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2019.10.10

視野が半分欠けても気づけない!?失明の原因第1位の「緑内障」は早期発見が肝心【簡易チェックつき】

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医療
健康
緑内障
オリジナル記事

10月10日は「目の愛護デー」。スマートフォンやタブレット、パソコンの長時間使用など、なにかと目に負担をかけることが多い現代。さまざまな目の健康トラブルのなかでも、とくに注意が必要とされる病気のひとつに「緑内障」があげられます。発見が遅れると失明しかねない一方で、ある程度進行するまでは自覚しにくいため、早期に発見して治療を開始することがとても重要だとされています。そこで今回は、近畿大学医学部の松本長太先生に、緑内障の基本的な知識や、早期発見につながる対策について詳しくお伺いしました。

松本 長太(まつもと ちょうた)
医師/医学博士/近畿大学医学部教授
1983年近畿大学医学部卒業、1989年近畿大学大学院医学研究科修了。1990年近畿大学医学部眼科講師、1998年The Johns Hopkins Hospital, The Wilmer Eye Institute 客員講師、1999年近畿大学医学部眼科助教授、2007年近畿大学医学部眼科准教授、2008年近畿大学医学部眼科教授、現在に至る。Image and Perimetry Society (IPS), President (国際視野画像学会 理事長)、日本視野画像学会理事長、日本緑内障学会理事、日本眼科学会評議員。2008年第18回国際視野学会学会長、2014年第25回日本緑内障学会学会長、2019年第8回日本視野画像学会学会長。



失明原因の第1位!緑内障で一度欠けた視野は元に戻らない


――緑内障はどのような病気ですか?

緑内障は、ものを見るために必要な視神経が障害されて起こる病気です。

緑内障になると、視野の一部が欠けてきて、進行すると見える範囲がだんだん狭くなりますが、現在の医療では一度障害された視神経を元に戻すことはできず、欠けた視野も回復しません

2015年度に岡山大学と山形大学の研究グループが実施した調査によると、日本国内において、失明を含む視覚障害の原因疾患の第1位は緑内障だったことが報告されています。※1 2007年の調査に比べて緑内障の割合が7.6%アップしていますが、少子高齢化にともなって今後さらに割合が高くなることが予想されます。

視覚障害の原因疾患のグラフ
※1 Y. Morizane, et al. Jap. J. Ophthamol. 2018; 1-8.より

一般的に、緑内障のリスクは40代以降で高くなり、年齢とともに患者数が増加していきます。※2

全緑内障年代別有病率のグラフ
※2 日本緑内障学会 多治見スタディデータより

ーー緑内障と白内障は同じような名前ですが、どのような違いがあるんですか?

名前は似ていますが、全く違います。

白内障は基本的に水晶体が濁る病気です。白内障なら手術で人工の水晶体(眼内レンズ)に置き換えられますが、緑内障は視神経が障害されるので代わりとなるものがありません。カメラに例えると、カメラの心臓部であるCCDイメージセンサーが壊れるのが緑内障で、レンズが壊れるのが白内障です。白内障だと目がかすんでくるので視力が下がりますし、自覚しやすいですね。白内障の手術は短い時間で終わりますし、重症度が全く異なります

また、同じ緑内障でもいろんな種類があって、日本では多くの方が「原発開放隅角緑内障」であり、そのなかでも眼圧の上昇しない「正常眼圧緑内障」と呼ばれる種類が多いのが特徴的です。

主な緑内障の種類

・原発開放隅角緑内障
線維柱帯と呼ばれる網目の部分が詰まって、眼球内の水(房水)がうまく流出されず、眼圧が上がって起こる緑内障。原発開放隅角緑内障のうち、眼圧が正常なものを「正常眼圧緑内障」と呼ぶ。

・原発閉塞隅角緑内障
角膜と虹彩(黒目のまわりの茶色い部分)の隙間にある隅角が閉じて房水を外に出せなくなり、眼圧が上昇することで起こる緑内障。急性発作を起こすと激しい目の痛みや頭痛、吐き気などの自覚症状が現れる。



――緑内障は何が原因で起こるんですか?

緑内障のメカニズム

目の硬さを表す「眼圧」が上がることが関係しますが、眼圧が高くない人でも緑内障は起こるので、ほかにも原因があるのではないかと考えられています。現在のところ、はっきりした原因はまだわかっていません。

ーー緑内障になりやすい人はいるんですか?

次のような方はとくに注意が必要だといわれています。

・40歳以上
・眼圧が高い
・強い近視
・家族歴(親またはきょうだいに緑内障患者がいる)

ただし、上記に当てはまらないからといって緑内障にならないわけではありません。緑内障は誰にでも起こる可能性がある病気です。

――緑内障は治りますか?治療方法は?

緑内障の治療では、眼圧を下げて病気の進行をおさえることが基本となります。一度失った視野を回復させることはできませんが、早期に発見して治療を続けることで、多くの患者さんが失明に至らず、不自由のない生活を送ることができています。

具体的な治療方法としては、まず目薬を中心とする薬物治療が行われます。目薬には大きく分けて2つのタイプがあって、ひとつは房水の産生をおさえるタイプ、もうひとつは房水の流出を促すタイプです。

きちんと目薬をさしていても眼圧が下がらなかったり、障害が進行したりする場合は、レーザー治療を行うこともあります。痛みは軽く、外来で受けられるものです。目薬やレーザー治療で十分な効果を得られないときは手術をすることになりますが、合併症もあるので、術後は定期的な管理が必要になります。


日本人の約9割が緑内障であることに気づいていない


――緑内障になると、どんな自覚症状が出るのでしょうか?

緑内障は自覚しにくい病気のひとつです。日本国内で行われた調査で、40歳以上の20人に1人の割合で緑内障にかかっていることがわかったのですが、約9割の人は緑内障であることに気づいていなかったことが報告されています。※2

緑内障病型別潜在患者の割合のグラフ
※2 日本緑内障学会 多治見スタディデータより

――なぜ気づかないのでしょうか??

それには、「充填現象(じゅうてんげんしょう)」と呼ばれる脳の機能が関与しています。脳ってすごくて、本当は見えていない部分の映像もつくっちゃうんです。

例えば、私たちの視野には「盲点」という視神経が網膜を通過する部分があり、その部分の視野は欠けています。といわれても、自分の視野が欠けている感じはないですよね。それは、脳が勝手に欠けた部分の映像を補足しているからなんです。

盲点の図
視神経が網膜に突き刺さる部分は光を受信できず視野が欠ける

私たちは目だけで見ているわけじゃなくて、目で得た情報が視神経を通って脳に伝わることで映像として認識しています。つまり、脳の働きがあっての視覚ということ。

充填現象があるから、私たちは盲点を意識せずに生活できているんですが、その一方で視野の欠けを早期に発見する妨げともなっているんです。

――いま見えているものがすべてとは限らないんですね。

そうです。ときには、視野が欠けている範囲が半分くらい広がっているのに気づけないこともあります。盲点くらいの小さな範囲であれば問題ないんですが、欠けている範囲が広がるととても困ったことになります。たとえば、下のイラストを見てください。2人の人が横断歩道を渡っていて、その手前で車を停止しているシーンです。

横断歩道を男女が渡るイラスト

視野が欠けた範囲が広がると人がスッポリはまる大きさにもなるんですが、もし左側の視野が欠けている場合は……

横断歩道を渡っている二人のうち女性が消えるイラスト

こんな感じで、見えない部分がわかりやすく現れるのではなく、

横断歩道を渡る男性のイラスト

このように、まるでそこに人がいないように見えてしまいます。脳が「ここには横断歩道があるな」と認識して、横断歩道の映像をつくってしまうんですよね。そうなると、ドライバーは右側の人しか認識できず、早めに車を発進させてしまう……そんな事態も起こりうるんです。

――そこにいるはずの人を認識できない。それはかなり怖いですね……

そうなんです。緑内障は左右の目に生じるんですが、両目の症状が同じように進行するとは限りません。どちらかがよく見えている場合は見えないほうの目をカバーするので、ますます視野が欠けていることに気づきにくくなるんです。

目の前に広がる風景って、体の横あたりまで見えている感じがしませんか? 実際には、一点を見つめたとき、そこを中心として約30度より外側の風景は色も形もあまり見えていません。でも、脳が映像をつくっているから、見えていないことを意識せずに私たちは生活できているんですよね。

――緑内障になると、視野はどんなふうに欠けていくのでしょうか?

個人差はありますが、見えている部分の少し上や下が欠けていって、欠けた部分がつながっていくイメージで進行していきます。

視野が欠けていく様子のイメージ

欠けた部分がだんだん広がって、見えている部分が真ん中あたりだけになったりするんですが、そこまで進行してもまだ異常を感じない方はおられます。それくらい、視野の欠けは自覚しにくいものなんです。


どうすれば緑内障を早期に発見できる?


――自覚しにくい緑内障をどうやって見つけ出せばいいのでしょうか?

緑内障は、とにかく早期に発見して治療を開始することがとても重要です。

緑内障で見えにくさを感じて受診される方はほとんどおられませんし、定期的に検診を受けることをおすすめします。また、眼鏡やコンタクトレンズをつくるときに眼科で処方箋を出してもらうようにすると、そこで眼底検査を含めた基本的な眼科検査が行われるので、異常が発見されやすくなります。

とくに40代になると緑内障のリスクが上がるので、40歳を過ぎたら一度は検診を受けてほしいですね。

あとは、「クロックチャート」を使って自分で視野の欠けをチェックすることもできます。はじめてクロックチャートを新聞広告として掲載したのは2009年で、6,000万枚以上配布したんですが、その結果、約3万人の緑内障患者さんを見つけることができました。


クロックチャートでチェックしよう!


ひまわりチャート
© 近畿大学医学部眼科学教室 教授 松本長太

▶︎クロックチャートダウンロード


チェック方法

※読書用眼鏡を使っている場合はかけておく。
ダウンロードして印刷したクロックチャートを、イモムシが右側に来るようにして机の上に置く。

クロックチャートから35cmくらい頭を離した位置で左目を隠し、右目だけでひまわりの中心にある赤い点を見つめる。このとき、視線を動かさないよう注意する。

右目で赤い点を見つめながら頭を少し前後させる。イモムシが消えた位置でストップする(イモムシが消えた位置=盲点)。

赤い点を見つめながら、周りの線が歪んだり、ひまわりの花びらが欠けたりしていないかチェックする。

⒊の距離を保ったまま、赤い点を見つめながら時計方向に1時、2時、3時……と少しずつチャートを回し、4つのイラストがすべて見えているかチェックする。

今度は左目をチェックする。左目の盲点は左にあるため、チャートを180度回転させてイモムシが左にある位置からスタートする。

結果

時計方向にクロックチャートを回転させて、ネコ、テントウムシ、チョウ、イモムシの4つのイラストが常に見えるかをチェックしてみましょう。
4つのイラストのどれかが見えない場合は、緑内障など視野の欠けを生じる病気にかかっている可能性が、ひまわりの格子が歪んで見える場合は、加齢黄斑変性など視野が歪む病気になっている可能性が考えられます。
ただし、クロックチャートはあくまでも早期受診の手助けをするものです。病気を診断するものではありませんし、異常を必ず検出できるとは限りません。気になることがあれば、早めに眼科を受診してください。


緑内障は、早期に発見できれば進行を食い止めたり遅らせたりすることができる病気です。40歳を過ぎたら眼科で検診を受け、適切な治療につなげましょう。


(終わり)


取材・文:藤田 幸恵
企画・編集:人間編集部


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