Kindai Picks

国際交流

2026.03.27

【現地レポート】ヒジャブでアニメのコスプレ!?マレーシアのファッションと宗教、自己表現のリアル

Kindai Picks編集部

72 View

tag
オリジナル記事
学生ライター
国際学部
留学
宗教

皆さんは イスラーム教の女性が髪を隠すための布「ヒジャブ」を知っていますか? 宗教的な決まりごと、遠い国の文化……そんな印象を持つ人も少なくないかもしれません。しかし、イスラームを連邦の宗教とするマレーシアへ留学して、そのイメージが少し変わりました。ヒジャブ文化をより知るために、現地の学生やヒジャブコスプレイヤーを取材してみました!

この記事をシェア

  • facebook
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • x
※本記事は宗教的な解説を目的とするものではなく、マレーシアのヒジャブ文化を通して見えてきたライフスタイルや自己表現の工夫に注目しています。



こんにちは! 近畿大学広報室でインターンシップをしている、国際学部 国際学科 グローバル専攻 3年生の谷口 日菜子(たにぐち ひなこ)です。

私は近畿大学の交換留学プログラムで、5カ月間マレーシアのテイラーズ大学へ留学していました。ほぼ毎日気温30℃を超える暑さの中で、ヒジャブを着こなして歩く女性たちを見るたび、思わず「え、暑くないの?!」と疑問がわきました。

さらに、驚くべきカルチャーも目にしました。

それは「ヒジャブコスプレ」です!


オープンワールドRPGのゲーム「原神」に登場するコロンビーナ(左)、ナヒーダ(右)

ヒジャブを着用したままキャラクターを表現するコスプレで、ウィッグの代わりにヒジャブの巻き方を工夫して、髪型を表現しています。すごい!

マレーシアで感じた疑問や驚きから、現地でヒジャブについて色々調べてみることに。すると、そこには「宗教上の理由で髪を隠すための布」というイメージだけでは語れない、ライフスタイルの工夫、そして自己表現の世界が広がっていました。


ヒジャブはつけなくてもOK!? 暑くないの? マレーシアにおけるヒジャブのリアル

マレーシアでは、イスラームを連邦の宗教としています。そのため、街中ではヒジャブを身に着けたムスリム女性の姿を多く見かけます。顔全体を覆う「ニカーブ」や、全身を覆う「ブルカ」を着用する人は少数派で、顔を出し、髪や首元を覆うタイプが一般的です。




ヒジャブの露店

また、マレーシアではヒジャブの着用は法律で義務付けられているわけではありません。近年では、イスラームを信仰する人であってもヒジャブを着けないという選択をする女性もいるそうです。

一方で、モスクなどの神聖な場では宗教を問わず、女性はヒジャブや露出の少ない服装を着用することが求められます。私もマレーシアの観光名所として知られる「プトラモスク」を訪れた際、貸し出し用のヒジャブを着用しました。


通称「ピンクモスク」。マレーシア観光は、暑くても露出が少ない服装で楽しみましょう!

このようにヒジャブはマレーシアの日常に溶け込んでいます。現地の人たちはどのようにヒジャブを選んでいるのでしょうか? また、暑さ対策はどうしているのでしょうか?

ヒジャブに対するアンケート

ヒジャブを身に着けている、年齢の異なるマレーシアの女性約50人を対象にアンケートを実施しました。

日本では「宗教的なシンボル」として捉えられることが多いヒジャブですが、実際に話を聞いてみると、「意外な本音」が見えてきました。



最も多かったのは RM50~RM100(取材時のレートの日本円で約2,000円~4,000円)

イベントやお祝いの場など特別なシーンでは、少し高めのヒジャブを選ぶこともあるそうですが、日常的に使うアイテムだからこそ「無理のない価格帯で、必要な分を揃える」という人が多い印象です。



最も多かった回答は 「素材・快適さ」 で、約9割の人が重視していると答えました。次点で投票率が高かったのは「デザインや色」で、約8割の人が気にしているようです。

日常のファッションアイテムとしても実用性やデザイン性を重視して選ばれていることが分かります。

また、「普段どこでヒジャブを購入していますか?」という質問に対して、多くの人がネットショッピングで購入していると回答。ヒジャブ専門のオンラインショップも多く、自宅にいながら色や素材をじっくり比べられる点が人気のようです。



なんと、約9割の人が「暑さや湿気を感じる」 と回答しました。

一年中暑いマレーシアの気候の中でヒジャブを着用するのは、やはり体感的にも大変なようです。

そんな環境の中で、実際にどんな暑さ対策をしているのでしょうか?

「フェイスミストをかけて、顔を冷やす」「首から下げる扇風機を常に持ち歩く」「頭皮がひんやりするシャンプーを使う」などアイテムで工夫している人が多く、「日中はエアコンが効いているショッピングモールや部屋から出ない」という人も……!


流行りのヒジャブコーデとは? 現地の女性にインタビュー

よりリアルなヒジャブコーデを知るため、ヒジャブを日常的に着用しているマレーシアの学生さんに協力してもらい、インタビューを行いました。留学生として見るヒジャブと、生活の中にあるヒジャブ。その違いが、会話の中から少しずつ見えてきました。


モナッシュ大学の学生 サフィヤさん

谷口日菜子:本日はよろしくお願いします。早速ですが、ヒジャブコーデをおしゃれに見せるコツはありますか?

サフィヤさん:ヒジャブと服の色を単色で合わせて、そこに小物で色を足す感じですね。たとえば、バッグやジュエリーでアクセントをつけると、全体がまとまってスタイリッシュに見えます。また、ヒジャブの上からキャップを被ったりすると、より現代的なファッションになります。

谷口日菜子: へー! 確かに、一気にスポーティーになりそうですね! ヒジャブの生地の素材選びで、意識していることはなんですか?

サフィヤさん:心地よい素材のヒジャブを身につけることです。きちんとして見えるものがいいですね。今つけているのは伸縮性があって軽く、すごく快適なんです。一日中外にいる日は、わざわざトイレに行って巻き直す時間もないので助かります。

谷口日菜子:忙しい学生さんでも、最近のヒジャブファッションのトレンドには気を配っているんですか?

サフィヤさん:韓国人のムスリムインフルエンサーが、スカーフとヒジャブをミックスして着けているのを見て、おしゃれでユニークだなと思いました。それと、ヒジャブにヘアピンをつける人も増えていますよね。すごく可愛いです。

谷口日菜子:確かに、大きな飾り付きのヘアピンをしている子はよく見ました! ちなみに、サフィヤさんのお気に入りのアレンジはありますか?

サフィヤさん:ゴールドのヘアクリップを、後ろの方で留めるスタイルが好きです。上品で、大人っぽく見える気がします。

谷口日菜子:なるほど……! さりげないアクセントになって可愛いですね。そういう工夫をすれば、宗教とファッションのバランスって難しくないものなんでしょうか?

サフィヤさん:そんなに難しくないと思います。髪を隠すというルールを守りながら、現代ファッションを選べばいいだけなので。ロングスカートや長いワイドパンツでも、普通に可愛いしおしゃれですよね。ムスリムだからといって、おしゃれができないわけじゃないと思っています。

谷口日菜子:暑さ対策はどうしていますか?

サフィヤさん:ヒジャブを着用する人向けに作られた「ヒジャブ用シャンプー」も販売されています。頭皮の蒸れや汗、におい、かゆみなどをケアしてくれて、使用感が爽快になる成分が配合されているんですよ。

谷口日菜子:そんな商品があるんですね! ちなみに、家を出るときの準備に時間はかかりますか?

サフィヤさん:ぜんぜん時間はかかりません。だいたい10秒くらいで準備できます(笑)。後ろでポニーテールをして、そのままヒジャブを身につけるだけです!

谷口日菜子:えー! 髪のセットだけでも時間がかかって大変なのに、10秒は凄いですね。

①気軽さ
②快適さ
③服とのマッチ具合

ヒジャブ女性のファッションは、これらの要素がかなり重要視されているのかもしれませんね。

インタビューの結果、ヒジャブは現代ファッションと宗教的な装いが両立している存在であることが分かりました。

こうしたファッションの一部としての広がりが、前述した「ヒジャブコスプレ」に繋がるようです。


新たな発見! 若者の間で広がる「ヒジャブコスプレ」

マレーシアでは、アニメや漫画が非常に人気で、一年を通してアニメに関するイベントが多く開催されています。そんな中、近年SNSなどを中心に注目されているのが、ヒジャブを使った「ヒジャブコスプレ」です。



ウィッグの代わりにヒジャブの巻き方を工夫して、髪型を表現したり、キャラクターの衣装カラーに合わせてヒジャブを選んだり。信仰を大切にしながら、好きなキャラクターの世界観を表現するスタイルです。

マレーシア滞在中に参加したアニメイベントでは、ヒジャブコスプレを楽しむ若者の姿も見られました。素敵なヒジャブコスプレをしている方にお話も伺いました!



谷口日菜子:こんにちは! なんというキャラクターのコスプレをしているのですか?

Cさん:崩壊:スターレイルのアナイクスのコスプレをしたのですが、公式のキャラクターデザインそのままではなくて、私のスタイルでカジュアルアレンジにしてみました!

谷口日菜子:自分らしさがあっていいですね! 工夫したポイントはありますか?

Cさん:彼が身につけているようなアクセサリーと、自分のクローゼットにある服を使って、マフィア風とか王子様っぽい雰囲気にしてみました。

谷口日菜子:自分が持っているものでコスプレができるのは、気軽に楽しめていいですね。ヒジャブの形にも、なにかこだわりはあるのでしょうか?

Cさん:私は基本的に、キャラクターの髪型にできるだけ近くなるようにヒジャブのスタイルを工夫しています!

キャラクターへのリスペクトとクリエイティビティが光るコスプレでした。こちらにも素敵なコスプレをしている方がいらっしゃったので、取材をしてみました。


左: スプラトゥーンのホタル(英名:マリー)

谷口日菜子:会場でもすごく目立っていたので、思わず声をかけました! ヒジャブコスプレでこだわるポイントを教えてください!

Iさん:1番大事なのはコスチュームのアクセサリーだと思います。これがないと、そのキャラっぽく見えなくなってしまうので。

谷口日菜子:キャラクターの特徴をしっかり捉えた工夫がされていますね。ヒジャブを結んでリボンのような形にしている部分も、おしゃれでいいなと思いました!

イベント会場で出会ったヒジャブコスプレイヤーは、それぞれのスタイルで表現を楽しんでいるように見えました。


マレーシアとヒジャブ文化の関係性ってなに? 専門家に聞いてみた!

ヒジャブコスプレのように新しい楽しみ方が生まれる一方で、マレーシアではヒジャブは宗教が社会や政治とも深く結びついてきた存在でもあります。こうした文化的な広がりは、マレーシア社会の中でどのような意味を持っているのでしょうか。

そこで、東南アジアおよびオセアニア地域の諸問題について研究を行う、近畿大学 国際学部 国際学科 グローバル専攻の畝川 憲之(せがわ のりゆき) 先生にお話を伺うことにしました!



畝川憲之(せがわ のりゆき)
近畿大学 国際学部 国際学科 グローバル専攻 教授
専門:国際関係

東南アジアおよびオセアニア(太平洋島嶼)地域の諸問題を研究している。特に国家建設に焦点を当てており、東南アジア諸国の民族問題、島嶼諸国の経済開発、援助および外交関係を分析対象としている。
教員情報詳細

谷口日菜子:本日はお時間をいただき、ありがとうございます。先生のご専門である東南アジアの政治の視点から、色々教えていただけたら嬉しいです。

畝川先生:こちらこそよろしくお願いします。

谷口日菜子:現地に行ってみて、マレーシアでは宗教が民族や国家と強く結びついているように感じました。その中でヒジャブはどんな役割があるのでしょうか。



畝川先生:ヒジャブは、マレー民族としてのアイデンティティ的存在であり、マレーシア社会の構造を反映しています。ヒジャブを身につけることで、多文化社会の中でのマレー人としての誇りや個性を見出すことができるのではないでしょうか。

谷口日菜子:なるほど! 多民族国家ならではですね。インドネシアやシンガポールはマレーシアに近い地域ですが、ヒジャブや宗教に対する考え方に違いはありますか?

畝川先生:国ごとに宗教観は大きく異なると思います。シンガポールは中華系の民族が多く、ヒジャブを付けている人はマレーシアよりも非常に少なくなっています。一方インドネシアにはジャワ人やスンダ人など多様な民族が暮らしており、その多くがイスラム教徒ですが、キリスト教など他宗教の信者も一定数います。イスラーム教への捉え方が若干違います。また、同じマレーシアの中でも地域によって宗教への寛容さに差があります。

谷口日菜子:クアラルンプールのような都市部では、イスラーム教徒でも普段はヒジャブを着けていない友人がいます。また、ヒジャブでアニメのコスプレをしている方を見かけて、驚きました。こうした表現は、現代社会の考え方の変容と関係があるのでしょうか?

畝川先生:関係あります。若者の間で自己表現に対する寛容さが広がっていることを示していると思います。ただし、その宗教的規範を大幅に超えることは今後もないでしょう。



谷口日菜子:確かに、普段ヒジャブを着用していない友人も、親戚の集まりや大事なイベントではヒジャブを着用しているようです。

ヒジャブをファッションアイテムの一つとして楽しむ若者も増え、そこから少しずつ価値観の変化も見えてきていることが分かりました。ヒジャブを通して考えることは、マレーシアの話であると同時に、私たち自身の「自分らしさとはなにか」を考えるきっかけにもなりますね。


私が感じたマレーシアのヒジャブ文化

クアラルンプールのツインタワー

今回の取材で、マレーシアのヒジャブ文化は主に3つの要素によって構成されていると感じました。

①宗教的要因(イスラームの教えに基づく信仰実践)

②社会的要因(多民族・多文化社会における周囲との関係性)

③自己表現的要因(自分らしさやアイデンティティを示す手段)

これらが重なり合うことで、マレーシアのヒジャブ文化は単なる制約ではなく、その枠組みの中で自らの意思で身に着けられる、自由な自己表現の手段となっているのではないでしょうか。どんなヒジャブを選ぶのか、そもそも着るのか着ないのか、その選択には「自分はなにを大切にしたいのか」という気持ちが反映されています。

留学中に気になりながらも一歩踏み出せずにいた疑問を、取材を通して自分の言葉で確かめることができました。ヒジャブは宗教や価値観に深く関わるテーマであるからこそ、自分の無知さゆえに「失礼に当たってしまうのではないか」という不安もありました。

しかし、実際には現地の方々への取材やアンケートを通して、「自国の文化を知ろうとしてくれて嬉しい」と言っていただく機会が多くありました。その経験から、グローバルな知見を学ぶ立場にある私たちだからこそ、自然に向き合うべきなのだと強く感じました。

またマレーシアを訪れる機会があれば、ヒジャブ用シャンプーも実際に体験して理解を深めたいと思います!


この記事を書いた人
谷口 日菜子 (たにぐち ひなこ)
近畿大学 国際学部 国際学科 グローバル専攻 3年
エスニック料理が好きで、趣味はTBS Podcast「安住紳一郎の日曜天国」を聴くこと。大学ではアメリカ留学とマレーシア交換留学を経験。夢は、7大陸すべてに上陸すること。現在、残り4大陸に挑戦中。

編集:人間編集舎

この記事をシェア

  • facebook
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • x

ランキング

新着記事

ランキング

全部見る

新着記事

全部見る

MENU

FOLLOW US

  • facebook
  • x
  • instagram
  • youtube
  • tiktok
  • line