2023.04.14
黄砂が大量飛来!健康への影響、花粉とのW飛散による「花粉爆発」について専門家が解説
- Kindai Picks編集部
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2023年4月、史上最悪と言われる大規模黄砂が日本列島に飛来しています。黄砂はどのように日本にやってくるのか?人体への影響は…?黄砂の健康への影響に詳しい、近畿大学病院アレルギーセンターの佐野博幸教授に聞きました。
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――黄砂とは?いつから問題視されるようになったのでしょうか?
佐野:中央東アジアの砂漠地域や黄土高原で強風があると、大気中に砂塵が舞い上がります。その浮遊した砂塵が偏西風に乗って飛来するのが黄砂です。
黄砂という名前こそついていませんでしたが、実際にはかなり昔からその存在は知られていました。30年ほど前から、黄砂の研究が行われるようになり、日本で問題視されるきっかけになったのは、2000年頃に東京の羽田空港に大量の黄砂が飛来したことです。ちょうどその頃の中国は、経済発展により工場などがたくさん建設され、大気汚染問題が深刻化していました。環境省は黄砂にこの大気汚染物質が付着して日本に飛来すると健康被害があるのではないかと危機的に感じ、多額の費用を投じたことで、日本国内で一気に研究が進んでいきました。
――黄砂の量は、増加傾向にあるのでしょうか?
佐野:黄砂は中央東アジアの砂漠から飛来しますが、黄砂の飛来量は気象状況が大きく関係しており、雨が少ないと黄砂が舞い上がりやすい環境が生まれます。また、黄砂の飛来は環境や気候の変化にも大きく影響を受け、偏西風の蛇行によっても飛来量が増減します。2000年頃はものすごく多かったのですが、2010年過ぎに減少し、近年また飛散量が増えてきています。
――黄砂による健康への影響は?
佐野:黄砂の問題点は、砂塵に付着するカビなどの物質が原因となって、アレルギー症状を引き起こすことです。砂自体が悪いのであれば、海岸沿いに住んでいる人は、みんな病気になってしまいますよね。
黄砂は日本に到達するまでに、中央アジアから東アジアを通ります。その際にマンガン、ニッケル、カドニウムなどの金属物質、エンドトキシンやカビなどが付着することから、花粉症やアレルギー性鼻炎などの悪化や、呼吸器疾患ではぜんそく症状の悪化の原因となります。金属に対するアレルギーのある人は、湿疹や蕁麻疹などを引き起こす可能性もありますので注意が必要です。
また、心筋梗塞や脳卒中も増えるということが、日本、台湾、韓国などで報告されています。これは、砂塵のかなり微細な粒子が肺に吸い込まれ、肺の末梢から血管に入り込んで、血管の中で炎症を起こして血栓を起こし、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こしているのではと考えられています。
――黄砂が多く飛来するのはいつですか?
佐野:黄砂は2~6月に見られるのですが、1991年〜2020年の気象庁による観測日数平年値では、その中でも4月が圧倒的に多くなっています。花粉が多い時期と重なるため、黄砂と花粉が同時に飛来すると、「花粉爆発」が起こります。
――「花粉爆発」について、詳しく教えてください。
佐野:スギ花粉は直径30マイクロメートル 黄砂は直径4〜5マイクロメートルです。黄砂よりずっと大きな花粉は、アレルギー性鼻炎や目のかゆみなどの症状を引き起こす原因にはなりますが、かつては下気道(気管・気管支・細気管支ならびに肺を形成している肺胞から構成される)には影響がないと言われていました。
しかし、花粉が黄砂と接触すると、花粉に亀裂が入り、そこから水分を取り込んだ花粉が膨張し、破裂します。
破裂した中には、抗原性があるものがたくさんあり、より細かくなった粒子を人間が吸い込み、肺の末梢まで入って気管支炎などの症状を引き起こす可能性があります。
かつてスギ花粉ではぜんそくは悪くはならないと考えられていましたが、現在は下気道にダイレクトに入ってくるため、ぜんそくの悪化などが起こると言われています。
――黄砂による健康被害を起こさないために、どんな対策が必要ですか?
佐野:一般に使用されているサージカルマスクでも完全に防ぐことができないため、黄砂による健康被害が起こらないよう、花粉症などの方は、まずはその治療をしっかりしておくことをおすすめします。また不要不急の外出を控えることや、帰宅したら手や顔を洗うことも重要です。衣服に付着した黄砂を丁寧にはらうことや、空気清浄機の使用は効果的ですのでぜひ利用してください。
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