2019.01.29
史上最年少 M-1王者・霜降り明星せいやのルーツに迫る!
- Kindai Picks編集部
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M-1グランプリ2018で最年少王者となり、テレビで見ない日はないほどの活躍を見せている霜降り明星。子どもの頃からお笑いに魅了されたせいやは高校時代に「ハイスクールマンザイ」で現在の相方である粗品に出会い、近畿大学に入学後に霜降り明星を結成。当初は教師への夢を持っていたせいやがお笑いの道を志した経緯とは? そして、大学と劇場を行き来していたという学生生活についてもお話を伺いました。
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近畿大学 文芸学部 文化学科(現:文化・歴史学科)卒業
高校生の頃にそれぞれ別のコンビでハイスクールマンザイに出場していたせいやと粗品が出会い、2013年にコンビを結成。よしもと漫才劇場などに出演しながら実力を身につけ、2017年にABCお笑いグランプリ優勝、2018年は二人揃ってR-1ぐらんぷり決勝に出場という快挙を果たす。同年末に行われたM-1グランプリで番組史上最年少で優勝を獲得。その知名度は一気に全国区となり、今後の活躍が期待されている。
少年時代からお笑いの虜に
小学生の頃からお笑いに魅了されてきたせいや。その熱は大人になるに連れ、より熱いものに
ーーまず、お二人がお笑いに目覚めたきっかけは?
せいや:僕の小学校はお笑いクラブがあったんですよ。そこの顧問が元芸人みたいな方で、漫才を教えてくれたんですよね。やってみたら、漫才の楽しさにハマっていって。小学校6年生のときにNHKの素人の漫才の大会で優勝したんです。それが、お笑いに興味を持ったきっかけですね。小学生ながらNHKホールで2千人の前で漫才をやって、ウケたんです。その感覚が忘れられなくてお笑いにのめり込みました。
粗品:僕は毎年「M-1グランプリ」を見ていたお笑いファンだったんですけど、学生時代はスペードというコンビで「ハイスクールマンザイ」というアマチュアの大会に出たりして、我ながら結構手応えもあったのでプロになろうかなと思いました。
ーーお二人の世代ですと、憧れていた先輩って誰になるんですかね?
せいや:年代的に言うと笑い飯さんとか千鳥さん、フットボールアワーさんですね。僕の場合はドリフや古いお笑いも好きなので、志村けんさんやビートたけしさんなど、リアルタイムより上の世代の方も好きでした。お笑いはもちろんですが、歌などのカルチャーは全部古いのが好きですね。
粗品:僕は笑い飯さん、千鳥さんですね。
ーーお二人は子どもの頃からお笑いに取り組まれて、高校生のお笑いグランプリ大会である「ハイスクールマンザイ」の大会で出合います。当時は、お互いのことを意識されていましたか?
せいや:粗品が「ハイスクールマンザイ」に先に出てたんですよ。僕は1回出ただけなんですけど。3回出たんやっけ? 高1のときは?
粗品は「ハイスクール漫才」でせいやのお笑いの才能に惚れ込んだ
粗品:3回。高1の時も予選は出たよ。
せいや:僕はラストイヤーの高3のときだけ出場したんですが、当時から粗品の存在は知っていました。スペードっていうコンビ自体が高校お笑い界では、スター的存在でしたし、高2のときに決勝まで行ってたので、あいつを倒したい!と思って。
ーーお二人が初めて話をされたのは?
せいや:高3のときに出場した「ハイスクールマンザイ」の楽屋でした。粗品が「めっちゃ面白かった!」って話しかけてきてくれたのは覚えています。
ーー粗品さんは、その頃からせいやさんに注目されていたわけですね。
粗品:そうですね。初めてネタを見たときから面白いやつがおるな~とは思っていました。その時はまだ、一緒にコンビを組むとは思っていませんでしたが。
芸人と学生、多忙を極めた学生生活
近大の中でも漫才大会に出場するなど充実した4年間を過ごした
ーーその後、お二人とも大学に進学されますが、せいやさんが近畿大学に進学された理由は?
せいや:近大って、やっぱり華やかなんですよね。今や志願者数が日本一と言われていて、そうなるのも納得できるなって。何か惹きつけられるというか、話題性も群を抜いていましたし。「産近甲龍」と、よく言われますが、他の大学と比べても近大はずば抜けて魅力的で、ここに行きたいなと思いましたね。
ーーせいやさんはご実家が東大阪なんですよね。
せいや:そうです。だから僕、小・中・高・大と全部、自転車で通いました。電車通学一切なし(笑)。高校も布施高校なんで、高校時代はずっと近大を見ながら「ええな~」と思ってました。
ーーでは、「卒業したら近大に」と。
せいや:そうですね。近大を選んだのは公募推薦があったのも大きかったです。僕の場合、夏まで「ハイスクールマンザイ」をやっていたので、まともに受験勉強をしていないわけですよ。これはやばいなと思っていたので、受験科目を英語と国語の2教科だけに絞りました。3教科はもう無理やと思って。公募推薦で早めに進学先を決めてやろうと思ってたんです。公募推薦に命かけてたので、落ちてたら僕、この世にいなかったですよ(笑)。それぐらいの気合いで、2ヶ月間ホンマに集中して勉強したんですよ。
ーー晴れて入学して、在籍されていた学科は?
せいや:文化学科(現:文化歴史学科)ですね。ざっくり言うと世界を股にかけてみんなで研究するという学科です。僕、卒論では世界のお酒やワインの由来を書きましたよ。先生にだいぶ手伝ってもらって。近大生に言いたいのはね、やさしい教授に出会わないと卒業できないということ(笑)。いかにやさしい教授に出会えるかはホンマに大切ですよ。
ーー学生時代に身をもって学んだことは?
せいや:大学は高校と違って自分で学びに行く場なので、「ぼーっとしていたら人生って終わるんやな」ってことを身をもって学びました。立場的にも時間的にも、初めて自由になるじゃないですか。そのときに「俺ってなにもやることないやん!」って、自分の無力さを感じるんですよね。だからみんなバイトやったりして時間を埋めるという。僕は1回生のときは部活に入って、そこに関してはうまく楽しめたかなと思います。
ーーちなみに、なんの部活ですか?
せいや:観光事業研究会に入って上下関係やコミュニケーションの大切さを学びました。ただ、1年生の頃だけですけどね。自分としては、4年続けなかったのが良かったなって思っていて。1年生のときに大学生の楽しさを思い切り経験して、2年生のときにそこは卒業して、あとは……。
ーーゼミとか?
せいや:いや、2年生から芸人の仕事を始めたので、ゼミも毎回は出席できなかったんですよ。
ーー教師になりたかったというお話も聞きました。
せいや:そうですね。教職課程も履修していました。結構、単位も取ってたんですけど、粗品からの熱いラブコールもあったので、結局教師の道を断念してお笑いに道を絞りました。
ーー教師になりたいという思いは、どこから?
せいや:僕、高校のときにいじめられてたんですよね。で、あるときイジメグループから「高校の文化祭で演じるクラス劇を一人で作れ」って言われたんですよ。そのときに「僕にはお笑いがある、しめたぞ!」って思ったんです。結果として、僕が渾身のコントを披露して、大ウケして。それがきっかけでイジメを跳ね返せました。そんな経験を活かせたりしたらいい先生になれるんちゃうかなっていうのがあったんです。
「イジメを跳ね返す」という、自身の経験が教師への道を選ばせた
ーー結果的には今、芸人としてブレイクされたことで、その思いを実現できていますよね。
せいや:確かに、形は別ですがお笑いのパワーの凄さを伝えられる立場になれて良かったと思っています。
ーー粗品さんからのコンビ結成のアプローチはいつからあったんですか?
せいや:ちょこちょこ声はかけられてたんですけど、2年生の夏ぐらいから本格的に誘われだして、3年生の1月にコンビを組みました。
ーー粗品さんは大学を辞められて。
粗品:そのタイミングだと、まだ、休学の段階でした。
ーー粗品さんがピン芸人としてオールザッツ漫才のトーナメントで優勝されたときに、「成人したらスーツを着て漫才がしたい」と発言して話題になりましたよね。これはせいやさんを意識されての言葉だったのでしょうか。
粗品:もちろん、そうです。そのときにはもう結成も決まっていたので。
ーーせいやさんがお笑い一本でやっていく決意をされたのは、さっき言っていた3年生の頃?
せいや:3年生になる少し前ですかね。そこで決断したけど、たしか、教職課程をやりながらだったと思いますね。たぶん、まだ迷ってたんちゃうかな。教職を捨てるのがもったいないと思って。親は「教員免許を取って、それで芸人なったらええんちゃうの」って言われていましたし。
でも、実際に芸人の仕事を始めると、二足のわらじはもう無理なんですよね。劇場でリハやって大学で講義受けて、また本番で劇場に行くみたいな。売れていないのに売れっ子芸人バリに忙しい環境で(笑)。大学生で芸人やってて、なんなん、これ?めっちゃ忙しいやん?って。時間が本当になかったので、ネタも近大の図書館やKUDOSで作ったりして。あのときは、めちゃくちゃしんどかったですね。
ーー大学と劇場の往復の日々だったんですね。
せいや:そうですね。1、2年生はいわゆる大学生って感じでしたけど、3年生からは大学にはなかなか行けなくて。芸人として仕事をしてギリギリ講義だけ受けて、レポートもめちゃくちゃ遅れて謝りながら提出するみたいな。だから3、4年生の頃は、友達と話す時間もなかったです。
ーーそこで大学を辞めてしまおうという考えは?
せいや:めっちゃくちゃありましたよ。相方が中退してるので、自分だけ学生やってるのもなって。芸人って急に仕事が入るんですよ。明日、出ないと終わりですよって授業も平気で仕事で潰れるんです。ほんま何回も泣きましたよ。「これ、どうなんの……」って。留年も覚悟したけど、そうなったらなったで学費払うのも嫌やし、おかんと何度も相談して。かなりしんどい時期もありましたが、なんとかしのいでましたね。
ーー粗品さんとしては、霜降り明星としての本格的な活動は、せいやさんの卒業を待つ感じだったのでしょうか。
粗品:まぁ、そこは仕方ないなと思ってましたね。僕がコンビに誘ったし。せいやの家族も大学は卒業しろよって心配してましたから。
ーー学生時代に熱中していたことなどは?
せいや:近大の文化祭、「生駒祭」で漫才の近大一を決めるぞ! みたいな大会があって出場したんです。まだ粗品と組む前ですわ。1年生のときで、「ハイスクールマンザイ」に一緒に出た子と出場したんです。それがこないだのM-1グランプリみたいな構図で、決勝に8組行けるんですけど出場者のほとんどが4年生でラストイヤーっていう。1年生は僕らだけやから、楽屋でも肩身が狭くて。で、そんな状態やのに僕らが優勝してしまったんですよね。せやから4年生の人からしたら「おいおい、あいつら誰やねん」みたいな。近大の中で優勝しているので、M-1グランプリと合わせて2冠ですわ。粗品はM-1グランプリだけやけど(笑)。
粗品:おい、ちょっと待て!一緒にすな(笑)。
せいや:それと文化会っていう部活の団体があるんですけど、そこのお笑い大会にも出場しました。だから、結局1年生のときから漫才に熱中してましたね。粗品がテレビに出てるのを見て、自分も近大の中で負けんとこって思ってました。
M-1グランプリの先にあるビジョンとは?
M-1グランプリという大きな山を超えたが、コンビでもピンでも、やりたいことは尽きない
ーーネタ作りはどのようにされているんですか?
せいや:ネタは2人で作っています。僕らのような形でやっているのは少ないようで、先輩や同期の人達にも「特殊やな~」ってよく言われます。
ーーお二人ともピンでも活動されていますが、そのモチベーションはどこから湧き上がってくるものなのでしょうか。
せいや:粗品がもともとピン芸人なので、一人でできるのが当たり前じゃないですか。僕もそれに対して、良い意味で追いつかなあかんと思って。コンビ芸もですが、ピンでも面白い相方を持っていたらボケとしてなにかやらなあかんって。自然とそうなりましたね。
ーー相方でありライバルみたいな関係ですね。
せいや:ライバルと言うより相乗効果しか生まないんですよ。コンビのそれぞれがオモロいって、いいことずくめですよ。二人してR-1ぐらんぷりの決勝に行けるなんて、いまだかつてないことですし。
ーーコンビとしてABCお笑いグランプリ、M-1グランプリでの優勝と、飛ぶ鳥を落とす勢いですが、それを経てコンビ、個人での今後の課題はなんでしょうか。
せいや:そうですねぇ……。とりあえず川瀬名人(ゆにばーす)が二度と近大のWEBに出てこないことでしょうか(笑)。彼とは同期なんですよ。近大の中でのライバルでもあったんですけど、仲も良くて。
▼大阪のユニバといえば、近大やろ!?ゆにばーす川瀬名人の「近大 vs USJ」勝手に5番勝負!
ーーコロコロチキチキペッパーズのナダルさんも近大卒ですが、同じ大学ということで交流はありますか?
せいや:ナダルなんか、もう本当に親友ですよ。ただ、年齢も8歳ぐらい離れてるしキャンパスも別なので大学つながりというのはたまたまですけど。
ーーM-1グランプリ以後で生活やお仕事の環境が変化されたと思うんですけど、最も大きく変わったことは?
せいや:事務所の対応がめちゃくちゃ良くなったし、仕事の量もメチャクチャ増えましたね。それに周囲の評価はもちろん話題になる機会も増えて本当に人生が変わったという感じです。僕、近大からワインいただきましたから(笑)。そんな卒業生あまりおらんでしょう。
サインの1枚1枚にネタに登場するフレーズをプラス。細やかな気配りも忘れない
ーーせいやさんはジムで体作りをして舞台に臨まれているというのを聞いたのですが、たしかにネタを拝見していると、あの動きはアスリート並みのものですよね。
せいや:そうですね~。あれは何年も積み重ねて身につけた芸です。
ーーお笑いに対して、そこまでストイックになれるのは、やはり新しい笑いを追求したいという思いがあってのことなのかなと。
せいや:それはそうですね。すでに人がやっていることではなくて、2人でまだ誰も見たことがないボケをやろうぜという意識は常にあります。
ーーその新しい笑いを追求する中で今、ご自身の中での達成度ってどれぐらいのものですか。
せいや:どうなんでしょうね~。いや、まだ全然じゃないですか。M-1グランプリに優勝できたのはたしかに嬉しいんですけど……。いろんな仕事に呼んではいただけますが、それはあくまでお試しという感じですし。そこでさらに爪痕を残してお茶の間の方に愛され、番組に呼ばれ続けるくらいの結果を残し続ける必要がありますからね。それに、芸人人生はまだ数年なので、そういう意味では20%ぐらいだと思いますよ。
ーー最後に学生の皆さんに、在学中にやっておくべきことなどメッセージをお願いします。
せいや:卒業してから気づくんですけど、大学に在学している4年間って人生の中でめちゃくちゃ特殊な時間なんですよ。だから学生の皆さんには今、貴重な時間を過ごしていることを感じながら大学生活を送ってもらいたいです。あと、近大のKUDOSはきれいなので、皆さん使ってください(笑)。
ーーありがとうございました。
(終わり)
取材・文: 伊東孝晃
写真:ロマン
企画・編集:人間編集部
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