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2021.09.10

誤解されがちな「ステロイド」。効能を正しく理解して適切な使用を。

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
医療
ステロイド

先日、某テレビ番組で「脱ステロイド療法」が紹介され、ネット上で様々な声が上がりました。ステロイド薬を巡っては、1990年頃からステロイド薬は危険であるという説が出たことで、アトピーなどに悩む多くの人々が翻弄された過去があります。
アトピー性皮膚炎の治療等を専門とし、ステロイドの効果や副作用に詳しい、近畿大学医学部 皮膚科学教室主任教授の大塚篤司先生に聞きました。

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大塚篤司(おおつかあつし)

医師/博士(医学)/近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授

専門:アトピー性皮膚炎の治療、悪性黒色腫の治療、乾癬の治療
皮膚科専門医・アレルギー専門医・がん治療認定医
がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。
Twitterは@otsukaman

近畿大学医学部皮膚科学教室
近畿大学病院




アトピーなどに悩む人にきちんと知ってほしい。ステロイドの副作用


――アトピー性皮膚炎などの治療によく使用されるステロイド外用剤には、どんな副作用がありますか?

主なものに、長期使用で皮膚が薄くなること、毛が濃くなること、にきびができやすくなることが挙げられます。また、皮膚の薄い顔に強いランクのステロイドを使い続けると、「酒さ様皮膚炎」(毛細血管が浮き出て顔に赤みが出る症状)を引き起こすこともあります。

――皮膚が薄くなる、というのは少し心配です。
ある方のケースでは、子どもの乳児湿疹がひどく、皮膚科で処方されたステロイド外用剤を塗布していたところ、義母に「色白な子ね。血管が透き通ってよく見えるし、ステロイドの影響で肌が薄くなっているのでしょうね」と言われたそうです。


ステロイド外用剤には血管収縮作用があります。そのため、かつてお化粧のようにステロイド外用剤を使ってしまい、副作用に苦しんだという方もあるでしょう。お義母様はちょうどその世代なんだと思います。いまはステロイド外用剤の安全な使い方もわかっており、副作用で困ることはだいぶん減りました。医師の指導どおりに使えば安全なお薬です。

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――(皮膚が薄くなる、毛が濃くなる、にきびができやすくなるなどの)副作用は、使用中にのみ出るものですか?使用を中止すると改善するのでしょうか?

主にステロイド外用剤の使用中に起きます。使用を中止すればほとんどの副作用は改善します。

――ステロイドを塗ることで、副作用の出やすい部位、出にくい部位はありますか?

ステロイド外用剤は、体の部位によって吸収の度合いが異なります。腕の内側の吸収を1とした場合、頬はその13倍で、顔はステロイド外用剤を吸収しやすい部位です。
そのため、顔にステロイドを使う場合はなるべく弱め(おもに下から2番目のステロイド外用剤であるロコイド、キンダベート、アルメタなど)のものを使います。
反対に足の裏は皮膚が厚く、腕に対して薬の吸収は0.14倍で、強めのステロイド外用剤を塗らないと効果が出ません。
一方、まだ皮膚が薄い赤ちゃんの場合は、弱い外用剤でも十分に効果が出ます。塗る部位や薬の強さを間違えると、副作用が起きる危険性があるので注意が必要です。

ネット上に蔓延る数々のデマ


――SNSなどで、様々な副作用があると見かけて不安になります。
どれが間違った情報なのでしょうか?

誤解1:ステロイドを塗ると皮膚が黒くなる
ステロイドに皮膚を黒くする作用はありません。皮膚炎とはいわば火事のようなもので、ステロイドは鎮火するための水です。火事の後の黒くなった部分は、消防の放水のせいではなく火事そのものが原因です。

誤解2:ステロイドを塗ると骨が弱くなる(骨粗鬆症)
これはステロイド内服での副作用であり、ステロイド外用剤では起きません。同じように内服と外用の副作用を混同しているものに、糖尿病、胃潰瘍、高血圧などがあります。これら全身性の副作用は、一般的なステロイド使用量で起きることはありません。
一方、大量のステロイド外用剤を使うと、内服と同じ副作用が起きるとの報告もあります。全身性の副作用を起こさないステロイド外用剤の使用量の目安は、体重10キロあたり月間15グラム未満(J Dermatol, 31:277,2004)です。
体重が20キロのお子さんの場合、ステロイド外用剤30グラムまで、60キロの成人は90グラムまでの計算になります。
これより多いステロイド外用剤が治療に必要な場合、全身性の副作用が出ないか副腎機能をモニタリングしながらの投与となります。

誤解3:ステロイドが子宮にたまる
これは全くのデマです。

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――長期的に使用しても、問題はないのでしょうか?

ステロイド外用剤は、不要に長期的に使用することは避けて、強めの薬を短期間しっかり塗ることが大切です。現在、アトピーなどの慢性疾患では、湿疹が出てから塗るのではなく、湿疹が出る前に週2〜3回外用する「プロアクティブ療法」が推奨されています。
 
プロアクティブ療法がうまくいくと、徐々にステロイドを塗る回数が減り、最終的には保湿剤のみに切り替えることが可能です。
アトピーで悩んでいる場合は、アトピーを専門とする医師の元で、適切なステロイドの塗り方を聞くことをお勧めします。
20年前、顔に強いステロイドを塗り続けて起きた「酒さ様皮膚炎」はプロトピック軟膏の登場で減ってきています。


――正しく使用すれば、怖い薬ではないのですね。
特に初めての子育ての場合、どれくらいの症状で病院に行くべきなのか分からず、親世代や周囲の不確かな情報に惑わされることも少なくありません。アトピーや乳児湿疹には、基本的に保湿が重要なのでしょうか?

ステロイド外用剤は、正しく使えば決して怖い薬ではありません。ステロイドが治療に必要な状態で悩み、ネット上のデマを信じて間違った判断をしてしまい、症状を悪化させてしまう方も少なくありません。
また、乳児期からの保湿を積極的に行うことは、アトピー性皮膚炎の発症の予防に繋がることもわかりました。 
ステロイドの効果が不十分な患者さんには、「デュピクセント(一般名:デュピルマブ)」という注射が登場し、効果を発揮しています。この先もステロイド以外の新たな治療薬が増えていきます。



――いまネット上には、薬や治療法に関する真偽が定かでない情報が無数にあり、惑わされることがあります。
正しい情報を得るために、どのようなことに気をつければよいでしょうか?

まずは大学病院や厚生労働省など、公的機関が公開する情報を見るようにしましょう。公的機関には複数の専門家が集まり、間違いのないようにチェックした情報が公開されています。いまはインターネットで治療のガイドラインを見ることができます。専門的で難しいですが、自分が気になる薬や治療法について専門家がどう考えているのか知ることができます。
一方、個人レベルでの情報はたとえ専門家であったとしても注意が必要です。ブログや雑誌、テレビの情報はエビデンス(根拠)が乏しいことも多く鵜呑みにしてはいけません。判断に悩んだらまず主治医に直接相談することをおすすめします。


企画・編集:Kindai Picks編集部

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