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2019.07.10

「世界で活躍するF1レーサーを目指す」現役近大高専生ドライバー・三島優輝

Kindai Picks編集部

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学生ライター

若者の車離れが進み、すっかり日本で馴染みが薄くなってしまったモータースポーツ。また、メディアでは事故映像ばかりが取り上げられてしまい「危険なスポーツ」なのでは?と、誤解されることも多いんです。が、しかし、モ―タ―スポーツは時速数百キロで走る乗り物がコンマ数秒を争いしのぎを削る、立派なスポーツなんです。そんなモータースポーツの魅力を少しでも多くの人に伝えるべく、近畿大学高専生で、カートドライバーとして活躍をする三島優輝選手に直撃しました!

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こんにちは。近畿大学国際学部国際学科グローバル専攻4年の鈴村朋己です。

昨年8月に、好きが高じてモータースポーツのYouTubeチャンネルを開設し、国内のレース観戦の様子や、モータースポーツにまつわった話題を、映像を通して伝えています。

YouTube活動を始めたきっかけは、モータースポーツを知らない人が日本中に溢れかえっているという現状を変えたかったからです……!

モータースポーツは、野球やサッカーのように民放でのテレビ中継をしているわけではないので、メジャーなスポーツとまでは言えないのが現状。

そこで僕が何かできないかと考えた結果、辿り着いたのがYouTubeを通してその魅力を発信することでした。YouTubeであれば誰でも無料で映像を見ることができるので、モータースポーツの魅力を少しでも多くの人に伝えることができるのでは?と思ったからです。

今、トップドライバーと呼ばれているほとんどの選手が小さい時からレース活動をして、実績を残してきています。が、日本では免許を取得できる対象年齢が18歳以上となっているため、子どもがモーターレースをする光景を想像するのは難しいかもしれません。

そこで、今回は近畿大学工業高等専門学校に通いながら、現在ツーリングカーレーサーとしても活躍する三島優輝さんにお会いして、モータースポーツの魅力はもちろん、ドライバーを始めたきっかけや、世界の壁の高さから今後の目標まで、たっぷりとお話を伺ってきました。



三島優輝(みしま ゆうき)
2000年生まれ。三重県名張市出身。近畿大学工業高等専門学校4年生。9歳の時にTVでF1番組内のカート特集を見て興味を持ち、レーシングカートを始める。2年後に本格的にレースデビュー。2017年には全日本カート選手権のFS-125部門 第5戦で優勝を経験。昨年はブラジルで開催された 世界選手権「ROTAX MAX GRAND FINALS SENIOR MAX 」に、アジア代表で出場。今年はピレリ・スーパー耐久ST4クラスにステップアップを果たし、トヨタ86を駆る。


9歳でカートデビュー。最初はスピードに恐怖を覚えた



三島選手が、カートを始めた9歳の頃の一枚。

ーー今日はよろしくお願いします。まず、本格的にレーシングドライバーとして活動を始めたのはいつですか?

レーシングカートに初めて乗ったのは9歳の時です。そこからカートの魅力にはまって。本格的にレース活動を始めたのは11歳の時です。

ーー9歳!モータースポーツ好きとしては羨ましすぎる環境……。三島選手はどうして、カートに乗ってみようと思ったんですか?

ありがちな話ですけど、小さい時から車が好きで、当時TVで放映していたF1を見ていたんですよ。その同時期にTVの特集で、カートレースを取り扱っていて、この世界に挑戦してみたい!と、思ったんです。

ーーなるほど。

その特集を見てすぐに親にお願いして、カートに乗れる場所に連れて行ってもらって、初めてカートに乗りました。カートにもクラスがあって、自分が乗ったカートは決して1番速いマシンではなかったんですけど、最高時速が80キロも出るんです。一人で乗る乗り物でそんなスピードを体感したこともなかったので、いざ乗ってみるとスピードが速すぎてビビっちゃって。

ーー確かに、子どもの頃だとせいぜい自転車で時速20キロくらいが速い世界ですもんね。

初体験が怖すぎて、二度とカートに乗らないと決めていたくらいでした。でも、やっぱりカートへの憧れが捨てられなくて。結局また乗ってみたくなり、気がついたら大会などにも出場するようになっていました。

ーーちなみに、サーキットでレースを初めて観戦したのはいつ頃なんでしょうか?

カートに乗り始めて1年くらい経った10歳くらいの時に、カートの世界選手権を観に行きました。サーキットで観るレースはかなり迫力があって、感動したのを今でも鮮明に覚えています。そこからはレースにのめり込んで、日夜カートの練習をする日々が待っていました。


外国人選手のパワーに負けないテクニックこそが突破口



2018年、Aisa Max選手権では年間総合2位で世界大会への出場権を手に入れた。

ーー今、三島選手はノリにノッている印象です。2017年シーズンは全日本カート選手権の第5戦で優勝、2018年は「ROTAX MAX ASIA CHALLENGE」で年間2位。海外でも好成績を収められていますが、日本と世界とで感じる違いはありますか?

ヨーロッパやアメリカのドライバーはドライビングが非常にアグレッシブなんですよね。ノリにノったイケイケな走りでガツガツと攻めてきます。また、体格もあるのでパワーもあります。でもその分接触も多くて。

ーーなるほど。そういえばヨーロッパと日本とでは育成の仕方が全然違うみたいですね。

はい、全くその通りで、国内最高峰レースのSUPER GTに出ている日本人とヨーロッパ育ちの外国人ドライバーなんかを見てもらうと分かると思うんですけど、日本人ドライバーはバトル中にもお互いに尊重するようなレース展開をします。例えば、抜かれそうになって相手をブロックするにしても1台分の車幅を残す、などです。

一方、外国人ドライバーは勢いがすごくて、ゾーンに入ってしまうと止められなくなる。もちろんそれが持ち味になる時もあれば、相手に害を与えてしまうこともあって。僕も含めて日本人ドライバーは丁寧なドライビングテクニックを持っているので、彼らのパワープレイを上手くかわせられれば世界でも通用するなと感じました。

ーーブラジルで開催された世界選手権にもアジア代表で出場されましたよね。

自分の思ったレース展開ができず、結果としては予選敗退という不甲斐ない結果で……。

ーーとはいえ、結果以外で得たものもあったのではないでしょうか?

そうですね。海外のレースって実際現地に行ってみないと分からないことばかりなんですよね。本番では不甲斐なかったですが、練習では全体で3位という結果を残すことができました。つまり、僕の走りが世界で全く通用しないわけではなく、非常に僅差なんだなということが分かって。参戦できたこと自体が自信へと繋がりました。

ーーちなみに、三島さんが尊敬しているドライバーは?

2019年にマクラーレンからF1デビューが決まったランド・ノリスですね。僕と1歳違いで非常に年齢が近いこともあって、彼の走りをずっと見てきました。鈴鹿で世界選手権が開催された際にも彼の走りを生で見ていたのですが、もう別格でしたね。日本の選手で言うと佐々木大樹選手ですかね。

彼自身は国内最高峰ツーリングカーレースであるSUPER GTと並行して、今でも全日本カート選手権に参戦しています。トップドライバーとして活躍しているドライバーが、カート選手権に出場する必要なんてないのではと思うかもしれませんが、全てのカテゴリーにおいてカートは基盤になるんです。車の作り方や、速い走り方、ほぼ全てのドライバーが初めはカートを走ってそれらを学んでいくんです。佐々木選手はストイックで、カートレースに出ることで得たものをSUPER GTに応用している。そのような点がすごく尊敬できます。佐々木選手はプライベートでも仲良くしていただいているので、お兄さんのような存在ですね。


ここ一番の勝負強さで、世界を目指す



ブラジルで開催された世界大会代表メンバー。三島選手は(写真左から2番目)

ーー自分のドライビングで自信を持っている点を教えてください。

予選など一発勝負のタイムアタックで、良いタイムを出せることですかね。カートを始めた頃は中古マシンで走行していたので、その経験が活かされていると思います。

ーー中古マシン?

カートも車と同じで新しいモデルが続々と登場します。もちろん新しいモデルになるほどアップデートされるので性能も走りも良くなる。しかし値段が高い。そこで、極端に型落ちの中古マシンを知り合いに譲ってもらっていて。「父親曰く、お金のある人だけがモータスポーツをするという世間の常識に親子で挑戦したい!」という意味もあったみたいです。

ーーそうだったんですね。

ただ、中古マシンは性能が悪い上に、運転がとてもしづらかったんですよ。全然曲がらなくて。2006年にF1に参戦したスーパーアグリF1チームが4年落ちの車で参戦した時も、先頭から4周遅れで勝負にならなかった。カテゴリーは違えど同じ状況です。そんな中でも結果を残さなくてはいけないのが、この世界。

ーーそれってすごいハンデですよね。

はい。でもその経験があったからこそ、タイムアタックに自信を持てるようになったんです。今乗っているマシンは、当時に比べたら全然走りやすいですからね。ただ、そのペースを決勝レースでのバトルに上手く活かしきれていないのが悩みでもあります。

ーーレースの場合は、多人数で走ることが前提ですもんね。一人でサーキットを走るタイムアタックとは訳が違いますよね

そうなんですよ。ライバルとの駆け引きやマネジメント力を身につけるためにも努力をしていて。そうすれば、もっと良い結果を出せると思います。

ーー三島選手はドライバーの一面がある一方で、近畿大学工業高等専門学校の学生でもあります。高専での学びが、レース活動に何か活用できましたか?


海外のレースでは、厳しい展開を強いられる場面も。

カートに共通していることとなると、金属材料について学べている点でしょうか。サーキットでは金属材料のことは学べないので、それはいい点ですね。カートに使われている素材やその構造を知ることもレースにとっては重要ですから。

ーー最後に、今後はどういった目標でレース活動を進めていきたいですか?

まずは、海外で活躍できるドライバーになりたいです。そのために、まずはカートから4輪カテゴリーにステップアップし、国内で下積みをしようと思っています。そして、いつかは人に感動を与えたり、見た人が元気になれるようなレースができるプロのドライバーを目指します!

ーー三島さんがF1ドライバーになる日、楽しみにしています!今日はありがとうございました。


若き才能が躍動するモータースポーツ界の未来は明るい!




いかがでしたか?

近年、日本では世界で開催されている下位カテゴリーに参戦し、F1を目指す若いドライバーが増えてきています。そして、鈴鹿サーキットでは今年31回目の日本グランプリが開催されます。日本のメーカーのエンジンを日本人が乗り優勝する。往年のモータースポーツファンをはじめ、関係者はその姿を今か今かと待ち続けています。

しかし、小林可夢偉選手が参戦した2014年を最後に日本人F1ドライバーは誕生していません。もう5年ものブランクが空いてしまっているのが現状です。

一見遠い道のりのように見えますが、三島選手のように海外で活躍する日本人選手も増えつつあります。もしかすると、F1で活躍する日本人ドライバーが誕生する瞬間がすぐそこまで来ているのかもしれませんよ!


(終わり)


ライタープロフィール
鈴村朋己
三重県津市育ち。
近畿大学国際学部国際学科グローバル専攻4年。
幼い頃モータースポーツの魅力にはまり、年間20回以上サーキットに足を運ぶモータースポーツオタク。2018年8月よりTOMONKEY(トモンキー)名義でYouTube活動を開始。モータースポーツ・車にまつわる動画を挙げている一方で、身体を張った企画も行う。トミカ、スニーカーを集めることが好き。座右の銘は「好きなことで生きていく」。



編集:人間編集部

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