2021.10.01
「自分たちの舌で確かめたワインにハズレはない!」ワッシーズ・ダイニング・スープル鷲谷良亮さん
- Kindai Picks編集部
634 View
大阪市天王寺区にお店を構えるワイン専門店直営のレストラン「ワッシーズ・ダイニング・スープル」。お店に入ると常時1,000種類揃っているワインセラーが目に飛び込んできます。
世界的な影響力を持つワイン専門誌「ワインスペクテーター」で、レストランアワードを3年連続受賞した本格ワインとフレンチを堪能できるお店です。
今回はオーナーの鷲谷さんにお店のこだわりや学生時代について伺いました。
この記事をシェア
鷲谷 良亮(わしたに よしあき) 平成5年 農学部食品栄養学科卒業
自分たちの舌でフィルターをかけたワインはお客様から絶大な信頼を寄せる
――ワッシーズ・ダイニング・スープルさんのご紹介をお願いいたします。
元々、ワインショップのアンテナショップのような形で始めたお店です。よそのレストランでも料理とワインを合わせると思いますが、世の中の料理ってワインに合うものばかりではないんですね。そこで自分たちが考える「この料理を食べたらワインを思わず飲んでしまう」という料理を提案して、ワインがめっちゃ美味しいと思ってもらえたら、同店のテナント1階のワインショップでワインも売れるし、今までビール派や焼酎派だった人にもワインに親しんでもらいたいという想いで、2002年に始めました。はじめはワインが飲める食堂、居酒屋のような感覚でスタートしたのですが、シェフも代替わりする中、レストラン形式になっていきました。経験豊富なシェフが作るフランス料理をカジュアルな雰囲気で食べてもらいながら、ワインも楽しめるのが当店の特徴です。
――本格フレンチとワインを味わえるお店ですが、特にこだわりはどういったところでしょうか。
こだわりは美味しいワインしか出さないということです。今、日本で売られているワインはうちで扱っているもので約15,000種類ほどあるのですが、そのワイン全てが美味しいわけではないんですね。1階のワインショップではだいたい3,000種類まで絞りこんで販売しています。私はお店をはじめてからソムリエの資格を取ったのですが、味の平均値、自分の中で味の中心を作らないといけなかったので、初期は年に10,000種類くらい飲んだんですよ。自分たちの舌でフィルターをかけた美味しいワインしかないのではずれがありません。うちで販売しているワインは失敗しないとお客様からよく言われます。
「ロッシーニ」牛フィレ肉とフォアグラのステーキ トリュフのソース
――テイクアウトの復活やデリバリーを開始するなど、時代に沿った工夫をされておりますが、苦労された点や今後してみたい取り組みがあればお教えください。
色んなことをやりたい性格なのですが、元々ワインに合う洋風おせちなんかもやっていたり、屋台でイベント出店などもする中で、オードブルなどを作る素地はあったのです。コロナがきてレストランがちゃんと営業できないとなって、やっぱり家庭で一番困るのが、いいワイン買ってきたけど、何か美味しい料理を作れないかなと思った時なんです。ワインに合う料理って家庭ではなかなか作れないですし、うちのお店の料理をテイクアウトしてもらうと、ワインを開けて楽しんでもらえるので、Uber Eatsなどの導入はスタッフには苦労をかけましたが、やってよかったと思いますね。冷めてもおいしい料理の作り方をレストラン営業と同時にするのは作り方も違うし、コース料理のデリバリーオーダーが入った時は、通常2時間かけて提供する料理を30分で全て作らないといけないので非常に大変です。
バックパッカー経験で人生の突破力を身につけた
――どのような学生時代を過ごしていましたか?
学生生活の前半はあまり学校には行っていなかったですね(笑)。バックパッカーをしていたのですが、大学を出たら仕事はしないといけないと思っていたので、何か手に職をつけたいと思って、ドミノピザでバイトしてピザを回していた記憶はあります。
大学ではサントリーから退職された方の研究室にたまたま入り、酵母の研究をしていました。理論的に物事を考えることが好きだったので、性格に合っていたのだと思います。クラブ活動も空手をやっていたこともあって、立ち上げたばかりの日本拳法同好会(当時そうだったと思います、今は部に昇格しています)に入り充実した大学生活を送ることができました。
――学生時代の経験が今でも活きていることはありますか?
様々なことを経験したので、社会に出た時にそれほど戸惑わなかったですね。遊びも目的を持ってやっていたし、海外旅行に行く時もチケットと地球の歩き方だけを持って、現地についてから考えるなんてことをしていました。自分の中で「人生の突破力を身に着けよう」というテーマがあったので、言葉が通じない場所でも言葉の勉強はせず、だいたい大阪弁だけで通していましたね。意外と子供やおばあさんには通じるんですよ(笑)。真面目な話だと、大学で研究する時の考え方が今の仕事でも役立っています。社員に「ちゃんとデータ取った?」「数字残してる?」と聞くのですが、それをしていたら単なる失敗ではなく検証ができるし、それが成功のためのステップだと思うので、「あかんことがわかったのならええやん」と思うようになりました。
オマール海老のロースト
――学生時代に思い描いた将来と、現在の鷲谷様はいかがでしょうか。
学生時代はそれほど将来のことは考えていなかったので、具体的にこういう大人になるぞと思っていたわけでもないのですが、こういう大人になれたら楽しいだろうな!とは漠然と思っていました。今は基本的に趣味と仕事が一致しているんですよ。それって超幸せじゃないですか。
大学卒業後は会社員もしていて、放任主義の会社だったので好き勝手やらせてもらっていましたが、それでも息苦しさを感じたし、一生会社員でいるのはしんどいなと思いました。約3年、ちょうどいい修行期間で実家の酒屋に戻りましたが、当時、お酒の卸し会社が統廃合されていく時代で、卸しの会社が数百から数十社に減り、酒屋が千分の一になって、コンビニが千倍に増えました。そんな実家の酒屋が潰れるかもしれないとなった時に、自分は自由にしか生きられない性格だから、それなら社長になるしかないと思ったんです。
自分が決めて自分でやったことは、良くも悪くも成果として還ってくるので、やりがいもめちゃくちゃあるし、趣味や生活を楽しんで続けていけるようにしようと。それが今もできているというのは嬉しいですね。ワインの世界はどんどん変わって行きますし、いくらでも勉強することはあります。一生飽きずに付き合っていける産業だと思っています。
人生の目標はいつまでも好きな仕事で楽しくやっていくこと!
――卒業生としての近畿大学の魅力、近大を卒業してよかったと思うことはありますか?
僕らが卒業した後、めっちゃ有名になってくれたことですね。自分が在学中から近大の評判がうなぎ上りだったので、最近では自分の時より偏差値が10以上高い新入生が入学しています。そのような後輩たちのおかげで良い大学になっていったし、私の研究室の隣が水産学科で近大マグロを同級生が育てていたというのは自慢できます。あとはマンモス校なので行く先々、日本中に卒業生がいるので、知り合いになる機会も多いですね。普通に勉強もできる環境もあったし、クラブ活動も楽しめたし、農学部が移転した時に教室にエアコンがついてなかったこと以外はとてもよかったと思います(笑)。
――今後の展望についてお伺いしたいです。
今の生活でこのままいくと思います。ビジネスを大きくしたいという野望もありますが、今やっている仕事のクオリティをもっと上げていきたいと思っています。仕事と趣味が一緒だからこそ、一生この仕事をしていきたいので、年をとって衰えていく中、今のビジネスを世の中に合わせて変えていけるかが重要だと思っています。私がワイン業界に入った当時、日本でアメリカワインはあまり扱われていませんでした。そんな中、美味しいアメリカワインを見つけた時、うちのお店で扱って、お客さんに好きになってもらい、日本で有名になって認知される。そうなると楽しいじゃないですか。お客さんの好みも2、30年前と大きく変わっているのでアップデートしていかないといけないし、自分もついていかないといけないと思っています。いつまでも好きな仕事で楽しく稼げるようやっていこうというのが目標ですね。
取材・文:笑屋株式会社
企画・編集:近畿大学校友会
この記事をシェア