2017.01.24
年間17,000人!「入浴中の事故は交通事故よりも多い」の真相。
- Kindai Picks編集部
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身体に負担のかかる入浴によって、年間1万7,000人もの人が亡くなっているのをご存知だろうか。原因は「ヒートショック」と呼ばれる身体の現象だ。自分と大切な家族を守るために、そのメカニズムや対策について知っておこう。
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●監修者
木下理恵/医師・近畿大学経営学部講師
専門はスポーツ医学。スポーツの楽しさや必要性、そして競技力向上などを、医学的な見地から研究している。
●「ヒートショック」とは?
私たちの身体は、周囲の温度が急激に変化すると、それに合わせて血圧も激しく変動するようになっている。その結果、脳卒中や心筋梗塞、失神、不整脈などを引き起こすことがあり、これを「ヒートショック」と呼んでいる。
特に気をつけなければならないのは、2月頃までの冬の入浴。暖房のない脱衣所で衣服を脱ぐと身体の表面温度が10度近くも下がることがあり、その直後に熱いお湯に入れば、意識障害を起こして浴槽で溺れてしまう可能性が高い。
過去には、ヒートショックに関連した入浴中の急死者が17,000人もいると推計されている(東京都健康長寿医療センター研究所 2011年)。これは交通事故による死亡者数4,611人をはるかに上回る数値だ。
●ヒートショックはなぜ起きる?
暖かい場所にいる時やリラックスしている時、血管は拡張して血圧は下がる。寒い場所にいる時や興奮している時は、逆に血管は縮まり血圧は上がる。これらは正常な身体の機能だが、短時間で急激に入れ替わると全身に十分な血液が運ばれなくなり、臓器が正常に働かなくなる。これがヒートショックのメカニズムだ。
では、どのような条件が揃うとヒートショックになりやすいのだろうか。まず、最も多いのが高齢者だ。入浴中に意識障害になった人の9割は、65歳以上であることがわかっている。また、年齢が若い人でも、飲酒後はヒートショックが起きやすい。
環境面では、脱衣所や浴室に暖房がない家、気密性の低い家もヒートショックになりやすい。なお、入浴中に心肺機能停止になる人が最も多い季節は冬で、12月〜1月頃の発症者数は夏の11倍にもなると言われている。
●ヒートショックになった時の対処法
万が一、家族がヒートショックになってしまった時は、すぐに浴室から脱衣所に移動させて、救急車を呼ぶ必要がある。その時、脱衣所はできるだけ暖かくすることが大切だ。意識がある場合は横向きにして、嘔吐物の誤飲にも注意する。
意識がなく呼吸をしていない場合は、1分間に100回から120回のペースで胸骨圧迫を行う。この時、胸が5cm程度沈み込むように押すのがポイントだ。AED(自動体外式除細動器)があれば、電源を入れてガイダンスに従って操作する。使う時にAEDを水で濡らしてしまわないように注意しよう。
以上が基本的な対処法だが、救急車を呼ぶ時に状況を伝え、救急隊員から指示があれば、その内容に従うようにする。
●ヒートショックを防ぐために
ヒートショックは、ちょっとした心がけで防ぐことができる。まず、脱衣所や浴室の気密性を上げたり暖房器具を設置したりして、極端に温度を下げないようにする。そして浴槽のお湯は熱くしすぎない(38〜40度くらいがおすすめ)。温度差があればあるほど、ヒートショックになりやすい。
また、飲酒後は入浴しない、高齢者や脳・心臓の疾患を持っている人が入浴する時は誰かが見守っているといったことも大切だ。
入浴は一日の疲れを取る大切な習慣だが、年間4,866人もの人が家庭の浴槽で溺死しているという事実もある。他人事だとは思わずに、しっかりと自宅のヒートショック対策を講じるようにしたい。
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