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2018.05.23

「身近な人を助けたい」現役近大生社長の”情熱”起業ストーリー

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
OB・OG
学生ライター

近畿大学は社長輩出数が西日本ナンバーワンなのをご存知ですか?数々の社長を輩出してきた近大ですが、在学中に起業をした学生もいます。今回は、留学生の就職支援を行う会社を立ち上げた現役近大生社長の瀬戸敦史さんの起業ストーリーを紹介します。

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こんにちは。近畿大学経営学部経営学科4年の松山明香里です。

みなさんは「近畿大学」と聞くと何をイメージしますか?

近大マグロやインパクトのある広告......
そして、一般入試のべ志願者数が日本一なのも有名なのではないでしょうか。
※出典:大学通信調べ

しかし、近大のナンバーワンはそれだけじゃありません。実は西日本で一番多く社長を排出している大学でもあるのです。中には在学中に起業し、学生社長として活躍している人もいます。
※出典:2016年「全国社長の出身大学」調査(東京商工リサーチ)

今回は、現役近大生であり、留学生の就職支援を行う株式会社 No Limitの代表取締役の瀬戸敦史さんにインタビューをしてきました!



瀬戸 敦史(せと あつし)
近畿大学法学部3年/株式会社No Limit 代表取締役
「国内最大規模の外国人留学生と日本社会を繋ぐプラットフォームとなる」をミッションに掲げ、日本企業と外国人留学生のマッチングを通じて就職支援を行っている。2017年9月に学内で行われた次世代のリーダーを育成することを目的としたイベント『KINDAI student サミット』にメンターとして参加。
2018年1月、EO(起業家機構)が主催する大学生起業家アワード『GSEA』で西日本No.1 賞を受賞。朝日放送『財界フォーラム2018年』や『キャスト』で注目ベンチャー起業として紹介される。



人生を切り開く祖母への憧れ


さっそくですが、起業したきっかけについて聞かせてください!



きっかけは色々あるんですが、まず、経営者だった祖母の影響が大きいと思います。僕、すごいおばあちゃんっ子で、祖母からよく会社創業のエピソードを聞いていたんです。祖母が会社を創業したのは、祖父が戦争で怪我をして働けなくなったことがきっかけなんですが、当時、戦後間もない日本は女性の働き口はほとんどなくて、そこで祖母は自ら起業する道を選んだらしいんですよ。


身内に経営者がいたことがきっかけになっていたのですね。ちなみに瀬戸さんのおばあちゃんはどんな仕事をされていたのですか?


最初は、「建具屋」という、文字通りドアや戸などの建具を製作するのが仕事ですが、建具に使われる伝統意匠「組子」に代表されるような複雑な木工を得意としています。その後飲食店を経営し、現在は不動産のオーナーをしています。そんな祖母がいつも僕に言っていた「人生は自分で切り開くもの」という言葉に感化されて、幼い頃から漠然と「起業したい」という思いを持ち続けていました。


幼い頃からずっと起業したいと思い続けていたとは......!とはいえ、大学在学中に起業するって、早過ぎませんか!?


僕も、学生時代に起業するとは思っていませんでしたよ。とはいえ、学生のうちからしっかり勉強しようと思って、関西の学生対象のキャリア塾「ミラマジ」に参加して、経営ノウハウなどを学んだんです。そこの塾長が学生時代に起業した人で、彼の話を聞くうちに学生時代に起業することに魅力を感じたんです。


学生時代に起業するメリットって何なんでしょうか?私は、一度就職して色々と経験を積んでから......と思ってしまうのですが。



色んな経営者に相談したんですが、ある学生起業家の方が、「学生というだけで普通ではとれないアポが取れたり、他の経営者からフィードバックをもらえたりする」とおっしゃっていて、その他多くのメリットにも魅力を感じ、起業に挑戦してみようと思いました。


確かに、「学生起業家」と聞くと、社会人にはないブランド力を感じますね。


でも、実際に起業することになったのはもっと個人的な理由で……。ちょうどその頃、祖母が所有する不動産の老朽化が原因で、入居者が集まらず、祖母の会社の経営状況が悪化したんです。困っているおばあちゃんを助けたい!と思い、僕がAirbnbを利用した経営立て直しプランを提案したんです。関空の近くの立地だったということもあり、外国人の方がたくさん利用してくれて、経営も安定しました。

Airbnb(エアービーアンドビー)...空き部屋を貸したい人と、借りたい人をマッチングするサイトを運営し、民泊仲介サービスを行う会社。2008年アメリカのサンフランシスコにて設立、2011年から日本でのサービスを開始。


経営を助けるプランで、おばあちゃん孝行とは素晴らしいですね!



そして、今度はその経験で得た知識・ノウハウで、祖母と同じように困っている人を助けたい!と思うようになり、民泊運営代行サービスをするために起業したんです。元々、国際交流が好きなこともあって、民泊で訪日外国人と交流したり観光案内をすることも向いていたんだと思います。自分が役に立って、利益もある。楽しくて、やりがいを感じました。


民泊運営がうまくいった要因はなんだったのでしょうか?



実は、当時付き合っていたアメリカ人の彼女のおかげなんです。Airbnbの運営、翻訳など裏でサポートしてくれていました。


そうなんですね!!裏でサポートしてくれる彼女の存在があったとは!ちなみに彼女とはどこで出会ったんですか?


英語村E3[e-cube]なんです。近大に来ていた留学生でした。



※英語村E3[e-cube](イーキューブ)...近畿大学東大阪キャンパスにある英語を楽しみながら学べる施設。施設内には外国人スタッフが常時いて、原則日本語は禁止。


えっ!まさかの英語村!そんなところに出逢いがあるとは!!



そうなんですよ(笑)。でも、そんな彼女にも悩みがあって。ある日、彼女が「日本で就職したい」と打ち明けてくれたんです。愛する人を助けたいという一心で、様々な人事の方にアドバイスを求めに行ったり、インターネットでできる限り調べました。「彼女の就職活動がうまくいってほしい」それだけが僕の願いでした。そして、外国人留学生の就職環境が、とても厳しいという現実を知ったんです。



人生をかけた新規事業への挑戦


留学生の国内就職率ってそんなに厳しいんですか?



現在、約2万4千人いるの外国人留学生のうち、日本で就職できるのはたったの4割以下なんですよ。


※平成27年度に大学(学部・院)を卒業・修了した者(23,799人)のうち、国内に就職した者は8,367人(約35%)。(出典:外国人留学生の就職促進について (外国人留学生の就職に関する課題 等) 平成29年6月 文部科学省)


めちゃめちゃ就職率低いじゃないですか!



そうなんです。あまりの就職率の低さに驚いて、思わず学内のキャリアセンターに話を聞きに行ったんですけど、そもそも相談にくる留学生自体が少ないみたいで......。


そうなんですね......。




20年間日本に住んでいる在日外国人のキャリア面談

サポート体制がないと、留学生側が就活を始めるタイミングも遅くなりますし、就活ナビ媒体などの採用情報サイトを利用しようと思っても、日本語の自己PRを何百文字と書かないといけない。それは、留学生にとっては、簡単にできることじゃないんです。


確かに。私たち日本人でも必死なのに、それを外国語で書くってなると考えたらゾッとします......。


そうなんですよ。そうやって現実を知っていくうちに、これは社会問題として解決しなければならないのではないかと思いました。将来、日本も人手不足になる。なのに、優秀な留学生が日本で働きたいと言っても就職しやすい環境が整っていないんです。


それで、留学生の就職支援事業を始めようと思ったんですね?



はい。この問題を解決したほうが、民泊をやるよりも会社として社会的存在価値がある。英語村によく行っていたのも、国際交流だけでなく留学生のサポートをすることが好きだったからなんです。新規事業として、人生をかけて、「この事業をやり抜きたい。」とそう思いました。


人生をかけて!すごい決意ですよね。



目の前で大好きな人が困っているのに、助けられない自分に歯痒さを感じました。できることなら「俺と一緒に働こう!」と言いたかったんですけど、当時は民泊の事業の方もそこまでの余裕はなくて。結局力がないと人一人さえ、ましてや多くの人を助けられないと思います。好きな子を若手を沢山応援してあげることもできない。当時の僕や会社にはまだ力があまりにもなかった。その現実を受け止めた僕や彼女も本気で悔しいと感じましたし。だからこそ絶対に早く早く成功して、多くの人を助けてあげれる。応援してあげる。余裕のある会社や自分になろうと誓いました。


外国人留学生の支援をサポートしている会社や組織は他にもあると思うんですが、大学を卒業してからそういう会社に入るという選択はなかったんですか?


彼女が困っているのを早く助けてあげたかったんです。とにかく、スピードを重視していました。自分がやらなきゃ誰が彼女を救えるんだ!っていう使命感もありましたし。でも、結局その彼女は母国に帰ることになり、今は別れてしまったんですけど......。



情熱の根源にある想いとは


実は事前に他のコラムも読ませてもらったのですがそのコラムでおっしゃっていた、「経営者として大切なことは”情熱”」という言葉がとても印象に残っています。その情熱はどこからやってくるのですか?


「この人を助けたい!」そして「周囲の人を助けたい!」という想いからです。はじめは身近な人を助けたいという想いから、徐々に対象が広がっていきました。自分軸から他人軸、そして社会軸に。それに、そういう課題を解決できる自分てかっこいいやん?って思って(笑)。課題を解決し満足することで結果的に自分自身の幸せにも繋がるなって。


誰かの問題を解決し、それが自分自身の幸せにも繋がるってすごく素敵ですね。学生であるからこその苦労や悩みはありましたか?


そうですね、社会人としての経験がないので全てがはじめてという点では苦労しました。名刺交換の仕方から覚えましたもん(笑)。教えてくれる人がいないので自分で行動し、つかみ取っていきました。


確かに、大学の授業で名刺交換とかそういうビジネスマナーは教えてもらえないですもんね。実践しながら覚えていくスタイルは大変そう......!インプット即アウトプット的な……。



ほんまにその通りです!特に商談、交渉の場では苦労しました。商談では必ず自分の声を録音して、どこが悪かったかを客観的に改善していました。常にPDCAを回している状態です。

※Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の略。事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の一つ。


PDCAって言葉をリアルに使う学生いないですよ……!ちなみに、私は経営学部生なのですが、周りに起業に興味がある人や、経営者になりたいと思っている人が多いんです。私もいつか自分でゲストハウスを経営したいなという夢があります。でもそこから踏み込める人は実際に少なくって。一歩踏み出せる人と留まってしまう人の違いって何だと思いますか?


リソースの違いだと思います。情報さえあれば人は動けるんですよ。




リソースの違い……!?



例えばゲストハウスを経営したいという夢があれば、それを実現できる情報をどれだけもっているか、そしてどれだけそれを行動に繋げていけるかが大事なんですよね。行動を起こすための情報がそろっていればあとはやるだけなので必然と行動できる自分になっているはずですよ!

なるほど!必然と行動できる自分かぁ……。



大学生が学生の間に起業しないのもリソースがないからだと思うんです。就活をするという選択肢が身近にありすぎなんですよね。みんなが向かう方向に流されがちというか。本気で起業したいと思うなら情報を集めて行動するのみ!


英語村で外国人スタッフと流暢な英語で話す瀬戸さん



守りから攻めの姿勢へ



いつも食べているという大好物のポテト

現在、社員は何名いるのですか?



正社員は現在1名、インターン生は全員大学生で、外国人と日本人が働いています。営業と人材ネットワークの構築をしてもらっています。大学生であると横のつながりや留学生のつながりがあるので強いですね。


今後どのように事業を拡大していくのですか?



戦略としては、求人広告や求人媒体を活用したアプローチも良いとは思うのですが、外国人留学生のUI,UXを重視し、SNSの構造を利用した独自サービスを構築しました。SNSと求人媒体と求人広告を3つを掛け合わせたサービスで、サービス名は”縁結び in japan”。日本で働きたい外国人留学生へこのサービスに登録してもらい、タイムラインに求人情報を流していきます。興味があればいいねを押してもらい、そのいいね数でどんな業界や職種に興味をもっているのかを知り、留学生にあった情報をおすすめするという仕組みです。

※UI...User Interface(ユーザーインターフェース)の略。機械、特にコンピュータとその機械の利用者(通常は人間)の間での情報をやりとりするためのインタフェースである。
※UX...User Experience(ユーザーエクスペリエンス)の略。人工物(製品、システム、サービスなど)の利用を通じてユーザーが得る経験。
(Wikipedia)


それぞれの媒体の良いとこを掛け合わせて、より良いサービスを作ろうとするアイディアは良いですね。



適切な情報をどのタイミングで誰に届けるかが大事だと思うんです。国際交流団体とも協力し、どういう性格の留学生なのか、パーソナルな情報を共有しています。また、外国人の就職活動における悩みや不安、疑問を解消するための、相談兼キャリア面談もしているので、留学生一人一人に合わせた完全オーダーメイドの解決プランを直接提案できる近い距離感が強みです。


近大に在籍している台湾人留学生2名のキャリア面談

3年後、5年後はどんな会社にしていきたいですか?



弊社は、日本人と外国人の両者が視点、考え方の多方面化により、より多くの人がお互い認め合い、協力出来る日本社会になれば、イロドリある未来が待っていると信じています。だからこそ、このような素晴らしい未来の実現をいち早く実現できる力を持った会社になっておきたいですね。


最後に「起業したい!」と思っている学生へのメッセージをお願いします!


今すぐ行動してください!今動かなかったらいつまでたっても目標まで近づけないです!


スパっと気持ちの良い一言、ありがとうございます!本日はありがとうございました!




身近な人を助けたい!という思いから起業した、瀬戸さんの情熱が強く伝わるインタビューでした。

誰か1人のための行動力が、社会に役立つ大きな力になる。私も誰かのために情熱を注げるような生き方をしたいと思いました。

「起業してからの悩み、経験は人生の財産、自分だけのモノ。就活では得られないことを得られた。」そう語る瀬戸さんの目はすごく輝いていました。まさに自分の人生を自分で切り開いていますね!今後の瀬戸さんのご活躍に期待大!

▼参考リンク
株式会社 No Limit


(終わり)


ライタープロフィール
松山 明香里 (まつやま あかり)
近畿大学 経営学部 経営学科 4年
近大広報室のインターンを経てネットライターに挑戦。バックパッカーに憧れて二十歳の夏にリュック一つで東南アジアを周遊。旅先ではいつもゲストハウスに泊まります。



編集:人間編集部

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