2023.04.12
「国際ロマンス詐欺」が若者の間で急増中?SNSで恋活や人脈作りを匂わせる最新手口の見分け方
- Kindai Picks編集部
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恋愛感情につけ込んでお金を騙し取る「国際ロマンス詐欺」。最近では、憧れの海外アーティストになりすまして近づいてくる手口も? 大学生にとって身近なSNSやマッチングアプリには、手軽さを悪用した多くの危険が潜んでいます。そこで、迷惑メール評論家のGO羽鳥さんと、経営学部の鞆大輔先生(専門:情報倫理、アプリケーション構築)に、被害者にならないための対処法を伺いました。
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近年、増加している「国際ロマンス詐欺」とは
こんにちは。フリーライターのオカジマアヤノです。早速ですが、みなさんは国際ロマンス詐欺をご存知ですか?
SNSやマッチングアプリなどで知り合った海外の相手に恋愛感情を抱かせ、投資に誘ったり、渡航費を要求したりしてお金を騙し取る特殊詐欺のことです。
出会い系サイトやマッチングアプリに関する年度別相談件数
出典:国民生活センター越境消費者センター(CCJ)「ロマンス投資詐欺が増加しています!-その出会い、仕組まれていませんか?-」における、出会い系サイトやマッチングアプリに関する年度別相談件数
近年、この詐欺被害が急増しています。映画『アベンジャーズ』シリーズでハルクを演じたマーク・ラファロになりすました詐欺師に騙され、7500万円もの大金を失い多額の借金まで背負った女性漫画家の井出智香恵さんの一件は、大きく世間を騒がせました。国民生活センターへの相談件数も年々増加していますが、恥ずかしさや精神的なショックから専門機関への相談に至らない人も多いとも言われています。
SNSやマッチングアプリが急速に普及して、世界中の人々とスマホ一つで交流できる現代。大学生にとっても、国際ロマンス詐欺は遠い世界の話ではないのです。
もしあなたの元に、大好きなBTSのメンバーだと名乗る人からメッセージが来たら? 本人でなくとも、「BTSに会わせてあげる」と誘われたら?
実際に、BTSのジョングクになりすました男性に、300万円を振り込んでしまった日本人女性の事例も話題になりました。
初めは怪しいと思っていても、毎日メッセージを重ねていくうちに信頼や期待を寄せてしまう……。人の感情につけ込む悪徳詐欺師たちから、どうやって身を守ればいいのでしょうか。
そんな詐欺に遭わないための対処法を知るべく、迷惑メール評論家のGO羽鳥さんと、経営学部教授の鞆大輔先生にお話を伺いました。
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詐欺の最新手口を専門家に聞いてみた
別名、マミヤ狂四郎。東京都出身。ロケットニュース24編集長・漫画家・迷惑メール評論家・100均評論家。漫画もイラスト記事もコラムも書けるオールマイティー型。生粋の日本人だが、多少のマー語(マサイ語)を操る。趣味は料理で、調理師免許も所持。
鞆大輔(とも だいすけ)
経営学部経営学科 教授/MIPS演習科目主任
専門:情報倫理、アプリケーション構築
ネットでの炎上問題や不正アクセス、個人情報漏洩などの情報倫理問題を利用者視点から研究。PBL形式による学生主体の産学連携プロジェクト実施実績も多数あり。
教員情報詳細
勧められたアプリはインストールしないで!
羽鳥さんは、実際に国際ロマンス詐欺師とコンタクトを取っていますよね。なにがきっかけで連絡を取るようになったんでしょうか?
▼GO羽鳥さんが過去にロケットニュース24で書いたロマンス詐欺に関する記事
昨日のクロアチア戦で「海外のサッカーくじで日本に1万USドル(約137万円)賭けた」という国際ロマンス詐欺師に今の気持ちを聞いてみた結果…
国際ロマンス詐欺に「おじさん構文」で対抗したら強すぎて震えた
シンガポール在住の女社長と名乗る詐欺師が、Instagramで私のアカウントにDMを送ってきたのがきっかけです。TwitterやFacebookなど使用されるSNSはさまざまですが、LINEでのやり取りに誘導するのが最近の傾向だと感じます。
どんなメッセージがくるんですか?
「お友だちになりたい」とか「出会いを求めてる」とか、唐突なものばかりですね。私は詐欺の実態を調査するために、わざと引っかかりにいっていますが。
詐欺師になにか共通点はありますか?
女性の場合、ほとんどがアジア人で、シンガポールやマカオなど比較的富裕層が多い地域に住んでいると謳う人が多いですね。
たしかに富裕層が集まるイメージがあります。彼らの目的はやはりお金なんでしょうか?
お金だと思います。私以外のロケットニュースの編集者たちも調査してるんですが、みんな同じパターン。ある程度やり取りをしたら仮想通貨の話をしてきて、取引専用サイトのURLを送ってきます。ログインするときに必要なアカウントを作るために、パスポートの写真と番号、住所や口座番号を送信させようとすることもあります。
アカウントを作る名目で、個人情報を抜き取ろうとするんですね。
儲けを得られると誘ってくる詐欺の手口では、このようなやり取りも(GO羽鳥さん提供)
別のパターンでは「あなたに7000万円をあげます」といきなりメッセージが来たり。送金するための手数料、セキュリティの解除方法として、7000円とか少額を振り込ませる手口もあります。
冷静に考えたら7000円でも高いけど、大金に目が眩んで振り込んでしまう人もいるのかな……。とにかく怪しいサイトは開かないほうがいいですね。
もっと危険なのは、取引のためにアプリをインストールさせる手口です。一般的にパソコンよりスマホのほうが、セキュリティ対策の意識が低いことを悪用しているんです。
鞆先生にもお聞きします。スマホでアプリをインストールしても、パソコンのようにウイルス感染してしまうんでしょうか?
ウイルス感染というよりも、そのアプリ自体が悪さをします。アプリそのものがマルウェア※で、スマホ内のデータを勝手に抜き取ったり、取引を行ったり。よくある事例として、アプリを立ち上げたときにエラーが出たため削除したつもりが、実際には削除されておらず、表には見えないところで悪さをし続けているものがあります。アイコンが消えたからといって、必ずしもアンインストールされたわけではないんです。
※マルウェア:ユーザーが使用するデバイスに有害な動作を行う意図で作られたソフトウェア・コードの総称。
ええ、それは怖いですね。不正なアプリは「App Store」や「Google Play」などの、公式ストアではないところからインストールさせられるんでしょうか?
基本的にはストア外からだと思いますが、そのような不正アプリも、審査されるまでの数日だけ公式ストアに載っていることがたまにあります。だれかが公式ストアに通報すると削除されますが、削除されるまで1日でもあると、インストールができてしまう。ユーザーが星の数やコメントでアプリを評価している口コミは案外重要なので、インストールする前に確認するのがいいですね。
ターゲットに合わせて変わる詐欺師の姿
最近増えている詐欺師の人物像は、20代や30代の比較的若い韓国人の投資家や経営者、医者などが多いようです。羽鳥さんや周りの方々が連絡を取ってきた詐欺師はどうでしょうか?
私や周りの場合は、ほとんどアジア圏の女社長やCEO、軍隊の長とかもいますね(笑)。性別や年齢など、ターゲットに合わせて人物像を作り上げてくるんだと思います。
一昔前は、国際ロマンス詐欺といえば中高年の女性が引っかかるパターンが大半で、詐欺師の人物像も欧米のダンディなおじさまが多かったですが、それでは最近の若い女性は振り向かない。詐欺師もデータを取っているはずなので、時代に合わせた勝率の高いパーソナリティを繰り返し使っている可能性が高いです。国際ロマンス詐欺は、集団で行っている場合がほとんどで、台本やキャラクター設定などのマニュアルが整備され、こまめにアップデートされている組織がお金を稼ぎ続けているんだと思います。
InstagramでK-POPアイドルをフォローしている人が、韓国人になりすました詐欺師に狙われやすいと聞いたことがあります。
ターゲットの選別方法として大いにあると思います。非公開アカウントにしたり、見知らぬ人からのフォローリクエストやメッセージを受け入れないことが大切ですね。
デジタルネイティブ世代は「まさか自分が騙されるなんて」と思ってる人が多いかもしれません。そのなかでも、どんな人が騙されやすいんでしょうか?
SNSのDMだと、ほとんどの人が騙されないと思いますが、マッチングアプリだとどうでしょう。出会いを求めて、メッセージをもらうために利用してますよね。マッチングアプリに登録している人は常に相手からのコンタクト待ちなので、詐欺に引っかかりやすい状況に身を置いているようなもの。他人とやり取りするのが当たり前の状況で、言葉巧みに操られたり、情にほだされたりして、騙されやすくなってしまいます。
たしかにマッチングアプリでは、怪しいっていう感覚が薄まってしまいそう。大学生など若者に多い被害事例として、セクストーション※もありますよね。
※セクストーション:sex(性的な)とextortion(ゆすり、恐喝)を合わせた造語。相手に送らせたり、ビデオ通話内で撮影したりした裸の画像を知り合いにばら撒くと脅し、金銭を要求する行為。
他人に見られるとまずい画像は絶対に送ってはいけません。ビデオ通話をするにしても、録画されても問題のない内容でないとだめです。
引っかかってしまった場合、「お金を振り込まないと、友だちみんなにばら撒くぞ」と脅されるケースが多いそうです。
入金してしまうと、カモだと思われてお金をどんどん要求される可能性があります。カモリストとしてずっと相手側に情報が残ってしまいますし、まず払ったからといって消してくれる確証はないですよね。決して応じないことです。
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長い時間をかけてくれるのは、確実に騙したいから
最近の国際ロマンス詐欺師の特徴はありますか?
一人に対して長い時間をかけるようになっていますね。SNSがない時代の迷惑メールなどは仕掛けが早かったですが、最近の国際ロマンス詐欺は1ヶ月やそれ以上にわたる長い時間をかけ関係性をとにかく育てて、ここぞというときに投資やネットショッピングの話や、お金を借してほしいと持ちかけてきます。
GO羽鳥さんと国際ロマンス詐欺師の実際のトーク画面(GO羽鳥さん提供)
羽鳥さんと詐欺師のやり取りを見ると、相手からの返信も1分後とかで早いですよね。自分に関心があって時間をかけてくれているんだと、それを恋愛感情だと勘違いして「この人の言うことなら信用できる」と思ってしまう人もいそうです。時代がデジタル化して、SNSから交際に発展することがごく普通のことになっているのも、詐欺の手法の変化に関係しているんでしょうか?
それもあるでしょうね。コロナ禍でより一層、オンライン上での出会いが当たり前になったと思います。さらに、AIのコミュニケーション能力が高まっていることで、この先もっと恐ろしいことが起きるかもしれません。数ヶ月間、AIに恋愛感情を思わせるようなやり取りをさせておいて、いいタイミングでお金の話をさせるとか。
AIに騙される未来、怖すぎる……。
国際ロマンス詐欺は相手が外国人なので、日本語が不自由でも怪しいと思わないんです。むしろ、たどたどしさが出ているほうが、必死に日本語で話そうとしてくれている感じがするじゃないですか。だから、話している相手がAIだとしても気づかないかもしれない。
それはSNSやマッチングアプリのプロフィール画像にもいえることで、今ではAIを使って架空のイケメンや美女の画像を簡単に作れてしまうので、実在するモデルや俳優の写真を悪用する必要がなくなるんです。だから、画像検索をしてもヒットしないことのほうが増えてくるはず。
詐欺に巻き込まれるかもしれない当事者意識を
そうなると、SNSやマッチングアプリをどう利用していけばいいんでしょうか……?
この手の詐欺に巻き込まれる前提で利用することです。
自分は大丈夫だろうじゃなくて、自分も巻き込まれるかもしれないと。
「詐欺に気をつけよう」と口で言うのは簡単ですが、いざ当事者になると気をつけようがないのが事実です。何度もやり取りをしている時点で相手の術中におちいっていますから。
恋愛関係ではなくても、語学や文化学習を目的に外国人の方との交流を求めている人が、騙されてしまう可能性もあるんでしょうか?
お金を貸してほしいと頼まれた場合、相手への感情がloveではなくlikeでも、純粋に助けてあげたいという気持ちが芽生えていればありえると思います。でも、もしお金に困っているなら、母国の家族や友だちなど、もっと身近に相談できる相手がいるはずですよね。会ったこともない外国人に頼むのは、よほど切羽詰まっているというか、おかしな状況です。
我に返るのも大事ですし、自分だけで考えるのではなくて、第三者に相談することが重要ですよね。
でも、半洗脳状態になってる人は、第三者に否定されると反発心が生まれてしまうこともあります。そのため、友だちが詐欺に巻き込まれていると思ったり、相談を受けたりした場合は、一緒に状況を整理して、被害に遭った人の考えを否定も肯定もしないことが大切です。また、自分も洗脳されてしまうリスクも少なからずあるので、専門家に助けを求めるのも解決策の一つでしょう。
自分たちだけで解決しようとしないことですね。
とにかく、オンライン上でやり取りしている相手からお金の話が出てきたら、きっぱり連絡を断ちましょう。お金の貸し借りにしても、儲け話にしても、知り合って1ヶ月の人とする話なのかを考えたほうがいいですね。春から新型コロナウイルス感染症への規制も大幅に緩和されます。大学生のみなさんはぜひ学校にきて、学生生活を謳歌するなかで友だちや恋人との関係性を築いてほしいですね。
おわりに
GO羽鳥さんと鞆先生にお話を聞いたことで、今や国際ロマンス詐欺は年齢を問わず、スマホを持つ人だれもが巻き込まれる可能性があるものだとわかりました。騙すためだけに時間をかけて嘘の関係性を築き、そこで生まれた恋愛感情や友情といった純粋な気持ちを踏みにじる悪徳詐欺。お金と時間を奪われるだけではなく、人を信じた心まで深く傷つけられてしまうものでもあります。
どんなに相手が好みなタイプでも、オンライン上でトークが弾んでも、実際にどんな人なのかは会ってみて親しくならないとわかりません。
被害者にならないために、SNSやマッチングアプリは詐欺に巻き込まれる前提で利用し、オンライン上で知り合った人から見知らぬアプリを勧められたり、お金を要求されたりしたらその時点で連絡を取るのをやめましょう。
この記事を書いた人
オカジマアヤノ
1999年、東大阪生まれ。近畿大学卒。人間編集部で執筆や編集を経験し、現在フリーで活動中。女性アイドルとフライドポテトが酸素。いつかフィンランドに住みたい。
企画・編集:人間編集部
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