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2020.07.20

肌トラブル増加中! マスクによる肌荒れやニキビ予防、アトピー性皮膚炎の対処法を専門医が解説

Kindai Picks編集部

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アトピー性皮膚炎

新型コロナウイルスの影響でマスクをつけることが多くなり、肌トラブルの相談が増えているといいます。暑い時期も感染拡大に配慮しつつ、健やかな肌を保つためには、どんなことに気を付けるとよいのでしょうか。そこで今回は、近畿大学医学部皮膚科学教室講師の栁原茂人先生のお話をもとに、マスク着用で肌トラブルが起こる原因や予防法、取り入れたい対策について、アトピー性皮膚炎への対応も踏まえてまとめました。

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栁原 茂人(やなぎはら しげと)

近畿大学医学部皮膚科学教室 講師

2005年関西医科大学医学部医学科卒業、2012年大阪市立大学大学院医学研究科博士課程修了。大阪市立大学医学部皮膚病態学研究医、鳥取大学医学部皮膚病態学助教を経て、2017年より現職。皮膚疾患に対して現代医学(手術療法、化学療法など)と東洋医学による治療を行っており、病理診断を得意とする。

近畿大学皮膚科学教室
近畿大学病院




マスクによる肌トラブルは、摩擦・蒸れ・乾燥が主な原因




マスクを着用する機会が多くなり、小さな子どもから高齢の方まで男女問わず、診察時に肌荒れやニキビなどの肌トラブルについて相談される方が増えています。そもそも、マスクをするとなぜ肌トラブルが起こりやすくなるのでしょうか。その主な原因として、次の3つがあげられます。

摩擦による刺激

マスクが肌に直接触れる部位は、摩擦による刺激から肌荒れかぶれ(接触性皮膚炎)を起こしやすくなります。また、肌がダメージを受けることで、外部刺激から肌を守る「バリア機能」が低下してますます刺激を受けてしまうという、負のスパイラルを招くこともあります。

蒸れの影響

マスクの内側は吐く息で蒸れて高温多湿になり、ニキビを引き起こすアクネ菌などの細菌や雑菌が繁殖しやすくなっています。

肌の乾燥

マスクをつけているあいだは吐く息がこもっているので、肌が潤っているように感じるかもしれません。けれど、マスクを外すと一気に内側の水分が蒸発し、肌の水分まで同時に奪って乾燥を引き起こします。肌が乾燥するとバリア機能が正常に働かなくなり、トラブルを招いてしまいます。


感染に配慮しながら肌トラブルを防ぐ4つの対策


肌トラブルを防ぐうえでは、意識してマスクを外す時間をつくることが大切です。とはいえ、感染拡大への配慮も必要不可欠。近くに人がいる場所や周りに飛沫が付着しやすい空間など、マスクの着用が必要な場合は次のような対策を取り入れましょう。

1. 自分に合ったマスクを選ぶ



布やガーゼタイプのマスクだと肌への刺激を抑えられますが、感染拡大を防ぐうえでは不織布マスクのほうが効果を期待できます。そのときの状況や肌の状態によって使い分けるとよいでしょう。不織布マスクを使う場合でも、同じ大きさのガーゼを肌とのあいだに挟むと刺激が和らぎます。また、マスクが小さいと摩擦を起こしやすくなるので注意が必要です。

2. 汗をこまめに吸い取る



マスクの着用中は、熱がこもって汗をかきやすくなります。汗が肌に付着したままにしておくと、かゆみやあせも(汗疹)などの肌トラブルにつながるため、吸収性のよいタオルやガーゼでこまめに汗を吸い取りましょう。マスクが汗で湿った場合は、新しいものに交換することをおすすめします。

3. スキンケアで十分に保湿する



肌のバリア機能をきちんと働かせるためにも、十分な保湿が欠かせません。まずは帰宅後すぐに手を洗い、清潔な手で洗顔料をしっかり泡立てて顔を洗いましょう。肌をゴシゴシこするのではなく、泡で汚れを包み込むようにしてやさしく洗うことが大切です。

洗顔後はすぐに化粧水や乳液、クリームなどで保湿してください。暑い時期は汗や皮脂で肌がべたつくので、油分によるケアを控えている方もおられるかもしれませんが、肌の潤いには水分だけでなく油分も欠かせません。油分がクッションとなり、マスクの刺激も和らげてくれます。

4. 日焼け止めの刺激に注意する



すでに肌荒れを起こしている場合や、肌が敏感なときは、マスクで隠れる部位に日焼け止めを塗るのは避けたほうがよいでしょう。とはいえ、紫外線ダメージもバリア機能を低下させる要因となりますし、マスクで紫外線の影響を完全に防ぐことは困難です。つばの広い帽子をかぶったり、日傘をさしたりして、日焼け止め以外の方法でUV対策を行いましょう。


病院の受診が必要になるタイミングは?




肌トラブルをそのまま放っておくと、症状が悪化したり、あとが残ってしまったりする可能性があります。次のような場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。

・ニキビができた
・肌の乾燥がおさまらない
・肌にかゆみがある
・肌に痛みがある
・肌に赤みが出た
・湿疹がある

ニキビは早期治療で早くキレイに治すことができるので、症状がひどくなる前の受診をおすすめします。

また、顔だけでなく、頻繁な手洗いや消毒の影響で手に肌トラブルが出ることもあるかもしれません。悪化すると慢性化して治りにくくなるため、手を洗った後はハンドクリームなどの保湿剤でケアして、気になる症状があれば専門医に相談しましょう。


アトピー性皮膚炎を抱えている場合の対策は?

アトピー性皮膚炎を持つ人の肌は、過敏性が上がっているため刺激に弱く、湿疹反応を起こしやすくなっています。また、もともと肌のバリア機能がうまく機能しておらず、とびひ(伝染性膿痂疹)のような皮膚感染症に弱いのも特徴です。

特に気温が高い季節は、汗の刺激で症状が悪化する患者さんも少なくありません。また、暑さの影響で血管が拡張してかゆみが強まることもあります。

発汗は体温調節に欠かせない機能ですし、汗をかくこと自体が悪いわけではありません。かいた汗をそのまま放置すると肌にとって悪影響をもたらすため、肌を刺激しないよう注意しながら、こまめに汗を吸い取りましょう。



アトピー性皮膚炎では、保湿によって症状の悪化を防ぐ必要があり、スキンケアを怠らないことが大切です。ただし、肌に炎症がある場合は保湿だけでケアすることは難しいため、ワセリンやヘパリン類似物質配合製剤のような保湿剤とステロイド外用薬を併用するなどして治療を進めます。

そして、マスクを外せるときは外し、洗顔によって清潔を保ちましょう。洗顔時の刺激が悪化を招くこともあるので、やさしく洗ってください。

いずれにしても、アトピー性皮膚炎では症状に合わせた治療や対策が必要となりますので、担当医に相談することをおすすめします。

肌トラブルは、体の不調を示すサインともなります。ご紹介した対策とあわせて、規則正しい生活や質のよい睡眠、栄養バランスのとれた毎日の食事も、健やかな肌を育てるうえで欠かせない習慣です。これからさらに暑くなると、熱帯夜や食欲不振で肌も体もますますバランスを崩しやすくなるので、不調を招かないよう普段の生活習慣にも注意しましょう。


(おわり)


取材・文:藤田 幸恵
イラスト:にしむらみう
企画・編集:人間編集部

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