2019.02.12
冬こそ厳重注意!脳卒中や心筋梗塞などの「血管事故」を防ぐには?
- Kindai Picks編集部
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脳卒中や心筋梗塞…死に至る病気のなかで、このような血管で起こるトラブルが「血管事故」。
血管のトラブルは夏の暑い時期にも起こりますが、これから寒くなってくると、より起こりやすく、場合によっては突然死を招きます。
近畿大学医学部で循環器に詳しい渡邉平太郎先生に、冬こそ注意すべき血管事故による病気の症状や予防について伺いました。
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PROFILE
渡邉平太郎(医学部医学科)
専門:循環器内科、カテーテル治療
循環器系の診断と治療を専門とし、心筋梗塞や狭心症などに関する公演にも出演多数。
血管事故が起こるメカニズム
血管事故ってどんな病気があるんですか?
病名としましては、心筋梗塞、大動脈解離・破裂、脳梗塞が代表例として挙げられます。
血管事故は、動脈硬化が原因と言われていまして、正常の血管というのはそもそもホースのように中がツルっとしているものなんです。要は血液が流れやすいような形態をしています。
ところが動脈硬化で血管が硬くなると、プラークと呼ばれるコレステロールやカルシウムの塊ができて、血液の流れが悪くなります。
だからと言ってすぐに症状が出るわけではないんですよね?
例えば、血液が10流れていたのが2とか3しか流れなくなるとします。安静にしていれば2から3で血液でうまいことやりくりするわけです。ですから症状がないわけなのですが、運動すると安静にしているより多くのエネルギーや血液が必要となり、心臓にエネルギー不足や血液不足が生じ、胸痛や胸部圧迫感といった症状でそれを知らせようとするわけです。
そしてさらに進行すると、弱くなったプラークの壁が破れて出血、そこに血を固める血小板が集まって血栓となり、血管をふさいでしまいます。
血管の中では徐々に進行していきますが、完全に詰まった時に突然症状が出ることが多く、これが血管事故の怖いところです。
ここで先生からある映像を見せていただきました。
これは心臓の血管の中をカメラで覗いている映像なのですが、
血管の中ですか?
はい。
えええええ?何コレ?何か動いている!
プラークが破綻した瞬間を捉えている映像になります。
何かミミズみたいのが上にひゅーっと上がってきました。
そうですね、これがいわゆるプラークの破綻。
このようにプラークの中身が壁を突き破って血管内に染み出ています。そして これに血栓がくっついて血管を詰まらせるんです。
動脈硬化の原因は?
動脈硬化ってどんなことが原因で起こるんですか?
動脈硬化と言うのはやはり1番は年齢です。年齢には勝てないという所なのかも知れませんが、その他にもありまして、高血圧です。高血圧の患者さんなどです。
あとはコレステロールと糖尿病。脂質異常症の患者さんや糖尿病の患者さんは、やはり動脈硬化が多いとされております。
動脈硬化は生活習慣病の成れの果てなので、やはり暴飲暴食であったり著しく運動不足の方は、若くして起こりやすいとされてます。
なるほど。
そしてこの季節は日によっても、朝晩においても、血管が開いて血圧を下げたり、収縮して血圧をあげたりとフルに働くため、かなりの負担がかかります。
そのような寒暖差によって起こる症状で、最近よく言われるのが「ヒートショック」です。例えば暖かい部屋から寒い脱衣所に行くと、血管が収縮して血圧上昇、そしてすぐに熱いお風呂に入ると血管が広がり、血圧は急激に低下します。これによって脳が貧血状態になり、めまいや意識障害、ひどくなると脳卒中の可能性も出てきます。
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動脈硬化防ぐ食べ物と運動を知ろう
血管事故つまり動脈硬化を起こしやすいかどうかは、コレステロールの状態にかかっています。
コレステロールと聞くと悪いものと思っている人が多いですよね?
そうですね。コレステロールの中でも、LDLと呼ばれる悪玉コレステロール、後はHDLと言われる善玉コレステロールというものがあります。どちらが高い、どちらが低いのもよくないですし、バランスが非常に重要だと考えられています。でも、悪玉コレステロールであるLDLが高い方は、危険症例には当たると思います。
では、どんなことに気を付ければいいのでしょうか?
コレステロールのバランスを取るにはまず、規則正しい食事で腹八分目に抑える。よく噛んで食べる。早食いやまとめ食いをしない、などを心がければ、悪玉を減らして善玉の比率を上げることができます。
具体的な食事の内容としては、血栓予防になる納豆や青魚、血圧を下げる海藻類や、血管の弾力性を高める蕎麦、ほかにも玉ねぎには血栓を溶かす働きがあります。また、過剰な塩分は血管事故を起こしやすくするので注意が必要です。
食事以外で気をつけたほうがいいことはありますか?
やはり喫煙は1本でもアウトですね。
なるほど。
喫煙は悪、と言われています。
その他にやはり運動習慣ですよね。30分から1時間程度、早歩きくらいの運動がよいと思います。
ウォーキングが良い理由は、血流は下肢、つまり腰から下の血液の流れが重要なので、足の筋肉を鍛えれば血流が改善します。
今、自分の血管の状態どうなっているかを知る方法の1つに、頸動脈エコー検査があります。首の血管を見れば、大体全身の血管の状態がわかりますよ。
リスクは掛け算式に倍増する!
でも、自覚症状がなくてリスクを持ってる方は、たくさんいらっしゃるんでしょうね。
そうですね。やはり生活習慣病を抱えている方、糖尿病がある方、血圧が高い方、コレステロールが高い方、また喫煙している方は、たくさんいらっしゃると思います。動脈硬化のそれぞれの危険因子のリスクが3とするならば、2つ3つ重なると、足し算のように3+3という訳ではなく、掛け算のように3×3という形で、どんどんリスクが高くなっていくと言われています。
ではタバコを吸って、揚げ物大好きで、塩辛いもの好きで、寝不足でストレスいっぱいの方は、どうなってしまうんですか?
20歳代で亡くなってもおかしくないです。
えー!どきっとしたあなた、あなたのことですよ!
リスクはどんどん膨れ上がっていくということで、喫煙、揚げ物や塩辛いものの摂りすぎには、気をつけないといけませんね!
また冬はヒートショックなどの危険因子も隠れています。自分は大丈夫だと思いこまず、日ごろからの注意が血管事故を防ぐコツだということがよく分かりました。
<→「年間17,000人!「入浴中の事故は交通事故よりも多い」の真相。」に進む>
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