールドHOKKAIDOを選んだ理由について教えていただけますでしょうか。



本間代表パートナー:この施設が、北海道日本ハムファイターズを中心にさまざまな連携パートナーが集まったイノベーションそのものだからです。起業を考える学生と同じように、0から1を生み出すのって大変で。その点、ここはファイターズブランドや球団運営の経験を踏まえたイノベーションが形になっている。ベンチャー的でありながら、歴史へのリスペクトもある。このプログラムからそういうイノベーションを起こす人材が生まれたらと考えています。

舘林CEO:球場にばかり注目がいきがちですが、大きくいうと「北海道ボールパークFビレッジ」という街づくりを行っているんです。tower eleven hotelだってそう。北広島という街自体をもっと良くしていくなかで、我々のようなスタートアップやJR北海道さんなど、いろんな人たち、仲間と一緒にまさに今、オープンイノベーションを起こしているところなんです。

本間代表パートナー:そうした流れのなかに学生の感性も取り込みたいですね。これまで以上に、スタートアップと学生が協力できる仕組みを構築したいです。

浦上先生:山内さんが起業家に刺激を受け、ビジネスの一端を担っているように、設立から間もないプログラムながら、少しずつ成果が出てきている。学生には学位取得ではなくビジネスプランの創出を目標に、スピード感を持って成長してほしいですね。受け入れ先の企業ともしっかり連携しながら。

山内:僕はホテルと連携し、日本の伝統工芸を世界へ広める事業を考えています。今まさにSQUEEZEの力をお借りして進めている最中で。みなさんの話を聞いていて、さらに努力しようと思えました。改めて、本日はありがとうございました!


結局この大学院ってどうなん?



さて、ビジネスの「ビ」の字も知らなかった僕ですが、この1年で大きく成長したことを実感しています。東京でのインターンシップの日々はとても色濃く、大学院の学びのみならず多くのスタートアップ当事者とも出会え、毎日が刺激的でした。

現在はインターンでお世話になったSQUEEZEさんにも協力していただきながら、ホテル業界に法人を設立しようと突っ走っています。起業を目指す大学院生がビジネスプランを競うビジネスプランコンテストでも2位を受賞しました。インターンで学んだ情報整理能力や、言語化能力、さらには出会いが形になっている証かなと感じています。

ここまで散々起業について話しましたが、このプログラムのゴールは単に「起業すること」ではありません。「起業家精神」というのは一つの考え方、思考法です。自分が持つ強みを、最大限に引き出す思考法だと僕は考えています。

そうやって選択肢を広げられれば、自分が一番やりたいことも見えてくるはず。僕自身、この大学院に入らなかったら、人生の選択肢が狭まっていたと本気で思っています。

もちろん、これからの日本の将来を担うであろう最前線で活躍する起業家と出会うこともなかったでしょう。そしてインタビュー中にもありましたが、選択肢を増やしておくことの重要性を強く感じています。領域を横断し、今までの学びと新しい学びが足し算ではなく掛け算になる。実学社会起業イノベーション学位プログラムには、そんな学びがあります。

少しでも興味のある人は勇気を持って一歩を踏み出し、選択肢を広げましょう!


この記事を書いた人

山内 勇大(やまうち・ゆうだい)

近畿大学 大学院 実学社会起業イノベーション学位プログラム 修士課程2年。「Be Creative」をモットーにいろんなことに興味を持ってやりすぎたため、クリエイティブよろず屋に。音楽をこよなく愛するサックス奏者でもある。


編集:人間編集部

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