2022.12.02
渡辺徹さんの命を奪った敗血症とは? 救命医がわかりやすく解説
- Kindai Picks編集部
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俳優でタレントの渡辺徹(わたなべ・とおる)さんが令和4年(2022年)11月28日、敗血症のため死去されました。
敗血症とはどんな病気なのか?近畿大学病院救命救急センターの植嶋利文講師に聞きました。
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――渡辺さんは細菌性胃腸炎の診断を受けた後に、敗血症で亡くなられましたが、敗血症とはどのような病気ですか?
一般的な感染症は、細菌やウイルスが感染した部位だけが痛くなったり熱を持ったりします。例えば、肺炎の場合は、痰や咳が出たり、発熱するなどの症状があります。そういった一部分の症状のみでなく、腎臓や肝臓、脳など全身の臓器に、さまざまな症状が引き起こされてしまう状態を敗血症と言います。
――渡辺さんは11月20日に細菌性胃腸炎と診断され、発熱、腹痛などの症状があったそうです。
細菌性腸炎の場合、一般的にはまず腹痛などの症状がでます。しかし、その症状が強くなってくると、細菌が体内にまわり、自身の体を守るために、細菌に対抗する物質が体内で増加します。そのことがさまざまな臓器のはたらきを悪化させ、血圧の低下などを招き、臓器に酸素が行き渡らなくなるなどして、悪循環がひどくなり、死亡の原因となるケースがあります。
――敗血症が死亡の原因となることは多いのでしょうか?
血圧が低下し、全身に血が回らなくなるなどの状態にならなければ、抗生物質の使用などで、最近はかなりの確率で救命できるようになっています。
ひどい血圧低下や、感染の状況がコントロールできない状況や、全身の臓器の障害が強くなったり、その臓器の数が増えれば増えるほど、経過が悪くなり死亡の原因となる可能性が高くなります。
――渡辺さんは糖尿病を患っていたとのことですが、基礎疾患の有無は影響があるのでしょうか?
糖尿病、肝硬変など基礎疾患をお持ちの方や、抗がん剤などの化学療法を受けている方はリスクが高いです。
――糖尿病の薬を服用していると、他の病気に対する薬が効きにくいのでしょうか?
薬やインスリンを使い、血糖値をしっかりとコントロールできている方は問題ありません。ただ普段から血糖値が200とか250のような高い数値が続いている場合、負担がかかった臓器が弱っていることが多く、敗血症の薬が効きにくい状況で意識が遠くなったり、血圧が低下しやすくなり、感染症の初期状況が出てきやすくなります。
――渡辺さんは、一時は約130kgの体重がありましたが、大柄な人の方が発症しやすいのでしょうか?
大柄な人が敗血症になりやすいわけではありません。ただ肥満の度合いが強い場合は、呼吸の状態が悪くなったり、血栓ができやすい方が多い傾向にあります。このことが敗血症の経過を悪くした一因にはなっているかもしれません。
――敗血症のなりやすさに男女差はありますか?
男性の方がなりやすいです。敗血症の患者さんの7割程度を男性が占めています。
――感染症から敗血症にならないためには?
1箇所だけの感染症であれば、早期に抗生剤などを投与することで回復することが多いです。高熱や痛み、今までと異なる症状が出た場合は、かかりつけ医を早めに受診し、早めの治療をおすすめします。
新型コロナウイルス感染症の影響で、多少熱が出てもかかりつけ医の受診をせずにご自宅で様子を見るなど、受診控えが起こっています。早く感染症に気づき、早く治療を始めることが大切です。
基礎疾患の有無や、抗がん剤の使用などによる免疫力の低下などもリスクを高めます。若くて元気な方であっても、感染の状況によっては、敗血症へ至ることもありますので注意が必要です。
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