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2025.11.01

堺市に移転した新近大病院。日本初導入の最先端医療設備と24時間体制の救命医療拠点を備えた「おおさかメディカルキャンパス」に潜入

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
おおさかメディカルキャンパス
医学部
堺市泉ヶ丘
看護学部

2025年11月、近畿大学医学部・病院が大阪狭山市から堺市泉ヶ丘に移転し「おおさかメディカルキャンパス」として新たなスタートを切りました。新キャンパスは、医療と教育の最前線を体現する施設です。10月14日に開催された内覧会の様子をリポートします。

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近畿大学は1974年に医学部を設置し、翌1975年には近畿大学病院を開院しました。以来50年にわたり、南大阪エリア唯一の大学病院として地域医療に貢献してきましたが、建物の老朽化に伴い、2025年11月1日に大阪狭山市から堺市泉ヶ丘に移転し、「おおさかメディカルキャンパス」と名付けた新しい拠点を設立しました。2026年4月には看護学部の新設も予定され、次世代の医療人材育成と地域への最先端医療環境の提供が期待されています。

キャンパス全体の敷地面積は約11万5,837平方メートル、総延べ床面積は約14万3,956平方メートル。広大な敷地には、学生のための運動場や体育館も設置されています。

「おおさかメディカルキャンパス」は、1号館(外来棟)、2号館(診療棟)、4号館(教育棟)など7棟で構成される大規模な医療・教育施設です。医療機能としては、標榜診療科数35科、病床数800床を確保し、1日平均2300人の外来患者数を見込んでいます。


駅から徒歩6分。ペデストリアンデッキで雨の日も安心



新キャンパス最大の魅力は、なんといってもアクセスの良さです。泉北高速鉄道「泉ケ丘駅」から徒歩約6分。駅から病院の総合受付まで、屋根付きのペデストリアンデッキが直結しており、雨の日でも傘を開かずに移動できます。大阪市中心部から約30分という好立地も、患者さんや学生にとって大きなメリットです。


ペデストリアンデッキで雨天でも安心。

広く開放的なエントランスと受付。

内覧会の冒頭、東田有智(とうだ・ゆうぢ)病院長から、集まったメディア関係者に新病院の意義が語られました。



「この『おおさかメディカルキャンパス』は、近畿大学の創立100周年、そして医学部・病院の設立から50周年という節目の今年、新たに開設されることになりました。医療ロボットやAIを活用した受付システムなどの最新設備を導入し、南大阪における基幹病院、そして救急災害の拠点として、地域に貢献をしてまいります」

その言葉からは、50年の歴史を受け継ぎながら、新たな一歩を踏み出す決意と、地域医療への深い責任感が伝わってきました。


アバター受付にAI解析。医療DXの最前線



総合受付に足を踏み入れると、そこには未来の病院を感じさせる光景がありました。受付カウンターに設置された大型ビジョンには女性の「アバター」が登場。画面越しに語りかけると、別の場所にいる受付スタッフがアバターを通して、リアルタイムで受付対応してくれるシステムです。



モニターに病院内の地図が表示され、目的の診療科までのルートを案内してくれます。人手不足の解消と効率化の両立を目指し、今後はAIを活用したルート案内も計画されています。



さらに、新しくなった受付では、スマートフォンが診察券代わりに。専用アプリのバーコードを読み取り機にかざすだけで、チェックイン(診療受付)が完了します。もうカードの診察券を財布の中に入れておく必要はありません。この仕組みにより、受付の待ち時間の大幅短縮につながります。

アプリを用いたチェックインの方法を、職員の方が実演。専用アプリはお年寄りにもわかりやすく、使いやすい設計を目指し、作られました。

アプリでは診察状況の確認、採血検査や会計、お薬の受け取りの待ち状況なども確認が可能です。デジタル技術を駆使した受付サービスを実現しました。



チェックインを済ませたあとは、待合室へ。待合室にはモニターが設置され、診察の順番と進行状況が表示されます。それにより、混んでいる病院でありがちな「いつになったら自分の番が来るの?」というストレスも軽減されます。


高度な医療機器をそろえ、がんなどの病気を治療


「おおさかメディカルキャンパス」の最大の特徴の一つが、高度な医療設備が多数導入されていることです。とくに日本人の約2人に1人が生涯でかかると言われる病気、がんの治療に力を入れており、その発見・治療のための設備がそろっています。

悪性腫瘍(がん)や体内の薬剤分布を高精度に分析するPET/CT装置



こちらは、患者さんに注射された薬剤の体内分布をリアルタイムで視ることができるPET装置と、臓器などの位置や大きさを視るためのCT装置が一体化した「PET/CT装置」です。シーメンスヘルシニアーズの「Biograph Trinion(バイオグラフ・トリニオン)」という機種で、日本では初めての導入となります。

「新装置は検査の被ばく量を大きく軽減することで、患者さんの負担を下げ、より正確な病状診断を可能にします」と技師の方が説明。

がんを中心とした腫瘍の診断、心臓機能や脳のアルツハイマー型認知症など、幅広い領域の検査に用いられます。Biograph Trinionには従来のCT装置に比べて大幅に放射線の被ばく量を減らす技術が搭載されており、患者さんの健康を守りながら、高品質の画像検査を可能にします。

狙った部位だけに放射線を照射、治療を行うリニアック



「リニアック」は、がんなど病気の放射線治療に用いられる装置です。今回、新病院に導入されたリニアックは、米国バリアン・メディカルシステムズ社製の「TrueBeam(トゥルービーム)」という機種です。高精度の画像誘導技術を搭載することで、ターゲットの腫瘍だけを正確に放射線で狙い撃ちし、正常な組織への影響をできる限り抑えます。

寝ている患者さんの周りの任意の場所・方向から、放射線を照射することができます。


調剤ロボットを導入し、通院でのがん治療にも手厚く対応



がん患者が入院せずに、日帰りで診察や抗がん剤治療を受けることができるのが、通院治療センターです。

通院治療センターにはベッド7床のほかに、リラックスしながら治療が受けられるリクライニングチェア39床、合計46床が設置され、旧病院よりスペースも拡大されました。がん相談支援センター、緩和ケアセンターなども配置し、外来で安全かつ快適に薬物療法を受けられる体制を整えています。


抗がん剤を自動で調製する最新の調剤ロボット



センターに隣接する調剤室では、最新の抗がん薬調製ロボット「ChemRo the Spike(ケモロ ザ スパイク)」を導入しています。このロボットは、薬品や注射針、輸液バッグなどをナビにしたがってセットすると、ガラス越しに見えるクリーンスペースの中で、2本のロボットアームが抗がん剤を自動的に調製します。

素早く正確な動きで抗がん剤を調製する2本のロボットアーム。

がん細胞を効率的に殺す抗がん剤は、少なからず毒性を持っており、健康な細胞にも影響を及ぼします。そのため取り扱いには注意が必要で、薬剤師は皮膚に触れたり吸い込まないように細心の注意を払っています。本ロボットを活用することで、調製ミスを防止しながら、医療者の安全を確保し、効率的な治療を提供していきます。


24時間体制で「誰も断らない」救命救急センター

南河内医療圏における救急医療の要として、1982年に開設された近畿大学病院救命救急センター(Kindai Critical Care Medical Center、通称CCMC)。365日24時間体制の3次救急施設であり、ドクターヘリ対応の災害拠点病院でもあります。新病院でも、地域の救急医療の拠点としての役割を大いに期待されています。

感染症の疑いのある患者さんは、左側の扉から入り、隔離された環境で安全に治療を受けることができる。

近年、救急患者を搬送しようとしても、地域の病院に受け入れる余裕がなく、患者さんが「たらい回し」になることが問題化しています。そうした事態を防ぐために、新病院ではICUのベッドを10床から24床に増床し、「誰も断らない救急医療」の実現を目指します。

ドクターカーでの病院前救急診療から救急外来(ER)での初期診療、ICUでの集中治療までを一貫して行える導線。

救命救急センターには、救急で簡単な処置が行える初療エリアや、脳出血等の緊急対応が必要な症状を見極めるための血管撮影装置、CT装置、緊急手術室などが備えられ、一秒を争う救急治療に対応します。

病院の窓口機能とセーフティーネット機能・災害時のリザーバー機能を担う救急外来。

X線で血管をリアルタイムで透視する血管撮影装置(アンギオグラフィ)。

新病院では、重症患者の受け入れと治療にも力を入れています。旧病院では別々の場所にあったICU(集中治療室)と、急性心筋梗塞などの重篤な循環器の病気を診るCCU(冠疾患集中治療室)、ACU病棟(急性期治療病棟)を一つの場所に集約。救急搬送された救命救急センターの患者さんを受け入れる体制が整っています。



壁のないワンフロアに各科の専門医療者が一堂に会することにより、全身管理が必要な重症患者に対してシームレスな治療が可能となります。これが、地域の人の命を守ることにつながります。





救命救急センターのセンター長の篠崎広一郎(しのざき・こういちろう)主任教授は、「今まではICUのベッドが空いているのに、救命救急センターのベッドがいっぱいなので患者さんの治療を待ってもらうことがありました。新病院ではフロアの壁をなくすことで、各科の空いているベッドを有効に活用できる上、各専門医が協力して重症患者の治療にあたることができます」と新体制の意義を説明しました。


ロボット支援手術とハイブリッド手術室による高度な治療



注目すべき医療機器の一つが、手術ロボットです。4本のアームを備えたメディカロイド社製の医療ロボット「hinotori™(ヒノトリ)」を医師がオペレーターとなって操作し、とくに精密さを求められる手術に対応します。



ロボット手術のメリットは、手術時に傷口が小さく済み、出血量も少なく、細かな操作を確実に行えることです。人間の手で起こり得る微妙な震えをシステムが補正し、4本のアームの先に取り付けた鉗子やメスを、モニターを通じて精密に操作することができます。

実際は助手がモニターと患者の様子を見ながら手術を行う

hinotoriの他に海外製の医療ロボット「ダヴィンチ」も導入し、複数体制で治療を行います。

旧病院でも導入されていた「ハイブリッド手術室」も、新病院では2部屋設けられています。ハイブリッド手術室は、血管撮影装置やX線透視装置を手術室内に備えた、高機能複合型の手術室です。



従来は別々の部屋で行っていた外科手術と画像診断を、一つの空間で同時に進められます。患者さんにとっては、術前の院内移動が不要になるほか、手術時間の短縮、出血量の減少、入院期間の短縮など、体への負担軽減が期待されます。


入院生活を快適に過ごせる新しい病室



新病院の入院患者用病棟には、4人部屋と個室が用意されています。明るく開放的な病室は、患者さんの療養環境を第一に考えた設計です。窓からの自然光がたっぷり入り、清潔感あふれる空間となっています。

個室のシャワールームとシャワートイレ。



一泊22,000円(税込)の特別室には、壁掛けテレビや机などの設備が設置されており、プライベートを保ちながら快適に入院生活を送れるよう配慮されています。

また、「スマートベッドシステム」も導入。ベッドサイドタブレットで最新の体調や状況を患者やご家族に共有し、診療の見える化をサポート。さらに、体動・眠りセンサーやバイタル機器の自動連携機能も備えています。


子どもの不安を軽減する小児科・思春期科のさまざまな工夫



大阪府から小児中核病院の指定を受ける近大病院では、新しい病院の開設にあたって、入院する子どもたちが少しでも安心して過ごせる環境づくりに力を入れています。

近畿大学デザイン・クリエイティブ研究所と連携し、小児科・思春期科の設計には「ホスピタルアート」を取り入れました。明るく温かみのあるデザインで、子どもたちが前向きに入院生活を送れる空間を実現しました。

閉じこもりがちな入院中でも、開放的な気分を味わってもらうため、広いベランダにも遊べるスペースを設置。

また、小さな子には遊びながら入院生活を過ごせるプレイルーム、中高生には勉強ができるスタディルームを設けるなど、子どもたちの心に寄り添った工夫を随所に盛り込みました。

スタディルームは落ち着いた雰囲気。



診断、注射などを行う処置室は、とくに子どもが不安になりがちな場所です。天井の照明には半透明の布のなかにビー玉が入っており、治療中に看護師が棒で叩くことでビー玉があちこちに動き、治療中のお子さんの気を紛らわせる工夫がされています(写真はプレイルームのもの)。



こちらは感染症のお子さん向けの面会室です。花の中央部分は柔らかいシートになっており、ガラス越しに面会する家族と手を合わせることで、お互いの体温を感じられるようになっています。



殺風景になりがちな病室の窓からは、地域の子どもたちが書いた壁画(グラフィックフェンス)を見ることができ、ベッドの木製フレームも温かみのあるパステル調に塗られています。


地域に開かれた医療の拠点へ

11月1日、前施設に入院されていた約190名の患者さんを移送し、6日からは外来診療を開始する「おおさかメディカルキャンパス」。2026年4月には看護学部が開設され、医学部生約700名、看護学部生約440名、常勤職員約2,000名以上、そして1日約3,000名の外来・入院患者さんが集まる、医療の拠点となります。

また、堺市との包括連携協定によって、医学部生が地域の健康課題に取り組むプロジェクトもスタート。堺市民約82万人の健康データをICT技術で活用しながら、医療と健康増進につなげていく取り組みを、市とともに進めていく予定です。特定機能病院としての高度医療、災害拠点病院としての安心、そして教育機関としての人材育成。そのすべてを担い、南大阪の医療を支える、地域に開かれた医療の場をつくっていきます。

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