2023.03.10
飲み会もデートもVR!?放課後を5日間メタバースの世界で過ごしてみた
- Kindai Picks編集部
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憧れていた大学生の自由な放課後! のはずが、コロナ禍で家に篭ってゲームばかり。せっかく友だちもできたのに、どうやって仲良くなればいいんだろう……。そこで思いついたのが「メタバース」。リアルが難しいなら、メタバースで友だちとの距離を縮めよう! ということで、情報学部の学生たちが、放課後をメタバースの世界で過ごしてみました。
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こんにちは、近畿大学 情報学部1年の岩川 凌汰(いわかわ りょうた)です。
みなさん、放課後は何してますか?
友だちと出かけたり、飲食店に集まったり……ということも、コロナ禍ですっかり減ってしまいました。大学生になって、せっかく新しい友だちができたのに、もっと仲良くなれる方法はないんだろうか……?
ちなみに、僕たちが学ぶ情報学部は"プレステの父"として知られる久夛良木健さんが学部長。久夛良木学部長による特別授業「久夛良木ゼミ」の第1回目の講義は「デジタルツイン、メタバース」がテーマでした。「デジタルツイン」は現実世界にあるものを仮想空間で再現すること、「メタバース」はコンピュータ上で構築される3次元の仮想空間のことです。
特別授業を受けて、ひらめきました!
メタバースを利用すれば、ソーシャルディスタンスを保ちながらも、仮想空間で友だちとの距離を縮められるんじゃないか……?
でも、何から始めればいいの? どうやって遊べばいいの? メタバースで遊ぶのって本当におもしろいの?
実際に検証してみるために、同じ1期生の友だち4人に集まってもらいました。
興味:旅行
好きな授業:基礎線形代数学
メタバース初心者。
橋川 美音菜(はしかわ みとな)
興味:VTuber
好きな授業:プログラミング基礎
「cluster」利用経験あり。
宮﨑 脩人(みやざき しゅうと)
興味:3DCAD・3Dプリンタ
好きな授業:プログラミング基礎
メタバース初心者。
久保 竜司(くぼ りゅうじ)
興味:ゲーム
好きな授業:プログラミング基礎
メタバース初心者。
そもそもメタバースって? 専門の先生に聞いてみた
メタバースの知識や心理的な効果を知っておくために、まずはメタバースに詳しい先生にお話を伺います。中西 英之(ナカニシ ヒデユキ)
情報学部 情報学科 教授
専門:テレプレゼンス
ビデオ会議、メタバース、人型ロボットなどのリアリティを向上させることによってオンライン環境における人の存在感の伝達を可能にする技術を研究。
教員情報詳細
よろしくお願いします。まず、最近流行りのメタバースとオンラインゲームでは何が違うのでしょうか?
ストーリーやミッションがあるゲームの世界と違い、メタバースは日常の延長線にある別世界。メタバース内でゲームをすることもできますが、シナリオがある世界ではなく、仮想空間を体験することに価値があります。
なぜ今、注目されているんでしょうか?
5Gの普及やVR技術の進歩、仮想通貨やNFTなどの暗号資産と共に、体験価値・利用価値が高まっているからでしょう。2003年にサービスが開始された「Second Life」など、3次元の仮想空間サービスは過去にもありましたが、今はVR機器を装着することで、主観視点で、視覚から身振り手振りまで、リアルな仮想空間を体験できることが大きな違いです。
メタバースを楽しむポイントがあれば教えてください。
どれだけ没入できるかですね。最近、学生と一緒に「プロテウス効果」の研究を始めたんです。簡単に言うと、自分の分身であるアバターの性質に自分の性格が引っ張られ、行動パターンが変わるのではないかというものです。
映画やドラマの主人公に影響されることはありますが、それ以上に没入感がありますもんね。
その効果は仮想空間上だけなのか、日常生活にも表れるのかはプレイ時間によっても変わってくると思います。ある実験では、VRでスーパーヒーローになりきる体験をした人は、わざとペン立てを倒したときに拾ってくれる確率が上がりました。※
※:スタンフォード大学が2013年に発表した『Virtual Superheroes: Using Superpowers in Virtual Reality to Encourage Prosocial Behavior』という研究。
なんと! 異性の体に入れ替わるのはどうなんでしょうか? 僕が美少女のアバターを使うとか…….。
バ美肉※は一定の層に人気がありますよね。可愛いものへの関心が高まるかもしれない。それはぜひご自身で試してみてください(笑)
※バ美肉:バーチャル世界で美少女の姿を受肉する(手に入れる)こと。
早速メタバースの世界へ! 人気の「VRChat」をやってみる
メタバースの理解も深まったところで、早速仮想世界に突入!
今回やってみるのは「VRChat」。アメリカのVRChat Inc.が運営する、2017年にリリースされたソーシャルVRプラットフォームで、今や世界中で人気です。
日本語対応はしていませんが、日本人ユーザーも増えてきていて、日本のコミュニティも活発らしいんです。
「VRChat」はVRヘッドセットで遊ぶVRモードと、PCで遊ぶデスクトップモードがあります。PCはWindowsに対応。PCで遊ぶ場合は、プラットフォームの「Steam」からアプリをダウンロードして、SteamVR対応VRゴーグルでVRを楽しむことが可能。
また、「Oculus Quest 2」などの一体型VRゴーグルに対応しているので、その場合は、直接「Oculus Questストア」からダウンロードができます。
情報学部の授業では全員Macを使っているので、今回はWindowsのゲーミングPCが揃う近大の施設「esports Arena」に集まって遊ぶことに。今回は、レンタルしたVRヘッドセット「Oculus Quest 2」※を持ち込んで、VRモードとデスクトップモードどちらも体験してみました。
※「Oculus Quest 2」はesports Arenaに常設されているものではありません
という予定だったんですが、全員VRヘッドセットの装着に慣れていないため、「Oculus Quest 2」がうまく使えず……。この日はVR体験を諦めて、ログインしてPCだけで操作することになりました。
1日目:「Himiko Avatar World」でアバター選び
チュートリアルワールドが終わったら、早速自分の分身になるアバターを選びます。
僕たちが向かった日本のアバターワールド「Himiko Avatar World」には、無料で使えるアバターが100種類以上もあります。あまりの種類の多さに悩みましたが、名前と見た目に惹かれてオレンジ髪の女の子「クソガキちゃん」にしました。
こちらがかわいいクソガキちゃん。
みんなは何を選んだの?
最初、玄関マットみたいなアバターにしたんだけど、目線が低すぎてやめた。みんなにも踏まれかけたし。
アバターっていうより、ワールドにある物体感すごかったもんね(笑)
でも、人間じゃないアバターがよくて。ある程度人間っぽい動きができそうなクラゲみたいな生き物にしたよ。
左から、久保、粳田、岩川、宮﨑、橋川。
私は、金髪の少女を選んだ。現実では背が高くて男っぽい服ばっかり着てるから、背が小さくて可愛らしい感じになりたいって願望があったの。
普段の自分とは違う自分になれるのもアバターならではだよね。
僕も可愛くなってみたいなと思って、猫の女の子のアバターにしてみた。
私はお腹が空いてたのでタコさんウインナーにしたよ。
そんな理由(笑)
こんな感じで、それぞれ個性あるアバターに変身することができました。
普段プレイしている、自分が使うキャラクターを別の視線から捉えるようなゲームとは違い、日常生活と同じように、自分の目で見ている視線で操作するので、ワールド内の鏡の前に立って初めて自分の姿がわかるのがおもしろかったです。
2日目:人狼系ゲーム「Among Us」で遊ぶ
2日目は、みんなで「Among Us」というゲームで遊んでみることに。
「Among Us」は、宇宙船の修理などのタスク完遂を目指すクルー(乗組員)と、それを妨害しようとするインポスター(詐欺師)に分かれて行う宇宙が舞台の人狼系ゲーム。自分以外がどちらの役割かはわかりません。インポスターを追放するか、クルー全員キルされる(倒される)かで勝負が決まります。
今回は「Oculus Quest 2」でプレイしてみます。
プレイヤー同士が近くにいると、リアルな声とヘッドセットからの声の両方が聞こえてプレイしづらいので、情報学部の校舎内にある広めのスペース「オンデマンドサロン」で、離れてプレイすることにしました。
ゲームスタート! 僕はクルーになりました。残り4人のうち1人がインポスターです。
宇宙船は部屋がいくつも分かれており、探検しながら機械を操作しタスクを完了していきます。
ゲーム開始から1分ほどで、橋川さんがキルされてしまいました! 緊急会議を開き、みんなでインポスターだと思う人に投票をします。
それから粳田さんもキルされ、僕はなんとか生き抜いていましたが、インポスターを見破ることができず、クルー側が負けてしまいました……。
負けちゃったか〜。
結構難しかったよね。VRでやると、鬼ごっことかくれんぼを合わせた感じ。
方向音痴すぎて彷徨ってたら、あっという間にキルされちゃった(笑)
タコさんウインナーは目線が低いのが不利だったかも。でも小さいから、物に隠れたりはしやすかったのかな。
僕がインポスターだったけど、目で見ているような視界でプレイできるからクルーの死角が多くて狙いやすかったな。
たしかに。スマホやPCだと、全体を上から見てプレイするもんね。
怖くなって振り向いたり、ドキドキ感がリアルだった。
クルーのタスクも、実際に手を動かして完了させるからおもしろかったな。
足音は聞こえるものの、背後に近づかれていることに気づきにくかったり、難しさはありましたが、ゲームの世界に没入できている感覚が強かったです。みんなVR版が初めてで必死だったけど、何度かプレイして操作に慣れたら、もっと話し合えて仲良くなれるかも。
3日目:人が集まる場所へ行ってみる
VRに少し慣れてきた3日目は、他のユーザーとの交流にチャレンジ。
海外の人がよく集まる「The room of the rain」と、日本人が集まる「Qじゃぱん横丁」に行ってみます。
まずは「The room of the rain」。ワールドに入った途端、英語が飛び交っていました。白黒のゴシック調な格好をした人が集まっていたので、何かのコミュニティでしょうか?
イベントが終わった直後だったのか……タイミングが悪く、離脱する人も多くなかなか輪に入れず。橋川さんと宮﨑くんが頑張っていました。
Hello!
・・・・・・。
Hi! How are you?
・・・・・・。
(クラゲだから怪しまれてる……?)
私たちの放課後は、例えばアメリカでは夜中の3〜4時なので、大人の人たちが多い印象でした。時差も考慮して遊びにいく必要がありそうです。今回は海外ユーザーとの交流は諦めて、「Qじゃぱん横丁」に移動することにしました。
「Qじゃぱん横丁」は日本語推奨のワールド。そのため、中に入るには、「ドラゴンボールの主人公は?」といった日本語の簡単なクイズに答える必要があります。日本人の居場所作りや、横丁の世界観を守るため、日本語での会話を推奨しているからだそう。
やはり日本人ユーザーが集まっており、ここでは簡単な交流をすることができました。
さっきは完全無視されてショックだったけど、日本人の方とはお喋りできた!
人見知りって言ってたのにすごいよ!
ぐるーっと一周してみたけど、本当にリトルジャパンって感じ。
世界に比べるとまだまだ日本のユーザー数は少ないから、こういうワールドのおかげで安心感があるよね。
居酒屋やバー、コンビニ、さらに「モスバーガー」まであり、実在する企業も登場する世界観のリアルな作り込みに感動しました。ハンバーガー食べたい。
4日目:遠足気分で列車に乗って水族館へ
4日目は、「Seasonal Local Train 2nd」というワールドで列車に乗ってみます。
ホームには乗車証明書のスタンプがあり、みんなでペタペタ押してみたり。
運転席も現実の列車みたいに再現されてる。ちょっといじってみよう。
アクセルやブレーキもちゃんとあるし、ホーンも鳴らせるんだね。お〜! 動いた!
駅ごとに春夏秋冬を楽しめるんだって。
わっ、雪景色になった!
タコさんウインナーだと、やっぱり背が低くて景色が見えづらいな。よいしょ。あ!!!
どうしたの?
列車から落ちちゃった!
え! そんなことあるの。戻って来れそう?
次のワールドで合流するから、みんな列車旅楽しんで(泣)
窓が開いてる設定なのか、偶然当たり判定※が抜けてるところだったのか……こういうこともたまにあるようです。
※当たり判定:ゲームプログラミングにおいて、物体同士の接触や衝突を判定するプログラム処理のこと。
ハプニングもありましたが、15分ほどの列車旅を楽しみ、「Aquarius」という水族館のワールドにやって来ました。
中に入ると巨大な水槽が出迎え、映像の美しさにうっとり。魚についての説明も書いてあり、本当の水族館に来たような気分になりました。
館内を移動してみると、バーカウンターを発見。フリードリンクのようで、クラゲの宮﨑くんがみんなにビールを注いでくれました。めっちゃ溢れてたけど(笑)
乾杯〜!!!
リアルではこんな感じ。
僕たちはまだ10代なのでお酒は飲めませんが、この世界では堂々と飲酒できちゃいます。なんだか不思議な気持ち。みんなぎこちない(笑)
奥にはビリヤードができる空間もありました。
さっきのビールサーバーもそうだけど、プログラミングどうなってるんだろうね。すごいや。
ユーザーが実際にアクションを起こせるギミックを作れたら、めっちゃ達成感あって楽しいだろうなあ。
5日目:メタバースにしかない異世界に
最終日の5日目は、「UNDERGROUND CITY」という、日本人のLunar Eclipseさんが制作したワールドへ行ってみることに。地底都市がテーマだそう。
エレベーターで地底へと潜っていくのですが……。
え! ちょっと待って! 私置いてかれちゃった……
本当だ、橋川さんがいない(笑)
もしかして4人乗りだったのかな。
カウント100って書いてあるから、次のエレベーターまで1分40秒待ちかな……?
置いてけぼりで落ち込む橋川さん。
うわ、すごいところに来た!
でっかいロボットにどっか連れてかれる……!
どういう状況!? ずるい!!
ゆっくり進んでるから早くおいで〜!
地底の世界はまさにカオス。なんじゃこりゃと目が回りましたが、大きなロボットが僕たちを乗せてワールド内を案内してくれました。
ゆっくり進んでいるうちに、橋川さんもなんとか到着! 必死に走ってきてくれたみたい。
その後、さらに深い地下マントルに潜り、メタバースならではの異空間を大いに楽しみました。
いや〜すごかった。こんな世界を作れる技術もそうだけど、創造性にも憧れる。
私たちと同じ日本人の方が作ってるっていうのも格好いいよね。
今の現実世界では絶対にないような世界を、VRを通していろんな人が体験できるってすごく夢がある。
5日間のダイジェスト動画はこちら。
メタバースは遊びも学びもたっぷりな新しい放課後空間だった!
5日間の体験を終えて、それぞれ感じたことをみんなで話し合ってみました。
メタバースを体験してみてどうだった?
ゴーグル越しで自分の手を見るとアバターの手になってるから、自分が仮想空間に入れてるって感動したなあ。
人見知りを克服して、もっといろんな人と交流したいって思えました。いい機会になったな〜。
私は人と面と向かって話すのがあまり得意じゃないから、VRヘッドセットをつけることで普段より話しやすくなったよ。
メタバースについて詳しく知らない友だちも連れていってみたい。「UNDERGROUND CITY」とか、現実世界にはない楽しみ方ができるから。
コロナ禍の放課後の過ごし方に悩んでいましたが、新しいデジタル技術によって物理的には距離があっても、限りなくリアルな世界で友だちとゲームや旅を楽しめることがわかりました。この5日間、協力しながらプレイしたことで、みんなの仲もより深まった気がします。
メタバースは情報学部の僕たちにとって、友だちと遊べるし勉強にもなる、一石二鳥な「新しい放課後空間」でした。ただ遊ぶだけでなく、作り手になれる日を目指して、これからも情報学部でたくさんの知識を吸収していきたいです。
みなさんも、機会があればぜひ友だちと遊んでみてはいかがでしょうか!
この記事を書いた人
岩川 凌汰(いわかわ りょうた)
近畿大学 情報学部 情報学科 1年生
小さい頃からパソコンに触れ、フラッシュゲームなどで遊んでいた。趣味はゲーム・謎解きなど。
写真:トミモトリエ
監修:武者良太
企画・編集:人間編集部
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