2022.04.07
プログラミングって?デジタルが苦手なアンドロイドのお姉さんが「電子計算機研究会」に体験入部
- Kindai Picks編集部
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2020年から小学校の必修科目になったプログラミング。ゲームやアプリを開発したり、動画や音楽制作の現場でも欠かせない技術です。でも、慣れ親しんでいない世代からすると「何だか難しそう」と敬遠しがち。”実はデジタルが苦手”というアンドロイドのお姉さんSAORIさんが、プログラミングに触れるために近大の「電子計算機研究会」に体験入部しました。
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こんにちは、アンドロイドのお姉さんのSAORIです。
3DCG女子高生Sayaに似ているということや、2017年に行われた東京ゲームショウでアンドロイドのキャラクターを演じたことが話題になり、アンドロイドモデルとして活動しています。
最近は「散歩するアンドロイド」として、旅系のYouTuberもやっています。
そんな私には大きな悩みがありまして。
今まで、カネボウ化粧品「KATE」のCMでバーチャルヒューマンのimma&Riaと共演したり、ソフトバンクロボティクス株式会社が運営する「Pepper PARLOR」の紹介をしたり、PlayStationのゲームのプロモーションイベントに参加したり……AIやロボット、CG、ゲームなど、デジタルテクノロジーの分野に関するお仕事をいただくことが多いのですが……
実は……私
パソコンや電子機器に弱いんです!
そう、デジタルが苦手なんです!!
YouTubeの動画も自分で撮影して編集していますが、編集ソフトも最低限の機能しか使えません。アナログなアンドロイドなのです。
「デジタルに強いアンドロイドのお姉さんになりたい!!」
ということで、今回私がやってきたのはこちら。
近畿大学の「電子計算機研究会(Computer Study Group)」。
理工学部の情報学科や電気電子工学科の学生が多く集まるクラブで、プログラミングでゲームやアプリケーションを開発したり、3DCG、VR、AIなど、パソコンを使ったデジタル作品を作っているそうです。
計算も苦手だし、プログラミングとは……? という根本からよくわかっていない私ですが、デジタルに強くなるために、「電子計算機研究会」に1日体験入部させてもらいます。
DTMにVR……プログラミングで何ができるの?
左から實藤敬太くん、山本瑛悟くん、堀孝輔くん、小代翔大くんの4名が出迎えてくれました。
今日はよろしくお願いします。
ようこそ「電子計算機研究会」へ。
皆さんやっぱりデジタルに強いんでしょうか。
部員は105名いるんですが、授業でもITやデジタル技術を学んでいる学生が多いですね。でも、授業で学んでいること以外にも、それぞれの好きなことや得意分野を活かして、独学で作品を作ることが多いです。
独学で!
まずは、僕たちが作った作品を紹介しますね。
ということで、Oculus(オキュラス)のVRヘッドマウントディスプレイを装着。
まず紹介するのは、VRのボルダリングゲームです。右手と左手で岩を掴んで登っていくだけの簡単なゲームです。
ボルダリングか。これを掴んで登っていけばいい感じですね。
そう。右手を掴んだら、次は左手に届くところに……
なるほ……………え、落ちた。
体力のゲージがあるので、体力が0になる前にタイミングよく掴まないといけないんです。VRゲームは、ゲーム内での動きと現実の自分の感覚が微妙にズレて操作に手間取ることもあるので、感覚を掴むまでが難しいんですよね……。
あの、実はデジタルに弱いだけでなく、ゲームも苦手なんです……。
ジャンプするだけの横スクロールゲームもありますよ。
これならできそう。
あ、そこでジャンプ!
即死でした。
難しくないですか?
すみません、確かにこれは鬼畜ゲームの要素もある「死にゲー」なんですが、SAORIさんの場合、それすらもわからない冒頭で即死でしたね……。
・・・・・・。
まあ、僕らもゲームをプレイするのが得意なわけではないんですよ。ゲームのアイデアを考えたり、考えたことを実装することに意義があると思っています。
確かに、ゲームを考えるのは楽しそうです。これって、制作にどれくらい時間がかかるんですか?
このゲームはハッカソン※で制作したもので、4人で1ヶ月程度です。プログラムを組む時間より、テストプレイやバグの修正に20日くらいかかってます。
※ハッカソン:ハック(Hack)とマラソン(Marathon)を合わせた造語。プログラマーやデザイナーなどが集まり、短期間で集中的にチームでアプリやゲームの開発作業を行うイベント。
ハッカソン!名前なんてなかった さんの成果報告です!
— 近畿大学 電子計算機研究会 (@Kindai_csg) February 24, 2021
制作したのは俗にいう「死にゲー」。難易度調整やデバッグが非常に大変だったそうです!
その甲斐あってか、非常にいいゲームが完成したので是非遊んでみて下さい!
ゲームプレイはこちらから↓↓https://t.co/0Fe37cJ85W#CSG春HackR3 pic.twitter.com/mz01uxJMa2
VRゲームの3Dのグラフィックも全部一から作るんですか?
Unityという開発プラットフォームを利用して制作しているんですが、3Dのグラフィックは既存のものを利用したり、物理演算などはUnityに備わっているものを利用したりして制作コストを抑えています。場合によっては、グラフィックも部内で制作したり物理演算も自分たちで実装したりすることもありますけど。
物理演算……?
ゲーム内のオブジェクトを物理法則にしたがって動かすために、質量に対して重力や空気抵抗などの摩擦力を数値計算しているんです。例えばボールが地面に衝突してバウンドする動きとか、スカートや髪の毛の揺れなどあらゆるところに使われています。
デジタルに強くなるための体験入部のつもりが、逆に、デジタルに対する苦手意識が増長している気がするんですが……こんな私でもできることはないでしょうか?
好きなことから始めるといいと思いますよ。プログラミングは、DTM※や動画制作にも役立ちます。最近流行りのVTuberもモーションキャプチャ※などのデジタル技術を活用して、CGキャラクターのアニメーションをつけたり、人間の動きを解析してデジタルデータに変換しているんです。
※DTM:Desk Top Music(デスクトップミュージック)の略で、パソコンを利用した音楽制作手法の総称。
※モーションキャプチャ:現実の人物や物体の動作をデジタル化して記録する技術。
エナジードリンク系VTuberの香増院きまりちゃん。イラストやCGの制作、動画編集も電子計算機研究会のメンバーが行っている。
私自身が生身のアバターのような立ち位置なのでVTuberになりたいとは思いませんが、CGのキャラクターを動かす技術だと思うと身近に感じますね。
アバターを動かすだけでなく、動画にエフェクトやアニメーションをつけたりするのも、プログラミングが関わってくるんですよ。YouTuberの動画でも、切り替えやオープニングなどにモーショングラフィックスを使っている動画がたくさんありますよね。
なるほど。私は文字のテロップをつけたりモザイクをかけるくらいしかやったことないけど、もっと動画編集ソフトを使いこなせるようになりたい……。
例えば、これはメンバーの瀧田くんが作ったサンプルです。
すごい。私も作ってみたいです。
やってみましょう!
初心者でもできる? モーショングラフィックスに挑戦!
今回はAbobeのAfter Effectsを使って、動画のタイトルアニメーションを作ってみましょう。
存在は知っているんですが、使ったことないです。
After Effectsはモーショングラフィックスを作る代表的なソフトで、文字やイラストにエフェクトをつけたり短いアニメーションを作るのに適しています。同じAbobeのソフトでPremiere Proもありますが、Premiere Proはどちらかというと動画をつなぎ合わせたりテロップをつけたりする動画編集ソフトという感じです。
教えてくれるのは瀧田聡くん。コンポジション(枠)とキーフレーム(アニメーションの開始点と終了点を定義する描画)の設定から解説。
Premiere Proは使ったことあるんですが、After Effectsは難しそうだなと……。
動画を編集するだけならPremiere Proでいいと思いますが、After Effectsは元々用意されているアニメーションプリセット(設定したエフェクトやキーフレームを一括適用できる機能)が豊富で、更にプラグインを使って物理演算を再現したり、Premiere Proには表現できない複雑な表現ができるのが魅力なんです。
Premiere Proではできることが限られているんですね。
逆に、After Effectsは長い動画を編集するのには向いていないので、After Effectsでタイトルやイントロのアニメーションを作成して、Premiere Proで編集するという使い分けをするといいと思います。
まずは円を作ってみる。
では、早速シェイプレイヤーで円を作って、ボールが落下して戻ってくる動きを実装してみましょう。楕円ツールを使って……あっ、適当にやると綺麗な正方形にならないので、80×80pxの正方形に調整しましょう。
あの、円を作るだけですごく頭を使うんですが.......数字で打ち込む世界なんですか?
感覚的に簡単にできるソフトと違って、しっかり数字で管理することで正しく綺麗な動きを実装できるんです。このへんは少しプログラミング的思考が入ってきますね。でも、どのソフトを使っても裏側はプログラミング言語で動いていますし、極論を言うと0と1の世界ですからね。
正方形になりました!
それでは、この円に速度をつけて、下に落下させてみましょう。下に動かすだけなら簡単ですが、キーフレームで枠の外に円が落ちるように移動させます。そして出発点に戻ってくるように設定して……更に、スムーザー機能を使って、動きを自然に滑らかに設定します。
おお、動いた! 円を移動させるだけでめちゃくちゃ細かい設定が必要なんですね……先が長すぎる。
そうなんです。こんな風に、いちいち全部キーフレームで指定していたら大変ですよね。そこで、プログラミングが活きるエクスプレッションという機能を使うんです。今作った一連の動きの指示を、キーフレームを使わずプログラミング言語で制御することができるんです。
余計難しく感じるんですが……。
次は、「SAORI」の文字をバウンドさせるアニメーションを作る。
いや、プログラミング言語を覚えて一から作るのは大変ですが、一度作ってしまえばその構文をコピペするだけで色んなものに使い回すことができますよ。
気の遠くなる作業ですが、こういう仕組みでできてるんだ! ということが知れてよかったです。でも、使いこなせるようになるんだろうか……?
体験入部の成果は……?
ということで、体験入部で学んだことを活かすべく、動画とつなげたモーショングラフィックスのタイトルアニメーションを実際に作ってみました。
いかがでしょうか!?
(私が作ったのは最初の円と「SAORI」の文字をバウンドさせる動きだけですが)
デジタルに強いアンドロイドのお姉さんとして、少しはバージョンアップできた!?
コロナ禍に負けないデジタル時代のクラブ活動
体験入部、すごく勉強になって楽しかったんですが、正直めちゃくちゃ疲れました......! 脳の普段使っていない部分を使った感じがします。
何だかすみません。
今はコロナ禍で活動できないクラブも多いと思うんですが、電子計算機研究会はあまり影響はないですか?
そうですね。基本的にはパソコンさえあればどこにいても活動できますし、コロナ前からオンラインのやりとりが多かったので。勉強会やハッカソンなどのイベントは、ZoomやDiscord、Slackなどを活用してオンラインに移行しました。
逆に、オンラインでのやりとりが当たり前になったからこそ、交流範囲が広がったこともありますね。昨年夏に、千葉大学と岡山大学の電子計算機研究会と共同でハッカソンを開催したんですが、遠く離れた地域の学生団体との交流は刺激がありました。
Google Developer Group 京都と合同で行った、2019年の「Google I/O報告会」の様子。
ハッカソンって年に何回くらいやってるんですか?
ハッカソンは毎年夏と春の長期休暇期間に2回開催しています。他にもKC3(関西情報系学生団体交流会)などの他団体のハッカソンにも招待されるので、2回+αで参加する機会があります。
最後に、新入生に向けたアピールがあればどうぞ!
では、広報担当の僕から。ゲームを作ってみたい、VTuberになりたい、プログラミングに興味がある、プログラミングは苦手だけどイラストが描ける……などなど、そんな新入生はぜひ電子計算機研究会に! 春は、プログラミングや映像編集、モデリングなど様々なジャンルの入門講座を1〜2ヶ月ほど開催しています。他にも、部員が何か学んだものを共有したいと思ったときには各自で勉強会を開催しているので、初心者も大歓迎です!
ありがとうございました!
今回、体験入部アンドロイドとして様々な体験をさせていただきましたが、部員の皆さんと楽しく会話しながら勉強ができたので、ITやデジタル技術が好きになれたような気がします。またスキルをアップデートしたくなったら訪れるかもしれません。電子計算機研究会の皆様、ありがとうございました!
この記事を書いた人
SAORI
モデルとして活動していたが、イベントで行ったアンドロイドパフォーマンスが話題となり、アンドロイドモデルとしてメディアや広告など、映像作品を中心に出演。 自身のYouTubeチャンネルではニッチな場所を訪れ、アンドロイドとのギャップを楽しんでいる。
企画・編集:人間編集部
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