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2025.09.09

LUNA SEA・真矢さんが公表した“脳腫瘍”とは?【専門家に聞いた】

Kindai Picks編集部

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医学部
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脳腫瘍

ロックバンドLUNA SEAのドラマー、真矢さん(55)が「脳腫瘍」であることを公式サイトを通じて明かしました。そこで、脳腫瘍の基本から治療法、大腸がんからの転移、今後の見通しについて、近畿大学医学部脳神経外科学教室 講師の奥田 武司先生に話を聞きました。

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奥田 武司 (おくだ たけし)

近畿大学医学部脳神経外科学教室 講師
専門:脳神経外科

脳腫瘍領域全般と神経内視鏡手術を専門にしています。
教員情報詳細



まず一般的に脳腫瘍はどのような病気か教えてください。

奥田先生の写真
奥田先生
脳腫瘍の定義で言うと、頭蓋骨の中にできた新生物になります。良性脳腫瘍、悪性脳腫瘍、両者ともひとまとめに脳腫瘍という名称で呼んでいますが、詳しく分類すると150種類以上あります。

主に治療の対象となるのは悪性の場合ですか?

奥田先生の写真
奥田先生
もちろん良性脳腫瘍も治療の対象になりますし、悪性の脳腫瘍も治療の対象になります。

良性と悪性の違いや対処法で異なるところはありますか?

奥田先生の写真
奥田先生
良性脳腫瘍の場合、すべてに治療が必要なわけではなく、何もせず様子を見るだけで一生涯全うされる方もたくさんおられます。
一方で悪性脳腫瘍の場合は、現在の最先端治療を用いても完治させることは難しいです。

悪性の場合はどういった治療法で対処するのが一般的ですか?

奥田先生の写真
奥田先生
外科的治療と放射線治療に加えて薬物療法、いわゆる抗がん剤治療も行います。脳内は特殊なバリアを有しているため、抗がん剤が脳腫瘍まで届きにくく、他臓器の悪性腫瘍と比較して薬物療法の効き目は悪い方になります。しかし、難治性の腫瘍であるため、できるだけのことを全て行います。

LUNA SEA・真矢さんは大腸がんを5年前に患っていたと報じられていますが、大腸がんから脳腫瘍の転移はあり得ることなのでしょうか。

奥田先生の写真
奥田先生
公表されている情報だけでの推測ですが、2020年に進行期の大腸がんで様々な治療をされています。4期の大腸がんであれば脳に転移する可能性はあります。
一般的に転移性脳腫瘍は、他臓器の癌が脳に転移したものをまとめて転移性脳腫瘍と言います。癌が最初に発生した元の場所「原発がん」別の頻度で言うと、1番多いのが肺がん(46%)、2番目が乳がん(15%)、3番目が大腸がん(6%)になります。肺がんが約半分のパーセンテージを占めていますが、大腸がんも脳に転移する原発がんとしては決して珍しいものではありません。

LUNA SEA・真矢さんは脳腫瘍が発覚する前にふらっと倒れたそうですが、脳腫瘍の自覚症状はどういうものが一般的でしょうか?

奥田先生の写真
奥田先生
今回、ライブ活動もされていて、突発的にめまい発作が出たというような記事の内容だったと思います。
脳腫瘍の場合は症状が突然に現れることは考えにくく、腫瘍からの出血やてんかんなどがなければ徐々に症状が現れることが一般的です。いくら進行の早い悪性脳腫瘍でも数週間単位で症状が出てきます。
今回、突然のめまい発作があったとのことですが、記事では右側頭部の脳腫瘍とのことで、症状としては関連性は考えにくく、脳腫瘍自体は無症状で偶然発見された可能性が予想されます。

大腸がんで既に7回手術されています。こういう状況でさらに外科手術は可能なのでしょうか?

奥田先生の写真
奥田先生
真矢さんが転移性脳腫瘍と想定してのお話になりますが、転移性脳腫瘍だと治療方針は手術や放射線治療になります。
治療手段をどう決めるかと言いますと、腫瘍のサイズが一つの目安となります。腫瘍の大きさが2~3cmぐらいが一つの区切りで、3cm以上の場合は放射線治療の効き目も悪くなりますので、外科的手術を考えます。腫瘍の場所によっては外科的手術ができないこともあり、その場合は放射線治療を選択することになります。
ただ、手術が可能な場所であっても、特に2cm以下のような小さいものに対しては、外科的手術を行うことはありません。なぜかというと、放射線治療で十分良好な効果が得られるからです。このため、わざわざ身体に負担がかかる手術を選択することはありません。
また、以前に複数回の手術をされていたからといって、脳の手術を避けることも特にありませんし、外科的手術が最適な治療方針であれば手術を選択することになります。

真矢さんの場合では、あくまで推測ですが放射線治療を選ばれているということだったので、おそらく小さいサイズの腫瘍だったのではないかと思います。小さいサイズで、腫瘍の場所も右の側頭葉であれば、無症状でも不思議ではないと思います。

今後どのような治療をされると思いますか?

奥田先生の写真
奥田先生
脳腫瘍に対しては放射線治療を行い、以降は経過を見ていくことになります。大腸がんの方の治療も並行して可能と思います。脳転移の場合、問題となるのが例えば意識の障害や手足の麻痺などで日常生活などが困難になってきた場合、強力な抗がん剤治療などが出来なくなります。このため、今後も脳転移をコントロールしていくことは非常に重要です。
脳転移の治療後も普通の日常生活を送れるような状態であれば、抗がん剤治療への影響はほぼないものと言ってもいいかもしれません。

早期発見するためにはどうしたらいいですか?

奥田先生の写真
奥田先生
脳の画像検査を適宜行うしかありませんが、現実的には難しいです。今回はある意味、脳腫瘍として関連性の乏しいめまい発作の症状で脳のMRI検査を行い、偶然に発見されたとすれば早期発見と言えます。


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