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2021.02.02

人間は愚か…?超絶話題、テレビ東京系列「PUI PUI モルカー」の魅力を考える。

Kindai Picks編集部

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2021年1月5日からテレビ東京系列「きんだーてれび」内で放送開始された、ストップモーション(コマ撮り)アニメーション「PUI PUI モルカー」。
3分間、かつ子ども向け番組であるにも関わらず、Twitterでバズり一気に大ブレイクした本作品の魅力について、Kindai Picks編集部がアニメやゾンビに詳しい近畿大学総合社会学部の岡本健准教授に聞きました。



岡本 健(おかもと たけし)

近畿大学 総合社会学部 総合社会学科 社会・マスメディア系専攻 准教授

1983年生まれ。担当授業は「現代文化論」「情報と社会」など。博士(観光学)。専門は、観光社会学、アニメ聖地巡礼、コンテンツツーリズム、ゾンビ。著書に『ゾンビ学』(人文書院)、『アニメ聖地巡礼の観光社会学』(法律文化社)、『巡礼ビジネス』(KADOKAWA)、などがある。







疑問

平日朝7時半放送、しかも3分間という子ども向け番組ながら、今、多くの大人たちがその魅力に取り憑かれています。
ストップモーションアニメ、しかもショートムービーで、過去にここまで話題になる作品はなかったのではないでしょうか。





岡本先生

ストップモーションアニメって、制作にすごく時間がかかるんですよね。一コマ一コマ少しずつ動かしながら撮影していくわけですから。最近は、ストップモーションライクなものもありますが、本気で作るとものすごく大変な作業です。

その一方で、やはり、モノそのものの質感がもたらしてくれる映像は、得難いもののようです。実写映画でも、CGで非常にリアルな表現ができるようになってきていますが、やはり「本物」を撮影することにこだわり続けている監督もいますよね。あるいは、フルCGの映画であっても、「動き」は人間の俳優がつけますから、その動きのリアリティが重宝されたりもします。VTuberなども見た目はCGで好きなようにできますが、「声」や「動き」などで「人間」を感じられたりする。デジタル対アナログと二律背反で捉えてもあまり意味がありませんが、デジタル全盛の社会で、「アナログ的なもの」が重視される部分はあるように思います。





ニコ

ストップモーションアニメに一部実写を入れる手法で、より大人もハマってしまう作品になったのかもしれませんね。





岡本先生

ストップモーションアニメとは異なりますが、近年「ゲキメーション」という手法を用いて作品制作をしているクリエイターが注目を集めています。そのクリエイターは、宇治茶監督。『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』のオープニングとエンディングの映像を担当されていて、うちの子(2歳)も見ています。
『妖怪シェアハウス』という小芝風花さん主演の連続ドラマでも、回想シーンは彼のゲキメーションで描かれました。長編映画作品としては『燃える仏像人間』『バイオレンスボイジャー』がありまして、『燃える仏像人間』は文化庁メディア芸術祭で賞をとっており、『バイオレンスボイジャー』も国内のみならず、海外で高く評価されています。

ゲキメーションという手法もすごくアナログで、紙人形をカメラの前で動かして撮影する、という単純なものです。しかし、そうした手法はクリエイターの創意工夫によって様々な表現の可能性を提示してくれますし、単純であるがゆえに「自分もできそうだな」と思わせる部分もあり、身近な感じが出るのかもしれません。







疑問

「PUI PUI モルカー」の魅力は、どこにあると思われますか?





岡本先生

モルカーという発想がまずぶっ飛んでいますよね。なんでモルモットの車なんだよと。しかも、タイヤついてるけど歩いてるよね!っていう(笑)始めて見た時、ここがとにかくツボでした。とにかくモルカーが可愛いというのもポイントです。

一方で、なんともグロテスクな感じもします。中にはちゃんと人間が乗っていて、車内には、コマ撮りではありますが、実写の人間がいる。かわいらしい生き物が車として人間に乗られている世界で、運転されちゃうとモルカー側の意思というよりも運転している人間の方に主導権を握られて意思に反することをやらされている感じもある。

この、かわいいんだけどグロテスクさもあってつっこみどころもある、というあたりが、多くの人が「ネタ」にしたいと思えるポイントなのでしょう。





にこにこ

羊毛フェルトなどでモルカーを自作している人も多く、自分だけのモルカーを愛でて楽しむ姿なども見受けられます。







岡本先生

創作に結びつく、というところも面白いですよね。「モルカー」(モルモット型の車)という「お題」や「世界観」をセッティングされたら、それぞれが創意工夫して、そこに色々なネタを投下していく。ネタが投下される量が増えていくと、そのコンテクスト(文脈)に乗っかることで自分の作品を見てもらえる確率が増えていくので、どんどん参入する人が増える。このスパイラルが発生していると思います。

『鬼滅の刃』も大ヒットのプロセスにはこういう側面がありました。『鬼滅の刃』のコスプレをすると、多くの人が見てくれるということで、芸能人がこぞってコスプレをした写真をSNSにアップしていましたね。





にこ

モルカーは子ども向け番組で、幼児が十分理解できる内容でありながら、多くの大人が視聴し、人間の愚かさを考えさせられるなどとも言われています。





岡本先生

第1話から、自動車渋滞でイライラする話ですもんね(笑)
4話のラストなんかも、「お前こそがゴミだよ」みたいな感じで、実に皮肉が効いています。

我が家は子どもが2歳なので、私も最近よくNHK Eテレの番組を見るのですが、すごくよく考えて作られている番組が多いと感じます。先日は、「ディスカッションの仕方」について解説している番組があり、「いや、これ大学の授業で使いたいぞ」というくらい、本質的なことをとてもやさしく、丁寧に説明されていました。子供向けの番組を作っておられる方々は、本当によく考えて作っておられるなぁと再認識しています。







にこにこ

子ども向け番組なのに、大人がハマってしまう。
子どもの見方、大人の見方、それぞれにハマれる要素があるから人気が爆発するのですね。





岡本先生

たとえば『鬼滅の刃』も、多分、剣技がかっこいい!とか、キャラクターがかわいい!とか、そういう楽しみ方で見ている方も多いと思いますが、内容的にはかなり深いですよね。「大人向け」と言っても良いと思います。モルカーも、大人が内容を楽しむこともできるし、可愛いモルカーの様子をみて癒されたり、面白い動きを見て子どもが笑ったりもできる。

実際、自分が子どもの時のことを考えても、細かなところはよくわからなくても、アニメや映画を楽しく見ていました。『ドラえもん』をはじめとした藤子・F・不二雄先生の作品は、子どものころからずっと好きですが、本当に手を抜いていないですよね。今読んでもものすごく面白いです。





しんみり

あ、とてもわかる気がします。
幼児はただ楽しく見られるアニメ作品が、隣で見ている大人は深いメッセージを感じ取って泣けてしまう作品だったりすることってありますよね。





岡本先生

私の場合、アニメやマンガ、ゲーム、映画等のコンテンツが専門ですので、自分が子どものころにやっていた作品を、研究の必要上から、今になって見返したり、ゲームをプレイしたりするんですが、「こんなに深い話だっけ?」とか「このセリフ、意味わからんかったけど、おっさんになった今ならわかる」とか、そういうことが頻発します。

小説なんかでもそうですよね。文章そのものは何一つ変わっていなくても、読む側が成長すると読み方や感じ方がどんどん変わっていきます。逆に、後で戻って来られる作品というのは、難解な部分があったり、少し引っかかる部分があったりするものかもしれません。
学術書でも「古典」と言われるものは、絶対的に正しいもの、というよりも、発想の転換を促したものであったり、実証的な正しさはよくわからないんだけど、これまであまり考えられていなかった領域に思考を遊ばせたものが含まれます。



mol


しんみり

一つの作品でも、見る人の年齢やその時の環境などによって、感じ方は変わってくるのですね。
POPなモルカーの話題から、古典などとても深いお話になってまいりました。





岡本先生

何が言いたいかというと、年齢を問わず、多様な楽しみ方ができる作品は、長く愛されるものになり得るということなんです。最初は直感的な楽しみ方でいい、そこから、何かひっかかりがあった時に、どこかでまた戻ってこられたら、違った楽しみ方ができる。人生を過ごしていく中で「帰ってこられる作品」と出会えたら幸せですね。

世代を超えたコミュニケーションの話題として有効という側面も重要だと思います。私も子ども番組を見ながら、子どもと一緒に歌ったり、色々話したりします。モルカーを見せたらどういう反応をするか、今度見せてみたいと思います。





にこにこにこ

話題沸騰のモルカー、今後のストーリー展開も楽しみですね。
ありがとうございました!



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