2020.06.19
マスクで熱中症になる? ハイタッチは自粛? スポーツ時の新型コロナ対策
- Kindai Picks編集部
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新型コロナウイルスの影響で延期していたプロ野球セ・パ両リーグの公式戦が、いよいよ6月19日に開幕。ただし、ハイタッチを控えるなどの感染防止策がとられ、従来のプレースタイルとは異なる部分がみられます。プロ野球に限らず、心身の健康維持に欠かせない運動やスポーツを、私たちはこの時期どう楽しめばよいのでしょうか。そこで今回は、近畿大学医学部環境医学・行動科学教室准教授の東賢一先生ご監修のもと、各スポーツ団体が公開しているガイドラインを踏まえながら、スポーツの感染予防についてまとめました。
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東 賢一(あずま けんいち)
近畿大学医学部環境医学・行動科学教室准教授
衛生学、健康リスク評価学を専門とし、生活を取り巻く環境因子と健康の相互作用に関する研究を行う。主な研究領域は、環境中の化学物質や病原性微生物などによる人の健康影響評価・健康リスク評価。
近畿大学医学部環境医学・行動科学教室
近畿大学病院
気になる熱中症リスク。スポーツ時もマスクはつけたほうがいい?
不要不急の外出を控える日々が続き、体力の低下を感じることもあるのではないでしょうか。心身の健康を維持するうえで、運動やスポーツは欠かせない習慣。気温が上がる時期に外で汗をかいて少しずつ暑さに慣れていくことは、熱中症予防にもつながります。
とはいえ、新型コロナウイルス感染症が終息していない現段階でスポーツを楽しむためには、感染への配慮が必要不可欠です。スポーツ庁では、スポーツ時の感染防止策として以下の習慣をあげています。
感染防止の3つの基本
①周りの人との距離を十分にとる(少なくとも2m)
②マスクを着用する(体への負担を考慮し、着用は各自で判断する)
③水と石鹸を使った30秒程度の手洗い、手指の消毒をこまめに行う
ただし、マスクの着用にはご注意を。マスクをつけてスポーツをすると熱がこもりやすくなりますし、口の中の湿度が高くなってのどの渇きに気付きにくくなり、熱中症になるリスクが高まります。また、運動強度(運動時に感じるきつさ)が上がって体に負担がかかるほか、呼吸困難を引き起こす可能性も考えられるため、状況に応じた判断が求められます。
例えば、屋外で周囲の人と2m以上の距離を保てる場合は、基本的にマスクを着用する必要はありません。また、運動強度が高い競技での使用は慎重に。呼気が激しくなるため、マスクの着用時は走るペースをゆっくりにするなどして運動強度を落とし、息苦しさを感じたらすぐにマスクを外して休憩をとりましょう。水分を補給するときは、水分だけでなく塩分を摂取することも大切です。
ハイタッチ、握手、円陣はNG!? 各スポーツ団体のガイドラインで注意点をチェック
一口にスポーツといっても、それぞれの競技でプレースタイルが異なるため、注意するポイントも変わってきます。まずは、各スポーツ団体がウェブ上で公開している、感染予防ガイドラインを確認してみましょう。ここでは、野球やテニスなど5つの競技に関するガイドラインの一部をご紹介します。
新型コロナウイルス感染予防のためのガイドライン(一部)
野球
● 球場に出入りする際はマスクを着用する
● 球審はマスクを着用。ただし、熱中症の予防に十分注意する(塁審は着用しない)
● 更衣室の換気を行い、密閉・密集・密接を避ける
● グラウンドに痰や唾を吐かない
● ハイタッチやグータッチを行わない など
テニス
● プレー中、お互いの距離を2m以上確保する
※ダブルスペア間でラケットが当たらない距離は約2.8m<(腕の長さ+ラケットの長さ)×2>
● ベンチやネット、審判台に手で触れない
● ベンチに座る際も周りの人との距離を確保する
● 試合のはじめと終わりの挨拶は握手ではない方法で行う
● プレー中は手で顔に触れない など
サッカー
● プレー時以外はマスクを着用する
● 握手やハイタッチ、円陣は行わない
● ミーティングの回数や時間を減らす、もしくは行わない
● タオルやボトルをほかの選手と共有しない。また、水や氷をためたクーラーボックスにボトルをつけない
● うがいした水をピッチ内に吐かない など
卓球
● 競技中のマスクの着用は不要。ただし、競技外の時間(特に会話するとき)は着用する
● 卓球台は十分な間隔を開けて設置する(4m以上を推奨)
● 当面の間、チェンジエンド(コートの交代)は行わない
● 卓球台の上で手を拭かない
● 握手など体が接触する挨拶は行わない など
バドミントン
● ヘアピンショットなど、ネット付近でのプレーは距離感が近くなるので注意する
● ダブルスでは、パートナーと接近する場面に注意。コート内での会話や接触は避け、コート外でマスク着用や消毒をしたうえで行う
● シャトルの受け渡しの際はラケットを使用する
● シャトルは消毒が困難なため、共用を避ける
● 床の汗はモップなどで拭きとる(自分のタオルで拭かない)など
上記は6月11日時点で公開されているガイドラインに基づいています。ほんの一部ですし、新型コロナウイルスに関する知見の蓄積や感染状況の変化などを受けて修正されることもあるため、詳細や最新の情報は各スポーツ団体のホームページでご確認ください。
そして、どの競技においても体調確認は必須事項です。開始する前に以下のような症状がないか確認し、当てはまる場合は参加を控えましょう。
スポーツ前の体調チェック
① 平熱を超える発熱
② 咳やのどの痛みなどの風邪症状
③ だるさ(倦怠感)、息苦しさ(呼吸困難)
④ 嗅覚や味覚の異常
⑤ 体が重く感じる、疲れやすい など
感染防止とスポーツの楽しみをどう両立させる?
「ハイタッチも円陣も握手も行わないなんて、盛り上がりに欠けるのでは……?」と思われるかもしれません。しかし、緊急事態宣言が解除されたとはいえ、まだ油断できない状況が続いています。外出自粛で思いっきり体を動かす機会が減って体力が低下しているときに、いきなりハイテンションで激しいスポーツを行うと、かえって心身に負担をかけてしまうこともあるでしょう。
現在のところ、新型コロナウイルスは飛沫感染と接触感染によってうつるとされています。また、一般的には、1回のくしゃみで約4万個、1回の咳で約3,000個の飛沫がウイルスとともに放出され、5分間の会話でも同じく約3,000個の飛沫が生じるといわれています。
マスクはそうした飛沫の放出量を抑えるためのものであり、物理的に鼻や口をふさいでウイルスがついた手が触れるのを防ぐものです。そして、新型コロナウイルスは、麻疹(はしか)のように空気感染することはほぼないとされていますが、水分が蒸発して小さくなった飛沫が空気中を短時間漂う可能性は考えられます。屋内でスポーツをする場合は、対角線上にある2か所の窓やドアを開けて空気の流れを作り、換気するようにしましょう。
また、これからの季節は換気による熱中症にも注意が必要です。特に、最高気温が30℃以上の真夏日や35℃以上の猛暑日のように外気温が高いときは、窓を開けて換気すると室温が上昇し、熱中症のリスクが上がります。のどに渇きを感じる前に意識して水分補給しつつ、エアコンの温度をできるだけ低く設定し、こまめに室温を確認しながら空気を入れかえましょう。なお、換気機能のある空調設備が整った施設では、窓を開けて換気する必要はありません。
スポーツは体力を向上させるだけでなく、精神面でのリフレッシュにも有効な習慣です。以上のことを踏まえたうえで、マスクを着用しないときは周囲との距離をあけるなど飛沫への対策をとる、挨拶は握手ではなくお辞儀にする、手のひらを合わせずエアハイタッチをする、大声での声援ではなく拍手を送るなど、上手に工夫してスポーツを楽しんでください。
そして、スポーツをする前後はもちろん、休憩時にもこまめに手を洗い、帰宅後はなるべくすぐにシャワーを浴びて服を着替えましょう。
(おわり)
文:藤田幸恵
企画・編集:人間編集部
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