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雑学・コラム

2020.05.01

安全安心なお散歩で運動不足を解消!専門家に聞いた自粛中のリフレッシュ方法

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
散歩
コロナウイルス

長引く自粛期間、レジャー施設やフィットネスジムも休業となりなかなか体を思い切り動かせない日々が続きます。せめてもの運動として近所や公園を散歩するものの、感染リスクが気になり、いまいちリフレッシュできなかったり……。感染防止に努めつつ、限られた時間で体を動かせる「自粛期間の散歩方法」って!? 感染リスク回避の面と、運動面、ふたりの先生にお聞きしました。

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屋外かどうかよりも人との距離が大事


東 賢一(あずま けんいち)

近畿大学医学部環境医学・行動科学教室准教授

衛生学、健康リスク評価学を専門とし、生活を取り巻く環境因子と健康の相互作用に関する研究をおこなう。環境中の化学物質や、病原性微生物等による人の健康影響評価・健康リスク評価が専門。





ーーGW明けも自粛期間が延長されるのではないかと報道されるなか、家にずっといなければいけないストレスの蓄積が心配です。唯一の息抜きが近所を散歩するくらいという人も多いと思うのですが、感染リスクを回避した散歩の仕方はありますか?

「三密を避ける」ということが喚起されていますが、もっとも注意しなければいけないのは、そこに人が密集しているかということです。いくら屋外でも、人が密集している環境は感染リスクが上がります。

ーーでは、たとえ屋外であっても海辺や公園に人がごった返している状況は感染を防止するという観点ではあまりよくないんですね。どれくらい離れていれば安全でしょうか?

中国の武漢市の医療機関で、新型コロナウイルス感染症の患者から排出されたエアロゾル(飛沫の小さな粒子)がどれくらいの距離に到達しているか測定をおこなったデータがありますが、患者から4m離れた空気からも新型コロナウイルスが検出されました。世間でよく言われているのは「2mほど距離をあけましょう」ということですが、最低2m、安全性をより高めるのであれば4mは離れた方がいいでしょうね。


子連れでの公園や、ジョギングをする人々はどう感染防止に努めればいいか




ーー子どもを連れて公園に行くのもやはり危険ですか?

家族はある意味、家庭内で濃厚接触が起きています。それに、家族のコミュニケーションを外出自粛で殺してしまっては良くないですよね。しっかりと対策をした上で公園で遊んであげるのがいいと思いますよ。

あとは、特定の人と一定時間、密着して過ごすことも感染リスクに繋がります。人との接近が15〜30分もの時間にならないように親御さんが注意して調整してあげるといいでしょう。あとは、ジャングルジムや滑り台など、飛沫が付着している可能性のある遊具はなるべく避けた方がいいかなと思います……。

ーー遊びたい盛りの子どもにはなかなか難しいかもしれませんね。公園遊びが唯一のリフレッシュということもありそうです。

そうですね。遊ばせないことでストレスを与えるより、遊んだあとの手洗いを徹底する方が大切ですね。そしてお子さんにもマスクを着用させた方がいいですね。口を触ったり鼻をすすったりしますので。そもそも、人間は大人であってもだいたい1時間に16回ほど顔を触ってしまうものなんです。小さな子は、より手で顔を触ってしまうでしょう。飛沫がついたかもしれない手で顔を触っても感染を防げるように、マスクで顔を守ってあげてください。

ーーフィットネスジムが休業になり、ジョギングをする人が増えたとも聞いています。散歩兼ジョギングをする人も少なくないと思うのですが、やはりこれも混みいった道を走るのはよくないということですね。

歩くのなら最低2m、できれば4mほど周囲の人と距離をあけておきたいところですね。しかしジョギングの場合ですと、走ることで後ろ向きに空気の流れが生まれ、後続の人が前の人の吐き出した飛沫を吸い込みやすいんですね。走っているため前方の人がいた地点に到達するまでの時間も早い。もしも、ジョギングをする場合は前後の距離は10mほど空けておくのがいいのではないでしょうか。

ーーやはり運動すると吐く息の量も多くなりますしね。

たとえば病院の待合室やバス停などはもっと距離が詰まっていますが、話していないこと、人が動いていないこと、マスクをみんな着用していることで感染リスクが下がります。運動しているときや、大きな声をあげたときはウイルスの排気量が上がる可能性はあるでしょうね。

ーージョギングしているときでも、マスクはつけていた方がいいんですよね?

人がいる状況ならばそうですね。ただ、ずっとマスクをして走るのも息苦しいでしょう。苦しくなったら人との距離を十分あけて、ゆっくり呼吸するように意識しながら歩いて、呼吸が落ち着いたらマスクを着用してください。あるいは、通気性の良い布をマスクの代わりに使用しても良いと思います。


閑散としている状況で散歩するならマスクを外してもいい




ーーたとえば閑散とした道で、全然人と接触しない、すれ違う人がいても距離がある……という状況で街を歩くとしたら、マスクは必要ないのでしょうか?

誰もいない道や、人との距離が十分に保てているのならマスクは外してもよいでしょう。たとえば人通りの少ない道を選んで歩いている間はマスクを外して、お店に入るときにはマスクをつけるなど工夫するといいかもしれません。ただどういう状況でも、外出したあとの手洗いは徹底しましょう。

ーー衣類はどうでしょうか?

念には念を入れたいというのであれば、アウターには飛沫がついているかもしれないので、他の洗濯物などと分けて干すことをおすすめします。ちなみに、布マスクは手洗いのち、漂白剤で殺菌して天日干しに。

ーーそういえば、太陽光がウイルスに効果があるのではないかという研究が出ましたね。

そうなんです。あくまで可能性の話ですが、最近の新しい研究で、新型コロナウイルスを太陽光の紫外線で不活化できる可能性があることがわかりました。硬い材料の表面に付着したウイルスや空気中に漂うウイルスの量が大きく減ったと報告されています。決して、空気中に漂う飛沫に紛れ込んだウイルスや、体内に入り込んだウイルスそのものが不活化する訳ではありません。しかし季節が夏に向かっていくにつれてウイルスの死滅率をあげていくことができるかも知れず、今後の研究が待たれる分野です。


生活をしている限り、感染リスクはゼロにならないことを念頭に入れて




外に出る機会が全くないと、ストレスも溜まります。適度な運動は生活習慣病の予防に効果がありますし、メンタルにもよい影響を及ぼします。外出自粛によって「外に出るのが怖い」という人もいるかもしれませんが、生活をしている限り、感染リスクがゼロになるということはありません。それを念頭に入れて、あまり極端になりすぎず生活をしてください。

ーー確かに……そうですね。

心身のリフレッシュという意味合いでは散歩は有効でしょう。私は奈良の方に住んでいるのですが、先日は近所のお寺の方まで行ってきました。もちろん人がいない時間帯を選んでです。これからの時期は新緑も綺麗ですし、近所に歩いていて心地のよい場所があれば息抜きに歩いてはみてはいかがでしょうか。

出かけた先の住民が困らないよう自分の生活圏内にとどめた上で人との密集を避けることを意識して、手洗いやマスク着用を心がけながらGWを過ごしてください。

ーー東先生ありがとうございました!


「ウォーキング」を意識して歩くと散歩でも効果的に体を動かせる


田中 ひかる(たなか ひかる)

経営学部 教養・基礎教育部門教授

スポーツバイオメカニクスを専門とし、ヒトの筋腱動態をはじめ、中高年者を対象にウォーキングやノルディックウォーキングなどの運動が、健康増進や介護予防に役立つ研究をおこなう。





ーー自粛期間はなかなか外に出られないため、せめて散歩でリフレッシュするのがいいのではないかと考えています。しかし、満足に運動できないため「体が鈍ってしまう」という人も多いのではないかと。

そうですよね。あまり長い時間外に出るのははばかられるという人も多いと思います。私としては、ただの散歩ではなく、運動効果の高いウォーキングを取り入れるのをおすすめしたいです。

ーーウォーキングですか。ただの散歩との違いがよくわからないので教えていただけますか。

ただ歩くというと、トボトボ歩くことも含まれますよね。ウォーキングは、健康増進のために姿勢や速度を意識して歩く、れっきとした運動です。心肺機能や筋力、持久力のアップ、体幹を鍛えたり股関節や肩甲骨の柔軟性を向上させる効果が期待できます。

歩くペースをあげることで全身に血液が巡り、生活習慣病の改善だけではなく気分がスッキリするなど心理的なメリットもあります。年齢や性別に関係なく、それぞれのペースでおこなえるため「ウォーキングイベント」など、コミュニケーションツールとしても発展しているんです。



ーーウォーキングのコツというと、なんでしょうか?

まずは立ち姿勢から。耳・肩・腰・膝・足首が一直線上になるように立ちます。現代人はスマートフォンの操作やデスクワークによって、いわゆるストレートネックになりがち。つまり、肩が前に出て首から上が前傾している人が多いんです。試しにしっかり垂直のラインを意識して立ってみてください。「きちんと立つとこんなに違うのか」と、わかるはずですよ。

そして理想的な歩き方ですが、頭上からヒモで吊るされているのをイメージします。背筋をゆったり伸ばしながら、目線を遠くに見て胸を張り、テンポよく歩きます。腕は力を入れてシャカシャカ振る必要はありませんが、体のパーツは連動しています。肘を曲げて腕を振ると、自然と歩くのもリズミカルになりますよ。

ーー確かにウォーキングは、ただの散歩と比べるとフォームが全然違いますね。

お腹は、ヘソの下にあるツボ「丹田」を意識して力を入れてください。そして、普段はスマートフォンばかり見ている人も、このときばかりは目線をあげて歩きながら景色を眺めましょう。近所を歩くだけでも、ウォーキングをしながらだと見慣れない景色や道を発見できて楽しいですから。



歩く姿勢だけではなく足裏での体重移動も意識できればベターです。かかとでしっかり着地して、足の裏を転がすようにつま先に重心を移動させます。ライフスタイルの変化から、最近は若い世代でも「すり足」のように歩く人が多いんです。歩くことに意識が向かないと、自分は体を動かしているつもりでも、筋肉の低下に繋がります。

ーー確かに、在宅ワークの合間に散歩をしていましたが、そこまできちんと意識できていなかったかも……。



あとは、坂や階段の多い街に住んでいる人は、より負荷の高い運動を取り入れることができます。坂道や階段を登る際は、前足の膝を伸ばして体を持ちあげるようにすると負担がかかりにくいです。

ーー傾斜のあるところを歩く際は、下りの方が運動負荷が高いと聞いたことがあります。

そうですね。体重がよりかかりやすいので足裏全体で着地することや前足のつま先で着地面をしっかり捉えてください。怪我の予防に繋がります。私が担当しているなぎなた部の部員は、練習ができない自粛期間中は、6階建てのマンションの階段を上り下りして運動している部員もいます。あとは全部員に、その日の運動を記録させているんです。記録をつけると、その日どんな運動をしたかわかるので、皆さんも記録してみると良いかもしれません。


さらに運動強度をあげたいのなら、ポールを使った「ノルディックウォーキング」がおすすめ



近畿大学 第1回アンチエイジングセンターポスターから抜粋

ーー人が密集せずに歩ける環境があって、さらにより短時間で運動強度をあげたいときはどうすればいいですか?

ポールを使って歩行速度をあげる「ノルディックウォーキング」がおすすめです。ポールがあるぶん歩幅も広がるし、地面を蹴るようにポールを使うので腕の筋肉も、より動かせます。

ーー腕でもある意味歩行するぶん、全身運動なんですね。

そうです。運動強度は上がりますが、ジョギングほど心肺に負荷がかからないため、世界中でおこなわれています。日本では比較的シニア層の方が多いですが、本場・ヨーロッパでは老若男女に人気です。道具を使うため、本当は講習を受けた方がいいのですが動画サイトでもたくさん参考動画が見られるので、気になる方は挑戦してみてはいかがでしょうか。


散歩はもちろん、買い物時など日常にウォーキングを取り入れよう




ーー自粛期間でも、意識することで体をたくさん動かせるんですね。

これから暑くなってくるので、散歩の際は水分補給が欠かせません。たとえば水を入れた500mlのペットボトルをそれぞれ両手に持ってダンベル代わりにしてみるのもいいかもしれませんね。あとは、空のリュックサックを背負ってスーパーへ行き、買い物した荷物を詰めて歩いて帰ったり。ぜひ日常生活にウォーキングをプラスしてみてください。その際は、自分のサイズにあったシューズを履くなど怪我のないような格好でおこないましょう。

ーー買い物にウォーキングを取り入れるのは、今日からでも実践できそうです!

なかなか満足に運動できる時間が取れませんが、日常生活にウォーキングを取り入れると体の衰えを食い止めながら、気分転換ができます。もちろん人の多い場所は避けて、手洗い・うがいを徹底して感染防止に努めましょう。

筋力は使わなければ落ちてきてしまいます。自粛期間の間は限られた時間を有効に使って散歩を楽しんでくださいね。

ーーありがとうございました!


(おわり)


取材・文:平山靖子(おかん)
企画・編集:人間編集部

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