2022.11.07
卒業生×在学生 起業家対談 近大発!起業家3人が語る起業の魅力とは
2510 View
2025年までに大学発ベンチャー企業100社の立ち上げを目指す近畿大学。2022年には起業支援プログラム「KINCUBA」をスタートしました。
今回は、近畿大学の卒業生で大学の起業家育成プログラムでメンターも務められている、株式会社トラベルテックラボ代表取締役社長の芝先 恵介さんと、現役3年生で在学中に起業した岡本 萌花さん、山本 あかりさん3名による対談をお届けします!
この記事をシェア
株式会社トラベルテックラボ 代表取締役社長兼CEO。1996年近畿大学文芸学部文学科卒業、経営学修士(MBA)。2002年にスタートアップを起業し2013年に売却。その後、スタートアップや大企業の新規事業立ち上げやDX支援、大学等で経営戦略や事業計画作成コースを担当。その他、大阪産業局 経営相談室 経営サポーター、中小企業庁 中小機構 中小企業アドバイザーに就任。自らの経験をもとに起業支援を行う。現在は、株式会社トラベルテックラボの代表として、日本の観光立国を目指すべく奮闘中。
株式会社HAGI 代表取締役。近畿大学経営学部経営学科3年生。起業したい学生を応援してくれる「KINDAI STARTUP ACADEMY」で共同経営者の山本さんと出会い、2021年3月に株式会社HAGIを設立。(設立時、在学2年生)
株式会社HAGI 代表取締役。近畿大学経済学部国際経済学科3年生。起業したい学生を応援してくれる「KINDAI STARTUP ACADEMY」で共同経営者の岡本さんと出会い、2021年に株式会社HAGIを設立。(設立時、在学2年生)
日本と世界の架け橋になるサービスを提供したい
岡本:本日は、卒業生×在学生の起業家対談ということでお話をお伺いしていきます。 芝先さんは、2016年に株式会社トラベルテックラボを設立されましたが、具体的な事業内容をお伺いしてよろしいでしょうか。
芝先:訪日外国人旅行者向けプリペイドSIMカードサービス「Traveltech SIM」の販売やビッグデータ解析システムの開発など、訪日外国人×地域創生をコンセプトとした事業を行っています。世界中の方々に日本の魅力を知ってもらい、地域創生に繋がるようなサービスを目指しています。
株式会社トラベルテックラボWebサイト:http://www.traveltechlab.co.jp/
山本:コロナ禍の前と後で事業環境に変化はありましたか?
芝先:新型コロナウイルスの感染拡大により日本は鎖国状態になりました。そのため、訪日外国人に頼っていた日本各地の観光地は大きなダメージを受けています。ただ、昨今、訪日外国人の受け入れを徐々に再開しつつありますが、訪日外国人の半分以上を締めていた個人旅行客の再開まではしばらくかかりそうです。
そこで、新たに台湾人観光客をターゲットに日本各地のおいしいお菓子を楽しめるサブスクリプションサービス(月額サービス)を開始しました。弊社で仕入れた箱売りの商品をバラして、色々なお菓子を詰め合わせにしたお試しパッケージとして販売しています。弊社のサービスを通して日本全国の銘菓・特産品を購入いただくことで、少しでも地域活性化に繋がればと思ったんです。
岡本:芝先さんは、学生時代からすでに起業を考えていたんですか?
芝先:そうですね。ただ、学生時代から起業したいなと思って取り組んではいたものの、「これだ!」って思えるビジネスアイデアはなく……。就職活動もしましたが、やっぱり自分で会社を立ち上げたいという気持ちが強かったので起業浪人したんです。公認会計士の勉強をしながら起業アイデアを考える日々を送り、就職先である外資系の会計ソフトの会社で出会った仲間と2002年に起業しました。
システム開発やサイト構築、Webデザインなどを行うWeb制作会社を立ち上げましたが、2013年に売却しました。決断力や実行力、先見性など経営者に必要なスキルを身につけるため、大学院に入学しました。
地方創生について考えるようになったのは、大学院でのフィールドワークが大きいですね。
現在、日本には約1,700を超える市町村がありますが、少子高齢化が進むと一部の市町村は将来、消滅するかもしれないといわれています。
地域活性化を目的としたボランティア活動にも参加しましたが、一時的に観光客が増えて盛り上がったとしても長続きさせるのは難しいものです。2016年は訪日観光客数が過去最多を記録した年だったので、ITを活用すれば地方創生につなげられるのでは? と考えました。そこで立ち上げたのが、株式会社トラベルテックラボです。
起業直後は、SIMカードを無料で配ったり、市町村に行って弊社のアプリを使いながら観光していただいたり、アプリサービスの事業からスタートしました。
いざという時に心強い相談相手がいるのは共同経営だからこそ
起業された時の芝先さん
山本:起業で1番苦労したことは何ですか?それをどう乗り越えたのかも教えていただきたいです。
芝先:めちゃくちゃ難しいですね。苦労というか一番辛かったのは、2008年のリーマンショックのときです。リーマンショックの煽りを受け会社の経営が傾き、当時一緒に働いてくれていた多くの社員を解雇しなければならなかった。恥ずかしい話ですが、お給料の遅配があり半年かけて毎月支払いをしていました。自分の会社で働いてくれている人は幸せなはず、そうであってほしいと思い経営していましたが、結局不幸にしていたんだということに気づいたんです。私も2人と同じく共同経営者がいるのですが、そのときにやっぱり支えになってくれましたね。共に苦労を乗り越えることができましたし、最終的には解散した社員のほとんどに戻ってきてもらうことができました。
岡本:やっぱり2人でやるってめちゃめちゃ重要ですね。辛いときにいろいろ話ができるって大切なことだと思います。
大型フリーマーケット「るらるマーケット」を開催
芝先:岡本さんと山本さんは、在学中に2人で株式会社HAGIを立ち上げて共同経営されていますよね?
山本:はい。株式会社HAGIでは、地方をメインに大型フリーマーケットを開催する「るらるマーケット」の企画・運営を行っています。犬猫の譲渡会や大道芸、キッチンカーの出店など、子どもから大人まで楽しめるイベントを企画しています。他県からわざわざ足を運んでくださる方も多く、新しいコミュニケーションが生まれる場所にできたら嬉しいです。
芝先:お二人は、入学前から起業を考えていたんですか?
山本:お互い高校生の頃から起業は考えていたんです。近大入学後に参加したベンチャー支援プログラムで岡本さんと出会いました。岡本さんとはお互い実現したい事業アイデアが似ていたこと、学生起業家の講師から与えられた課題にずっと一緒に取り組んでいたことから意気投合して株式会社HAGIを立ち上げました。
芝先:数ある事業のなかで、フリーマーケット運営事業に決めた理由は何だったんですか?
山本:大阪だと月30回ほどフリーマーケットが開催されているんですけど、地方になると数える程度でリユース品を売る場所がありません。もっと身近にリユースできる場所や地域の方同士がコミュニケーションを取れる機会を作りたいと思ったことが、るらるマーケットをはじめたきっかけです。
岡本:あとは、子どもの頃の思い出も大きいですね。幼い頃、両親が出店していたフリーマーケットに付いて行くのが楽しみでした。そこで売れたおもちゃの売上がお小遣いになるのがとにかく嬉しくて(笑)。大人になって自分でフリーマーケットに出店するようになり、自分でもできるかもしれないと思いフリーマーケット運営事業に決めました。
起業学生をバックアップする「KINDAI STARTUP ACADEMY」
芝先:面白い着眼点ですよね。それから株式会社HAGIを立ち上げるまではどういった流れだったんですか?
岡本:近大で開講している「KINDAI STARTUP ACADEMY」に参加しました。近畿大学の学生を対象にした「KINDAI STARTUP ACADEMY」は、株式会社ウィルフ※と提携している学生起業スクールです。週に1度3時間ほどの講座があり、2週間で10万円の利益を出すという課題をクリアしながら、起業ノウハウについて半年間かけて学んでいきます。
※株式会社ウィルフは学生が起業を学ぶビジネススクールを運営している会社
https://willfu.jp/
「KINDAI STARTUP ACADEMY」終了後、起業家を輩出するための講座やイベントを企画・運営している「OKonomi アクセラレーションプログラム」に参加しました。「OKonomi アクセラレーションプログラム」は、起業に関する基礎知識のインプットをはじめ、経営ノウハウの習得や専門家のメンタリング、法人の立ち上げなどサポート体制が万全です。プログラム内の審最終査に合格したら、法人設立資金30万円をいただけるというもので、私たちも、支援していただきました。起業を考えている方はチャレンジして損はないと思います。
山本:また私たちはKINDAIビジコン(近畿大学主催のビジネスコンテスト)にも出場し、優勝して賞金30万円いただきました。
岡本:そうだね。近畿大学からはOKonomiプログラムとビジネスコンテストの優勝金額を合わせると合計60万円支援していただいています。
山本:設立資金以外にも、何かに困ったり悩んだりしたときにすぐに相談できるサポート体制があるのは本当に心強いです。
芝先:先ほどお話したとおり、私も最初に起業したときは共同経営者がいたんですよ。経営者は孤独ってよくいわれますけど、本当にその通りで・・・。しんどいときに色々話ができるってすごく心強いですよね。いざという時に頼れる仲間がいるって会社経営においてもめちゃくちゃ重要だと思います。
山本:芝先さんのおっしゃる通りだと思います。ここまでやってこれたのは、2人だからこそです。
岡本:芝先さんは現在、近大のベンチャー支援プログラムでメンターを務めていると思うのですが、起業を目指す学生にどのようなアドバイスをされていますか?
芝先:そうですね。「OKonomi アクセラレーションプログラム」で、週に一度、1人の学生にアドバイスさせていただいています。私が大切にしているのは、本人のやりたいことを尊重すること。そのうえで、本人の強みを活かしてどうやって利益を上げていけるかをアドバイスしています。
自分たちが受けた恩を返していきたい
芝先:近大ベンチャー支援のメンターをしながら感じているのですが、会社設立後のフォローがもっと整えば起業する人が増えていくのかなと感じています。顧問弁護士や公認会計士を探したり登記の仕方を調べたりするのは、本当に大変ですから。お二人は在学中に起業されましたが、何に一番苦労しましたか?
山本:私たちはOKonomiプログラムの優勝賞金があったり、プログラムを通して司法書士を紹介していただけましたが、やはり資金面が大きな課題かなと思います。
芝先:そうなんですよね。ファンドを作ることで、多くの学生起業家が抱える資金面の課題をクリアできるかなと思います。最近は起業する学生が増えているので、その波に乗っかってしまうのもアリかもしれないですよね。副業ではじめて、収益が見込めそうなら事業化すれば良い。アクセラレーションプログラムでも、あまり構えすぎず気軽にチャレンジしてほしいと伝えています。
芝先:2人は今後の展望について、何か考えていることはありますか?
岡本:私は在学してる間に年商3,000万円を目指したいです。
芝先:今はどのくらい?
岡本:月によってバラつきはありますが、月平均の売上は150万円前後です。イベントが多い春や秋には、月300万円を売り上げることもあります。
山本:今、起業を目指している約20名のインターン生が一緒に働いてくれています。私は、私たちの働く姿を見てもらって、実際に起業の手助けやアドバイスとかできたら嬉しいですね。起業するにあたって、近大の先輩や起業家の方に助けていただいたので、恩返ししていけたらと思っています。
芝先:まだ若いのにその歳でもう返していくって……。すごいね。
岡本:芝先さんの今後の展望を教えてください。
芝先:私は、近大の起業家支援プログラムのメンターや審査員、大阪府のアクセラレーションプログラムのお手伝いなど自身の経験を活かしたお仕事に携わらせていただいています。生まれも育ちも大阪なので、故郷でイノベーティブな学生や社会人の方と一緒におもしろい商品・サービスを作っていきたいですね。
取材・文:笑屋株式会社
写真:井原完祐
企画・編集:近畿大学校友会
この記事をシェア