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2023.01.03

今年の近大新聞広告はAIが制作!?情報学部1年生が、話題の「Stable Diffusion」で近大生を生成してみた

Kindai Picks編集部

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AI
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他の大学とは一線を画した独自路線の広告で知られる近畿大学。毎年、お正月になると新聞各紙に一面広告が掲載されるのが恒例ですが、2023年のビジュアル制作にはAIが用いられました。画像の生成を担当したのは、なんと情報学部の1年生! どこかにいそうな“近大生”を生み出すまでの苦労やAIに秘められた可能性について、詳しく話を聞きました。



明けましておめでとうございます。近大広報室でインターンをしている、理工学部 理学科 物理学コース 2年生の中井 七海です。今回は左に写っている同じくインターンの西陽菜さんと取材を担当しました。

さっそくですが、1月3日に新聞各紙に掲載された近大の広告はご覧になりましたか?

大学の序列に一石を投じた「早慶近」や、自虐的な「マグロ大学って言うてるヤツ、誰や?」など、他大学とは一線を画す攻めたコピーとデザインで毎年物議を醸している近大の新聞広告

2023年はこれでした!


「上品な大学、ランク外。」

そう、リクルート進学総研の「進学ブランド力調査2022」によると、近畿大学は「上品な大学」の項目でランク外!

あえて上位を取れなかったランキング結果を引き合いに出し、上品な大学に見えない代わりに、「エネルギッシュである」「チャレンジ精神がある」「コミュニケーション能力が高い」でランキング1位だということをアピールしています。※1

そしてちゃっかり、「THE世界大学ランキング2023」に慶應義塾大学と近畿大学がランクインしていることも自慢しているわけです。※2

※1:「エネルギッシュである」「チャレンジ精神がある」「コミュニケーション能力が高い」は、日経BPコンサルティング(2021)『大学ブランド・イメージ調査2021-2022』より
※2:イギリスの新聞大手「TIMES」が発行する、高等教育雑誌「Times Higher Education(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション)」が発表した「THE世界大学ランキング2023」。1000位以内にランクインした主要な私立総合大学は、慶應義塾大学と近畿大学の2校。

と、まあ……コピーも重要なんですが……

注目してほしい点がもうひとつ。



何か違和感がありませんか……?

後ろの人物をよく見てください。



ん?

誰?

近大生?


実はこれ、AIが生成した“近大生”なんです。



全6種のデザインを、『日本経済新聞』『産経新聞』『毎日新聞』『朝日新聞』『読売新聞』『スポーツ報知』『日刊スポーツ』『サンケイスポーツ』『スポーツニッポン』『デイリースポーツ』『夕刊フジ』に掲載。

この人物画像は、情報学部の1年生が、最近流行りの画像生成AI「Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)」を使用して生み出した“近大生”。

「上品な大学、ランク外。」な近大生ってどんなイメージなの? という問いをAIにぶつけ、近大生の顔写真200枚を学習させたAIで生成した、「実在しないけど、なんかいそうな近大生」のイメージなんです。


AIが生成したとは思えなくないですか?
実際に東大阪キャンパスにいそうでしょ?


この人も……いそう……か?

とにかく、AIに大学案内『KINDAI GRAFFITI(近大グラフィティ)』などに掲載されている近大生のイメージを学習させて最適化していく途方もない工程を、なんと情報学部の1年生が1人でこなしたらしい。通常なら数ヵ月はかかる作業をわずか1ヶ月で完結させたって、すごくないですか?


画像生成AIってどんな仕組み? 情報学部のすっげー1年生“コードネームK”を直撃!




ということで、AIに“近大生”を生み出させた本人、コードネームKくんに話を聞くため、情報学部にやってきました!


中井 七海:今日はよろしくお願いします。まだ1年生なのに1人で広告の“近大生”を作ってしまったということですが……いったい何者なんでしょうか?

K:一応、趣味で小学生の頃からプログラミングをしていて、パソコン分野の知識は幅広く網羅しています。それもあって近大の広報室から声がかかり、広告の制作を担当することになりました。


顔は出さないという条件で取材に応じてくれました。

中井 七海:小学生の頃から! 近大の情報学部に入った理由はなんですか?

K:新設されると話題になってたし、なんか面白そうだなと思って。 家からも近いんです。

中井 七海:今回の画像の制作期間はどのくらいでしたか?

K:依頼されて着手したのが去年の10月末なので、1ヶ月ぐらいでなんとか頑張りました。本来なら数ヵ月はかかると思いますね。


いそうでいない「近大生」ができるまで


「Stable Diffusion」を用いた画像制作の様子。いくつものパターンを学習させ、出力結果を精緻化させた。

中井 七海:どうやって「近大生っぽい画像」を作り出したんでしょうか?

K:「Stable Diffusion」という、主に文字から画像を生み出す画像生成AIを使って、新しく「近畿大学生」という文字を学習させて、画像を作り出していきました。AIが「近畿大学生」という新しい概念を知るって感じですね。

中井 七海:このソフトでできることを簡単に教えてください。

拡散モデルの仕組み

拡散モデルの仕組み ①元画像→②ノイズを加える→③学習を繰り返す→④ノイズを除去する

K:「Stable Diffusion」は拡散モデルと言って、ノイズを発生させた状態から画像を生成する仕組みです。例えば、りんごにノイズを少しずつ足した画像をAIに覚えさせていく。すると、りんごの原型がなくなったノイズだけの画像から、元の画像をほぼ復元させることができます。これはノイズが加えられた過程を学習しているから、反対の除去もできるっていうことですね。人間でも、知識としてりんごを知っていればモザイクがかかっていても、それが何かを推測できるのと同じです。

中井 七海:なるほど。それは完全な復元ではないんですか?

K:学習した情報を元にAIに想像させている感じですね。

中井 七海:SNSを見ていると、いろんな人がAIを使って画像を生成してますが、失敗例のほうが話題になりますよね。猫の写真を入れたのに、胸毛の生えたおじさんのイラストになったとか(笑)


K:画像に対して、視覚の情報しか持っていないから起こり得ることです。AIは見た目だけで想像しているので、猫の顔や毛、胴体を意味として認識していません。人間だと言葉や画像に対する知識もイメージもありますが。

中井 七海:はじめはうまくいかなかったですか?


K:こんな感じで、なかなか個性的な人もできました(笑)。「過学習」と言って、手元のデータに適応しすぎて予測が的外れになってしまうんです。でもバックアップから5分前の知識に戻すことができるので、教え方を変えて軌道修正ができます。その繰り返しですね。

中井 七海:確かにこれは宇宙人みたい(笑)

KAIはブラックボックス的なところがあって、こういうふうに学習してほしいっていう方法を提案しても、どんな処理をしてるのか人間は正確に把握できません。学習の仕方は何万という巨大な関数でしかないので。

中井 七海:広告として最終的に6枚が選ばれましたが、この女の子なんかは確かに近大にいそう。


K:どこかで見たなって感じがしますよね。

中井 七海そうそう、いないのに見覚えある! 髪色も服装も絶妙ですね。

K:「目尻が下がりがち」「歯を見せて笑いがち」「こんな服を着がち」っていう普段意識していないあるあるを、うまく学習してくれました。

中井 七海:背景もAIが作ったんですか?

K:はい。近畿大学っぽい場所を作りました。

中井 七海:6枚それぞれ違うけど、確かに近大っぽいけど近大じゃない風景ですね。


中井 七海:この緑の服の人はちょっと怖いです……。

K:それは学習の途中で、屋外ではなくアカデミックシアターで撮影された画像も入れたので、近大生の概念が崩れ出したものです。そんな途中経過も含めて、あの6枚になりました。


中井 七海:この人はいい人そう、友達になりたい。なんとなく中性的ですよね。

K:そういえば、男性らしさや女性らしさはそれほど強調されなかったですね。ムキムキでツーブロックとか、ポニーテールとかは出なかったです。実際に近大を歩いてても思いますし、これが男子が多いイメージのある体育系の大学だったら結果が変わってたかもしれないですね。そう思うと、近大の色がちゃんと出たかなと。

中井 七海:一番大変だったことはなんですか?



K:パソコンにずっと張り付かないといけないことですね。ずっとサーバー上でソフトを動かし続けてました。間違った方向にいってると軌道修正してあげる必要があるので。人間で例えると、小テストの結果を定期的に先生が確認して正しい回答を教える感じですね。そこが人間の脳をコンピュータ上でモデル化するニューラルネットワークの面白さでもあるんですが。

中井 七海:途方に暮れそうな作業ですね……。

K:五感が存在しないAIに教えるのは難しいです。例えば視覚しか持っていない人がいるとして、「近大生」っていう概念を教えるのは人同士でも難しいはずですし。

中井 七海:広告のような「人間らしさ」をAIはどうやって作るんでしょう?

KAIからすれば人間らしさはどうでもいいんです。あくまで、画像からノイズを減らす作業をずっとやっているだけです。それを人間が、人間らしくなるように軌道修正してる。

中井 七海:どれが一番近大生っぽいと思いますか?


K:私的にはこの短髪の男の子ですかね。ポケットに手突っ込んでキャンパス内歩いてそうですもん。スポーツ系のサークルで活発に活動してそう。

中井 七海:めちゃくちゃわかります(笑)

K:「近大生ってこんなんでしょ!」っていう偏見をいい感じに表現してくれました。


AIが人間に教えてくれること




中井 七海:AIの学習能力のすごさがよくわかりました。

K:人間がデータを入力するから、偏見や人間らしさが出る面もありますけどね。反面、人間が見たくない側面を作り出すこともあるので、ある意味、人間と同レベルの人工知能が誕生するシンギュラリティに入ってるなとも感じます。

中井 七海:この先、人の仕事はAIに奪われると思いますか?

K:なくなる仕事はあると思いますね。でも、技術が進歩しても人の力は絶対に必要だと思います。新しい価値は人間が作り出しますし、AIを開発したのも、修正しているのも人間です。

中井 七海:AIの魅力ってなんでしょうか?

K人間でも気づかなかった「人間らしさ」をAIが見つけてくれるところだと思います。その結果、自分たちが目を瞑っていたことに気づかされることもあるけど、こういう発想もあるんだっていうのを再発見してくれるので。


まとめ




コードネームKくんの話を聞いて、AIの進化とその仕組みを理解して操る学生の存在に圧倒されました。私にとってAIは未知の世界。少し怖さはありましたが、AIと人間が一緒に新しい価値を生み出していく未来にワクワクしました!

これを機に、見た目だけじゃない「近大生らしさ」ってなんだろう? と考えてみましたが、やっぱり「エネルギッシュ」で「チャレンジ精神がある」こと。 本来なら数ヵ月かかることをものすごいスピードでやってみせて、近大の顔となる広告にしてしまう。私も負けじと、近畿大学でいろんなことにチャレンジしていこうと意欲を掻き立てられました!

どのAIが一番近大生っぽい?Twitterでアンケート実施中!


この記事を書いた人

中井 七海(なかい・ななみ)

近畿大学 理工学部 理学科 物理学コースの2年生。近畿大学 広報室でインターン中。音楽とネコをこよなく愛しており、マイブームは家のネコのお腹を吸うこと。吸いすぎてよく逃げられていたが、一緒に寝てくれるようになり歓喜している。また、某軽音サークルでボーカルを務めており、最近ギターの練習を始めた。


    編集:人間編集部
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