2021.09.10
「やるなら今しかない」現役近大生が青森県でオンライン塾を立ち上げた理由
- Kindai Picks編集部
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青森県に住む近畿大学法学部3年生で、今年から県内の小中高生を対象としたオンライン個別学習塾「エアスタ」を開校した小野大毅さん。どうして彼は学業の傍ら、青森県で塾を始めたのでしょうか? そこには、地方出身だったからこそ見てきた景色がありました。弘前市内の仕事場から、オンラインでお話を伺いました。
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近畿大学 法学部 3年生
1998年12月15日生まれ。青森県五所川原市出身。近畿大学入学後、大阪で塾講師のアルバイトを始める。休学して青森県に帰省し、2021年3月オンライン個別学習塾「エアスタ」を開校。現在は学生でもありながら、「大学生塾長」として青森県を中心に、全国の小中高生の授業や学習サポートを行っている。
教える楽しさを知った大学入学後のアルバイト経験
ーー小野さんは2017年に近畿大学に入学されたんですよね。法学部を選んだ理由は何だったのでしょう?
実は、高校2年生の後半から体調を崩していたこともあり、進学予定はなかったんです。でも、高校3年生の冬頃に大学受験の準備をしていく友人を見ると、「やっぱり自分も大学に行きたい」と思うようになりました。そこから、勉強して近畿大学を受けました。法学部を選んだ理由は「資格に強そう」と思ったからですね。現在、学部では知的財産権のゼミに入っています。
ーー実際に入学してみて感じたことはありますか?
大学生って「人生の夏休み」みたいなイメージがあるじゃないですか。正直遊んでいる人が多いのかなって思っていたんですけど、実際はかなり勉強しないといけなくて。「大学生って意外に勉強するんだ!」と思いました(笑)。あと、教授が関西弁で授業していることに驚きました。
ーー関西の大学だと、授業は思いっきり関西弁ですよね。慣れない方言で授業を受けることに苦労しませんでしたか?
そんなことはなくて、「関西弁=お笑い」って感じでテレビなどで慣れ親しんでいたので、標準語より聞きやすいくらいでした。法律とか難しい話になると、関西弁の方が話が和らいで頭に入ってきやすいし、印象に残るんですよね。
ーー大学に入って楽しかった思い出はありますか?
アルバイトで始めた塾講師の仕事が楽しくて。最初、八尾市の個別指導塾で働いてたんですけど、そこの塾長がとても面白い人だったんです。生徒は学校で6時間の授業と部活をやってから塾に来るので、疲れているんですよね。だから、「塾では生徒を笑わせなあかんで!」と、塾生を楽しませることに全力を注いでいて。
その塾で、ただ勉強を教えるのではなく、学生と一緒に勉強を楽しむという、教える楽しさを知りました。でも、そんな時に、また体調を崩してしまったんです。休学して故郷の青森に戻ることになったんですが、体調が良くなったら、大学生として復帰するというよりも、まずは塾講師として復帰したいという思いの方が強かったです。
オンラインの特徴を活かす! 安全で誰でも見られる塾づくり
ーー青森県で塾を始めたきっかけを教えてください。
休学中に県内の塾で働いていたんですけど、ある日、車の走行中に周囲が見えない吹雪に見舞われて、自宅に帰れなくなりました。そんな時、オンライン塾なら、天候に左右されずに生徒も保護者も安心できるのではないかと思ったんです。
それに、青森だと生徒が塾に通うために保護者の送迎が必要な場合が多く、往復1時間以上かかることもあります。都会だと塾の選択肢も多いけど、青森は選択肢が少なく、「そこにしか塾がないから仕方なく行く」といった声もあって。だったら、オンラインにして、安全でどこでも授業を受けられるような塾をつくろうと決心しました。
ーー塾を開校するまでの準備期間はどのくらいだったんですか?
最初は対面式も併用したオンライン塾にしようと考えていたんですけど、大学生だと物件が借りられず……断念しました。年末から、完全オンラインに切り替えて今年の3月に開校しました。その期間はもう一気に駆け抜けた感じで、自分でもよくやったなと思います。
ーーオンラインの塾って通学する必要もなく、スマホ一台あれば受講可能で……と、メリットがたくさんありますよね。
オンラインだとスマホのボタンひとつで授業が始まるし、周りに人がいないのでリラックスして授業を受けることができます。うちは「Comiru※」や「Comiru Air※」という2つのアプリを使っているんですが、「Comiru Air」は録画しながらオンライン授業ができるので、対面式の塾よりも復習がしやすいです。
※Comiru:学習塾と生徒・保護者を繋ぐコミュニケーション管理アプリ。塾からの連絡はLINEで通知されるようになっており、授業料支払いなども一括管理できる。
※Comiru Air:「Comiru」と連携したオンライン授業に特化したアプリ。録画や動画コンテンツのアップロードが可能。
不明点が出ても、オンラインなら後から講師に聞きに行く必要もなく、その場で返事がもらえるので時間も有効に使えますね。「Comiru Air」では、小中高生の教科に対応した約2700本の動画がまとめられていて、いつでも好きな時に見ることができます。
塾用アプリ「Comiru」では、予習用として事前に資料を送れ、スマホでも字が見えやすいよう大きな文字を使う工夫がされている
ーー授業はすべてオンラインですが、学生とのコミュニケーションはどうしていますか?
学生や保護者とは「LINE」を使って連絡を取り合っています。学生とは日程調整から学校生活の悩みごと、日常会話のちょっとしたことまで話しますね。私は学生からもう友達だと思われていて、塾でも「先生」って呼ばれていないんですよ。高校生からは「小野さん」、小学生からは「大毅」って下の名前で呼ばれています。私もあんまり先生とか塾長って呼ばれたくないのでありがたいです(笑)。
うちの塾は授業料よりも、生徒が結果を出す方が大切なのでひとりで勉強していても分からない子にはずっと張り付いて教えますね。授業の解説に丁寧語は使わないで、生徒が話しやすくなる自由な雰囲気をつくっています。
オンライン授業では毎回、講師も学生も顔を映しながらコミニュケーションをとっている
ーー塾の講師には小野さんと同じ青森県内の大学生を起用しているんですよね。
あえて塾の講師に、大学生を選んでいるのは結構メリットがあるからです。やっぱり勉強の内容や受験経験を比較的覚えているので、新鮮なうちに経験を共有できますよね。あとは年齢が近いので、学生も講師に質問しやすいです。講師には「雑談が好きな人」を起用しました。スーツではなくある程度自由な服装でOKですし、自宅から授業を配信してもらい、講師側にとっても働きやすい環境を目指しています。
学び続ける機会をできる限り提供したい
ーー大学卒業を待たないで、在学中に塾を立ち上げたのには理由があるんですか?
「塾を開きたい!」と、思った時に大学卒業まで後2年あったんですが、昨年から大学の授業もオンラインになって、その経験をできるだけ早くアレンジして活かしたかったんです。卒業まで待っている間に、大学生でオンライン塾をやる人が出てきたら先を越されるじゃないですか。それに、大学生だからこその生徒たちとの距離感を大事にしたかったので「今しかない」と思ったんです。
ーー開校した後、周りからどんな反応がありましたか?
今、大学の授業はオンラインのみで受けているため、青森で過ごす時間も長くなるので、法学部の職員の方には「塾を開きました」と、一応報告はしたんです。そしたら「おめでとう」と言ってもらい、近大って自由だなと思いました(笑)。
ーー塾の仕事もやりながら、どうやって大学の勉強を両立させているのか気になります。
そもそもできているのか分からないんですけど(笑)。大学のオンライン授業は、自由な時間に動画を見ることができるオンデマンド型もあるので、時間に都合がつけやすくなりました。塾の授業は基本夜なので、例えば夜の10時に塾の授業を終えて、そこから大学の授業を見て、課題を提出するのでそこまで両立に苦労はしていません。
ーーちなみに、休みの日はどうやって過ごしているのですか?
オフの日も「やっぱり塾講師だな」と思うのが、生徒に「あのアニメ面白いよ」って言われたのを見ていたら一日が終わっているんです。生徒が興味のある漫画やYouTubeのチャンネルはとりあえず見ています。次の授業の会話のネタとして使えるのが楽しいんですよね。
ーー今後の展望について教えてください。
卒業後も今の塾を続けていきたいと思っています。青森で進路相談できる機会を増やしたり、オンラインで学び続ける機会をできる限り提供していきたいです。それに、私自身も学校に行けなかった時期があったので、不登校の子に向けたオンライン授業もやりたいです。広げたいことがたくさんあるんですけど、まずは「目の前の学生の成績をどう上げるのか」を一番に考えないといけないですね。
ーー卒業までに大学でやりたいことはありますか?
卒業論文は「オンラインでの財産権や著作権が今後どのように保護されていくのか」について研究する予定です。卒業までにキャンパスに戻って、近大の学生と一緒に「オンライン」をテーマにしたプロジェクトに挑戦したいと思っています。
ーーありがとうございました。
塾の学生の「身近な存在」として、勉強以外のサポートも務める小野さん。小野さんの取り組みは地方に住む学生だけではなく、学習したいと思うすべての人に取り入れられる新しい動きが見えます。これからも、新しい分野を切り開く小野さんに大注目です。
全国の小中高生や保護者の方で「エアスタ」に興味のある方は、ホームページからお問い合わせください。
オンライン個別学習塾エアスタ
取材・文:吉野舞
編集:人間編集部
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