2020.02.20
都会育ち、キレイ好きは花粉症になりやすい!? アレルギーと花粉症の気になるハナシ
- Kindai Picks編集部
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2月20日はアレルギーの日。アレルギー疾患には、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などさまざまな種類がありますが、特にこの時期に多くの人を悩ませるのが「花粉症」です。そこで、アレルギーとは何か? といった基本的なお話から、花粉症の気になる疑問まで、アレルギー専門医の岩永賢司先生にお聞きしました。
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岩永 賢司(いわなが たかし)
近畿大学医学部 准教授/医学博士
専門分野:喘息、呼吸器疾患、アレルギー性疾患
専門医:総合内科専門医、呼吸器専門医、アレルギー専門医、気管支鏡専門医
アレルギーって何? どうやって起こる?
――そもそもアレルギーとは何なのでしょう?
私たちの体には「免疫」という防御システムが備わっています。細菌やウイルス、異物などから体を守る仕組みのことで、この機能が強く働きすぎると、鼻水やくしゃみ、皮膚や眼のかゆみ、湿疹、咳、喘鳴などさまざまな症状があらわれます。これをアレルギー反応といいます。短時間で強い症状が出る「アナフィラキシー」になると、命に危険が及ぶこともあります。
主なアレルギー疾患
・アレルギー性鼻炎
・アトピー性皮膚炎
・アレルギー性結膜炎
・食物アレルギー
・花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)
・薬物アレルギー
・じんましんなどなど
――アレルギーはどのようにして起こるのですか?
IgE抗体は、マスト細胞と呼ばれる細胞の表面に結合しているのですが、体に入ってきたアレルゲンとIgE抗体とが結合すると、マスト細胞が「ヒスタミン」などの化学伝達物質を体内に放出します。これにより、くしゃみやかゆみといったアレルギーの症状が引き起こされてしまいます。
田舎の人より都会の人のほうが花粉症になりやすいって本当?
――スギ花粉症のシーズンに入りました。アレルゲンとなる花粉が多いほうがアレルギーの症状が出やすいように思うのですが、スギがたくさんある田舎よりも都会のほうが花粉症の人が多いとの話も聞きます。
確かに、スギの少ない都心でも、花粉症の患者さんは多くみられます。昔と比べて飛散するスギ花粉量が増えてきたことなどいろんな理由が考えられますが、都会の道路が舗装されていることもそのひとつでしょう。
土や森が多く、地面に花粉が吸収されやすい田舎とは違い、都会は花粉が落ちてもそのままアスファルトなど舗装された地面の上にとどまってしまいます。風が吹いて、たまった花粉が舞い上がると、その花粉を吸い込んでしまいますよね。土に吸収されにくいぶん、全体の飛散量が多くなることが考えられます。
――なるほど。晴れて風が強い日は、特に舞い上がる量が多くなりそうですね……。
また、空気中の汚染物質が関係しているという報告もあります。※1※2 花粉症を増やす理由としては、生活習慣の変化など複数の要因が指摘されていますし、さらなる研究を待ちたいところです。
子どもの頃にキレイな環境にいると、花粉症になりやすい!?
――花粉症が起こるメカニズムは、まだ完全には明らかになっていないんですね。
そうですね。都会と田舎の違いに関する話だと、「衛生仮説」をご存じでしょうか? 1989年に英国のストラカンが提唱した概念で、子どもの頃の衛生環境がアレルギーの発症に影響を与えるというものです。
――衛生環境……清潔か清潔でないかがアレルギーの発症に影響するのでしょうか?
ストラカンが実施した大規模な調査の結果、上にきょうだいが2人以上いる子どものほうが、アレルギーを発症する割合が2倍も低かったことが明らかになっています。また、身近に家畜がいる環境で育った田舎の子どものほうが、都会の子どもよりアレルギーになりにくかったという報告もあります。
つまり、子どもの頃に上のきょうだいから風邪をうつされなかったり、清潔な環境で過ごしたりすると、細菌やウイルスなどにあまり接触せず、アレルギーになりやすいというのです。
非衛生的な環境(極端な言い方ですが)では、アレルギーになりにくい免疫のほうに傾くようになると考えられています。
――衛生仮説は花粉症以外のアレルギー疾患にも当てはまりますか?
いえ、この概念に当てはまるのは、主に花粉症と気管支喘息です。アレルギー疾患でも、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどの発症は衛生仮説には関係しません。仮説なので、あくまで花粉症を発症するさまざまな要因のひとつとして考えられる、ということですね。
花粉症のつらい症状を少しでもおさえるために
――スギ花粉の飛散量の増加にともなって、花粉症の患者さんも増えていると聞きます。
日本における花粉症の患者数は増加しており、近年の全国調査では、スギ花粉症の有病率は50%近くにのぼり、※1 国としてもいろいろと対策を講じているようです。医療面だけでなく、無花粉のスギの開発や、花粉が少ないスギの生産も進められています。※1 とはいえ、すぐに花粉の飛散量が激減するわけではありませんし、シーズン中は花粉を寄せつけない対策が欠かせません。
関連記事:【花粉症2020年】いますぐ取り入れたい対策と予防法とは。
――今シーズン新たに花粉症を発症する方もおられると思いますが、病院を受診したほうがよいのでしょうか?
花粉が飛散する時期で、花粉症のようなアレルギー症状がみられる場合は、まずは医療機関を受診することをおすすめします。副鼻腔炎や鼻中隔彎曲症など、花粉症と症状が似た別の病気もありますし、正しい診断を受けてから治療を始めるほうが安心です。
――花粉のシーズン中はずっと薬を使い続けたほうがいいですか?
薬を使った治療をされている方は、花粉が飛んでいる期間は使いつづけたほうがいいでしょうね。つらい症状をおさえられます。
花粉症は命に関わる病気ではありませんが、鼻づまりなどの症状が続くと、集中力が低下したり不眠につながったりと、生活に支障が出てしまいます。生活の質を落とさないためにも、適切な治療とあわせて、外出時はマスクやメガネをつける、花粉を家の中に持ち込まないなど、少しでも花粉を吸い込まない対策を続けることがとても大切です。
※1 環境省. 花粉症環境保健マニュアル2019.
※2 王青躍ほか.花粉飛散時における環境汚染物質の影響とアレルゲン物質の放出挙動.Earozoru Kenkyu.2014,29(s1),197-206.
(終わり)
取材・文:藤田幸恵
イラスト:九月タロウ
企画・編集:人間編集部
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