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国際交流

2019.10.25

韓国に行くのは危険?1年の留学を終えた3人が語る「日韓報道」のギャップ

Kindai Picks編集部

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韓国
留学
国際学部
オリジナル記事

今、ニュースでは毎日のように「日本と韓国の関係が悪化している」と報道されています。各メディアでは韓国の不買運動や反日デモの映像が流れ、政府間にも友好的なムードは感じられません。最近は韓国からの観光客が減り、両国間の航空便数が大きく減ったことも話題になりました。今の韓国は日本人にとって危ない場所で、韓国旅行や留学は控えるべきなのでしょうか。そこで「実際の韓国ってどうなの?」という疑問に答えてもらうため、2016年~2019年に1年間の韓国留学を経験した、国際学部 東アジア専攻 韓国語コースの学生3人に話を聞きました。

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3人の学生

国際学部では、全員が1年次後期から2年次前期まで留学します。3人ともソウルの慶熙(キョンヒ)大学校で韓国語を学びながら文化交流を経験しました。3人の留学時期と主な活動はこちらです。

小林可奈子(4年生)
留学期間:2016年9月~2017年8月
2019年7月、内閣府主催「日韓青年親善交流のつどい」に実行委員として参加

川内淳平(2年生)
留学期間:2018年9月~2019年8月
留学中、韓国の学生や社会人によるサッカーチームに参加

島村菜々子(3年生)
留学期間:2017年9月~2018年8月
2019年8月31日~9月11日まで釜山外国語大学校で実施された日本語教育実習に、国際学部の「海外体験プログラム」にて参加

座談会には、韓国語教育が専門でソウルに10年滞在されていた、国際学部 国際学科 東アジア専攻の酒勾 康裕(さかわ やすひろ)准教授にも同席してもらいました。



まわりからは「なんで韓国?」と言われた


ーーまず、みなさんが韓国語を勉強しようと思った理由を教えてください。


中学生の時にK-POPにハマって。あのキラキラした世界観が好きで、「歌詞やアーティストの話している内容が分かるようになりたい」と思ったのがきっかけです。


私も同じです!BIGBANGが大好きで、日本で何度もライブに行くうちに、韓国人のBIGBANGファンと友達になりました。でも、お互いに言葉が分からないので「グループの誰々が好きです」ぐらいの簡単な会話しかできなくて。もっとファン同士の深い話がしたいし、仲良くなりたいから、じゃあ韓国語を勉強しようと思いました。


僕は2人とは違って、そこまで韓国文化に興味があったわけではないんです。進路を考えたときに、ぼんやりとですが観光業で働きたいなと思って、それで新しい言語を学ぼうと。「韓国語は日本語と文法が似ていて学びやすい」と聞いて、韓国は近くて観光客も多いし役に立つんじゃないかと思いました。


談笑する学生3人


ーー進学で韓国語コースを選んだ時のまわりの反応はどうでしたか?


両親は特に何も言わなかったですが、親族とか、親より上の世代からは「なんで英語じゃないの?」と言われました。「英語の方が便利じゃない?」みたいな。


うちは、親は「やりたいことをやったら」という感じだったけど、まわりからダイレクトに「なんで韓国?」って聞かれました。年配の人だけじゃなくて、親と同世代の人から言われたこともあります。

私に言ってきた人も、単純に英語と比較したんじゃなくて、色んな心情を含んでの「なんで?」だったと思います。



僕は進学の時に何か言われるとかはなかったけど、留学した2018年はネガティブなニュースが増えてきた頃だったので、両親は留学先での生活を少し心配してました。


ーー留学する前の韓国のイメージはどうでしたか?


私は、高校1年生の時に母と韓国旅行に行ったことがあるんです。行く前はK-POPの映像に出てくるような、キラキラしたおしゃれなイメージを持っていたので、現実とのギャップに驚きました。


確かに、K-POPはめちゃキラキラしてる(笑)。




実際には道がけっこう汚かったり、思った以上に食べ物が辛かったり。想像してたのと違う!とショックでしたが、「もう行きたくない」とは思わなかったですね。人が優しくて、いい思い出もいっぱいあったので。


私は小学校が在日韓国人の多い地域にあり、クラスにも韓国人の友達がいて、日本とか韓国とか意識することなく一緒に遊んでいました。だから留学も、特に「韓国はこう」という先入観なく行って、現地で起こったことをそのまま受け入れていった感じです。


川内くん


僕は海外に行くこと自体初めてだったけど「行けばなんとかなる」と思い、留学準備の授業で習ったこと以外は何も調べずに行きました。でも親はすごく心配していて、最初の頃は毎日LINEが来ました。日本のニュースでネガティブな面ばかり見てしまったんだと思います。でも、僕は韓国で親切にしてもらっていたので、親が見ている情報と実際の韓国は全然違うなと思っていました。



我々が嫌っているのは日本政府であって、日本人ではない


韓国のサッカーグループ
川内さんが韓国留学中に参加していた学生や社会人が集まるサッカーグループ


ーー川内さんが留学していた2018年9月~2019年8月は、ちょうど日韓の関係が大きくニュースになっていった時期でしたね。現地の人と何か話をしましたか。


留学中、韓国の学生や社会人が集まるサッカーグループに参加していて。いつもはサッカーの話ばかりなんですが、あるとき「今、日韓のことをニュースでやってるけど、日本でもけっこう報道されてるの?」と聞かれました。でも世間話として話題になっただけで、そこから議論になるとかはなかったです。


私は今年の8月31日から9月11日まで、国際学部の「海外体験プログラム」に参加するため釜山にいました。ちょうど韓国からの観光客減少で航空便が減っている最中だったんですが、日本人観光客を普通に見かけました。ある日、グループで歩いていたらおじいさんが話しかけてきて「日本から来たの?こんな時期にようこそ!我々が嫌っているのは日本政府であって、日本人ではない。韓国はあなたたちを歓迎します」と言われました。


人は今も変わらず親切ですよね。




島村さん


そうそう。国同士は色々あるけど、現地の人は優しかったです。でも、去年の11月に韓国から女の子2人がホームステイに来たんですが、「あなたのお母さんやおばあちゃんは私たちのことどう思ってるの?」とすごく心配していました。ちょうど色々と報道され始めた時期だったので。

私も最近、日本でネガティブなニュースを見ていたら不安になってきて、韓国の友達に「これからも仲良くしてくれるよね?」ってメッセージを送ってしまいました。そしたら「何言ってんの、当たり前でしょ」って笑われて(笑)。


僕のまわりでも、韓国の若い人はあんまり気にしてない、関心がない感じがしました。



友達より、その子の親が「もう日本人と付き合ったらダメ」と言ってたらどうしようと思ったんです。ずっと親切にしてもらってたけど、気持ちが変わってるかもしれないって。無用な心配でしたけど(笑)。


私は今年の7月、内閣府主催の「日韓青年親善交流のつどい」に実行委員として参加しました。そこで日本人と韓国人が日韓関係について話しているのを見たんですが、今の状況を踏まえてお互いに刺激しないよう、意識して冷静に話そうとしているのを感じました。



報道の切り取り方とデモに対する意識の違い


日本料理店に貼られていたボイコットジャパンの貼り紙
韓国順天市内の日本料理店に貼られていたボイコットジャパンの貼り紙(2019年8月撮影)


ーー様々な報道が続く中で、韓国への印象が変わることはありましたか。


私は日本の報道だけではなく、韓国の報道も見ています。なので日本のニュースだけで韓国の印象が変わるということは、あまりないですね。

日本の報道では日本の主張する意見が前に出てきますし、同じように韓国の報道では韓国側の主張が大きくなります。どの国でも、多かれ少なかれそういう報道の仕方はあるんだと思います。

どちらが悪いではなく、それぞれの国に異なった主張があることを認識した上で、考えていく必要があるなと。なので日本と韓国、両方の報道を見て判断するように心掛けています。


テレビが誇張して取り上げている気がします。留学中、ネットで日本のニュースを見ていたら「韓国で日本製品の不買運動が激化している」と報道されていました。確かに不買運動をしている人はいるし、駅に垂れ幕が貼ってあるのも見たけど、スーパーでは日本の商品が普通に売られていました。日本でも韓国でも、お互いに煽った報道になってきていると感じます。


日本政府に対するデモのことも、けっこう報道されていましたよね。実際に日本に対するデモはあるので嘘じゃないですが、切り取り方によっては韓国人全員がそれに参加しているように見えてしまう。本当はそうじゃないのに、やりすぎてる感じはします。


話す小林さん


そもそもデモに対する考え方が、韓国と日本ではちょっと違います。私が留学していた2016年当時は、朴槿恵(パク・クネ)前大統領に対する大規模な「ろうそくデモ」が行われていました。日本の家族や知人にはすごく心配されたけど、よく考えたら「韓国政府へのデモなのに、なんで私が心配されるのかな?」と。

※2016年10月以降、ソウルでは朴槿恵大統領(当時)の辞任を求め、ろうそくを持った人々が集まる数万人規模のデモが毎週行われていた

僕も今の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対する大きいデモを見たことがあるけど、平和的に行われていて危ないとは思わなかったですね。


当時も、韓国では「デモで自分たちの考えを主張したぞ!」とポジティブな報道だったんですが、日本では「こんなに大きいデモが起こるなんて危険」と思われているのを感じました。日本でデモに参加する人ってほんの一部ですし。


韓国での前大統領退陣要求デモの様子
韓国ソウル市内での前大統領退陣要求デモの様子(2016年11月撮影)


政治の話とかし難い雰囲気もありますよね。




留学中、前大統領に対する小さめのデモを見に行ったとき、参加者からろうそくとスープを渡されて「どうぞ、ご一緒に」と誘われました。「私は外国人なので選挙権もないですし、大丈夫です」と断ったら「でもあなたも韓国に住んでいるんだから、参加する権利はありますよ」と言われてハッとしました。けれど参加はせず、そのまま遠くから少し見たあとその場を去りました。



「韓国人ってこうなんだ」という思い込み


島村さんと酒匂先生


ーー今、日本人の韓国に対するイメージをどのように感じますか。


同世代の友達にも韓国が好きじゃない子はいますね。あまり興味がある感じでもないんですが、テレビや身近な人から韓国に対するネガティブな話を聞いて、そういうイメージになってるのかなと思います。


私も、ニュースなどの間接的な情報で悪いイメージを持たれることが多いと思います。最近はそれに加え、日本が観光客をたくさん呼んでいる中で、実際の韓国人を見てさらにイメージが補強されているのかもしれません。

私は外国人観光客の多い地域でアルバイトしているんですが、中には日本のルールやマナーを知らない人や、知っていても守らない人がいます。それを見たとき、相手が日本人だったら「あの人はそういう人なんだ」で終わるけど、韓国人だと「韓国の人みんながそうなんだ」と思いやすいんですよね。


日本と同じように、韓国にも色んな人がいるのに。




そういう「韓国人ってこうなんだ」という思い込みと、ニュースで見たネガティブな印象とが合わさってしまうのかなと思います。

でも、文化の違いやマナーに対する考え方って、年代によってどんどん変化するんですよ。数年前の記憶を元に韓国について話してる人と、昨日韓国に行った人との話は一致しません。文化のずれに加えて、それぞれの記憶の時期のずれもあるんですよね。


話す学生3人


ーー反対に、韓国の人が持っている日本のイメージはどう感じましたか。


日本に興味がある人なら、いいイメージを持っていることが多いですね。反対に興味がない人は、昔の歴史からよくないイメージを持っている人もいます。


僕の友人は、観光客が行かないような食堂で日本語で話していたら、酔っぱらったおじさんに絡まれたそうです。



酔った勢いで話題になることは割とあると思いますよ。居酒屋で「日本はさ~」ってネタにされてる感じ。



あるある(笑)。




本気でそう思っているというより、その場の流れで日本を話題にする感覚かなと。



私は韓国語を話すので、ある程度「韓国に理解がある人」だと思われるから、直接ネガティブなことを言われた経験はないんです。私という個人と、国の問題とは分けて考えているんじゃないかと。国のことを話題にして、個人の友人関係が崩れるのは嫌だから話さない人もいると思います。



国の関係は変わっても人と人の関係は変わらない


話す小林さん


韓国には「ウリ」という文化があります。「ウリ」の輪に入れたら、情を持ってすごく優しく接してくれる。



そうそう。内輪になる、身内になるみたいな感覚。




私は留学をして韓国のことを理解していると思われているので「ウリ」に入れてもらいやすいんです。

でも、「ウリ」の中では優しくしてくれる人も、「日本について好意的に思っています」と大きな声では言いづらい雰囲気を今の韓国に感じます。社会が友好的な空気にはなっていない。


日本でも今、韓国のいい部分を言いづらい空気がありますよね。




韓国の中でも日本に対する考え方が分かれてきていると思います。「国同士の問題と個人的・文化的な交流は区別して日本と付き合っていこう」という層と、全部を一体化してとらえている層が、世代に関係なく存在しています。

韓国では、海外留学する学生数が日本の2倍以上います。外から韓国を見たり、留学先で日本人と交流したりして「今まで受けてきた教育や国内の空気を、そのまま受け入れていいのか」と考える人が増えているのでは。だから層が分かれてきたんじゃないかと思います。

※2017年年度の韓国からの留学生数は23万9824人(出典:[2018 교육부] 해외 한국인 유학생(대학) 통계(교육통계서비스 공식 블로그))。一方、日本人学生の海外留学状況は2017年度で 10万5301 人(出典:「外国人留学生在籍状況調査」及び「日本人の海外留学者数」等について(文部科学省))。



お互いのために個人ができること


話す川内くん


ーー今後、日韓関係がどうなるか分からない中で、個人では何ができると思いますか。


僕は、今後もスポーツを通した交流を続けていきたいです。韓国でサッカーをきっかけに色んな人と出会えたのは大きな経験でした。今年、U-18のベースボールワールドカップが韓国で開催された時、韓国と日本の人が一緒に写真を撮っている姿がどちらの国でも報道されていました。そういうポジティブなニュースが増えれば、社会の空気も変わっていくと思います。


私はやっぱり、メディアに踊らされず、自分の経験を元に考えていくことが大事だなと。韓国に行ったことがない人も、日本の報道が全てではなくて、他の側面もあることを頭の片隅に置きながらニュースを見てほしいです。


私は韓国語を学ぶことで、情報が多角的に得られるようになりました。だから、英語が分かる人は日韓問題が海外でどう報道されているか見てみるなど、外からの情報を集めることも大切だと思います。


ーー最後に、これから韓国に留学したいと思っている人にメッセージをお願いします。


談笑する4人


今の状況を気にしすぎず、やりたいことをやればいいと思います!気にしていても始まらないし、何も得られないまま機会を失ってしまうかもしれない。だから、やりたいことをやるのが一番いいと思います。


「知りたい」とか「学びたい」という気持ちに素直に行動してほしいです。まわりから色々言われるかもしれませんが、それでも人生に影響を与えてくれる何かを見つけるためには、行動していくしかないので。


メディアや他人の言葉に影響されてやめちゃったら、あとあと「なんでしなかったんだろう」と後悔するかもしれません。結局は自分の目で見たものが一番信じられるので、実際に見てみることが本当に大事だと思います。


酒勾准教授


―― 最後に、国際学部の酒勾准教授からコメントをいただきました。


約1年間の留学を通じ、学生の韓国語能力の向上はもちろん、その後も様々な面で成長が見られ、私自身も常に学生から多くの刺激を受けています。
国際学部の韓国留学では語学学習に多くの時間を割きますが、現地の授業では世界各地から来ている留学生同士の交流も活発に行われています。今回の座談会を見ていると、留学中の多様な経験が元になりそれぞれの考えが冷静かつ素直に語られていたようです。

私たちにいつも通りの暮らしがあるように、韓国にもそこに住む人々の普段通りの生活があります。報道ではその普段の部分よりも学生の言葉にもある通り、一部の出来事が大きく取り上げられていることで、いつもの様子が見えにくくなっているかと思います。

旅行などで韓国を訪れた方からは行く前のイメージとは違っていたという話も聞かれます。距離が近い分、機会があればすぐに行ける外国であるため、実際に見聞きすることで自身にとって新たな考えも生じると思います。特に以前から韓国に興味のある方はいつも通り勉強や趣味活動を続けることでこれまであったような新たな発見や驚きがあり、韓国をより深く理解していくことでしょう。

韓国での経験を今後どのように生かしていくのか、引き続き見守り続けつつ、時には学生と共に様々な形で韓国の多様な面を伝えることができればと思います。


―― 酒勾准教授、国際学部東アジア専攻のみなさん、ありがとうございました!


韓国に興味がある人、これから韓国へ行ってみたい人にとって、励みになる内容だったのではないでしょうか。

今すぐ社会の空気を変えることは難しくても、日本と韓国、両方で交流を続けている人たちはいます。

もしニュースを見て不安になっても情報を鵜呑みにせず、座談会に参加してくれた3人のように、日韓問題と個人とを分けて考えてみてください。そして機会があれば、ぜひ自分の目で「韓国って実際どうなの?」と確かめに行ってもらえたらと思います。


(終わり)


文:ヒトミ☆クバーナ
企画・編集:人間編集部

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