2026.01.06
「失敗は許されない」600人が挑んだ巨大病院の引っ越し。患者125人の命を移送する緊張の30時間に密着!

- Kindai Picks編集部
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2025年11月1日、近畿大学病院が大阪狭山から堺市泉ヶ丘へ移転。それに伴い、重症患者17名を含む125名の入院患者を1日で移送する「巨大移送プロジェクト」が敢行されました。移転前夜から完了まで、総勢600人のスタッフが挑んだ手に汗握る30時間の密着ドキュメンタリーです。
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2025年11月1日、南大阪の医療の要である近畿大学病院が、半世紀に及ぶ大阪狭山市での歴史に幕を閉じ、隣接する堺市泉ヶ丘の「おおさかメディカルキャンパス」へ移転しました。 病床数919床、年間10,000件以上の手術と8,000件を超える救急搬送を受け入れてきた、まさに南大阪の「医療の砦」の移転は、想像を絶する規模です。
病院の移転は、単なる施設の移動ではありません。患者さんの容態の変化がないか、移転前日の準備から新病院での受け入れ態勢が整うまで、そこには「医療の空白」を絶対に作らないための緻密な計算が必要です。

生後4日の赤ちゃんもNICU(新生児集中治療室)から移送。失敗が許されない緊張の瞬間。
移転直前まで診療を継続しながら進められたこのプロジェクトは、大量の精密医療機器を運ぶために2トントラック約1,800台、作業員延べ約4,200人を動員。その「引越し」の難しさは、一般的な物流の常識を遥かに超えるものでした。
【30時間密着】失敗不可!入院患者125人の「命の引越し」巨大病院移転の舞台裏|近畿大学病院
移転前夜の作戦会議から、当日朝の患者移送準備、救急車列の走行、そして新病院での受け入れまで……医療ドラマ以上の緊迫感が伝わる30時間のドキュメンタリー映像です。
総勢600名のスタッフが挑んだ「命の引越し」の舞台裏

患者移送プロジェクトが本格始動したのは約1年前。医師、看護師だけでなく、薬剤師や臨床工学技士等の医療スタッフ、事務スタッフ、外部移送スタッフなど含め総勢600名がチームを結成。最大のミッションは、入院患者さんの安全な移送です。旧病院から新病院までの距離は約4km。移動時間はわずか15分程度ですが、人工呼吸器をつけた重症患者にとっては大きな負担となります。

大講堂で行われた移送全体ミーティングの様子。
本番さながらのシミュレーションを何度も重ね、実際の救急車や福祉車両に患者役のスタッフを乗せてルートを確認。積み込みにかかる秒数、道路のわずかな段差が生む振動、新病院内で電波の入りにくい場所など……起こりうるトラブルをすべて出しきり、課題を一つずつ潰していきました。

10月に行われた予行演習の様子。
移送患者は125名(うち重症患者17名)。11月1日移転当日は朝6時からスタッフが集まり、8時半から移送を開始しました。

移送開始から終了までは約5時間の見込み。人工呼吸器が必要な重症患者には、緊急対応に備え、医師、看護師、臨床工学士が同行し、移送車両に同乗。出口責任者、院内移送係、移乗係、エレベーター係、手荷物係、車両誘導係など各班に別れ、複数の移動ルートから時間差で効率的に移送します。

最新の高度医療機器を備えた高規格車両6台、ドクターカー2台、福祉車両30台の合計38台。起伏やカーブの少ないルートを厳選し、ドライバーは極限まで揺れを抑える慎重な運転を徹底。入念な準備が功を奏し、予定より約1時間早い午後1時過ぎには全員の移送を無事完了しました。
写真で振り返る、大阪狭山と共に歩んだ「旧近大病院」の50年

1975年、開院当時の上空写真。
新病院への期待に沸く一方で、地域の人々に愛され続けた旧病院との別れも感慨深いものでした。1975年の開院以来、南大阪の医療を一身に背負ってきたこの建物。当時は珍しかった近代的な外観も、50年が経ち、風格ある佇まいへと変わりました。

待合ロビーから眺める中庭の様子。

長年、数えきれないほどの命を見守ってきたナースステーション。

患者移送の全体ミーティングが繰り返し行われていた大講堂。

時代を感じる病室。
30時間の密着の中で、移転準備や片付けをしながら思い思いの場所で最後の記念撮影をするスタッフの姿を何度も目にしました。
スタッフだけでなく、「ここで子どもを産んだ」「大切な家族を助けてもらった」「リハビリ中にこの中庭を見て励まされた」そんな地域の方々の記憶が、この建物の至る所に詰まっています。50年間、南大阪の「医療の砦」であり続けた誇りは、錆びることなく新天地へ運ばれました。
50年の役割を終え、次の50年へ

開設から50年、大阪狭山市での役割を終えた旧近畿大学病院。病院跡地は医療法人せいわ会による回復期リハビリテーション病院(2027年4月開院予定)と、大和ハウス工業による商業施設などを備えた複合施設として再開発される見通しです。
そして11月6日、移転先の「おおさかメディカルキャンパス」での外来診療が本格的にスタートしました。駅からの屋根付きのペデストリアンデッキが直結する抜群のアクセスに加え、医療ロボットやAIを活用した「スマートホスピタル」として、より安全で効率的な高度医療を身近に提供。さらに、約700名の医学部生と来春開設の看護学部が一体となり、この学び舎から未来の医療を支える若者たちが共に育っていきます。
堺市に移転した新近大病院。日本初導入の最先端医療設備と24時間体制の救命医療拠点を備えた「おおさかメディカルキャンパス」に潜入
取材・文:トミモトリエ
動画制作:谷口譲(Matchcut)
編集:人間編集舎
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