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2018.05.24

近大発シリコンバレー構想。失敗や反対を考える前に今やるべきこと

Kindai Picks編集部

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ビジネス
KINDAIサミット

革新的な技術・モノ・サービスが生まれる経済圏、それがイノベーションエコシステム。シリコンバレーで成功しているこのシステムを日本でも立ち上げるべく、近大卒リーダーたちが立ち上がった。

<KINDAIサミット2017 第3部分科会D『KINDAIエコシステム計画始動!』より>

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スピーカー
田中誠太
大阪府八尾市長
1979年、近畿大学商経学部(現:経営学部)を卒業。1983年、八尾市議会議員に当選(以降3期連続当選)。1999年、大阪府議会議員に当選(以降2期連続当選)。2007年、八尾市長に当選(現在3期目)。近畿大学校友会副会長も務める。


山下智弘
リノべる株式会社 代表取締役
1997年、近畿大学理工学部を卒業。社会人ラグビーを経て、ゼネコンに入社。その後デザイン事務所、不動産、家具職人、大工などを経て、株式会社esを設立。2010年には、拠点を東京に移してリノベる株式会社を設立。


椋本充士
株式会社グルメ杵屋 代表取締役社長
1984年、近畿大学商経学部(現:経営学部)を卒業。同年、大和実業に入社。1990年、株式会社グルメ杵屋に入社。その後、元気寿司株式会社取締役などを経て、2010年に株式会社グルメ杵屋の代表取締役に就任。



モデレーター
高野真
Forbes JAPAN CEO 兼 編集長、D4V Founder & CEO
1987年、大和証券入社。その後、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのマーケティングヘッドなどを経て、2014年より株式会社アトミックスメディア代表取締役CEO / フォーブス ジャパン編集長に就任。
同年10月よりD4V (Design for Ventures) Fourder / CEOを兼務。



*肩書きはセッション開催当時のものです



近大周辺を、シリコンバレーに


高野:今日のテーマはイノベーションエコシステム。新しい技術はもちろんですが、新しいモノや新しいサービスの提供を通じてこれまでのやり方を変えることも「イノベーション」です。そして、それらを作り出す生態系が「エコシステム」ですね。例えばシリコンバレーにはスタンフォード大学があって、ベンチャーキャピタルがあって、企業が集まってそこに人がいるわけです。そういう人たちがいるからこそイノベーティブなアイディアが出てきて、新しいモノやサービスが生み出される。できれば、近畿大学の周辺でこういったものを作りたいですね。


椋本:まさに今日のこのイベント『KINDAIサミット』が、そのきっかけになるのかなと思っています。今までの大学は、卒業したらそれまでで、その後に連携を取ることはほとんどありませんでしたから。


山下:おっしゃる通りで、私が学生の時も、起業家がこうやってアカデミックな場所に集まって、お互いに意見交換するような場はありませんでした。近畿大学には24時間勉強できる場もできましたし、学生さんたちにとってはすごくチャンスですよね。自分だったら、こういう環境を使って何かやってやろうと思うんじゃないかな。


高野:学生の起業家精神を醸成するためには、どうするのが良さそうでしょうか?


山下:近大の建築学部の学生たちが『あきばこ家』というのを作っていますので、そういう交流ができたり居場所となるところができるのは、いいきっかけになると思います。あとは『KINDAI student サミット』というイベントがありまして、そこに参加した時は起業している学生さんや「将来絶対に起業したい」と言う学生さんがいましたので、既にそういった文化は芽生え始めていると感じています。





田中:私は大阪府八尾市⻑として、近畿大学の建築学部とは市営住宅やまちづくりのことを、農学部とは里山再生や自然環境のことを、そして法学部とは行政のことを一緒に考えたり、ワークショップを開いたりと、連携を取り始めたところです。また、八尾市にはインキュベート施設があって、そこに今度、近大の学生さんに入っていただくことになっています。


椋本:当社が数年前に香港の企業と提携した時、相手のオフィスを見せてもらったことがあります。すると、そこには香港の優秀な大学生が6、7人いて、会社の経営戦略を立てているんです。彼らが作った経営戦略は役員会で議論されて、実行される。さらにその結果は彼らにフィードバックされる。優秀な学生はそのまま幹部として採用するとのことでした。私の会社と近畿大学でも、こういったことができないかと思って、今いろいろと動いているところです。





どこまで失敗していいのかを、理解しておく


高野:シリコンバレーには失敗を恐れないどころか、失敗したことに対してボーナスが入る仕組みがあるらしいです。失敗することが次の成功の糧になるとみんなわかっている。日本でもこういったカルチャーが必要かなと思うのですが、いかがでしょうか。


山下:私が大学を卒業した時は、今ほど近大ブランドもなくて「お前は中途半端な大学を出たんだから、中途半端な会社に入ったらそのまま終わるよ。だったら思いっきり勝負するしかないだろう」と言われたことがあります。失敗を恐れないカルチャーは昔から多少はあったのかもしれませんね。


椋本:学生も社会人も「失敗したくない」「失敗したら自分の汚点となってしまう」といった呪縛のようなものがあるのが普通なのでしょうね。でも自分で社長をやっているとわかるのですが、一歩踏み出さないと何も起こらない。失敗どうこうの前に、まずは一歩踏み出すことが大切かなと思っています。考えてはいるけど一歩踏み出さない方が本当に多いので。


田中:行政においては、失敗は許されないという文化がありまして、どうしても出遅れるというのが現状ですね。ただ一方で、西武百貨店が撤退された後に『リノアス八尾店』というのができた時に、そこの8階を八尾市が借り上げました。この時、コンサルティング料3,500万円を予算申請したところ、中身は全く決まっていないのにもかかわらず、議会から「具体的にはわからないけれども夢があるから採用しよう」という言葉をいただきました。少しずつ日本の行政の中にもそういったカルチャーができつつあるのかもしれません。




高野:それではここで、会場から質問を受けたいと思います。


質問者A:失敗を恐れずチャレンジしていくためには、どういった考え方が必要でしょうか?


椋本:ちょうどマレーシアで新しい会社を立ち上げて、向こうで合弁の契約をしてきたところなのですが、私にとっては「本当にマレーシアでやるの?」っていうのもあるんですよ。でも、最悪このぐらいの損失が出る、こういうことは起き得るけど会社の基盤を揺るがす程ではない、といったことを考えてチャレンジしていく。組織の中では、部下がチャレンジできるように導くのが上司の役割だと思うんです。それができない上司は辞めた方がいいとよく言っています。


山下:「失敗を恐れるな」というのを過剰に捉えたらダメで、組織の中ではポジションごとにどこまでの失敗をしていいかというのが決められているはずなんです。決まっていないのであれば、決めなければいけない。そして、どこまで失敗していいかを理解した上で、思いっきりやるのがいいのではないでしょうか。



「こいつ本気だな」と思わせる


質問者B:新しい行動を起こす時、どうしてもアイデアの段階で反対が出ます。その人たちを納得させるにはどうすればいいでしょうか?


椋本:会議の場でいきなりプレゼンテーションをしても、「そんなことができるとは思えない」といった反応が多いんですよ。なので、その会議の前に、先に一人ひとりを説得しておく。ネゴシエーションをしておく。こういったことが必要ですよね。


高野:自分が信じるのも大事ですね。日本で初めてインターナショナルスクールを作った人は、周囲が「そんなことできるわけない」と言っていることを実現させた。みんな懐疑的だったけど、本人は自分はできると信じて周りを説得していたんです。自分が信じて、周りの人も信じさせていくことが重要なのかなと思います。


山下:最後は「こいつ本気だな」と思わせられるかどうかですよね。ポーズも必要ですし、もちろん行動も必要。本気の人に周りはついてくるのだと思います。


高野:例えば私は、日本人で初めて香港に上場を目指している起業家に、10年前に投資したんですよ。最初は彼のこと全然知らなかったのですが「高野さんに一度お会いさせてください」というメールが来たのがきっかけです。彼は同じように他の先輩たちにも会いに行ってサポートしてもらったんです。行動すると7割くらいの人は反対しますが、たまにものすごく共感してくれる人もいます。だから、その共感してくる人とやればいいと思うんです。


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