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2019.09.27

人を繋げる事業でイノベーションを起こす!「元ぼっち」起業家・西井香織の今と未来

Kindai Picks編集部

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近畿大学薬学部6年生の時に2年間の休学と起業を決意し、学生起業家となった西井香織さん。友だち0からスタートした学生団体、危険な目に遭ったヒッチハイクなど、その波乱万丈なストーリーを以前『Kindai Picks』で話してくれました。西井さんは2019年の春、薬剤師国家試験に合格し、薬学部を卒業。社会人となった今はどんな道を歩み始めているのか、再びインタビューしました。

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西井 香織(にしい かおり)
NEWRON株式会社 代表取締役CEO
1992年大阪生まれ。2011年近畿大学薬学部に入学。4年生の時に立ち上げた学生団体の事業化を目指し、6年生から2年間休学。2017年7月に起業し、「教育✕マーケティング」を中心とした事業で多数の企業とコラボする。2018年5月に復学。勉強と会社経営とを両立させながら、2019年3月には薬剤師国家試験に合格して大学を卒業。現在は大学、企業、行政と連携したワークショップやイベントを開催するほか、近畿大学や大阪府立大学などでビジネスデザインの講師としても活躍中。


卒業した今だから言える、休学や起業のこと




――西井さんに『Kindai Picks』の記事に登場していただくのは2度目ですね。卒業後も、学生時代に立ち上げた事業を続けているとお聞きしました。

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現在は、休学中に立ち上げたNEWRON株式会社を引き続き経営していますが、復学時は「事業を続けながら就職できたら」と考えた時期もありました。社長業に固執していたわけではなく、自分自身の未熟さも感じていたので、企画やマーケティングなど自分の事業にも活かせるスキルが身につく企業に就職できれば、パラレル的に働きたいなとは考えていたんです。

でも「ここで働いて学びたい!」と思える会社は代表取締役の雇用が禁止されていたり、2年間のブランクがある中、卒業試験に合格できるかもわからなかったので「今はとにかく目の前のことに集中しよう」と決心し、勉強と経営を両立すべく、がむしゃらに取り組んできました。その努力が実り、無事卒業が決まった際には、有り難いことに関西と関東の両方の企業からお仕事を頂き、現在は2拠点生活を楽しんでいます。


――以前のインタビューでは、休学して起業にあたり、大学の卒業と国家試験の合格がご両親との約束だったというお話をお聞きしましたが、見事その約束を果たし、薬剤師免許も取得されましたね。

ありがとうございます。復学時は勉強についていけず、模試ではずっとE判定と厳しい状況でしたが、最後まで諦めず勉強を続けて得た資格があるからこそ、起業家としても失敗を恐れず挑戦できています。今後は薬剤師の資格を活かして新しいビジネスを開拓したいと考えています。


卒業式での一枚

――西井さんのように起業したいと考えている近大生も少なくないと思います。学生時代を振り返って、何かアドバイスできることはありますか?

以前のインタビューでもお話ししましたが、学生起業家なら周囲が支援してくれるケースが多いですし、まだ「家族を養うために稼がないと」という時期でもない。失敗しても軌道修正できるから、起業したいのなら在学中に挑戦するのがベストだと思います。

私も、今振り返ってみてもやっぱり学生のうちに起業してよかったと思っています。周囲からは「2年間も休学して薬学部を卒業するのは難しいんじゃない?」などと言われていましたが、自分が「できない」と思ってしまえばできないし、「できる!」と思えばできるんだなと、実体験を通して学ぶことができました。

――目標があれば、休学も「あり」ということですね。

明確な目標がなくても休学は「あり」だと思いますよ。私も最初はファッションビジネスで起業したくて休学しましたが、今となってはマーケティングのビジネスに変わっていますし、1年だけ休学するつもりが2年に延長してしまったりと、当初の予定からも変わっていったので、休学する際に絶対的な目標が必要なわけではないと思います。

むしろ、やりたいことがない人こそ適当に就職するのではなく、休学していろんなことに挑戦した方が自分に合った人生を見つけられると思います。今やりたいことをやってみることから始めれば、結果的に道が開けていきますよ。


産官学が集い、学び、アイデアが生まれる場所をデザインしたい




――西井さんの現在の活動について教えてください。

在学中から引き続き、近大での学生向けイベントを多数任せてもらっています。たとえば最近は、学生証一体型VISAプリペイドカード(通称:近大VISAプリペイド)を広めるためのワークショップを開催中です。

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――具体的にはどんなことをしているんですか?

元々は、発行主である三井住友カード様から「近大VISAプリペイドの使用感について学生のリアルな声が聞きたい」というご依頼を頂いていたのですが、ただ声を聞くだけではなく「認知率&使用率の向上に繋がる体験型イベントを開催しましょう!」という提案をさせて頂き、全3回のワークショップイベントを企画運営致しました。

第一弾は「キャッチコピーワークショップ」を開き、キャッチコピーの作り方をインプットした後に、アウトプットの題材として近大VISAプリペイドの価値が伝わるようなキャッチコピーを、ターゲットである学生自らに考えてもらいました。

第二弾では「説得術ワークショップ」を開催し、説得するノウハウをインプットした後に、まだ近大VISAプリペイドを利用していない学生に対して、使いたくなるように説得するという対話ワークを実施。

この第一弾、第二弾のワークを通して、近大VISAプリペイドの魅力を知ってもらうということが目的です。

最後の第三弾では、近大VISAプリペイドの使用率が向上する施策を考えるアイデアソンを、デザイン思考で有名な近大の教授とコラボして開催しました。

そうして、これらのワークショップに集まってもらった学生さんの中から有志で「キャッシュレスラボ」というコミュニティを立ち上げ、近大VISAプリペイドを普及させる取り組みを考案し、実践していくという活動を継続的におこなっています。

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近大VISAプリペイドのワークショップは、西井さんの会社が運営する「ディスカッションラボ」と三井住友カードのコラボによって開催された

――学生はどんな目的を持って参加するんですか。

企画や広告の仕事に興味を持っている人が多いですね。ワークショップでは、マーケター視点に立ってサービスを広めるためのアイデアを練る、という取り組みを実際に経験してもらいます。今回なら「キャッチコピーの作り方」「キャッシュレスの利便性」「近大VISAプリペイドの機能や競合商品との違い」など、最初にしっかりと学びを用意しているので、どんな人も質の高いアウトプットを目指すことができるんです。

また、さまざまな学部の1年生から4年生に参加してもらっているので、学生たちにとっては学年や学部を越えた横の繋がりを作ることができるという点も魅力のひとつのようです。

――企業側にとっての魅力は何でしょうか。

まずは参加する学生に、ワークショップを通してサービスを能動的に知ってもらうことができることです。そしてコミュニティを形成し、そこで生まれたアイデアを形にすることで、さらにサービスを普及していくことができます。実学教育を目指す大学にとっても意義のある内容にしたいと考えており、学生、企業、大学の三者それぞれに魅力のある学びの場をデザインするのが私の仕事です。


人とのコラボを通じて、新しいアイデアを生み出し続ける




――ほかにはどんな事業に取り組んでいますか。

行政関連の仕事も増えていますね。昨年は大阪府から「若者に響く人権啓発のコンテンツを」とのご依頼をいただき、人権週間に向けてLGBTのアイデアソンを実施しました。そこで生まれたアイデアを動画、漫画、LINEスタンプなどのコンテンツに落とし込んでSNSで発信するといった啓発活動に繋げました。

今年からは堺市の若手起業家育成のアドバイザーとして事業相談に応じたり、起業に興味を持ってもらえるようなきっかけづくりのワークショップやイベントも企画しています。

――幅広いニーズに応えているんですね。

業種を問わず、さまざまな企業の依頼に応えていますから、企業が変われば、求められるアウトプットの形も変わります。「サービスを知ってもらうだけでいい」「ユーザー数を増やしたい」「学生コミュニティを作りたい」など、ニーズに応えるものを作っていくのは大変ですけど、その度に自分自身の経験値が上がっていくので、やりがいも大きいですね!

――どんな時にやりがいを感じますか。

何かと何かのコラボを通して新しいもの、新しいことが生まれる瞬間です。私には「これがやりたい!」というものがなく、今まで「起業家に向いていないんじゃないか」と感じることもありました。でも今は「私が作る繋がりから新しいものを生み出すことができるんだ」とやりがいを感じています。最近では自社を「コラボレート企業」と呼び、コラボしたいと思ってくれる企業をもっと増やそうと精進しています。


休学して東京に住んでいた際に受けていた、学生起業支援プログラムのメンター&メンバーとの写真。この頃はファッションメディアの立ち上げに励んでいた

――学生起業家だった頃とは心境も変化しているんですね。

学生の頃は周囲にたくさん助けてもらいましたし、学生だったから、やりやすかった部分ももちろんありました。でも、その時の繋がりを活かして若者向けマーケティングの仕事を中心にしていた頃から「卒業したらこのやり方だけでは通用しなくなるな」と考えていて。だからこそ、在学中にいろんな企業と組んだ実績を作り、その実績を基盤に次のステージに進めるよう意識してきました。そのおかげで今の仕事があるんだと思います。

――着実に成長を続けられていますね。最後に、今後の展望を教えてください。

これは起業当初からの目標なんですが、大学に実学の場を増やしたいです。近大では実学教育が盛んですが、実践を通して学べる大学はまだまだ少ないと感じているんです。大学にはいろんな学部があるから、その分多方面から集まった知識を融合することができます。私は「イノベーションとは何かと何かの掛け合わせ」だと考えているので、大学にもっとイノベーションが生まれる場を作っていきたいんです。

また、学生に対しても「実学を通して成長してほしい」という思いがあります。社会に出たら自分の働きがダイレクトに返ってきますが、学校って基本的にインプット中心じゃないですか。フィードバックがあるからこそどんどん成長できるのに、学生のうちはインプットばかりというのはもったいないですよね。若い力だけでアイデアを実行に移すのは難しいかもしれないけど、私たちが場を作るので、どんどん新しい挑戦をしてほしいと思っています。


大阪府立大学にて。「ビジネス創造ワークショップ」の講師を担当

――ありがとうございました。

大学を卒業してますます自由に、前向きに事業に邁進する西井さん。現在の事業について、目を輝かせながら語る姿が印象的でした。企画やマーケティングに興味のある方はぜひ、近大VISAプリペイドのワークショップなど、大学内の各種イベントに参加してみてはいかがでしょうか。

▼参考リンク
NEWRON株式会社


(終わり)


取材・文:山森 佳奈子
写真:西畑 将大
編集:人間編集部

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