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2016.11.26

局所進行乳がん-ケースで考える治療法

乳がん

Kindai Picks編集部

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医療
近大病院治す力!
オリジナル記事

手術で病巣を取り除くことが困難だったり、取り除いても局所再発したりする可能性がある局所進行乳がんの治療法について、一つの症例から考えます。

監修:近畿大学附属病院外科(乳腺内分泌外科)菰池佳史教授
出典:「近大病院 治す力」

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ケース「局所進行乳がん」
30 歳代後半、女性。2年前に右乳房腫しゅ瘤りゅうを認めました。
1年前から腫瘤が増加し、近隣の医療機関を受診。右乳がんの診断で抗がん剤治療から開始しました。治療中に腫瘤の急速な増大を確認し、治療のため当科に紹介受診となりました。




局所進行乳がんとは

5cmを超える腫瘍(しゅよう)、皮膚や筋肉に広く浸潤(しんじゅん)している、あるいはリンパ節に多数の転移を確認するような乳がんを局所進行乳がんといいます。




局所進行乳がんの治療

局所進行乳がんに対しては、まず薬物療法(通常は抗がん剤治療)を行います。
このような乳がんでは、手術で病巣を取り除くことが困難だったり、取り除いた場合でも高い確率で局所再発したり、遠隔転移(乳房やリンパ節以外の臓器、例えば骨・肺・肝臓などに転移すること)を起こすことがあります。

このような場合は、既に目に見えない小さながん細胞が全身に広がっており、治療成績の向上のために適切な薬物療法が必須とされています。また、乳がんは薬物療法がよく効くため、病巣が縮小し、より確実に手術が行えるようになることが多いのです。


乳がんのタイプに合わせて薬物療法を実施

局所進行乳がんに限らず、乳がんに対する薬物療法を決定する際には、その乳がんのサブタイプを調べることが重要です。乳がんは遺伝子の発現パターンが数種類あり、それによって性格が違います。

これを乳がんのサブタイプと呼び、実際には2種類のホルモン受容体(ER、PgR)とHER2 タンパクおよびKi67というタンパク質を乳がん細胞が持っているかどうかを調べて決定します。


薬物療法が上手くいかなかった場合

乳がんに対する術前化学療法は多くの場合は有効で、治療中に増大してくる可能性は高くはありません。

一方、強力な化学療法を行っても効果がなかった場合の、その後の治療は十分な検討が必要です。今回のように治療開始時点で切除が困難な場合は大変です。

このような場合は
①薬剤の種類を変えて薬物療法を継続する
②放射線治療で局所を縮小させる
③何とか切除できる方法を考える
という3つの方法があり、外科、腫瘍内科、胸部外科、形成外科医が合同で治療方針を検討しました。

まず、薬剤を変更するという方法です。既に乳がん治療として重要な2種の薬剤を使用して効果が見られなかったため、今後、ほかの薬剤を使っても確実に腫瘍が縮小する可能性は少ないだろうと考えました。

また、腫瘍からの滲出液(しんしゅつえき)、出血や痛みが現れている当時の状況で、副作用の伴う抗がん剤治療を継続することは心理的、体力的に限界だと判断しました。放射線治療も、腫瘍(しゅよう)があまりに大きく、十分な効果が発揮できるかが疑問でした。手術療法についても、初診時よりもさらに増大した腫瘍をうまく切除できるかが問題でしたが、ほかに有効な方法がなかったため、前向きに検討しました。

腫瘍が胸壁(肋骨や肋間筋)に浸潤しているとすれば、切除のためには胸壁切除(肋骨や肋間筋も含めた切除で、ポッカリ胸に穴があいて肺が見えるような感じになり、開いた穴は人工物やほかの組織で充填してふさぐ)が必要となります。乳がん診療ガイドラインでは、このような手術を行うことは推奨されていません。


「諦めの手術はしない」

しかし、全ての患者さんにガイドライン通りの治療が適用できるとは限りません。一般的でない病態については、個別にベストの治療が追求されるべきであり、その治療が成功するように最善を尽くすことが大切です。患者さん、家族と十分な話し合いの上で、切除に踏み切りました。幸いなことに肋骨にも肋間筋にも浸潤はなく、大きな手術にはなりましたが、腫瘍は切除ができ、皮膚の欠損部は形成外科によって背中の筋肉と大腿部の皮膚を移植することで、その後の経過は順調でした。

「諦めの手術はしない」という私たちの教室のモットーがあります。手術だけで完治が得られるわけではありませんが、常にその時の最善を尽くすべく、チーム医療で治療に臨んでいます。

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