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2019.05.17

GW明け、よく耳にする五月病。その正体と対処法は??

Kindai Picks編集部

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10連休というかつてない長いゴールデンウィークが終わりました。長期休暇が終わり、五月病に悩まされている方はいませんか。近畿大学医学部精神神経科学教室の白川治先生に五月病とは何なのか、原因と対処法について聞いてみました。

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PROFILE
白川 治(医学部医学科)
専門:気分障害(双極性障害・うつ病)、自殺研究,臨床精神薬理
気分障害の臨床、特に双極性障害(躁うつ病)の診断と治療を中心に、光トポグラフィー等による自殺傾性を含む精神症状や精神疾患の客観的な評価法の開発に取り組む。




なぜ五月病に?

長い休みが終わってなんだかやる気が出ないし、気持ちがどんよりしてしまいます。これってもしかして五月病ですか?



五月病というのは医学的な用語ではないんですね。その五月という時期に心の問題を抱える人が多いというところから出てきた命名なんです。



「五月病」って病名じゃないんですね。



そうですね。4月といえば、仕事や学業で新しい環境に身をおく方も多いシーズンですよね。いざ4月が始まって思っていたイメージと現実が違うとその時に悩んで気持ちがふさぎこんだり、あるいは気が滅入ったりということが起こりがちだというところでしょう。さらに、3月から4月というのは寒暖の差が大きくて、気候の変化が大きい時でもありますよね。



気候による温度差も関係があるんですか?



はい。昼夜の寒暖差で自律神経が乱れ、精神面にも不調をきたすことが多くなります。だいたい2月ぐらいから3月、4月にかけては精神科的な問題を抱えている人が調子を崩すことが多い時期だと思います。



そうなんですね!



五月病の一つのキーワードは「ギャップ」です。
例えば目指していた会社の面接で内定をもらえた。でも期待に胸を膨らませて4月に入社してみるとすごく嫌な先輩がいて、一気にネガティブな気持ちになった。そこで気持ちを切り替えようと、連休中は旅行や帰省をして楽しく過ごしたものの、長期休暇が終わるともう会社には行きたくなくなっていた、というパターンは典型的な例ですね。



五月病の正体とは

ではここで、この連休明けに、みなさんが五月病になっていないかどうかチェックしてみましょう。今からあげるチェック項目に自分がいくつ該当するか数えてみてください。

①夜中に目覚めて不安に駆られることがある。
②食欲がわかない。
③仕事や人間関係について悩んでいる。
④会社や学校に行きたくない、辞めたいと思うことがある。
⑤自分をダメな人間だと思う。
⑥やりたいことや目標が見つからない。
⑦他人と会ったり話すことが面倒だと感じる。
⑧身だしなみに気を使わない。
⑨だるさを感じることが多い。
⑩集中力がなくイライラすることが多い。

このうち、5個以上当てはまればちょっと注意が必要です。7個以上なら一度メンタルクリニックなどを受診しましょう。


これらに多くあてはまる場合、やはり病気として捉えた方がいいのでしょうか?



そうですね。新しい環境への不適応という意味では、医学的には適応障害という言葉があります。



最近よく聞きますよね。



症状は一時的なものも多く、リセットすることで、復活して6月、7月と頑張れる方もいます。しかし一方で、自分では回復の道筋を見出すことができず、問題が複雑化してさらに症状が悪化したりすると、「うつ病」と言われるような状態になる人も時にはいます。つまり重症度で言えば「一過性のストレスによる適応障害」までが「五月病」と言うことができるかもしれません。



「うつ病」と「適応障害」にはどのような違いがあるのでしょうか。



うつ病と適応障害の違いは、まず適応障害は仕事のストレスや悲しい出来事など発症の引き金がはっきりしている場合が多く、うつ病ではそれが特定できないことも少なくないという点です。そして適応障害はストレスから離れると良くなるのに対し、うつ病ではすぐに回復せず楽しいことがあっても以前のように楽しめないのが特徴です。



具体的にはどんな感じでしょうか。



例えば、仕事が原因となっている場合、配置転換や転職することで回復すればストレスの原因がはっきりした一時的なものとして適応障害であると言えます。よく言うマリッジブルーというのも適応障害の一つと言えるでしょう。
それに対し、ストレスの原因となっている仕事から離れた場面であっても、親しい人が楽しそうに話している中にも入って行けないようならうつ病の可能性があるかもしれません。
通常強いストレスがかかる出来事があってもしばらくすれば日常生活への支障はなくなってくるのが普通ですが、適応障害になるとストレスがかかっているあいだは不調で、うつ病になるとストレスがあってもなくても2週間以上、通常は月単位で生活への影響が大きい状態が続くことになります。



そんなに長く続いてしまうんですね。発症しやすい年齢や性格などはあるんでしょうか?



うつ病の発症は全年齢層にわたりますが、厚生労働省の患者調査によると、比較的多いのは40代から50代で、男性より女性に多いです。うつ病になりやすい人としては真面目で責任感が強い、几帳面で完璧主義者、人から頼まれると断れないなどの元来の性格もありますが、それだけではなく人間関係や出来事が複雑に絡み合って発症します。




うつ病への対策

どういうタイミングで病院へいけばいいのでしょうか?



例えばうつ症状が重くて、診断基準では2週間と言われていますが、一定期間以上、うつ症状が続くと社会生活だけではなくて日常生活にまで支障がきたすようになってきます。ポイントは精神症状だけでなく、身体症状があるかどうかです。
例えば頭重感や倦怠感が長く続く、食事が進まず栄養が取れない。そして多くの人が訴えるのが睡眠障害です。眠れないと症状はさらに悪化します。



どのような対処法がありますか。



五月病つまり適応障害の対策の一番はまずストレスの原因を見極めることです。環境を変えるためにできることを考えてみましょう。そして一人で悩まず誰かに相談することです。話を聞いてもらっているうちに冷静になって自分が抱えていた課題と向き合えるようになることもあると思います。
もう一つは体を動かすことです。ストレス発散になりますし、昼間に汗をかけば夜に眠りにつきやすくなります。それでも気分がすぐれないなら病院で治療を受けましょう。抗うつ剤や認知行動療法など、その人に合った治療法を探してもらえます。



なるほど・・・



以前の精神科医療は精神科病院が中心でしたが、最近は、メンタルクリニックと呼ばれるようなクリニックが各駅一つくらいありますよね。昔は、切羽詰まった思いで精神科を受診される方も多かったと思うのですが、今は、心理面でのハードルが低くなりアクセスしやすくなってきていると思います。



そうですね、気軽にちょっと相談に行ってみようかな、という感じで行けそうです。



人生にはストレスはつきものです。そしてそれが適応障害やうつ病になったとしても決して恥ずかしいことではありません。調子の悪くなった人が自ら申し出たり、周囲も早めに気が付き受け入れられるような雰囲気が広がるといいですね。

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